※単独でも読めますが、一応「銀さんへの想いを自覚した土方さんがお付き合いを始めるまで」の続きとなっております。

よろしければ、そちらをお読みになってからお進み下さい。

 

     

 

互いに想いを伝え合ってから一ヶ月…土方とまともに会ってない。

アイツの巡回中に顔を合わすことはあっても、二言三言話すだけですぐ仕事に戻っちまう。

アイツは照れてるだけだと思う。会えばケンカしてた俺と付き合うことになって、どうすればいいか分かんねェんだ。

 

だが、それ以上に一緒にいる真選組のヤツらがウザイ。

毎回違うヤツと巡回してるにも関わらず、俺と土方が話し始めるとすぐに「副長、あっちに不審な人影が…」とか

「この前、向こうの店で指名手配犯を見たという情報が…」とか「局長が呼んでます」とか「それ以上旦那に近づくと

妊娠させられるっつー話ですぜィ」とか(最後のは誰のセリフか分かんだろ)…明らかに邪魔されている。

 

この一ヶ月間に土方の非番もあった。

もちろんデートに誘った―依頼の謝礼で映画のタダ券をもらったから映画に誘った。

だが、当日になると「急な仕事が入った」とキャンセルされる。

後で話を聞くと(会えないから電話だ)部下がミスった後始末とか、テロ予告が来たと思ったらガセだったとか

ゴリラがお妙にボコられたとか…とにかくたいしたことじゃねー。

 

仕方なく屯所まで会いにいっても「関係者以外立ち入り禁止」とか言って門前払いだ。

時には十人以上で俺の侵入を阻止してきやがる。何だってんだ、いったい。

アイツが真選組のヤツらから慕われてんのは知ってた。中には邪な想いを抱いてるヤツだっているのも知ってた。

…それにしたって、酷すぎねェ?まあ、ゴリラが「トシトシ」言ってんのは前からだし

沖田くんもただ面白がってるだけだろうけど…それ以外のヤツらも含めて真選組全員で俺たちの仲を邪魔してるようだ。

 

でも甘ェな。そんなことで諦める俺じゃねェよ。こうなったら何が何でも土方とデートしてやる!

まずはデートの日程だ。アイツの勤務は前に聞いて把握してある。ちょうど三日後が非番だ。

だから二日後の夜会う約束をすればいい。

次は場所だ。どうせ、外で会えば邪魔されるに決まってる。だからウチに呼ぶことにしよう。

ウチで夕メシ食って…できれば泊まっていってほしいな。神楽は…お妙かババアに頼んでおくか。

 

問題は、それをどうやって土方に伝えるかだ。普通に電話したら、真選組のヤツらに勘付かれて邪魔される。

会ってこっそりメモを渡そうにも、さすがに巡回ルートまでは把握してねェ。

俺が屯所に行っても門前払いされるから…誰かに伝言を頼むか。でも誰に?

新八や神楽じゃ、俺に頼まれたってのがバレバレだ。長谷川さんじゃ…入国管理局長だった頃ならともかく

今のマダオが土方に会いに行くってだけで不自然だ。いっそ、人じゃなく機械(からくり)を使って…って、ダメだ。

たまはある意味指名手配犯だ…ん?指名手配?そうだ、アイツがいるじゃねーか!

 

 

お付き合いを始めた2人が初デートに至るまで

 

 

翌日。真選組屯所。

 

「副長!ついにヤツを捕らえました!」

「何、本当か!?だが、どうやって…一小隊も動かしてねェのに」

「じ、実は…今朝、屯所の前で見付けたそうです」

「はっ?屯所の前?」

「はい。門番の話によると、一人でふらっと現れて、道を訊いてきたそうです」

「道?」

「ええ。『日本の夜明けへはどう行ったらいいのか』と。

あまりにも堂々としているので、門番も半信半疑だったんですが、一応取調室に入れてあります」

「…本当にヤツなのか?」

「それは本当です!局長や沖田隊長にも確認してもらいましたから!ただ…」

「ただ?」

「副長以外とは口を利かないというんです」

「お前らなめられてんだよ。いいだろう。ご指名とあらば行ってやろうじゃねーか」

「お願いします」

 

土方は、捕まった身でありながら自分と話したがっているという指名手配犯に会うため取調室へ向かった。

 

「よう」

「…やっと来たか。随分と遅かったな。何だ、真選組副長ともあろう人が寝坊でもしたか?」

「桂テメー、俺をご指名たァいい度胸じゃねーか」

「何、ちょっとした言伝があってな」

「言伝だァ!?」

「そうだ」

「…言ってみろ」

「今は言えん」

「ああ!?」

「周りに誰もいない所で、お前だけに伝えるよう言われている」

「…分かった。…お前ら、外に出てろ」

 

土方は取調室にいた隊士らに指示を出す。

 

「そ、そんな…いくら副長でも危険です!相手は桂ですよ?いきなり屯所に現れて、言伝だって罠としか…」

「武器を取り上げられて、手も足も縛られてる状態で何ができるっつーんだ?」

「そうですが…しかし…」

「それに、例えこの部屋から逃げ出したとしても、ここは屯所の敷地内だ。そう簡単に外へは出られねェ」

「それは、そうなんですが…」

「どうしても心配ならこの部屋を取り囲むようにして待機してろ」

「…分かりました。では、外で待機していますから、何かあったらすぐに呼んでくださいよ」

「ああ」

 

渋々といった態で隊士たちは取調室から出ていく。残されたのは桂と土方のみ。

 

「で、テメーの狙いはなんだ」

 

桂の向いに座り、土方が問う。

 

「だから言伝を預かっているのだと言っておろう」

「誰からだ?」

「銀時からだ」

「なっ!?」

「…その様子だと、そなたと銀時とはただの知り合いというわけでもなさそうだな」

「い、いや、別に、アイツとはただの知り合いだ」

「まあいい。では伝えるぞ…明日の夜九時に万事屋へ来い」

「はっ?」

「用件はそれだけだ」

「…はっ?」

「何だ、聞こえなかったのか?明日の夜九時に…」

「いや、聞こえた。聞こえたが、いったい何なんだソレは?」

「ん?万事屋が分からんのか?万事屋というのは、かぶき町にある銀時の…」

「いや、万事屋の場所が分からねェとか、そういうんじゃねェ。

ただ…そんなことを伝えるためだけに、お前はここまで来たのか?」

「そうだ。珍しく銀時が真剣な面持ちで頼むものだから来てやったのだ。

あの表情からするに、そなたへ何か大事なことを伝えたいのではないか?」

「大事な、こと?」

「理由は分からんが、必ず一人で、誰にも言わずに来いと言っておったぞ。

明日、万事屋へ行くことは真選組の連中にも決して悟られてはならんと、な」

「一人で…」

「さっ、俺の話はこれだけだ。留置所でも監獄でも連れて行くがよい」

「あ、ああ」

 

土方は外で待機していた隊士を呼び、桂を留置所へ送るよう指示をした。

 

それから翌日まで、土方は桂に言われたことを誰にも話さず、平静を装って仕事に臨んだ。

 

*  *  *  *  *

 

約束の日。

土方の仕事は夕刻に終わったが、近藤の誘いも断り、一人副長室で書類整理をしていた。

ちなみに桂は本日昼前に脱獄したという知らせが入った。すぐに一番隊を捜索に向かわせたが、やはり足取りは掴めなかった。

 

そして約束の時刻…いかにも仕事中であるかのように書類を置いたまま、「煙草買ってくる」と言って土方は屯所を出た。

 

 

「よーう、待ってたぜ」

 

万事屋に着くと、すでに銀時が玄関に出て待っていた。土方は銀時を一瞥すると、無言で室内に入っていく。

 

居間のソファに腰を下ろすと、銀時が隣に座った。

 

「てめー、桂に伝言を頼むたァどういう了見だ?」

「まあまあ、まずは飲んだら?」

 

目の前のテーブルには日本酒と、銀時の手作りであると思われるいくつかの肴、そしてマヨネーズも用意されていた。

 

「言いてェことがあるならさっさと言いやがれ」

「へっ、何のこと?」

「桂に伝言してまで俺を呼んだんだ。しかも一人で来いと強調して…何かあんだろ?」

「いやー、そんな…用ってわけじゃねェよ」

「しかも、金がねーとか言ってるくせに、こんなモンまで用意して」

「だってよー、俺たち付き合い始めたってのに、一ヶ月もロクに会えなかったし

せめて今日くらいは奮発しようと思って…これでも頑張って働いたのよ?」

「…最後の晩餐ってわけか」

「はっ?何言ってんの、お前」

「お前が桂と共に攘夷活動をするとは思えねェ。だが、桂をよこしたってことは俺との繋がりを切りたいっつー

意思表示なんだろ?…確かに、一ヶ月もまともに会えねーんじゃ、呆れられても仕方がねェ」

「ちょっ、な、何で!違うって!」

「…別れ話をするために呼んだんじゃねーのか?」

「全っ然違う!俺はデートの誘いのつもりで…」

「で、デート!?」

「そう!俺たち、付き合い始めたけどデートってできなかっただろ?

で、明日はお前非番だし、せっかくだからウチに呼ぼうと思ってよ」

「…それなら、直接言いに来ればよかったじゃねーか」

「今まで何度も言いに行ってたの!でも、お宅んとこの門番とかに門前払いされてたんだって!」

「はぁ!?何で…。だって、今まで何度も屯所に来たことあんじゃねーか」

「…お前と付き合うようになってから、入れなくなったんだよ」

「そうか…アイツら俺への嫌がらせで…」

「それだけじゃないと思うけどね。

それで、俺の関係者だと思われず、且つ絶対に屯所へ入れる人物ってことでヅラに頼んだんだ」

「そう、だったのか」

「そ。…不安にさせてゴメンね」

 

そう言って銀時は土方の肩を抱き寄せた。

 

「…っ、べ、別に不安なんか…」

「誤解も解けたところで…デート、しようか?」

「デート…」

「といっても、どこにも出かけねーけどな。ウチで飲んで…明日非番なんだから、泊まっていけるよな?」

「と、泊まっ…て?」

「うん。…あっ、神楽なら大丈夫だよ。今日はお妙んとこ行ってっから」

「いや、でも…俺、何も持ってきてねェ」

「大丈夫だよ。寝間着くらい貸してやるし、下着は…まだ使ってねーヤツがあるからやるよ」

「お、おう」

「じゃあ、決まりー。というわけで、乾杯しようぜ」

「お、おう」

「では、俺たちの今後の幸せと、初デートを祝って…かんぱーい」

「か、乾杯」

 

恋人たちの夜は、まだ始まったばかり。

 

 

(09.08.02)

 

 

photo by スマイルライン


銀土初デート(?)話です。この後、初エッチに雪崩れ込むものと思われます。使ってない下着…もちろん、この日のために銀さんが買っておいたものです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

追記:続き(初エッチ編)書きました。よろしければどうぞ

 

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