「道を開けろ、このクソ天パ!」
「あぁ?それが人に物を頼む態度か、クソマヨラー」
「こっちは仕事中だ。邪魔するなら逮捕するぞ」
「ジャンプヒーローが国家権力に屈するかってんだ」
「テメーのどこがヒーローだ!自堕落なヒーローなんて聞いたことねェよ」
「俺は新しいタイプのヒーローなんですぅ」
「それはつまりテメーが自堕落だと認めたってことだな?」
「違ェよ。ちょっと緩めなだけだ!ゆるキャラに対抗して、ゆるヒーロー!どうよ、これ?」
「けっ、冗談は髪だけにしやがれ」
「てんめー、天パなめてっと今に恐ろしい目に…」
「ちょっと銀さん、いい加減にして下さいよ。…土方さん、すみません」
このままでは永遠に続くと思われる二人の言い合いに、一緒にいた新八が止めに入る。
銀時、新八、神楽の万事屋一行は、買い物の途中で巡回中らしい土方、沖田と出会った。
そしてすぐに銀時と土方の小競り合いが始まったのだった。
「新八テメー、国家権力に屈する気か?」
「そういう問題じゃないでしょ。僕らがどけば済むことじゃないですか」
「だからそれが権力に屈することに…」
「そもそも僕ら、買い物に来たんですよ?こんな所に立ち止まってる意味はないじゃないですか」
「おっとそうだった。タイムセールが終わっちまう!」
「あ、ちょっ…」
銀時は一人で勝手に走り出し、神楽もそれに続いた。
新八は「すみません」ともう一度土方達に頭を下げてから二人を追い掛けた。
「チッ…総悟、行くぞ」
土方は舌打ちをして巡回を再開させた。
(ありえねェ。絶っっっ対ェに、ありえねェ。あの憎たらしいクソ天パのどこが…くそっ)
みまん〜友達未満恋人未満〜
「何だか最近やたらと旦那につっかかってやいませんかィ?」
「あぁ?ンなことねーよ」
巡回を終えた土方と沖田は屯所に戻ってきていた。
土方が副長室に向かうと、なぜか沖田も付いてくる。
「くだらねェことしゃべってねーで仕事しろ、仕事」
「まったく…俺達、巡回を終えたばかりですぜィ。そんな慌てて次の仕事なんかしなくても…」
「まあ、少しくれェなら休憩してもいいが…」
「でしょう?つーわけで昼寝させてもらいやす」
「それは休憩しすぎだ。つーか、せめて自分の部屋で休めや!」
愛用のアイマスクをして横になった沖田を、土方は足蹴にして起こす。
沖田は仕方なく体を起こすものの、その場に座ったままで副長室を出る気はないらしい。
「それで?旦那と何かあったんですかィ?」
昼寝を諦めてアイマスクを首までずらした沖田は、土方をからかって遊ぶことにしたようだ。
「けっ、何もねェよ。アイツはいつでもいけ好かねェ野郎だ」
内心の葛藤を悟られまいと、土方は文机の書類に目を通しながら沖田に応える。
「なるほどねィ…好きなコをいじめちまうってアレですか…」
「てめっ!何でそれを…」
「えっ?」
「あ…」
誰にも話していない想いになぜ気付かれたのかと土方が動揺すると、土方と同じくらい驚いた様子の沖田と目が合う。
そこで「好きなコ」と言ったのはただの冗談だったと気付いたが、もう遅い。
沖田はいいことを聞いたとばかりにドSな笑みを浮かべている。
「へぇ〜…土方さんが旦那を、ねィ」
「…笑いたきゃ笑え。俺だってありえねェと思ってんだ」
「ハハハハ…」
「くそっ」
これから暫くはこのネタで遊ばれることになるのかと、土方は心の中で溜息を吐いた。
* * * * *
その頃、万事屋銀ちゃんでは、買い物から戻った三人がゆったりとした時を過ごしていた。
ふと、銀時が思い出したように口を開く。
「そういやァさっきよー、外がキラキラしてなかったか?」
「キラキラですか?」
「何のことネ?」
「だからよー、スーパー行く途中が光り輝いてたっつーか…」
「…いつも通りだったアル」
「僕も気付きませんでしたけど…いい天気だから、何かに太陽が反射してたんじゃないですか?」
「そうかなァ…」
何となく腑に落ちなかったが、新八も神楽も気付かなかったようなのでこの話題はここで終わりになった。
* * * * *
一週間後。
部屋の掃除をするからと新八に万事屋を追い出された二人は、当てもなくぶらぶらと街を歩いていた。
すると、銀時がまたしても例のキラキラ現象に遭遇する。
「あっ、今キラキラしてる!」
「どこネ?」
「ほら、あっちの方。ちょうど税金ドロボー共がいる辺り!」
銀時の視線の先には制服姿の土方と沖田。
神楽は言われるままにそちらを見てみたが、特に変わりはないように見えた。
「…別に普通アルヨ」
「いや、キラキラしてるって!あれっ?なんかアイツらこっち見てねェ?
ちょっ、手ェ繋いでる!ナニ?あの二人ってそういう関係?」
辛うじて判別できるくらいの距離にいるので、こちらの声は聞こえていないだろう。
土方と沖田の関係を気にする銀時を見て、神楽は何となくキラキラの正体が分かった気がした。
一方、土方と沖田は…
「土方さん、旦那がこっち見てやすぜ」
「…だから?」
「せっかくだから挨拶しに行ったらどうです?」
「挨拶って何だよ…。だいたい、そっちは巡回ルートじゃねェ」
「まあまあ」
こんなやりとりがあり、結局土方は沖田に腕を掴まれて銀時(と神楽)の方へ行くことになった。
近付いてくる二人を見ながら神楽が問う。
「銀ちゃん、今もキラキラしてるアルか?」
「いや…さっきの辺りはフツー」
「もしかして、もっと近くがキラキラしてるアルか?」
「おー、そうだよ!…オメーも見えたか?」
「見えないけど…分かったアル」
「何だよそれ…」
「で、どっちアルか?」
「…どっちって何が?」
「マヨラーとドS、どっちがキラキラしてるネ?」
「ん?…言われてみればキラキラしてんのは土方の周りだけだな。
そういえば、こないだスーパー行く前も会ったっけ。…アイツ、光モンでも持ってんのか?」
「…銀ちゃん、鈍感すぎネ」
そんなことを話している間に、土方と沖田は目の前までやって来た。
「これはこれは旦那方…いい天気ですねィ」
「ああ、そうね」
「…ほら土方さんも何か言いなせェ」
「るせェよ。テメーが勝手に巡回ルート外れたんだろーが」
「………」
「な、なんだよ…」
銀時にじっと見つめられて土方は居心地の悪さを感じる。
「…やっぱり光ってる」
「は?」
「オメー、なんか光るモンとか持ってる?」
「は?」
「だから光るモン」
「…か、刀とか?」
「そういうんじゃなくてさー…なんか、オメーの周りがキラキラしてんだよ」
「はぁ?」
意味の分からない銀時の発言に、土方の眉間の皺が深くなる。
神楽が溜息混じりで不毛な会話に加わった。
「…銀ちゃーん、そのキラキラが見えるの銀ちゃんだけアルヨ」
「えっ、マジで?…沖田くんも見えねェの?」
「何のことだかサッパリ」
「ウソだろ…えっ、俺の目がおかしいの?」
「おかしいとは思うけど…こうなってしまったものは仕方ないネ」
「どういうことでィ」
興味津々といった様子で沖田が神楽に尋ねる。神楽は一応銀時に断りを入れることにした。
「銀ちゃん、コイツらに言っていいアルか?」
「別にいいけど…マジでこれ見えてんの、俺だけ?」
「そうアル。マヨラーがキラキラして見えるのなんて銀ちゃんだけネ」
「…おいチャイナ、今の話ウソじゃねェだろうな?」
「疑うんなら銀ちゃんに確認してみるといいネ」
「旦那…本当なんですかィ?」
「ああ。理由は分かんねェけど、コイツとその周りがキラキラして見えるんだよ」
「へぇ〜…いつからですかィ?」
「コイツが原因って気付いたのはさっきだけど…キラキラが見えたのは一週間くらい前だな」
「そうですか…。土方さん、良かったですねィ」
沖田はニヤニヤと笑って土方を見た。
だが土方は相変わらず苦い顔をしたままである。
「…何が良かったんだ?あ?」
「今の話、聞いてたんでしょ?…良かったですねィ」
「だから何が良かったんだって聞いてんだよ!」
「まったく…これだから鈍いお人は困りますぜ」
「あぁ?テメーがワケ分かんねェこと言ってんだろーが」
土方より先に神楽が気付く。
「もしかして、マヨラーもアルか?」
「ああ、そうだぜィ」
「へぇ〜…銀ちゃん、良かったアルな」
「…何が?」
「ハァー…世話の焼ける大人達ネ。銀ちゃん、私先に帰ってるからマヨラーとお茶でもしてくればいいネ」
「はぁ?何で俺がコイツと…」
「つーわけなんで土方さん、後は俺に任せて下せェ」
「あぁ?ナニ言ってやがる。俺は今仕事中で…」
「ちょっと休憩するくらい構わないでしょう?
…今この場であのことバラされたくなかったら言う通りにしなせェ」
「うっ…。くそっ」
沖田の言う「あのこと」とは土方が密かに抱いている銀時への想いのことである。
自分でも認めたくない想いなのに本人にバラされては堪らないと、土方は渋々頷いた。
「じゃ、お二人さん、ごゆっくり〜」
「楽しんでこいヨ〜」
全く事情の飲み込めていない二人を残し、沖田と神楽は去って行った。
(10.05.10)
30,000HITキリリクです。続きはこちら→★