※「生まれ変わっても…」「生まれ変わったら……」の二人(金時&トシーニョ)が原作設定の世界に行く話です。
前作を読んでいない方のために簡単な設定を載せておきます↓
・二人は別々の店に勤めるナンバーワンホストです。
・金時(本名:坂田銀時、日本人)は元業界最大手(現・業界二位)の店のホスト。
・トシーニョ(本名:土方トシ、米と仏のハーフ、日本に帰化)は業界最大手の店のホスト。
・金時はゲイです。
・トシーニョは女装好きです。
・二人は原作設定から生まれ変わる度に恋に落ちてる設定です。
・カップリングはリバです。
・因みに企画部屋にこの二人の土誕・銀誕話もあります。
・このページは全年齢対象ですが、そのうちリバエロ(18禁)が入る予定です。
それでは、本文へお進みください!↓
木々の葉も色付き始める十一月。ホスト達にとってはその先のクリスマスに向けて凌ぎを削る時。
別々の店でナンバーワンを務める彼ら―金時とトシーニョ―とて例外ではない。だから昨日も
よく飲んだ。着替える間もなく揃ってベッドへ倒れ込むほどに。
生まれ変わるから
「……は?」
先に目覚めたのは金時だった。
肌寒さを感じて目覚めかけたところ、布団の感触がないことに気付いて目を開けた。
隣に恋人はいる……というか、恋人しかいない。シーツも枕もベッドそのものもない。
室内ですらない。自分の生活圏ではとんとお目にかからない天然物の河原、そこに架かる
橋の袂に二人で寝ていたのだ。
昨夜は確かに自宅マンションへ帰った。
二人ともかなり酔ってはいたが、タクシーを使ったので間違いなく帰宅している。
なぜか靴を履いている以外は記憶にある昨夜ベッドへ入ったままの格好。そもそもここは
何処なのか……
「おいっ、土方起きろ!」
言い知れぬ不安に駆られた金時は慌ててトシーニョを揺り起こした。
「何だよぎん…………は?」
無理矢理目覚めさせられたトシーニョもまた、ベッドの感触がないことに驚いて体を起こした。
「何処だよ、ここ」
「知らねぇ……俺もついさっき起きた」
「……拉致られたのか?」
「けど、靴履いてるし……」
それに、拘束もされていないし自分達を見張る者もいない。悪意をもって連れて来られたとは
考えにくかった。
「上がってみるか?」
「……それしかねぇよな」
トシーニョが土手の上を指すと金時も同意した。
因みにこの二人、本名は銀時と土方で互いにそう呼び合っているのだが、こちらの文では
諸事情により金時とトシーニョで通させていただく。
そんなわけで土手を上がった金時とトシーニョが目にしたのは、木造平屋建てが連なる町並み。
「おいおい、どんだけ田舎まで来たんだよ。金持ってねーぞ、俺。警察行って借りられるかなァ……」
「……金あっても、帰れねぇかもな」
「あ?」
折角こちらが元気付けようと戯けてみせたのに、勝手にシリアスパートに入るなよ、本当に
帰れない感じになるではないか……そんな文句はトシーニョの視線の先を捉えた瞬間に消し飛んだ。
「あれは……」
古びたこの町並みには似つかわしくない巨大な建造物。塔にも超高層ビルにも見えるそれは、
金時の記憶の片隅に存在していた。遥か昔、金時が誕生する「以前の」記憶。
「ターミナル……」
呆然とその建造物の名を口にした金時。そうだ、ターミナルという名だったと「思い出した」
トシーニョは無言で金時の手を取った。あれが本物のターミナルであるならば、ここは自分達が
存在するはずのない世界。過去の、前世の自分達が生きた世界。
トシーニョの手を握り返して金時が問う。
「道、分かる?」
「いや……」
前世の記憶があるとはいえ、金時もトシーニョも「今」を生きているのだ。
生まれる前のことを逐一覚えているわけではない。
「とりあえず、ここが何処なのか調べようぜ」
「そうだな」
とは言っても先程からすれ違う人もいない。身につけていた腕時計は朝の六時前を指しており、
それが正しいことを裏付けるように空は白み始めたばかりだった。
人が沢山いそうという理由で二人は差し当たり目標をターミナルに据えて歩き出す。
程なくして犬を連れた人に出会い、ここが「江戸の」かぶき町だと知った。
念のため、その後も数人に同じことを聞いてみたがやはり答えも同じ。
「江戸、か……」
「江戸、だったな……」
予想していたこととはいえ改めて現実を突き付けられて二人の足取りは重くなる。
これから自分達にできることは……
「よしっ、『土方』に会いに行こう!……警察だし」
「いや……」
気を取り直して金時がした提案にはトシーニョが待ったをかけた。
「今の俺達が警察はマズイだろ。身元不明の不審人物みたいなもんなんだからよ……」
「それもそうだな……」
そうなると二人が目指すのは一つだけ。また次にすれ違った人に場所を聞き、二人は早朝の
町を歩いていった。
開襟シャツに薄手のジャケットだけでは少し心もとないひんやりとした空気。夜型の彼らに
とってこの時間はむしろ一日の終わりに近い時間帯で積極的に活動する時間帯ではなく、
見慣れぬ景色と相俟って普段の生活とかけ離れ過ぎていた。
どこまでも続く知らない世界。知れば知るほど知らないことが分かっていく。
けれど時間が経つにつれ、この状況を楽しもうという気も起こってくるから不思議だ。
前向きになっていないと不安に押し潰されそうだから、というのもある。
だがここは、かつての自分達が生きた世界。「何となく」としか説明のしようがないけれど、
それが確信できるから、分からないことばかりでもないという気になれた。
* * * * *
一時間ほど歩いただろうか、「万事屋銀ちゃん」と掲げられた看板を見上げ、二人は達成感を
覚えていた。遂に「知っている人」に会えるのだ。
「じゃあ行こうぜ」
「……こんな朝早く迷惑じゃないか?」
「大丈夫大丈夫……万事屋銀ちゃんは困った人の味方、江戸のヒーローなんだから」
トシーニョの中にはそのような記憶はない。しかし本人(?)が言うのなら大丈夫なのだろうと
二人揃って階段を上がった。
「はーい……えっ!」
出迎えたのは袴姿の眼鏡をかけた少年。金時の顔を見た瞬間、少年は驚きのあまり言葉を失った。
「ど、どうも……実は僕ら、ちょっと困ってまして、朝早くで申し訳ないんですけど……」
「あっああはい。依頼ですね。……すみません、今、事務所の準備をしますので少々こちらで
お待ち下さい」
少年に促され二人は玄関の中で待つことに。廊下の奥の部屋からは賑やかな声が聞こえてくる。
「あ?依頼ぃ?まだ朝メシ食ってんだろーが」
「でも久しぶりの依頼ですよ。しかも、金髪の銀さんっぽい人から」
「超合金ちゃんアルか?」
「違うと思うよ。……天パみたいだし。あともう一人、男の人も一緒で……」
「金髪美女じゃねーならメシ食い終わるまで待たせとけ」
「なんか困ってるみたいだし、早く話を聞いてあげた方が……」
「じゃあお前が聞いとけ」
「それでもいいですから事務所を空けて下さい!」
「私、金髪の銀ちゃん見たいアル。ご飯の続きは後にするネ」
「あっズリぃぞ。二対一じゃ俺が悪いみたいになるだろ」
「じゃあ銀ちゃんもご飯やめればいいネ」
「……わーったよ!」
やはり江戸のヒーローなどではないようだとトシーニョは思った。
思っただけで口にしなかったのは、隣の男が非常に居た堪れない表情であったから。
それから間もなく少年が二人を呼びに来て、事務所へ通した。
ソファの片方に並んで座り、その向かいに万事屋メンバー三人が座る。事業主の銀時から始め
神楽、新八の順で自己紹介。自分の知る同名の人物よりも随分若いのにと感心しつつ金時は、
少し考えてから「坂田金時」と源氏名を名乗った。それに倣いトシーニョも源氏名を。
「それで、今日はどのようなご用件で?」
「実は、朝起きたらこの町にいまして……」
金時は自分達の身の上に起こったことをそのまま話した。ただし、過去の記憶云々は語らず
そのため自分の住所等は「思い出せない」ということにして。
「……記憶喪失の迷子か?」
「何か、身元の分かるような所持品はないんですか?」
「これくらいしか……」
新八の問いに金時はポケットから名刺を取り出した。
そこに書かれているのはホストクラブの名前と源氏名のみ。
「ホストなんですね」
「ああ、はい。……ただ、その店が何処にあるかは分からないのですが」
「もしかして、トシーニョさんも同じお店で?」
「違う店……だと思います。多分」
「分かったアル!」
「えっ、神楽ちゃんこのお店知ってるの?」
「マヨラーネ!こっちは金髪のマヨラー警官ネ!」
トシーニョを指差し、神楽は満足気に頷いた。言われてみれば確かに、と新八は思う。
マヨラー警官こと土方といえば「黒」のイメージが強くて、鮮やかな色彩を纏うトシーニョと
俄かに結び付けがたく言われるまで気付かなかった。しかし、
「神楽てめっ、余計なこと言うんじゃねーよ!気付かないフリしてたのが台無しじゃねーか。
あ〜、もうコイツがヤニ臭ぇマヨラー野郎に見えて話聞く気失せたー」
背凭れに両腕を預け、あからさまに態度を変えた銀時。
恋人と同じ顔で自己を否定されるのは堪えるが、彼らは「まだ」なのだということも判った。
「ちょっと銀さん、お客様に失礼ですよ!」
「客、つってもなぁ……お宅ら、金持ってんの?」
「いや……」
「じゃあ客じゃねェな」
「そんな……行く当てもないのに可哀想じゃないですか」
「……金があればいいんだな?」
「あん?」
トシーニョに横柄な態度を取る銀時へ、金時は挑戦的な眼差しを向ける。
「金を払えば俺らに協力するんだな?」
「まあなー」
「待ってろよ……トシーニョに土下座させてやる!」
「銀さんの土下座は高いよ〜」
「行くぞ!」
「おいぎ……金時、落ち着けって」
「あっちょっと待って下さい!」
怒って玄関へ向かう金時とその後を追うトシーニョ。心配になった新八もまた彼らを追った。
「くっそ、ムカつくあの天パ野郎!」
ガンガンと乱暴に階段を下りた金時は地面の土を一蹴り。その後ろから溜め息混じりの
トシーニョが続いた。
「お前も天パだろ……」
「何だよ!お前はあっちの味方か!?あんな酷いこと言われて!」
「あれは多分……」
「すいません!」
遅れて下りてきた新八に、トシーニョは話を止める。
「銀さんが大変失礼なことを……」
「本当にな!」
「金時っ!……気にしてねーよ。大丈夫だ」
「あの……もし良かったらウチに来ませんか?起きたらこの町にってことは、食事もまだ
なんですよね?」
「…………悪ぃな」
施しを受けるようで気が引けたが、この時代の通貨を持たぬ身では仕方がない。
二人は新八の厚意に甘えさせてもらうことにした。
* * * * *
「では、ご飯の準備をしてきますね」
「何か手伝おうか?」
「大丈夫ですよ。どうぞ寛いでいてください」
「どうも……」
志村家の和室。新八が襖を閉めると二人は息を吐いた。
「すげぇ家だな……」
「ああ」
それなりに贅沢な暮らしをしていた自覚のある売れっ子ホスト二人。けれどこの日本家屋の
風格はどうだ。古びた様に由緒や伝統を感じられて、他所者が気軽に足を踏み入れてよい場所
ではない気がした。
「実は金持ちなのかな?」
「……だったら自分でメシの支度なんてしないだろ」
「そっか……。じゃあ生活のため仕方なくあの天パ野郎と働いてんだな。可哀相に……」
「……あっちの銀時のあの態度、あれは多分、愛情の裏返しだぞ」
「へっ?」
「お前とそっくりだからな。貌見てりゃだいたい分かる」
「そういうもんか?」
「ああ。片思い……いや、もしかしたら好きだってこともまだ認めらんねぇのかもな。
それなのに、自分と惚れた相手のそっくりさんがセットで現れたから……」
「別に羨ましくねェぞってことでアレか?ハッ……ガキだな」
「仕方ねェよ。アイツは『初めて』なんだから」
「そうだよな……」
実年齢は幾つか下のようだが、経験は自分達の方が先んじている。多少の無礼は大目に見て
やろうではないか。だが、
「土下座はさせてやる」
これだけは譲れないらしい。
「まだ言ってんのかよ……。金もないのにどうすんだ?」
「稼げばいいじゃねーか」
「何処で?」
「ホストクラブ」
「は?」
「新八くんはホスト知ってただろ?ってことは何処かにホストクラブがあるんだよ」
「そういえば……」
「な?トシーニョと金さんが組めば一晩でウハウハよ」
「そう上手くいくか?」
だがこのまま志村家で世話になり続けるわけにもいかない。
暫くして食事を運んできてくれた新八にホストクラブの場所を聞くと、知り合いの店を
紹介してもらえることになった。
* * * * *
その日の午後、二人は新八の案内で開店前のホストクラブ高天原へ来ていた。
「記憶喪失、ですか……?」
新八の説明に狂四郎はいかがなものかと考え込む。
「けど、ホストやってたのは覚えてるんです。お願いします!」
「お願いします」
空かさず頭を下げた金時に続き、トシーニョも頭を下げた。
「まぁいいでしょう。この世界で生きる者は、過去と決別した者も少なくはない。
それと似たようなものですね。……お世話になってる万事屋さんのご紹介ですし」
「「ありがとうございます!」」
こうして二人は高天原の臨時ホストとなった。
(12.11.15)
毎度毎度トリップの仕方がワンパターンですみません^^; 原作の二人と(この時点で土方さんまだですが)前世の記憶を持つ二人を会わせたくて、
トリップ方法考える余裕はありませんでした。そして今更気付いたのですが、金&トシは万事屋&副長から何度か生まれ変わってる設定で……って、
江戸後期から現代まで150年くらいだからそんなに生まれ変われないですね^^; 「生まれ変わっても…」で書いたように転生したとなると、
一人ひとりがかなり短命になってしまう……。あっ、でも、原作の舞台は架空の江戸時代だから、本来の江戸時代より昔でもいいのか!
もしくは金&トシのいる世界が25世紀くらいとか(笑)。そんなわけで、あまり深く考えずにお読みくださいませ。
続きは数日後に^^
追記:続きはこちら→★