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「銀さん教えてレッスン3」の続きです。
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真選組副長室。その日、部屋に入りきらないほど大勢の隊士が陳情に詰めかけた。
その先頭に立つのは一番隊隊長・沖田総悟。そのすぐ後ろに監察の山崎退も控えている。
彼らの望みはただ一つ。ご褒美のキスの復活。
土方と銀時の逢瀬を阻むのには限界があると悟った彼らは、まず自分達の利権を回復させようと
決めたのだった。代表者である沖田が土方に訴える。
「土方さん、こんなに多くの隊士達が望んでるんですぜィ」
「だが、俺は銀さんと…」
土方の口から最も聞きたくない男の名前が出てきたが、沖田はそれを得意のポーカーフェイスで
何とかやり過ごし、訴えを続ける。
「アンタが旦那と付き合ってんのは知ってますがね…このままだと士気に関わるんでさァ」
「士気に?」
「考えてもみなせェ…今まで与えられてた褒美がなくなったんですぜ?士気が低下するのは当然の
ことでしょう?」
「それもそうか…」
考え込んだ土方を見て、沖田も他の隊士達もあとひと押しだと思った。
恋人ができても土方にとって一番大切なのは真選組―彼らはそう信じていた。
「士気が下がるのは困るな…」
「でしょう?」
「…分かった」
「分かってくれやしたか!」
「近藤さんに頼んでみる」
「へっ?近藤さん?何でそこで近藤さんが出てくるんで?」
「俺は銀さんがいるから無理だ。でも近藤さんなら…お前らだって、近藤さんに褒められた方が
嬉しいだろ?城から帰ってきたら頼んでみるな」
「ま、待って下せェ。アンタ、自分の仕事を近藤さんに押し付ける気ですかィ?」
「そんなつもりじゃ…」
「局長をサポートするはずのアンタが、近藤さんの仕事を増やしてどうするんでィ」
「そうだよなァ…」
「あのっ…一般常識に囚われる必要ないと思います」
土方に迷いが生じている今しかないと山崎も畳み掛けた。
「一般常識?」
「そうです。確かに、恋人がいる人は他の人とキスしないのが一般的です。けれど俺達は
一般の人より大変な、命を懸けた仕事をしてるんです!常識を優先して士気が下がるようなことに
なったら一大事ですよ!死に直結しかねません!」
「そうでさァ。俺達は褒美のために働いてるわけじゃありませんがね、普段からのちょっとした
心がけ次第で気持ちよく働けるなら、その労力は惜しむべきじゃないと俺は思いますねィ」
「総悟…お前、サボることしか考えてないと思ったが、成長したんだな…」
「それもこれも、土方さんのご褒美のおかげでさァ」
沖田は大袈裟に土方を持ち上げた。周りの隊士達も「そうだそうだ」と同意する。
「…お前に褒められると気持ち悪いな」
「何でィ…俺だってたまには素直になりますぜィ」
「悪ィ悪ィ。でも総悟がそこまで考えられるようになってたなんてな…」
「何年この仕事やってると思ってるんでィ」
「そうだな…。よしっ、これからは総悟、お前が褒めてやれ」
「……はい?」
予想だにしなかった土方の提案に、その場は一瞬で静まり返った。土方だけが満足そうに
うんうんと頷いている。
「土方さん…何言ってるんですかィ?」
「お前ももう、上司として一人前だと言ってるんだ。それだけ分かってるならもう大丈夫だろ?」
「……じゃあ俺のことは、土方さんが褒めてくだせェ」
当然のように隊士達から非難の声が上がったが、沖田はそれをひと睨みで黙らせる。
「俺だって…まだまだ褒められたいお年頃でさァ」
「…仕方ねェな」
「本当ですかィ!」
「お前のことは、近藤さんに頼んでやる」
「……へっ?」
「お前一人ならたいした労力じゃねェし、今日のお前のことを話したら近藤さんだって
喜んで褒めてくれると思うぞ」
「…遠慮しときます」
「近藤さんだと恥ずかしいのか?褒められたいと思うのは当然のことだぞ」
「そういうんじゃ…。でも、近藤さんは今のままで充分ですんで…」
「そうか?まあ、近藤さんは俺みたいに口下手じゃねェから態度で示す必要ないか」
「そうでさァ。だから土方さんは…」
「俺も近藤さんみたいに上手く褒められるよう努力するからな」
「……はい」
どうあっても「ご褒美のキス」復活は頭にないようで、沖田は渋々頷くしかなかった。
他の隊士達もがっくりと肩を落として副長室を後にした。
* * * * *
「副長、手強いですね…。さすが真選組の頭脳」
「山崎ィ…土方さん褒めてねェで今後のことを考えろィ。じゃねェとキスするぜ」
「隊長…八つ当たりしないでくださいよ。そんなの、誰も得しないじゃないですか…。」
「うるせィ。マジでキスするぞ」
「すいませーん…」
沖田は時に我が身を犠牲にしてでも嫌がらせをするという、SだかMだか分からない行動に
出ることを知っているので、山崎は早々に謝ることにした。
結局この日、彼らの利権回復はならなかった。
銀さん教えてレッスン4
「銀さん、お待たせ」
「俺も今来たとこだよ、十四郎」
いつものようにふらりと屯所を出た土方は、いつものように一軒のラブホテルで銀時と落ち合う。
部屋に入ると二人掛けのソファに並んで座り、土方は本日あったことを銀時に話して聞かせた。
「へ〜、沖田くんがねェ…」
「ああ…アイツもいつの間にか立派になってたんだな…」
「そうだねェ…」
銀時はもちろん、沖田が成長したのではないことを分かっている。
「それにしてもよくキスしなかったね。…俺は嬉しいけどさ」
「だって、恋人以外としちゃダメなんだろ」
「そうだけど…沖田くんが言うように、命がけの仕事だからさ。人肌が恋しくなる気持ちも
分かるなァって…」
「だから、頑張ってるヤツにはギュッてして褒めてるぞ」
「あ、それはやってんだ…」
「…ダメだったか?」
「……まあ、それくらいはいいと思うよ」
伺うようにこちらを見る土方の頭を銀時はそっと撫でた。
本当は抱き締めるご褒美も許したくはない。しかし、全て禁止にすれば交際の邪魔が今よりも
厳しくなるかもしれない。ただでさえ隠れるようにコソコソと会っている関係である。
これ以上二人の時間を減らさないための妥協点であった。
「なあ銀さん…俺、まだ恋人ってよく分かんねェから、間違ってたら教えてくれよ」
「クスッ…そんな心配しなくても大丈夫だよ」
「そうか?」
「うん。ちゃんと分かってる十四郎にご褒美のチューだ」
「んっ…」
銀時は何度も啄ばむような口付けを落とした。
「んっ、んっ、んっ…ちょっ、銀さん、くすぐってぇよ…」
「…本当にくすぐったいだけ?」
「やんっ!」
銀時の手が着物の裾を割って侵入すると、土方は思わず腰を引いた。
「あれ〜、十四郎はくすぐったいと勃っちゃうの?」
「もう…銀さんのいじわるっ」
「ハハハ…じゃあベッドに行こうか」
「うん」
土方は銀時に肩を抱かれてベッドへ向かった。
(10.09.30)
土方さんは隊士達の想いを知らないので、「キスしてほしい」と「褒めてほしい」が同じだと思っています(笑)。
なので、褒めるのは自分でなくてもいいはずだからと「キス」を拒否してます。それからこの話を書いてる途中で、本誌(第三百二十五訓)の土方さんの発言を読み
テンションがおかしいくらいに上がりました^^ 続きは18禁です。注意書きに飛びます。→★