「おい、いいモン手に入れたぜィ」

そう言って沖田が懐から取り出したのは一枚のDVD。それを他の三人―山崎、新八、神楽が見つめる。

「DVDですか?」
「これを見ればあの二人もヤりたくなること間違いなしだぜィ」
「隊長…もしかしてAVですか?」
「まあそんなところだな」
「そんなモノ、あの二人が見るわけないネ」
「んなもん、強制的に見させるに決まってるだろィ」
「じゃあ隊長も一緒に?それじゃあ例えその気になったとしても…」
「ちゃんと二人きりの時に見てもらうぜ。いい考えがある」
「二人で見たとしても、そういう気分になるでしょうか?銀さん、以前は長谷川さんとかからそういうのを
借りてたこともあるみたいですけど、土方さんとお付き合いするようになってからは全く…」
「これはそこら辺のAVとはわけが違うんだ」
「まさか、裏ビデオとかいうやつアルか?」
「ちょっと違うな。こいつはな……」



純情な二人と純情でない二人



「いらっしゃい」
「おう」

非番の前夜、土方はいつものように万事屋を訪れた。
既に万事屋には銀時しかおらず、二人は手を繋いで玄関から居間まで進み、そのまま並んでソファに座った。


「お前ん家、DVD見られるよな?」
「うん。…何か見たいのあるの?」
「これなんだが…」

土方は一枚のDVDを取り出した。

「何?映画?」
「俺も内容は知らねェんだが、山崎がお前と一緒に見ろって勧めてきたんだ」

もちろんこれは沖田が持っていたDVDである。
沖田が渡せば土方が警戒すると思い、山崎から土方の手に渡ったのだった。
作戦は見事に成功したようで、二人ともただのDVDだと信じきっている。

「ふぅん…じゃあ見てみるか?」
「ああ」

一旦手を離して、銀時はDVDをセットする。
そしてソファに戻るとまた手を繋いで土方の隣に腰を下ろした。


「「……っ」」

映像が始まった途端、二人は石のように固まって動かなくなる。
画面には全裸で互いのモノを咥えている男二人。しかもその二人には見覚えがあった。

「なに、これ…」
「俺と…坂、田?」

ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら一物をしゃぶっている男達は、どう見ても自分達にしか見えない。
しかも男達が抱き合っている場所は、今まさに二人がいる万事屋のように見える。

「ここ…ウチだよな?」
「た、多分…」
「えっと…これをジミーが?」
「あ、ああ…」

話している間にも画面の中の「銀時」は「土方」の後孔に指を挿入する。

「うあっ!てめっ!舌技勝負じゃなかったのかよっ」
「オメーだって揉んだり扱いたりする時、手も使ってんじゃん」
「そうかよっ!」
「あっ…」

今度は「土方」も「銀時」の後孔に指を挿入し、二人は互いの内部を刺激する。

「ふぅっ…んぐぅ…」
「んんっ…むぅ…」

「とっとりあえず消そう」
「そ、そうだな!」

このDVDが何なのかを考えるよりも前に、目の毒である画面を消そうと土方が立ち上がった。
その時、土方の携帯電話が鳴った。ディスプレイには「沖田総悟」の文字。
嫌な予感がして、土方は通話ボタンを押した。

「はい」
『おや、随分と艶のある声が聞こえますねィ。お楽しみ中でしたか。これは失礼』
「違ェよ!このDVD、テメーの差し金だな!?」
『よく分かりましたねィ』
「ったく、山崎経由して渡すなんざテメーも頭が働くようになったもんだな…」
『日頃世話になってる旦那と土方さんに楽しんでいただこうと思いやして』
「どこが楽しいんだよ!つーかなんだこの映像!合成か!?」
『違いますぜ。そこにいるのは間違いなくアンタと旦那でさァ』
「はぁ!?俺達こんなことした覚えは…」
『パラレルワールドってやつでさァ』
「パラレル…はぁ!?」
『こんなに仲の良い二人がいる世界もあるんですぜ?まあとにかく最後まで楽しんで見てくだせェ』
「っざけんな!今すぐ消すからな!」
『…爆発しますぜ?』
「あぁ?」
『その映像を途中で止めたら爆発する仕組みになってます』
「んなわけ…」
『嘘だと思うなら止めてみなせェ』
「くっ…」
『じゃあ、そういうことで。旦那によろしく〜』
「あっ、ちょっ…」

言いたいことだけ言うと沖田は一方的に電話を切ってしまった。

「あの…沖田くん、何だって?」
「DVDを途中で止めたら爆発するって」
「なにそれ?」
「でまかせだとは思うが…」
「でも沖田くんのことだから完全にないとは言い切れないよね…」
「ああ…」
「じゃあ、終わるまでこのまま?」
「あ、ああ…」

「うぁあ!」
「あっ…すげっ!」
「ぎん、とき…はあっ!」
「あっ…ああっ!」

「「……っ!」」

二人にとって想像を絶する光景が画面の中で繰り広げられていた。
画面の二人は一本の張り型で繋がり、先端から白濁液を飛ばしながら互いに腰を揺らしている。
あまりの衝撃的な映像に、二人は何故だか目を逸らしたくても逸らせなかった。
どちらからともなく繋いでいた手を離し、徐々に距離をとっていく。


*  *  *  *  *


万事屋の下、スナックお登勢では沖田、山崎、新八、神楽の四人が上を気にしながら食事をしていた。

「そろそろ見終わった頃かねィ」
「副長達、ちゃんと見てますかね」
「そりゃあ見てるだろ。何たって自分達がヤってんだ。…もし途中で止めてたらバズーカぶっ放してやるぜ」
「ウチを壊すなヨ。私、ちょっと様子を見てくるアル」
「僕も行くよ、神楽ちゃん」
「山崎、俺達も行くぜィ」
「は、はい」

四人は出来る限り足音を立てないようそっと階段を上がり、玄関の扉を開けて居間の扉の外まで来た。

「…静かですね」
「もう寝ちゃったんじゃないかな?」

新八と山崎が話しているうちに沖田がそっと居間の扉を開けた。

「…上手くいったみてェだな」

そこには、ソファの上に折り重なるようにして寝ている二人の姿があった。
四人はそっと二人に近付いていく。すると山崎が二人の異変に気付く。

「隊長、違います。これ気絶してるんですよ!」
「はぁ!?…エロDVDで気絶って、いつの時代のオトメでィ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ?副長!しっかりしてください!」

山崎が土方の元に駆け寄って体を起こし、揺り動かしたり頬を軽く叩いたりして目を覚まさせようとする。
隣では新八が銀時に同じことをしていた。

「銀さん!大丈夫ですか!?」
「副長!副長!」
「んっ……や、山崎?」
「良かった…気が付いたんですね」
「オメーがいるってことは…屯所か?そうか…あれは夢だったのか。恐ろしい夢だったぜ…」
「あ、あの、副長?」

一方、隣では銀時も目を覚ましていた。

「あれっ?新八がいるってことは…あれは夢か?いやー良かった、良かった。
何せ俺と土方が…あっ、いや、これ以上は恐ろしくて口に出せん」
「銀さん、あの…」
「そういやぁ今、何時だ?そろそろ土方が来る時間か?」
「いや、あの、もう来てますけど…」
「副長、ここは万事屋ですけど…」
「「え゛………」」

二人はゆっくりと振り向いて隣に座る恋人の顔を確認する。そして…

「「ぎゃあああああ!!」」

銀時は新八に、土方は山崎にしがみついた。

「ちょっと銀さん、どうしたんですか!?」
「副長も、いったいどうしちゃったんですか?」
「「む、むり…あんなの、できない」」

二人はガタガタと震えている。自分達と同じ姿の二人が画面の中で繰り広げた濃厚プレイの衝撃で
自分も同じことをされるのではないかと怯えているようだった。
それを見て、神楽が沖田に詰め寄る。

「おいお前、進展するどころか別れの危機アル!どうしてくれるネ!」
「何でィ…オメーらだって賛成したじゃねェか」
「こんなになるとは思わなかったネ!」
「俺だって驚いてらァ。まさかここまでとはねィ」

新八と山崎は必死に二人を宥めていた。

「副長、安心して下さい。あそこにいるのは副長がよーく知ってる優しい旦那ですよ」
「銀さんも落ち着いて下さい。あそこにいる土方さんは、銀さんの嫌がることなんかしませんよ」
「「ほっ本当か?」」

二人は恐る恐る顔を上げて互いの顔を見る。
だが、まだ怖がっているようで新八と山崎にしがみついた手は離さない。

「早くいつもの二人に戻るネ。ほらっ、いつものようにお手て繋いで…」
「「ちょっ、やめっ…」」

神楽は二人の手を取り強引に繋げる。二人は何とか離れようともがくが神楽の力には敵わなかった。
そうしているうちに、二人は繋げられた手から馴染みの温もりを感じ、次第に気分が落ち着いてきた。

「土方…」
「坂田…」
「良かった。元に戻ったんですね」
「心配しましたよ、副長」
「「あっ…」」

改めて自分達以外の存在に気付き、二人は慌てて繋いだ手を離す。

「おおおオメーら何でここにいるんだよ!神楽は新八の家に泊まるって…」
「おおおオメーらも何でここにいるんだよ!仕事はどうした、仕事は!」
「ちょっと様子を見に来ただけヨ。もう行くから、仲良くお手て繋いでるといいネ」
「ななな何言ってんの、神楽ちゃん?おおお俺達はそんな…」
「お二人が隙あらば手を繋いでるのなんざバレバレでさァ。つーわけで土方さん、おやすみなせェ」
「ううううるせェよ、総悟。さっさと仕事に戻りやがれ!」
「へいへい」
「じゃあ副長、お邪魔しましたー」
「銀さん、おやすみなさい」
「おやすみヨー」

四人は連れ立って万事屋から出ていく。

残された二人はその後ろ姿を真っ赤な顔で見送った。


(10.03.08)


こっそり18禁祭り中なので、純情シリーズの二人も少し大人になってもらおうかと思ったのですが、まだ早かったようです。この二人はどこまで純情になるんでしょうね?

もう、ヤるのが恥ずかしいとかいうレベルじゃない気がします。お気付きの方もいらっしゃるとは思いますが、二人の見ていたDVDはリバ小説「晴太からのプレゼントを使ってみた」です。

リバ18禁の中からなぜこれを選んだかというと、受け×受けだからです。この二人は攻めになるのが難しい気がしたので参考になればと…まだまだ無理ですね^^;

ここまでお読みいただきありがとうございました

追記:続き書きました→

 

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