後編

 

あー、やっと万事屋に着いたよ。くっ、この階段がまた、ケツにくるな…。

 

「ただいま帰りましたよーっと」

「ああ、銀さん、また飲みに行ってたんですか?

しかもこんな時間に帰ってきて…もう、若くないんですから、ほどほどにしないとダメですよ!」

「なんだよ、新八。テメーは俺のかあちゃんですかー」

「もう、神楽ちゃんの教育にもよくないから、朝帰りなんてやめてくださいよ」

「はいはい、新八くんの言うとーりです」

「全然聞く気、ないですよね?それにしても、今日は遅かったですね。もうすぐお昼ですよ?」

「あー、そう」

「神楽ちゃんは、もう定春と遊びに行きましたよ」

「あー、そう」

「…お風呂、準備しましょうか?」

「いや、いい。入ってきた」

「えっ…入ってきたって…」

 

「新八ィー俺、夕方まで寝るから、依頼あったらテキトーに返事しといてー」

「ちょっ…銀さん!?」

「あー、それと、夕飯はコレで肉買ってこい、肉」

「えっ…どうしたんですか、このお金。銀さん…まさか…」

「ああ?何だよ?」

「銀さん、そりゃ確かに、給料出ないって何度も文句言いましたけど…

いくら万事屋だからって、そんなことまでしなくても!」

「ああ?何の話だコノヤロー?」

「だ、だから…か、身体を売ってまで…こんな…」

「…オイオイ、そんなんじゃねーよ。昨日は飲みに行って、そのまま寝ちまったんだって。

で、その金はたまたま同じ居酒屋にいた真選組のヤツラから、迷惑料として頂いただけだ!」

「えっ、そうなんですか?僕はてっきり…つーか、迷惑料って…警官をカツアゲしないでくださいよ」

「ったく、うるせーな。安らぎの場である居酒屋に、あんなムサい連中がいたら迷惑以外の何物でもねーだろ?」

「銀さん…いつか、捕まっても知りませんよ?」

「あーはいはい。とにかく、肉買ってこいよー」

「分かりましたー」

 

 

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

 

 

えっ…何コレ!?もう、一週間も経つのに何でアイツと会わねーんだ?

わざわざ真選組が通りそうな場所を散歩してやってんのに…。

大きなテロが起きたっつーニュースはねーし、だいたい、ゴリラや沖田くんやジミーなんかとは何度もすれ違ったってのに

…何でアイツだけいねーんだよ。…いや、寂しいとかじゃないからねコレ!

ただ、次に会った時パフェでも奢ってくれれば許してやろう、とか思ってたから…そうだよ!俺はパフェのためにだな…。

 

あっ…前から忌まわしい黒い制服の2人組が…ふっ、どうせ、またアイツじゃねーんだろ?

あの制服を見るたびにアイツかと思ってドキドキするのは、もう飽きたんだよ!

…って、またキモっ!どうしたんだ俺?しっかりしろォォォ!! 

 

 

 

 

「あっ、万事屋の旦那ー」

「おー」

 

 

げっ…会っちまった…!アレっ?何か、頑なに背を向けてない?

何だよ、ココであの日のことを言われるとか思ってんのか?

いくら俺がドSだからって、公衆の面前でンなこと言わねーよ?

だいたい、俺だってあんなことが公になったら困るからね、ウン。

 

 

「おいおい、そっちの人は無視ですかー?」

「あん?何でテメーなんぞに話しかけなきゃなんねーんだ?」

「…い、いやいや、先にお宅んとこの沖田くんが話しかけてきたんだよ?」

「じゃあ、総悟としゃべってりゃーいいだろ」

 

 

あれっ、何コレ?何かいつにも増して険悪なオーラじゃね?

いつにも増して眉間に皺が寄ってるよ…怖ェー顔だな、オイ。えっ、もしかしてコイツ覚えてねーの?

いや、俺も覚えてねーけど……でも、俺に突っ込んだってことは、そこまで酔ってなかったんじゃねーの?

えっ、もしかしてコイツにとっては、こんなこと日常茶飯事で、謝るほどのことじゃねーってこと?

 

 

「な、何だよ」

 

 

何だよ、じゃねーよ!この一週間、俺がどういう思いで過ごしてきたと思ってんだ!ふざけんなァ!!

 

 

「沖田くん」

「何ですかィ?」

「ちょっと、お宅の副長さん借りるから」

「なっ!」

「あー、どうぞどうぞ。何なら永久に返さなくてもいいですぜ」

「総悟テメッふざけんな!…うわっ、万事屋テメー、引っ張るんじゃねー!俺は仕事中だ!」

 

 

 

ちょうど今、万事屋には新八も神楽もいねー。きっちりと落とし前つけさせてやるよ!

 

(09.07.25) 


 酔った勢いって怖いですねー。互いに「自分が被害者だ!」と思い込んでます。でも、銀さんの方がやや乙女思考でした。ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

追記:続き書きました

ブラウザを閉じてお戻りください