<中編>


「あ〜……」
ホテルに戻った金時は、靴を脱ぎ捨てベッドにダイブする。二人で写真を撮ってパレードを見て、勿論アトラクションも楽しんで……童心に返りはしゃいでいたら、あっという間に日が暮れた。
夢の終わりを意識すれば忽ち疲労感に襲われる。けれども彼にはこのまま終わりにできない事情があった。
「トシデレラぁ」
窓際のソファーに掛けて紫煙を燻らすプリンセス。猫なで声で呼べば、妖艶な笑みを湛えてベッドへ乗り上げてきた。
自身の重さの掛からぬ箇所が沈み込み、体がそちらに引っ張られる感覚。事の開始を予見して、気分は一気に高まった。

「Trick or Treat?」
流暢な英語とともに王子様へ覆い被さるお姫様。
両手を上げ、何も無いことをアピールすると、真っ赤な唇で唇を塞がれた。
「んっ……」
薄く口を開けて下からべろを伸ばして誘い込む。それには敢えて乗っからず、早々に口を離して右の耳朶をぺろり。
「あっ!」
「随分と感度がいいなぁ、プリンス?」
足の間に膝を入れて股間を少し刺激してやれば、そこは既に張り詰めていた。
「子どもも沢山いる場所でココをこんなにして……いけない王子様」
「今は、姫と二人だけだからぁ」
「園内のお手洗いでもヌいたでしょう?」
「バレてたか」
火照った顔で熱視線を寄越し、トイレから戻ってもスッキリするどころか益々物憂げに……こんな調子でいれば容易に想像がつくし、素知らぬふりを続ける方も大変だったのだ。
金時の手が、淡いブルーのスカートやその下のパニエを掻き分けて下着に触れる。膨らみつつあるそこに気をよくして、スカートの中へ潜り込んだ。
「んっ……」
薄い布地が束になり光を遮る暗がりの中、金時は手探りでストッキングとショーツを一度にずり下げ、出てきたモノを咥えた。
今日は何人ものプリンセスを見た。けれどもスカートの内にこのような立派なものを携えているのは、きっと俺のプリンセスだけ。
そう思ったら、体の奥が疼きだしてしまったのだ。

完全に上を向いた一物にゴムを被せ、額の汗を拭いつつドレスから出てきたプリンス。乱れた髪が普段の天然パーマに近付いていて、トシーニョの鼓動を速めた。
ベッドの上で膝をつく、桜色の顔した姫を見て金時が一言。
「フル勃起でも分かんねェな」
何もかも隠してしまえるスカートなら、外でイタズラできるとでも言いたげな雰囲気。馬鹿を言うなと視線のみで返事をし、下着もパニエも脱ぎ去った。
野外羞恥プレイ妄想は一旦終了。下半身を全て晒け出して仰向けた金時。
この日のために誂えた衣装を汚してしまうのは勿体ないから、受ける側のモノにもスキンが装着されて準備は完了。
プリンスの足がスカートへと吸い込まれていった。

ここは俺達二人の国。外野にどう思われるかなど気にする必要はない。

「……いけそう?」
「何とかな」
結合部分はドレスにすっぽり覆われていて、トシーニョは金時の割れ目を辿りつつ照準を定めていく。湿らせた指先の感触を頼りにここぞという箇所で力を入れれば、柔らかなそこは容易く中指を飲み込んだ。
「随分ときっちり解れてるじゃねーか」
「あ……だから、早くって……」
王子の左手を取りその指に唇を寄せた後、スカート越しに足を抱え直す。うっとり見上げる潤んだ瞳に、プリンセスは喉を鳴らした。
「あー……そこっ」
入口を拡張されて金時は腰を震わせる。確かな存在感を示しながら侵入してくる恋人の分身に息が上がった。
「トシ子姫ぇ」
「……トシデレラじゃなかったのか?」
どうでもよい呼称について話しつつも、トシーニョの腰は進み続けている。
「んんっ……トシデ、れらあん!!」
ずん、と勢いつけて最後を埋め込めば、プリンスは背を仰け反らせて跳ねた。
「入れただけでイッちまったか? いつにも増して可愛いな」
「ちょっとデカイ声が出ただけですぅ」
衣装のせいで見えないのをいいことに虚勢を張ってみる。幾度となく抱かれ抱いているのだ。見破られているのは百も承知しているけれど。
ついでに相手もさっさと放出させるべく、内部を締めたり緩めたり。
「んっ!」
「姫は遠慮なくイッていいからね」
「そうかよ」
「ああっ!!」
だが動かれてしまうと自身の快楽の方が勝ってしまう。過敏になった身体に律動の刺激は強烈で、無意識に枕の端を掴んだ金時の手。その両方を愛する人の手が包んだ。
「ふあぁっ!!」
互いの甲に爪痕を残し、がっちり絡まる指と指。愛の重さで沈み込む。
「ああっ!! あ、うあっ!!」
「ハッ……!」
厚いベールで覆われた下半身が熱せられて溶けるよう。いかに淫らな光景がこの中にあるのか――想像するしかないことで、淫靡な感情がいっそう駆り立てられた。
「はあんっ!! 凄いぃぃぃ!!」
マットレスのスプリングが弾み過ぎて頭まで揺れる。物理的にもくらくらするが、それよりも激しく貫かれたい欲が勝った。
「ああっ、イクイク!!」
「俺もっ!」
金時の手から手が離れ、金髪天然パーマが左右から押さえ付けられる。自由になった腕は真っ直ぐ上に伸ばされた。
「銀時っ!」
「土方っ!」
源氏名でも衣装に因んだ名でもない、愛しい人の真の名前を呼んで、貪るように口付ける。
「んうぅぅぅぅぅ!!」
「んんっ!!」
下半身も上半身も密着させて二人は揃って絶頂に達した。
静寂を取り戻した室内は、折り重なった男達の荒い呼吸だけが聞こえている。


「いっぱい出たなァ」
恋人に装着していたスキンを掲げ、トシーニョは満足げに紫煙を吐き出した。霧散して消える煙の行く末を見届けてから、手にした物を灰皿とゴミ箱へそれぞれ放る。
四肢を投げ出す金時の下腹部にはバスタオルを掛けてやった。
「まあね」
二回分だからと言う男は何故だか得意げ。いっぱい出たよ、偉いでしょ、褒めて褒めてと訴えるよう。タオルの上からぽんと膝を叩き、プリンセスは離れていった。

そして自らその役目を下りる。

ウィッグを外しドレスを脱いで、ただの一人の男に戻っていく。
露わになった仄かに筋肉のつく肉体を目に、金時は思わず舌なめずり。疲労感はいつの間にか薄れていた。だからほら、
「風呂、入ってくるな」
「俺も」
メイクだけ纏う最愛の人の、後に続くのを躊躇いもしない。

程なくしてバスルームからは、元プリンセスの甘い嬌声が響くのだった。

(17.10.30)


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