※「銀さん教えて」の後、「銀さん教えてレッスン2」の前の話です。



銀さん教えてレッスン1.5


ラブホテルでの初デートを終え、銀時は万事屋へ、土方は真選組屯所へそれぞれ戻っていった。
万事屋への道中、銀時は先程までの土方を思い出し、自然と口元が緩んでしまう。

(まさか鬼の副長から「銀さん」なんて呼ばれる日が来るとはなァ…。しかも、まっさらだったなんて…
まあ、キスは色んなヤツと経験済みだけど、それだって意味も分からずにしてたんだからノーカウントだよな?
相手はともかく、十四郎は仕事の一環って感覚だったワケだし…うん、ノーカウントだな。
というわけで、十四郎の本当のファーストキスの相手は俺に決定!)

都合のいいように解釈し、足取り軽くかぶき町を歩いていく。

(にしても、十四郎の仕事上のファーストキスの相手って誰なんだ?
十四郎は山崎かもしれないとか言ってたけど、昔のことでハッキリとは覚えてないみたいだし…。
覚えてもらえないようなヤツは俺の敵じゃねェけど…だからと言って許してやれる程、俺は人間ができてないからね?
知らなかったならまだしも、十四郎がまっさらだって知った上で、騙してキスしてやがったら絶対に許さねェ。
ぶっ殺してやる!…あっ、十四郎の仕事仲間を殺すのはマズイな。仕方ねェ…四分の三殺しにまけてやろう)

物騒なことを考えているにもかかわらず、土方と付き合えた幸せで満ちている銀時はとても楽しそうに見える。

「たっだいま〜♪」

銀時は勢いよく自宅の玄関を開けた。
いつものように新八が出迎える。

「お帰りなさい。…もう少しで夕飯できますよ」
「おう、新ちゃんサンキュー♪」
「…何かいいことあったんですか?」
「まあな〜」

分かりやすく浮かれている銀時に、新八はとりあえず「良かったですね」と言って台所へ戻った。



「実は俺、恋人ができました〜♪」
「もしかして…土方さんですか?」
「おうっ!」
「銀ちゃん、おめでとう!」

夕飯の時間になり、新八と神楽が席に着くやいなや銀時は重大発表をした。
本当は言いたくて言いたくて仕方がなかったのだ。
以前から、銀時に「土方が好き」と聞かされていた二人は銀時と一緒になって喜ぶ。

「こんなことなら、もっと豪華な夕飯にすれば良かったですね」
「いやいや…そんな大したことじゃねェからよー」
「そんなこと言って…銀ちゃん、めちゃくちゃ嬉しそうネ」
「そりゃあ、好きな人と恋人同士になれたんだから嬉しいですよね」
「まあなー…。でも別にそんな…まあ、そろそろイケそうだなーって思ってたからね?」
「ナニ言ってるんですか。勢いでケンカしては『そんなつもりじゃなかったのに…』って
帰って来てから泣いてたじゃないですか」
「泣いてませんー。泣いてたとしてもそれは、お話ができて嬉しかったからですー」
「はいはい、分かりました」

照れ隠しからか強がってみせる銀時と、自分のことのように嬉しそうな新八と神楽。
万事屋一家の団欒は温かな空気に包まれていた。



*  *  *  *  *



二度目のデートの日。土方が待ち合わせ場所に指定したのは、とある路地の奥だった。
約束の時刻の少し前に着いた銀時は壁に凭れかかりながら路地の入口を見つめる。

(仕事柄、十四郎にとっての待ち合わせって人目を避けることなのかなァ。
…まさか、俺と一緒にいるのが恥ずかしいとか?ち、違うよね?そーゆーんじゃないよね?)

暗い路地で銀時が不安になっていると、寄りかかっている壁を向こう側からコンコンと叩く音がした。
銀時は驚いて後ろを振り返る。薄暗いせいで壁に見えていたが、扉があるらしい。
そして向こう側から扉を開いて出てきたのは…

「とっ十四郎…」
「銀さん、早かったな」
「あ、いや、うん」
「こっちだ」
「えっ、あ…」

「こっち」が何処かも分からないままに、銀時は扉の中に入っていく。

「あのさァ十四郎、ここって…どこ?」
「△◇っていう宿だ」
「えっ、そうなの?」

その宿なら銀時も知っている。しかし…

「こんなトコから入れるなんて知らなかったよ。…関係者専用口とか?」
「客のプライバシー保護の名目で、宿側が表の入口とは別に設けてるんだ」
「へェー。…十四郎はこの宿によく来るの?」
「いや。こういう形の宿は攘夷浪士の潜伏に使われることもあって知ってるだけだ」
「なるほどね」

土方がここの常連でないと知り、銀時は心から安堵した。
受付で部屋の札を受け取る土方は、おそらくここが連れ込み宿であることを理解していない。
知らないうちに連れ込まれたのかと心配したが、どうやらそうではないらしい。

部屋に入ると早速銀時は聞いてみた。

「十四郎…今日はどうしてここを選んだの?」
「裏の入口があるから、誰にも見付からずに銀さんと会えると思って」
「誰にもって…俺と付き合ってることは秘密にしたいの?」
「その方がいいだろ?」
「…なんで?」
「俺は真選組の副長だから…俺の恋人だって知れたら、銀さんが狙われるかもしれねェ」
「そっか…俺のこと考えてくれたんだね。ありがとう」

銀時は嬉しくなって土方を抱き寄せ、チュッと口付けをする。土方も嬉しそうに微笑んだ。

「もしかして十四郎…真選組の連中にも俺と付き合うってことを言ってないの?」
「いや…キスできなくなった理由を説明する時に言ったぞ」
「そうなんだ。…キスしないって言ったら文句が出なかった?」
「まあ、不満そうにしてたが…仕方ねェからな」
「そうだね」

無事に「仕事のご褒美にキス」はなくなったようで、銀時は胸を撫で下ろす。

「今日ここに来ることも、真選組の連中は知ってるの?」
「いや。かぶき町で銀さんと会うってことしか言ってねェよ。
ここは待ち合わせに使っただけで、それからどうするかは決めてなかったからな」
「じゃあこれからも、デートの場所は秘密にしない?できれば日時も。…俺も言わないからさ」
「…なんでだ?」
「敵を欺くには味方からって言うだろ?十四郎は携帯持ってるんだから、いつでも連絡取れるんだし」
「それもそうだな」

銀時は内心でガッツポーズをする。これで真選組に知られることなく土方と会える。
忙しい土方とは会う機会そのものが少ない。それなのに恋敵達に邪魔をされては堪らないと思っていた。

「ところで銀さん、今日はどうする?」
「どうって?このままここで過ごすんじゃないの?メシも頼めるし…」
「銀さんがいいなら、俺はそれでいいぞ」
「うん。俺はここでいいよ。でも十四郎…ここがどういう宿か分かってないでしょ?」
「…ただの宿じゃないのか?」
「違うよ。ここは連れ込み宿って言ってね…まあ、この前行ったラブホと同じような所だよ」
「…じゃあここも、カップル専用なのか?」
「そうだよ。だから十四郎は、俺以外と来ちゃダメだからね」
「分かった」

銀時は「よくできました」と言って土方にご褒美のキスを贈る。


(せっかく連れ込み宿にいるんだし…もうちょっと何かしたいなァ。セックスはまだ早いけど…そうだ!)

「ねえ十四郎、ディープキスって知ってる?」
「でぃ…?」
「ディープキス。舌を使うキスのことだよ」
「舌?キスって唇でするんじゃねェのか?」
「唇だけより、レベルの高いキスがあるんだよ。…知りたい?」
「知りたい。銀さん教えて」
「いいよ。じゃあまずは目を閉じてー」
「んっ」

素直に目を閉じる土方を前にして、銀時は自然と口元が緩んでしまう。
そしてゆっくりと、いつも以上に優しく唇を合わせていく。

銀時は角度を変えながら何度も口付けた後、土方の唇を舌先でなぞるように舐めた。

「んっ…」
(今ちょっと声出たよね?身体もピクって跳ねたし…もしかして、感じてる?マジでか!?)

銀時は土方の反応を確かめるように、じっくりと何度も唇を舐める。

「んっ…ぁ…」

土方が、呼吸とも喘ぎとも取れるような声を微かに漏らした瞬間、銀時はその僅かな隙間に舌を差し入れた。


「んんっ!?」


突然の出来事に土方の身体が強張る。
銀時は安心させるように抱きしめて、頭や背中をさすりながら舌を進めていく。


「んぅ…」


土方の緊張は徐々に解けていき、銀時に身を任せるようになる。


「ん……んぅっ!」
(ここ…イイのかな?)


銀時の舌が土方の上顎を撫でると、また土方の身体が跳ねた。
土方は銀時にしがみ付き、着流しをギュッと握って初めての感覚に耐えているようだった。


「んんっ!う…んんっ!」
(気持ちいいみたいだな…)


自分の舌で土方が感じていることに気を良くした銀時は、更に深く口付けていく。


「んくっ…んんっ!んんー…ぷはぁっ!」
「ごめん。息、できなかった?」

土方にドンドンと胸を叩かれ、銀時は漸く唇を離した。

「銀さんは…苦しくねェのか?」
「口塞がってても、鼻で息できるでしょ?」
「あ、そうか…」
「それ以外はどうだった?」
「それ以外って?」
「ディープキスの感想」
「あんな風にするとは思わなかったからビックリしたけど…」
「気持ちよくはなかった?」
「よく分かんねェ。でも…嫌な感じじゃなかった」
「そっか。じゃあ…もう一回していい?」
「うん」

銀時の顔が近付くと、土方は再び目を閉じた。


(10.06.23)


教えてシリーズ第三弾(時間軸としては一弾と二弾の間)です。山崎は四分の三殺しみたいです(笑)。…まだ銀さんにはバレていませんが^^;

続きは18禁です