※「銀さん教えてレッスン4」(15禁です)のその後です。
銀さん教えてレッスン4.5
真選組屯所食堂。
普段なら食事が終わっても雑談をする隊士達でまだ賑わっている時刻だが、今日は疎らであった。
理由は屯所入口にずらりと並んだ隊士達。彼らはかき込むように食事を済ませ、それからずっとここで
待機しているのだ。その中の一人、山崎が隣にいる沖田に話しかける。
「…遅いですね」
「ああ…遅ェな」
「部屋の書類はそのままになってたんで、すぐ戻るつもりだったんだと思うんですけど…」
「自主的に巡廻してるにしても長すぎるな…」
「どうしたお前達こんなところに集まって…何か面白いものでも見られるのか?」
食堂に人が少ないため、近藤が探しにやって来た。
「近藤さん…実は、土方さんがまだ帰らないんでさァ」
「ああ、トシなら今日は泊まってくると連絡があったぞ」
「「泊まり!?」」
近藤の言葉に沖田達は叫ぶ。
「とっ泊まりってどういうことですかィ!?」
「どういうも何も…泊まりは泊まりだ」
「…急な出張、とか?」
「そんなわけないだろう」
「ですよねー…」
山崎は自分でもそんなわけないと思いながら、一縷の望みに縋りたくて「出張」と言った。
そしてその望みはすぐに打ち消され、絶望へと付き落とされる。
「トシは万事屋と一緒だ。…二人の関係は皆も知ってるだろ?」
「そ、そんな…」
「なんで泊まりなんか許可したんで!?」
そうだそうだと隊士達が沖田を後押しする。近藤は沖田の肩に手を置き、諭すように言った。
「総悟…トシに恋人ができて寂しい気持ちは分かる。俺だってそうだ。だが、アイツにだって
真選組以外で息抜きできる場所があったらいいと思うだろ?俺にお妙さんがいるように…
お妙さんといえば、昨日簪を贈ったら俺の頭に挿してくれてさぁ…これってお揃いが良かったって
ことかなぁ?なあ、どう思う?」
「…挿すんじゃなくて刺されたんでしょう」
「ん?だから挿してくれたんだぞ?」
「…もういいです。風呂、入ってきやす」
「あっ、隊長待って下さいよ…」
肩を落として部屋に向かう沖田の後を、その他の隊士達が追っていった。
* * * * *
「な、なんだァ!?」
翌朝、土方が屯所に戻ると玄関前にずらりと並んだ隊士達。
「「ふくちょ〜〜!!」」
「土方さん、無事だったんですね!」
土方に駆け寄る隊士達を掻き分け、沖田がいち早く土方のもとに進み出た。
「無事って何だよ。俺ァ別に…」
「土方さんが帰って来ないから心配したんでさァ」
「心配?近藤さんから聞いてねェのか?ちゃんと連絡したぞ」
「それは…聞きやした」
「だったら分かるだろ。…もしかしてお前ら全員、俺が心配だとかぬかすつもりか?」
「「当然です!」」
全員一致で土方の身を案じていたのだと言う。土方は大きく溜息を吐いた。
「ハァー…何で外泊くらいでそんな心配されなきゃなんねぇんだよ…」
「…カラダは何ともないんで?」
恐る恐る伺うように沖田が尋ねる。土方の答えを皆、固唾を飲んで待った。
「体?何ともないぞ。ていうか、本当に分かってんのか?俺は昨日、銀さんと泊まっただけで
敵に捕まったとかじゃねーぞ」
その「銀さん」が最大の敵なのだと喉元まで出かかった言葉を飲み込み、沖田は更に尋ねる。
「旦那に、何かされやせんでしたか?」
「何かって何だ?」
「その…土方さんが知らなかったこととか…」
「何のことだ?」
「………」
遠回しに性行為があったのかを聞きたいのだが、遠回し過ぎて土方は質問の意図を理解できていない。
しかし土方に余計な知識を与えたくない沖田はどう言っていいか分からず、押し黙ってしまった。
そこへ山崎が続けた。
「あのっ…局長に外泊願い出した後、旦那と何をしてたんですか?」
「近藤さんに電話した後?えっと、メシ食って…後は色んな話をしたな…」
「は、話って、どんな?」
「別に…テレビの話とか、銀さんが最近受けた面白い依頼の話とか…」
「そっ、それで?話をした後はどうしたんですか?」
「気付いたら空が明るくなってきたんで、慌てて寝た」
「それだけ?えっと…泊まったのって旦那の家ですか?」
「いや」
「じゃあ、宿に泊まったってことですよね?洋室ですか?」
「ああ」
「ちなみに…ベッドはいくつありました?」
「は?」
「ひっ一つですか?それとも…二つですか?」
「…二つ」
昨日銀時と過ごしたのはラブホテルのためベッドは一つである。しかし質問した山崎や周りの隊士達の
表情から「二つ」と言った方がいいのだろうと判断して土方はこのように答えた。
彼らがなぜベッドの数に拘っているのかまでは分かっていないが。
「本当に二つなんですね!?」
「ああ。…ていうかそれ、何の意味があるんだ?」
「い、いえ別に…」
「まあいい…。俺ァまだ眠いから部屋で寝てくる。緊急事態以外で起こすんじゃねーぞ」
「あ…は、はい…」
土方が自室に戻っていくのを隊士達はどこかホッとしたような表情で見送った。
彼らはまだ、土方が近藤に連絡する前に何が行われていたのかを知らない。二人が秘密裏に会う約束を
していたなどとは夢にも思わない彼らは、土方がタバコかマヨネーズを買いに出た先で偶然出会い
そこで泊まりに誘われて近藤に連絡したと思い込んでいるのだった。
* * * * *
「これは旦那…昨夜はお楽しみだったよーで…」
「どうも」
巡廻という名目でかぶき町を訪れた沖田と山崎は、団子屋の店先に座っている銀時を見付けて
声を掛け、銀時を挟むような形で両隣りに腰掛けた。
「それにしても旦那、どういうつもりなんで?」
「何のこと?」
「土方さんのことでさァ…。夜更かしして下らねぇお喋りしてたって…修学旅行ですかィ?
てっきりお二人はお付き合いしてるもんだと思ってやしたが、友達付き合いだったようですねィ」
「何言ってんの?俺と十四郎は恋人同士だからね」
親しげに「十四郎」と呼ぶ銀時にイラつきながら、それを押し殺して沖田は話を続ける。
「恋人同士?一晩一緒にいて話しかしなかったのに?」
「別にいいだろ。…俺達には俺達のペースがあんの」
「…土方さんのペースに合わせてたら一生先に進みませんぜ?」
「それでもいいよ。もともと玉砕覚悟の告白だったし…俺と恋人でいてくれるだけで充分」
沖田達には秘密で先に進んでいる銀時は余裕の笑みを見せる。
そこで、今まで黙っていた山崎が別の角度から銀時を攻めようとする。
「勤務時間が終わっても緊急時の対応なんかもあるんで、あまり副長を連れ回さないで下さい」
「でも、ちゃ〜んと局長の許可はもらってますけど〜?」
「くっ…」
「まあ…十四郎の仕事が忙しいのは理解してるから無理は言わないつもりだよ。これからはもっと
頻繁に上司に相談した方がいいかなぁ?上司も十四郎を頼りにしてるみたいだし…」
フフンとこれまで以上に自信に満ちた笑みを浮かべる銀時を目にして沖田と山崎は
近藤が銀時と土方の味方だと気付いたのだと悟る。
悔しそうに歯噛みする二人を置いて銀時は、自分の分の支払いだけ済ませて帰っていった。
(10.10.25)
教えてシリーズ、レッスン5に行く前に書いておきたかったもので…。次はレッスン5ですが、今回はほのぼの路線…というか、エロなしです。→★