トシとぎんと初めてのお付き合い
「新八ィ、神楽ァ…俺、ちょっと出かけてくっから」
夕刻になる頃、それまでジャンプを読んでいた銀時が急に出かけると言い出した。
「えっ、今からですか?これから夕飯ですよ」
「メシはいらねェよ」
「いらないって…また長谷川さんとでも飲みに行くんですか?」
「飲みには行くけど、長谷川さんじゃねーよ。…トシとデート」
「「デートぉぉぉ!?」」
デートという言葉で、それまで酢こんぶに夢中だった神楽も新八と一緒に驚く。
「何がデートネ!銀ちゃんに恋人なんかいないこと知ってるアル」
「だからトシと恋人同士になったんだよ」
「トシって…どこのトシさんですか?」
「真選組のトシだ」
「もしかしてマヨラーか?トッシーアルか?」
「そうだよー」
「いいい一体いつからお付き合いしてるんですか?」
「今日の昼から」
「昼って…パチンコ行った時ですか?」
「おう」
* * * * *
本日、昼。
パチンコへ行く途中で銀時は巡回中らしい土方と沖田に会った。
「これは旦那…」
「よー、お勤めご苦労さん」
「………」
「ほら土方さん、もう少し愛想よくしなせェ。大好きな旦那に会えて緊張すんのも分かりやすが…」
「…に言ってやがる!俺はテメーがまたサボるんじゃねェかと…」
「えー!土方って俺のこと好きだったの!?」
「ちっ違っ「そうですぜ。旦那のことが大好きなんでさァ」
「総悟やめっ…」
「そうなんだー。俺も土方のことずっと好きだったから嬉しいなー」
「「…えっ?」」
銀時の衝撃告白に、土方も沖田も動きを止めた。
「旦那ァ…マジですかィ?」
「マジマジ。なあ、お互いに好きってことは…俺達、恋人同士?」
「えっ…ぁ…」
展開についていけず、土方は口をパクパクさせている。
沖田が土方の脇腹を小突く。
「土方さん、固まってねェで何とか言いなせェ」
「何とかって…」
「なあ、俺達って恋人同士じゃねーの?」
「ほれっ、土方さん、どうなんですかィ?」
「おっお前が、いいなら…ここっ恋人、だと、思う」
「わーい、やったぁ!…じゃあ、今からデートしよっ」
「あ…まだ仕事中だから…」
「あっ、そうか。じゃあ、仕事終わってからデートしよっ」
「あ、ああ」
「じゃあまたねー」
* * * * *
「……というわけで、トシと付き合うことになったんだ。じゃっ、遅れるから行くな」
「あっ、銀さん待って下さい」
「ダメだ。初デートで遅刻するわけにはいかねェ」
「待つネ!」
新八と神楽の制止も聞かず、銀時は出て行ってしまう。
「どうしよう、神楽ちゃん…」
「後をつけるネ」
「えぇっ!そんなことして大丈夫かなァ」
「お前は、銀ちゃんがマヨラーの魔の手に掛かってもいいアルか?」
「魔の手って…。でも、心配だからついていくよ」
「よし、行くネ」
二人はこっそり銀時の後をついていくことにした。
* * * * *
真選組屯所では、沖田が近藤、山崎に詰め寄られていた。
「総悟、トシが万事屋と交際するというのは本当か!?」
「本当ですぜィ」
「何でそうなったんですか!?」
「旦那もずっと土方さんのこと、好きだったんだとよ。…簡単にくっ付きやがって、面白くねェ」
「…万事屋はあのことを知っているのか?」
「知るわけねェでしょ。今日、付き合うことになったばかりだってのに。まあ、土方さんだっていい歳なんだ。
ここらが潮時ってことじゃないですかねィ」
「そんな…。旦那が知ったらきっと、副長を都合のいいように騙そうとしますよ」
「そうだな…あの男ならやりかねん。ザキ、行くか?」
「行きましょう、局長」
「まあ、好きにしてくだせェ」
近藤と山崎は鼻息荒く土方の部屋へ向かった。
「トシー!!」「副長ー!!」
「なっ何だ!?」
勢いよく襖を開け、近藤と山崎は室内に入っていく。
「総悟から聞いたぞ、トシ。万事屋と交際するらしいじゃないか」
「お、おう。…これからデートなんだ」
土方は頬を染めて照れくさそうに笑った。
「ダメですよ。夜のデートなんて!」
「そうだぞ。本来は交際自体認めたくないんだが…どうしても付き合うというなら、デートは日中しか認めん!」
「そんなこと言ったって…今まで仕事だったんだから仕方ねェだろ」
「だから今日はもう遅いから別の日にしよう!なっ」
「でも…ぎんのヤツ、デート楽しみにしてたし…」
「じゃあ俺もついていく!」
「近藤さん…デートは二人だけでするもんだぞ」
「そっそれはそうだが…」
「じ、じゃあ、すぐに帰って来てください!…三十分くらいで」
「待ち合わせ場所とここを往復するくらいで、そんぐらいかかるから無理だ」
「じゃあ四十分!」
「…十分しか延びてねェじゃねーか。…もう約束に遅れるから行くぞ」
「あ、ちょっ…」
土方は近藤と山崎から逃げるように屯所を後にした。
「どうしましょう、局長…」
「…つけるか?」
「…そうですね。副長を護るためには、それしかありませんね」
「よしっ」
二人は土方を尾行することにした。
(10.05.20)
やたらと心配されてる銀さんと土方さん。果たしてその理由は!?…って、銀土小説読んでる方ならタイトルと背景で想像つきますよね^^;続きはこちら→★