体の受けと心の受け
俺と真選組副長・土方十四郎くんはお付き合いをしている。
ケンカ友達みたいな関係から始まった俺達だけど、実際にお付き合いを始めたらケンカが少なくなった。
ちょっとした言い合いみたいなのはあるが、それだってこうなる前に比べたら減っている。
理由は単純だ。土方が変わったから。…変わったというより、元々こういうヤツだったんだよな。
そう、アイツは身内にゃ優しいんだ。
恋人になったことで土方は俺に妙な言いがかりをつけたり、突っかかってきたりすることがなくなった。
ちょっと寂しい気もしたが、やっぱり恋人に優しくされるのは嬉しかった。
なのに俺は、そんな土方の優しさに付け込むようなことをやっちまった。
「一年間は俺が上ね」
「…分かった」
初めての夜、上が良いと言った土方に対し、同じく上が良かった俺は交代でヤることを提案した。
しかも一年交代だ。
賢明な読者諸君ならお気付きかもしれないが、俺はハナっから下になる気なんてなかった。
一年も経てば約束なんて忘れると思ったし、一年も下になっていれば下の方が良くなるなんて軽く考えていた。
実際のところ俺は、そんな約束一ヶ月も経たないうちに忘れ、土方を抱くことに夢中になっていた。
土方だって抱かれることに満足していたと思う。土方から誘ってくれることも一度や二度じゃなかったんだから。
俺はこのままエロカワイイ土方くんと楽しいお付き合いを続けていくつもりだった。
* * * * *
「よー、待ったァ?」
「いや…」
今日は土方とデートの日。何故だか一日有給を取ってくれたから、公園で待ち合わせて
映画を観てメシ食って、いつもより早めに宿へ入った。
時間はたっぷりあるから入ってすぐにヤらなくてもいいと思い、シャワーを済ませた俺達はテキトーに酒を飲む。
そこで土方に今日のデートのワケを聞いてみた。
「なあ、何で今日は有給取ってくれたの?」
「何でって…俺達が付き合ってちょうど一年だから」
「そうだったっけ?土方って意外とオトメチックなトコあるよなァ」
「誰がオトメだ、誰が」
ちょうど一年という単語に些か引っかかるものを感じたが
その時の俺は土方が二人の記念日を覚えてくれたことに浮かれていた。
「じゃあ、二年目もよろしくってことで…エッチしようか?」
「ああ」
俺が土方の肩を抱いてベッドに向かう。ベッドに着いてからは土方からキスをしてくれた。
上に乗られたが「今日は騎乗位か」くらいにしか思っていなかった。
土方に脱がされることも今までにあったから何の違和感もなかった。
乳首を弄りだした辺りで「あれっ?」と思った。そこを触られたことはなかったから。
…土方のはいつも触ってるけどね。
でも、乳首も結構気持ち良かったから土方の好きにさせてた。そしたら俺のチ○コを咥えてくれた。
ここで漸くおかしいと気付いた。いや、口でしてもらったことは何度もあるけど
俺がイクっつっても離してくれなかったのは初めてだったんだよ。
俺がイッちまったら突っ込めねェじゃねーか…。
「ちょっ、ひじかた、イクから……っああ!!」
あー、イッちまった…。
土方は自分の指を咥えて、今しがた俺が口内に出したモンで指をヌルヌルにして、その指を俺に…
「ひひひ土方!?一体何を…」
「何って…コレで慣らそうかと。…ローションの方が良かったか?」
「ななな慣らすって…えっ、何でそんな当たり前の顔で…えっ?俺、いつ下になったの?」
「…一年経ったから交代すんじゃねェのか?」
「へっ?………ああー!!」
俺はやっとのことで一年前の自分の発言を思い出した。
「自分で言っといて忘れてたのかよ…。まあいい。思い出したんなら続きヤるぞ」
「ちょっ、ちょっと待って!えっと、えーっと…」
どどどどーしよー!土方はずっと覚えてたんだ!
ずっと覚えてて、きっとこの日を楽しみに一年間「下」で耐えてきたんだ!
今更交代したくないなんて言えねェ。言ったら土方に嘘を吐いたことになるし
一年間耐えてきた土方の努力が…でも、下は嫌だァァァ!
「あの、その、えっと…」
やべェ、土方が睨んでる!怖ェなオイ。さすがは鬼の副長…じゃなくてェ!
ていうか、土方はいつまで俺の上に乗っかってんだろ?…いつまでって俺と繋がるまでだよな。
あー…見下ろされてると余計に怖ェよ。
それまで黙って俺の言葉を待っていた土方だったが、痺れを切らしたのか遂に口を開く。
「銀時お前、もしかして…下が嫌なのか?」
「えっ!」
ババババレた!?あー、でもここで「うん」なんて言っちまったら土方ガッカリするし
だからといって「そんなことねェ」とも言えねェ!あー、どうすればいいんだァァァ!!
「あの…えっと、嫌っつーか、その…」
「…嫌なんだな?」
「…はい」
上から睨まれて(いたように感じた)俺は白状した。
土方はハァっと溜息を吐いて俺の上から降り、俺の隣にゴロリと横になった。
俺は身体を起こし、さっきまでとは逆に土方を見下ろす格好になる。
「あの…土方、ごめん。その…」
「…最初からずっとそうだったのか?」
「えっと、その…」
「ずっと上が良かったんだな?」
「…はい」
「ったく…それならそう言えよな」
「あの…ごめん」
「そういうことなら…ヤれ」
「へっ?」
土方今、何つった?やれ?何を?ナニを?でも、でも…
「あの、俺が上で、いいの?」
「…オメーは上がいいんだろ?」
「そうだけど…でも土方だって、上になるの楽しみにしてたんじゃ…」
「楽しみっつーか、オメーが一年交代だっつったからその通りにしたまでだ。
元々どっちでもいいんだよ、俺ァ」
「えーっ!!だって最初の時、オメーだって上がいいって…」
「あれは俺を下って決めつけて、組み敷かれるのが似合うとかオメーが言うからつい…」
「へっ?俺、そんなコト言ったっけ?」
俺はちょうど一年前のことを思い起こしてみた。ちなみに俺達、付き合ったその日に初エッチです。
あの日は土方に好きだって言われて、俺もって応えてお付き合いってなって、飲みに行ってそれから…
* * * * *
「あのよー銀時…俺、明日休みなんだが…」
「えっ、マジで?じゃあこのままラブホにでも泊まってくか?」
「お前が良ければ」
「いいに決まってんだろ。…あっ、土方が下でいいよな?オメー組み敷かれるの似合いそうだし…」
「…俺は上がいい」
「えー、俺だって上が…あっ、じゃあ交代でヤらねェ?」
「ああ」
「じゃあ、一年間は俺が上ね」
「…分かった」
* * * * *
そうだった…言ったよ俺。いつもの癖で土方のことからかっちまったよ。
あー、何だよ…俺が素直に「上にさせて」って言えば土方は下で良かったのかよー。
「…思い出したかよ」
「あ、はい。すみません。俺が悪かったデス」
「オメーはもうちょい自分の発言に責任持てや」
「土方くんの言うとーりです。本当にすみません」
俺は深々と頭を下げた。マジで全面的に俺が悪いからな。
真面目な土方は俺が本当に一年交代を望んでると思ってずっとそのつもりで…あれっ?
やっぱ、土方も上やりてェんじゃねーのか?
「あのさァ、土方は本当に下でいいの?」
「オメーは下になんのが嫌なんだろ?」
「そーだけど、でも…」
「俺はオメーとヤれれば上でも下でも構わねェよ」
「えっ!?」
「あっ、別にヤりてェから付き合ってるワケじゃねーぞ。オメーがヤりたくねェならヤらなくたっていいんだ。
だが、せっかく惚れた相手と付き合ってんだ。ヤれるもんならヤりてェと思うのは当然だろ?」
「あ、うん」
「そんで、上でも下でもオメーとヤるには違いねェんだから、俺ァどっちでもいいんだ」
「そう、なんだ…」
何だか土方がめちゃくちゃカッコよく見えてきた。…いや、元からカッコイイヤツだけど。
今回のことで見た目以上に内面がカッコイイんだって思った。
テキトーに言い包めようとしてた俺が情けねェよ。
「…で、今日はもうヤんねェのか?」
「あっヤります。というか、ヤらせてください!」
俺は土方に覆い被さってぎゅうぎゅう抱き締めた。
土方は「重い」って言ったけど、土方が俺とヤりたいって思ってくれることが嬉しくて暫く抱き付いてた。
その夜はとにかく優しく抱こうと心掛けた。
ちょっとした羞恥プレイや言葉責めなんかも極力抑えてみた。
…それでも無意識に土方を辱めちまったけど。「感じてるんだね」くらいでも真っ赤になるんだもんよ。
でも、できる限り土方が気持ちよくなれるように、土方が喜ぶように頑張った。
…頑張ったら、土方のナカがなんかもう、凄いことになった。
今まで味わったことがないくらいに、きゅるきゅる絡みついてきて、気持ちいいなんてモンじゃなかった。
到底我慢なんかできなくて、土方が嫌だって言っても、待てって言っても止められなかった。
あれは反則だ…。あんなトコに入れて激しくしないなんて無理だよ…。
結局その日も土方が気絶するまでヤりまくった。
そのまま寝ちまった土方を見ていたら、何となく抱き付きたい衝動に駆られた。
そっと土方の胸に自分の頭を乗せてみたら、寝てるはずの土方の腕が回ってきて驚いた。
俺がごそごそやってたから起きちまったらしい。その日はそのまま土方の腕に抱き締められて眠った。
何だかすげェ恥ずかしかったけど、不思議と安心感みたいなのもあった。
それ以来、俺が土方を抱いた後は俺が土方に抱かれて眠ることになった。
* * * * *
あの日から土方を見る目が変わった。
惚れ直したって言った方がいいのかな…土方を見るとドキドキする。
ドキドキするんだけど、土方にぎゅってしてほしい。
土方は日に日にカッコよくなってる。…俺にそう見えてるだけかもしんねェけど。
この前なんか新聞に土方(とその他真選組の連中)の写真が載ってて、つい見惚れちまった。
神楽に「いつまでマヨの記事見てるネ」って言われるまでずっと見てた。
こうなるとあれだ。俺が土方を抱いてることに若干…いや、かなり違和感を覚えてくる。
だって、あんなにカッコよくて包容力もあって抱き締められると安心できる土方に
俺が突っ込んでるんだぜ?そりゃあ土方のナカは最高に気持ちいいし、土方だって俺に突っ込まれて
気持ち良さそうにしてるけど…でもなんか、本当は逆なんじゃないかって気がしてくる。
だからといって、土方に突っ込まれたくて俺の身体が疼くとかそんなんはねェ。
今のままでも充分に満足してる。
ただ…土方のモノが俺の中に入るのってどんな感じなんだろう、とかは思ってる。
ちょっとだけ、とりあえず試しに一回くらいはヤってみてもいいかも、とかも思ってる。
だが、そのことをどうやって土方に伝えたらいいのか分からねェ。
一人で考えていても埒が明かないので、とりあえず手近なところで新八と神楽に相談してみることにした。
* * * * *
「えー、今日は折り入ってお前らに相談がありまーす」
朝食後、唐突にそう切り出した銀時に、新八と神楽は片付けの手を止めてイスに座りなおした。
「何ですか、改まって」
「実は土方との関係についてなんだけど…」
「ケンカでもしたアルか?」
「あ、いや、そういうことじゃなくて…夜のことなんだけどね」
「…そういうことを僕らに相談しないでください」
立ちあがって片付けを再開しようとする新八を銀時が引き止める。
「それは分かってんだけど聞いて!銀さん困ってんのよ」
「…分かりました」
本当に困っている様子の銀時を見て、新八は話だけでも聞いてみようという気になった。
「オメーらも知ってるように、俺と土方が付き合って一年ちょっと経った」
「もうそんなになるアルか」
「付き合い始めた時はすぐにケンカ別れするんじゃないかって心配してましたけど、良かったですね」
「おう、まあな。…じゃなくて!その一年以上続いてきた夜の関係について悩んでるんだ」
「マンネリならコスプレでもおもちゃでも好きにすればいいネ」
「神楽ちゃん!もうちょっとオブラートに包んで!」
「いや、違うから。夜っつってもそういうんじゃないから」
「じゃあ何アルか?」
「ハッキリとは言ってなかったけど…初めからずっと銀さんが突っ込む方でした」
「何となく分かってたネ」
「あの…あまり生々しい話はその…」
「分かってる。…で、ここからが重要なんだけどよ、その、最近、逆もいいかなぁって思ってんだ」
「銀ちゃん、マヨラーに突っ込まれたいアルか?」
「だからそういう生々しい話は…。そんなことなら土方さんに直接言えばいいじゃないですか」
「きっとマヨラーはこの一年で突っ込まれないとダメな身体に変えられてしまったアル。
今更銀ちゃんが突っ込まれたくなっても、マヨラーは突っ込めない身体になってしまったネ」
「いや、そんなことはないと思う。土方だってやろうと思えばできる、はず」
「じゃあ何の問題もないアル」
「そうですね。じゃあこの話はこれで終わりにしましょう」
「あっ、ちょっ…」
銀時はまだ何か言いたそうであったが、新八も神楽も席を立ってしまったので
結局この話はこれで終わりになってしまった。
(10.03.14)
肉体的には銀土寄りで、精神的には土銀寄りのリバが書きたかったんです。続きも18禁です。直接飛びます→★