俺の名前は土方十四郎。高校二年生で生徒会長だ。
今、俺は受験のことで悩んでいる。といっても一年後にある俺の受験ではない。現に奮闘中の
先輩の……坂田先輩の受験のことだ。坂田先輩というのは高校の先輩で、前の生徒会長で……
去年の五月から恋人でもある。その坂田先輩は、もうすぐ本命の合格発表なんだ。
付き合い初めのうちは「浪人したら同級生だ」とかふざけてもいたが、先輩の誕生日を最後に
メールもなしで勉強に専念していた。きっと合格しているにちがいない。

だから俺は合格祝いの準備をしておこうと思うのだが……何をしたらいいのか分からない。
お祝いの物をあげるだけなら誕生日と同じだ。けれど今回は先輩の努力が実った記念なんだ。
もっと特別な感じにしたい。うーん……

「なに唸ってるんでィ」
「総悟……」

コイツの名前は沖田総悟。幼なじみで同じクラスで生徒会の副会長でもある。
総悟は坂田先輩と俺の関係を知る、数少ない存在だ。男同士で付き合っているなんて誰にも
話せないし、学年が違う先輩とは校内の接点も殆どないから隠し通せると思っていたのに、
なぜだかコイツにはすぐバレた。

「まっ、アンタの悩みなんて先輩絡みに決まってるか……」

総悟はからかいこそするが、俺達を気持ち悪がったり周囲に触れ回ったりはしない。
ここは一つ、相談してみようか……

「坂田先輩、もうすぐ発表なんだ」
「それで?」
「先輩が受かったら、合格祝いをしたいと思ってるんだけど……」
「ああ。プレゼントを何にするか決めかねてるってことか」
「…………」

何でコイツはこんなに鋭いんだか……

「それで、何かいい案はないか?」
「そんなの、アンタの首にリボンでも巻いて『プレゼントは俺』的な感じに決まってるだろ。
ヌく暇もなく勉強に明け暮れた先輩に最高のプレゼントじゃねーか」
「いや、そういうのじゃなくてもっとちゃんとした……」
「何でィ……」

総悟は面白くなさそうな、それでいてちょっと驚いたような顔をした。

「てっきりまだなのかと思ったら、ヤることヤってたのか……」
「…………」

本当に、何でコイツはこんなに鋭いんだか……

「別にいいだろ……」
「……で、どっちが抱かれたんで?」
「は?なに言ってんだ総悟……男同士で抱かれるも何もねェだろ」
「もしかして、男同士のセックス知らないんで?男同士だって、突っ込んだり突っ込まれたり
できるんだぜィ」
「ど、どうやって……?」
「世話が焼けるねィ……」

総悟が俺に耳打ちをする。
言い忘れていたが、ここは放課後の生徒会室。今は俺と総悟しかいないが、いつ他のメンバーが
来てもおかしくはない。そんな状況で、そっち系の話を堂々とするのは神経の図太い総悟でも
気が引けたのだろう。……なになに?男同士でヤるには…………え?マジで!?

「ててっテキトーなこと言ってんじゃねーよ!そんな所に入るワケねーだろ!」
「まっ、ウソだと思うんなら自分で調べるこった」
「…………」

それから家に帰り、試しにネット検索をかけてみた俺は、総悟の言うことが真実であるどころか
見たくもない更にディープな男同士のそういう画像まで見てしまい、その日はショックで
なかなか寝付けなかった。


*  *  *  *  *


翌朝、授業が始まるまで寝ようと机に伏せていた俺の頭を総悟が小突いた。

「ンだよ……」
「昨日、本屋でいいモン見付けたんで……はい」
「あ?」

本屋のカバーがかかったその本をパラパラと捲り、慌てて閉じた。
それは、男同士のヤり方について書かれた本であった。

「てめっ、これ……」
「二千円」
「金取んのかよ!」
「トーゼン」
「しかも高ェ!」

奥付を開いて確認したところ、本の値段は一二〇〇円だった。

「恥ずかしい思いして買ったんだ。これくらい上乗せしてもらわねェと……」
「…………」
「まあ、アンタがいらないってんなら先輩に持っていくか」
「まっ待て!」

坂田先輩とコイツの接触はできる限り避けたい。どうせ、俺がこの本に書いてあることを
ヤりたがってるとか何とか吹き込むに決まってる。
俺は二千円を払って総悟から本を買った。



試験に出ないお勉強



(古本だったのか……)

家に帰ってよくよく本を見てみたら、この本が古本屋で一〇五円で売っていたことに気付く。
完全にやられた……。こうなったら熟読してやる!

俺は本の表紙を捲った。



本には男同士のヤり方がとても丁寧に―かなり生々しく―書かれていた。
本当に男同士でもできるんだ……。いや、実際ヤってみたわけじゃないから本当にできるか
どうかはまだ分からないけれど、とりあえずヤり方があるってことは分かった。
坂田先輩は知っているんだろうか?知らないとして、教えてあげたらヤりたいと思うだろうか?
もしヤりたいなら合格祝いに、というのもいいかもしれない。
先輩は、抱く方と抱かれる方だったらどっちがいいのかな?
抱かれる方が大変そうだし、俺がそっちの方がいいかな?少し、練習しといた方がいいよな……


俺はベッドに入り、ズボンと下着を膝くらいまで下ろしてナニを握った。

「んっ……」

アソコに入れるためにはローションが必要らしいのだが、当然そんなものは持っていない。
軟膏やクリームでも代用できると書いてあったが、家族共用のものしかない。
唾液は乾きが早くて初心者には向かないらしい……と来たら残るはコレだけ。

ナニを擦って出たもの。

家族が帰ってくる前に済ませなくてはと性急にナニを扱いていった。


「くっ……!!」

ローションの代わりが出て、これからが本番だ。ナニを離してその奥へと手を伸ばす。

「…………」

ヌル付く人差し指の腹をソコに宛ててはみたが、それ以上進む勇気がねェ。
ダメだ……こんなんじゃ先輩となんて夢のまた夢だ。頑張れ十四郎!行くんだ十四郎!

「――っ!」

大きく深呼吸をして人差し指の先を中に入れた。……入った!
意外と平気だ。多少ムズムズする程度で、痛みはない。これなら、もっと奥まで……

人差し指をゆっくりと奥へ進めていく。


(う……)

痛くはねェけど、なんか辛い。突っ込まれてる所も、突っ込んでいる指も、どう言やいいか
分かんねェけど辛い。気分のいいものではない。

(うー……)

それでも何度か出したり入れたりしているうちに、大分マシな感じになってきた。
これくらい馴れれば次に進んでも大丈夫だろう。
俺は中に入れたままの人差し指を曲げ、中にあるという性感帯―前立腺―を探す。

指の腹で色々な所を押してみたがそれらしい所に当たらない。人によってはナニを擦るよりも
気持ちいいらしい前立腺……俺はそこまで感じないかもしれないけれど、開発できるとも書いて
あったし、場所を特定しておくにこしたことはない。何処だ……?

指を曲げたまま手首を回したり、出し入れしたりして、俺は自分の中を隈なく調べていった。


「あっ!」


思わず声が出て身体がビクンとなった。見付けた!ここか……
俺はもう一度そこにそっと触れてみた。


「ハァッ……」


確かに気持ちいい……強く触れるのが怖いくらいに気持ちいい……
先輩のナニがここを通ったら、どんな感じになるんだろう……

俺は一旦指を抜いて、次に二本纏めて入れてみた。


「ハァ、ハァ、ハァッ……」


マジで気持ちいい。一本の時より確り触れて気持ちいい。
気が付くとナニがまた勃っていた。


「んっ、んんっ……」


三本に増やすと流石にキツイ……。でも、これくらい入らなきゃ坂田先輩のナニも入らない。


「ハァ……」


指の曲げ伸ばしで前立腺を押すのが一番気持ちいいけど、指を曲げたまま出し入れして前立腺を
通過するように内側を擦れば先輩とシているような感覚になり、違った気持ち良さが生まれる。


(坂田先輩っ……)


気分はすっかり先輩とシているつもり。
俺の脚の間に先輩がいて、ハァハァと息を荒げながら腰を振る。

「痛っ……」

手を激しく動かし過ぎたせいで入口に引き攣るような痛みを感じる。
けれど今の俺は、それくらいのことで現実に戻ることはできなかった。


(先輩っ、もっと優しく……)


都合よく、乱暴に抱かれている妄想へと切り替わる。


(あっ、ダメ……そんなに激しくしたら……)


相変わらず入口は痛いけれど、前立腺に触れると気持ち良くて他はどうでもいいと思えてしまう。


(あっ、あっ!先輩……イカせてっ!)


空いていた左手が先輩の手となり俺のナニを扱く。


「(あ……もうムリっ!イク!イッちゃう!)……んんっ!!」


今までの人生で感じたことのないような快感に包まれて俺はイッた。
そしてその直後、これまた今までの人生で最大の後悔に見舞われる。


何してんだ俺はァァァァァ!!


キモっ!俺キモっ!!何だよ「もっと優しく」って……女じゃあるまいし!
だいたい、先輩はンなこと言われなくても優しくしてくれるはずだ。
そりゃ、自分のことドSとか言ってる先輩だけど、普段はちょっといじわるな所もあるけど、
俺が本当に嫌がることはしたことないし……ていうか、何で痛いのに止めなかったんだ俺。
おかげで入口がまだヒリヒリしてる。
何が「激しくしたらダメ」だ。テメーでやっておいて……バカみてぇ。

だが前立腺のあの感覚が忘れられなくて、結局それから毎日のようにソコを使って一人でヤった。


色々とアレな点はあるが、とにかく先輩とできそうだというのは分かった。
先輩の受験が終わったら提案してみよう。

(12.02.20)


カップリングに迷ってミニアンケートを実施したところ、次点の倍以上の票数を獲得して圧勝だったため銀土となりました。

……この時点でまだ坂田先輩出てきてませんけど銀土ですよ。土方くんがエッチに積極的なのは、「そういうお年頃」だからってことで^^

後編は坂田先輩視点で書く予定です。暫くお待ち下さいませ。

追記:後編書きました。予定を変更して、坂田先輩視点と土方くん視点が混じってます。18禁ですが直接飛びます。