後編


「あれっ?新八くん達、こんな所で何してるんだい?」
「やっ山崎さん!それに、近藤さんも…」

近藤と山崎が待ち合わせ場所の公園に着くと、物陰に潜んでいる新八と神楽を見付けた。

「まさか二人とも…旦那を尾行してたのかい?」
「そういうお前は何してるネ」
「俺達はトシが心配で見に来ただけだ」
「何言うカ。心配なのは銀ちゃんの方ヨ」
「静かにしないと副長達に気付かれますよ。…あっ、二人が動きました!行きましょう、局長」
「おうっ」
「私達も行くネ!」
「うん」

四人に尾行されながら、銀時と土方は一軒の居酒屋に入っていった。

「万事屋の野郎…トシを酔わせてどうするつもりだ!ザキ、止めに入るぞ!」
「待って下さい。店の中では何もできませんよ。…出てくるまで待ちましょう」

慌てて店に入ろうとする近藤を、山崎が冷静に止める。

「新八ィ、早く乗り込むアル!」
「神楽ちゃん待って。今行ったって追い返されるだけだよ」
「じゃあどうするネ?このままじゃ銀ちゃん、酔ってお持ち帰りされちゃうアル」
「…二人が出てきたところで銀さんを連れ戻そう。僕らで介抱するとか何とか言って…」

こちらも逸る神楽を新八が止めていた。
新八も神楽も銀時が心配で仕方がなく、近藤と山崎が何を話しているのかは聞こえていない。
それは近藤と山崎も同じであった。


*  *  *  *  *


「「「「出てきた」」」アル」

店から出てきた二人はかなり酔っているらしく、互いに支え合うようにして歩いていた。

「トシ…あんなに飲まされて…。待ってろ。今、助けてやるからな!」
「何言ってるネ。私が銀ちゃんを助けるアル」
「何を言ってるんだ。俺がトシを万事屋の魔の手から…」
「魔の手はそっちアル!」
「ちょっと神楽ちゃん。ケンカしてる場合じゃないよ!」

近藤と神楽が言い争いをしている間に、銀時と土方はホテル街へ向かって歩いていってしまった。
その時、近藤の携帯電話が震えた。

「…トシだ!もしもし、トシ?無事か!?…えっ?だっダメだ!いや…えっ…待っ!………」
「副長からですか?」
「あ、ああ…」
「なんて?」
「今日は、泊まるって…」
「えーっ!そんなのダメですよ!なんで許可したんですか!」
「許可なんかしてない!だがトシが電話を切っ…うぅっ」

近藤は必死に涙を堪えていた。

「局長、まだ間に合います。副長を追いましょう!」
「そ、そうだな」
「新八、早く銀ちゃんを捜すネ!」
「そうだね。絶対、泊まりなんかさせない!」

四人は酔った二人が歩いていった方に駆け出した。

そして間もなく二人を発見する。
二人は今まさにラブホテルへ入るところだった。

「銀ちゃん!」「銀さん!」
「トシ!」「副長!」
「「!!」」

近藤と山崎が土方の腕を、新八と神楽が銀時の腕を掴んで二人を引き離す。

「大丈夫か、トシ?」
「こ、近藤さん…それに、山崎も…」
「銀ちゃん、無事アルか?」
「オメーらなんで…まさか、つけてきたのか?」
「すいません。でも、銀さんが心配だったんですよ」
「大丈夫だって。ちょっと飲み過ぎちまったけど…もう、宿で休むだけだからよー」
「やっぱりだ!旦那は副長を酔わせてホテルに連れ込む気だったんですよ!」
「何だとー!マヨラーが銀ちゃんを連れ込む気だったに決まってるアル!そうでしょ、銀ちゃん」
「いや…ここに来ようって言ったの俺だけど?」
「「えっ…」」

銀時の言葉に新八と神楽は言葉を失い、近藤と山崎は土方を隠すようにますます銀時と距離を置く。

「ほら見ろ、トシ。こんなホテルに誘うような男とはもう、これっきりにしよう!」
「こんなホテルって…良さそうなホテルじゃねェか」
「どこが良さそうなんですか!ダメです副長。今すぐ帰りましょう!」

「銀ちゃん、何でここに来たアルか?」
「だって二人とも飲み過ぎたし、ここのオヤジと知り合いだし…
あっ!そういえばここの宿、ベッド一つしかねェ部屋ばっかなんだよなァ」
「…一人部屋しかねェのか?」

近藤と山崎の隙間から土方が顔を覗かせ、銀時に応える。

「ベッドはデカイから二人でも寝られると思うけど…一人一つあった方がいいよな。俺、寝相悪いし…」
「じゃあ…あっちの宿にするか?今日は平日だから部屋は空いてると思うぜ」
「あ、本当?じゃあ、そっちにしよう。…オメーらは早く家に帰れよ」
「近藤さん、山崎…二人を送ってってやれ」
「トシ…そこまでしなくても、こいつらなら大丈夫だよ」
「そうはいかねェよ、ぎん。こんなとこまで一緒に来たんだ。送ってくのは当然だろ」
「そう?何か悪いね」
「構わねェよ。…じゃあな」

呆然としている四人を置いて、二人は人混みに消えていった。



「山崎さん…一つ、確認したいことがあるんですが…」
「僕もだよ、新八くん」
「…何ですか?」
「新八くんからどうぞ」
「そうですか?じゃあ…土方さん、ベッド一つの部屋って聞いて一人部屋って言ってましたけど
こういうホテル、利用したことないんですか?」
「利用というか…そもそもここがどういう場所なのか分かってないと思うよ。
旦那はこのホテルの常連みたいだけど…流石に交際初日だから遠慮してくれたのかな?」
「いや…銀さんは経営者と知り合いなだけで、ここのホテルをただの宿泊場所だと思ってるんですよ。
その証拠に以前、僕と神楽ちゃん連れて入ろうとしましたから」
「そうなんだ…。でも、その時にこのホテルがどういう場所か知ったんでしょ?」
「いいえ。その時に知ったのはここが大人専用だってことだけです」
「…大人専用ってことは、もう分かってるんでしょ?」
「いいえ。実は銀さん…そっちの知識が全くなくて」
「そんなはずはないだろう!こんな繁華街で暮らしていて…」

新八の発言を否定した近藤に、神楽が食ってかかる。

「銀ちゃんは純粋なまま大人になったネ!お前ら汚れた大人達とは違うアル!」
「何をー!純粋培養でトシの右に出る者はいない!」
「汚れた野郎達と暮らしてるマヨラーが汚れてないはずがないネ!」
「俺達は今までトシを必死に護ってきたんだ!」
「あの…今の話、本当ですか?」

ケンカ腰になる神楽に代わり、新八が近藤に聞く。

「ああ…トシは本当に純真無垢なんだ。爛れた知識など一切ない。
総悟はたまに面白がって色々吹き込もうとしてるが、他の隊士達でそれを阻止してきたんだ」
「そうなんですか…。僕と神楽ちゃんも最初は、銀さんが何も知らないことに驚きましたけど…
あまりに知らなすぎるので、ここは僕らで護るしかないと…」
「そうだったのか…」
「副長と旦那…こんなところまで似た者同士だったんですね」
「まさか、銀ちゃんみたいな大人がもう一人いたなんて…」
「でも、銀さんが無事にお付き合いできそうで良かったじゃない」
「そうアルな」
「旦那なら安心ですね、局長」
「…そうだな」


周りの人々に見守られながら、銀時と土方はこれからも清く正しく幸せな交際を続けていくのであった。


(10.05.20)


銀土で連載していた「ぎんトシシリーズ」が一応完結したので、他のCPでも同じような設定で書いてみたくなったんです。第一弾はリバ(というより攻受なし?)です。

ぎんトシシリーズでは、銀さんが無垢でしたが、今回は二人とも無垢にしてみました。…二人とも何も知らない設定にしたら、二人だけだと何も話が進まなくなってしまいました^^;

そこで周りが二人を心配する話に…。銀さんと土方さんより、周りの人々が出張ってますね。初デートのいちゃいちゃを期待されていた方がいましたら申し訳ありません。

まあ、この二人はあまりいちゃいちゃもせず、ただ仲良くお話しするくらいしかしませんよ(笑)  ここまで読んでいただき、ありがとうございました

追記:続き書きました→

 

ブラウザを閉じてお戻りください