※単独でも読めるかとは思いますが「無自覚のまま嫉妬する土方さん」「パフェデートから路地裏まで」の続きです。

よろしければ、そちらをお読みになってからお進み下さい。

 

 

万事屋…いや、銀時とセフレになってから二週間が経った。きちんとしたとは関係とは言い難いが

それでもちゃんと名の付く関係になったことで俺の心は落ち着いていた。銀時が総悟とくっちゃべってても無駄にイライラしなくなったし

銀時と二人になったからといって体温が急上昇することもなくなった――まあ、ムラムラはするけどな。

 

仕方ねーだろ。アイツがエロいんだからよ…。普段はやる気なさそうにボーっとしてるってのに、急に意味ありげな溜息を吐いたり

熱い視線で見つめてきたりすんだ。で、ちょっとキスでもしようもんなら途端に腰砕けって…敏感すぎんだろ。

あんなにエロいやつ他に知らねーよ。だからつい、初デートの日も路地裏でヤっちまった。そう、全てはアイツのエロさが原因なんだ。

 

 

俺のセフレを紹介します?

 

 

本日土方は、隙あらばサボろうとする沖田を怒鳴りつけながら、いつものように市中見回りをしていた。

その時、沖田が向こうからやって来る三人組に目を留めた。

 

「おやー、あれは万事屋の旦那じゃねーですかィ?」

「そうだな…メガネとチャイナも一緒だ」

「せっかくなんで皆でお茶でも飲みましょうや…土方さんの奢りで」

「何でテメーの分まで奢らなきゃなんねェんだよ」

「…へェ〜、万事屋の方々に奢るのはいいんですねィ」

「まあな…」

「…随分とあっさり認めやしたね」

「別に隠す必要はねーだろ」

「そうですかィ。じゃあ…旦那のご家族にも挨拶済みってことですかねィ」

「家族ってガキ共か?俺ァ何も言ってねーよ。銀時が言いたきゃ言ってんだろ」

「銀時、ね……あっ、旦那ァお久しぶりです」

 

万事屋一行との距離が近付いたところで、沖田は土方との会話を打ち切って銀時に挨拶した。

 

「よ〜沖田くん久しぶり」

「どうも。よろしかったらそこの喫茶店でお茶でも飲みませんか?アンタらの分は土方さんが出してくれるみたいですぜィ」

「えっ、マジで?いいの?」

「ああ…どうせ金ねーんだろ?」

「やりぃ!…新八、神楽、腹いっぱい食っとけよ!」

「おうヨ」「えっ…いいんですか?」

「…チャイナは程々にしてくれ」

「いやアル!ここ数日、一日ご飯十杯だけで過ごしてきたネ!」

「…充分じゃねーか」

「充分じゃないネ!酢こんぶもなかったヨ!」

「じゃあ酢こんぶ買ってやるから、店で食うのは少なめにしとけ」

「マジでか?酢こんぶ買ってくれるアルか?」

「ああ」

「きゃっほー!じゃあ早く行くネ」

「おう」

「土方さん、すみません」

「おう」

 

こうして万事屋一行と土方、沖田は喫茶店へ入っていった。

 

 

*  *  *  *  *

 

 

「あの…この並びは何かな?」

 

喫茶店のテーブル席。向かい合ったソファの片側に土方と銀時、その向かいに十代三人が座っていた。

 

「何でィ…せっかく気を遣ってやったってのに、礼の一つもねーんですかィ?」

「気を遣うって……あ、あのよー、土方…」

「なんだ?」

 

銀時は土方に小声で話しかけた。三人の見ている前で、土方と銀時は顔を突き合わせ、秘密の会話を始めた。

 

「沖田くんは、その…俺たちのこと知ってんの?」

「ああ」

「な、なんで?」

「何でって…聞かれたから答えただけだ」

「えっ、言っていいの?」

「隠すことじゃねーだろ」

「それは、まあ…」

「ガキ共には言ってなかったのか?」

「あ、ああ…」

「そりゃあ悪かったな…知らずに誘っちまって」

「い、いや…多分、アイツらも何となく気付いてるとは思う」

「そうか?」

「最近、お前と会うこと多くなったし…」

「それなら大丈夫か?」

「うん…」

「よしっ」

 

二人同時に元の体勢に戻り、何事もなかったかのようにメニューを広げた。

 

「じゃあ俺はいちごパフェね。ほら、お前らもじゃんじゃん注文しろよ」

「あ、はい…」

「おうネ!」

「総悟、テメーは自分で払えよ?」

「へいへい…」

 

五人は思い思いの物を注文し、暫くして料理や飲み物が運ばれてきた。

食事をしながらも、話題は当然のように土方と銀時の関係のことに集中した。

 

「それにしても…お二人がそういう関係になるとはねィ。…オメーらはいつ知ったんでィ?」

「いや、僕らもはっきりと聞いてたわけじゃ…」

「でも朝帰りの時は銀ちゃんヤニ臭くなってるし、コイツが送ってくることもあったからすぐ気付いたヨ」

「僕は単なる飲み友達かと思ってたんですけど、神楽ちゃんが…」

「マヨラーと会った時はたいていキスマークが付いてるアル」

「なっ!!」

 

居心地の悪さを感じながらも、黙って三人の会話を聞いていた銀時は神楽の発言に思わず立ち上がる。

 

「かかかか神楽、おおおおお前ナニ変なこと言ってんの?」

「事実を言ったまでネ。…ちなみに今日も付いてるヨ」

「はぁっ!?」

「おー、すげーな…よく見付けたな」

「土方ァ!?」

「女の目はごまかせないネ!」

「ガキとはいえ立派な女だな…恐れ入ったぜ」

「ふんっ。分かったら酢こんぶ五個買うアル」

「おー買ってやるよ」

「ちょっと待て土方!テメーいつの間にンなことしやがった、ああ!?」

 

驚きで固まっていた銀時が漸く復活し、土方に掴みかかった。

 

「いつって…昨日、後ろからヤっ「言うなァァァァ!!」

「んだよ…テメーが聞いてきたんじゃねーか」

「そういうことを言ってんじゃねーよ!勝手に痕つけんなって言ってんだよ!」

「見えねー所にちょっと付けるくらいいいじゃねーか」

「見えてんだろーがァァァ!」

 

不毛な会話を続ける二人を後目に沖田が神楽に話しかける。

 

「おいチャイナ…旦那のどこに付いてるって?」

「これだから男はだめネ。…教えてほしいアルか?」

「おーココだ、ココ」

 

沖田と神楽の話が聞こえていた土方は、銀時の首にかかっている髪をスッと上げる。現れた首筋にはうっすらと赤い所有印が付いていた。

 

「ててててめー!」

「すげーな、チャイナ。あんな薄くて小せェのよく気付けたな」

「ふんっ。お前とは格が違うアル」

 

土方の手を払い除け、首筋を押えて真っ赤になった銀時を無視して、沖田と神楽は会話を続ける。

とんでもない会話に終止符を打つため、常識人・志村新八が口を開いた。

 

「と、とにかく!お二人は仲の良い恋人同士ってことですね!いやー良かった」

「あ?恋人じゃねーよ。俺たちはセフ…ごふっ」

 

これ以上しゃべらすまいと、銀時は土方の口にいちごパフェを押し付けた。

 

「あっま…おい銀時!いきなり何しやがる…」

「手が滑った…あー、服にも飛んでんな。よしっ、厠で洗おうぜ」

「おしぼりで拭いときゃあいいだろ…っておいっ!」

「るせェ!とっとと来い!」

 

 

 

銀時は土方の手首を掴んで、店の厠へ連れて行った。

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

二十分後

 

「銀さんたち、戻ってこないですね」

「あのまま何処かにしけこんだんじゃねーかィ」

「ありうるネ…」

「えっ…ウソ。マジで?支払いどーしよう…」

「お前ら、一銭も持ってねーのか?」

「当たり前ネ」

「仕方ねェ…」

「沖田さん、すみません」

 

 

三人は席を立ち、沖田が会計を済ませた。「領収書下さい。宛名は土方十四郎で」と沖田が店員に告げていたような気がしたが、

新八は敢えて聞こえないふりをした。あのクールな土方さんが堂々と所有印を披露するなんて…銀さんのことがよっぽど好きなんだな。

新八は二人を温かく見守っていこうと決意していた。

 

一方、沖田と神楽は…

 

「まさかあの二人、ただのセフレだったとはねィ」

「爛れた大人の関係には見えないアル。どう見てもバカップルヨ」

「限りなく恋人に近いセフレってとこだろ」

「よく分からないアル。それなら恋人でいいだろ」

「大人は色々あるんだろィ」

「メンドクサイ大人たちネ」

「だったら俺たちが二人を恋人同士にしてやろうじゃねェか」

「どうするアルか?」

「…今から考える」

「お前の作戦なんてドSな作戦に決まってるネ。だったら私が考えるアル」

「じゃあ、どっちの作戦で二人が恋人になるか勝負といこうか」

「望むところネ!」

 

 

二人を立派な恋人にしようと、当人達にとってはあまり有り難くない決意をしていた。

 

(09.10.16)


セフレシリーズ(?)第三弾です。セフレとか言いながらラブラブでベタベタです(笑)。神楽の言うように、当人以外は皆バカップルだと思っている…そんな二人にしたい。

でも一応セフレなので、おまけ(18禁)を書きました。厠に行った後の二人になります。よろしければどうぞ