おまけ
この日のために用意したのは勿論スイートルーム。
大きな一枚ガラスの窓から街の明かりを見下ろしつつ土方の肩を抱く。
「土方……」
「銀時……」
互いの名前を呼んで見詰め合って、それから唇を重ね合わせる。
相手の身体に確りと腕を回して、何度も何度も口付けを交わしていく。
そうして何度目かのキスの後、色付いた瞳で「シャワー浴びてくる」と言った土方をまた強く
抱き締めた。
「銀時、シャワー……」
「このままベッドに」
「おい……」
「それとも、夜景見ながらここでする?」
「そうじゃなくて……」
「俺ね、そのままの土方とシたいんだ」
「けどよ……」
「大丈夫だから。ねっ?上がいい?下がいい?」
「……とりあえず上」
「オッケ〜」
やっと俺の本気が伝わったみたい。しかも「とりあえず」ってことは両方ヤる気だな。
俺達は寄り添うようにしてベッドルームへ。
「……本当にいいのか?」
「大丈夫大丈夫」
仰向けで寝た俺に覆い被さってなおも遠慮がちな土方。
まあ、今まで俺が「トシ子ちゃん」とヤってないのがいけないんだけどさ。
「どんな格好してたって、土方は土方だから……愛してる」
「ありがとな……」
諦めたように息を吐きながらお礼を言って土方の顔が近付いてくる。
……本当、キレイな顔してるよな。黙ってるとマジで女にしか見えない。
実際、初めて会った時は背の高い女だと思ったし…………うっ、マズイ……「女」を意識しすぎて
微妙な気分になってきた。目を閉じて……いやいや、それだと土方の趣味を否定したことになる。
いつも通りにヤれなきゃ意味がねぇ。
あっでも、キスするんだから目を閉じてもいいか。
俺が目を閉じてすぐ、土方と唇が重なった。
「…………」
土方が俺を抱き締めてキスをすると、俺の胸の上に二つの丸い感触が!!ニセモノなのは
分かってる。分かってはいるんだけど、男専門の俺はホンモノの感触が今一分からない。
だからひょっとして……とか考えちまう。
ダメだダメだ……余計なこと考えてないでキスに集中!土方に気持ち良くしてもらって
合体するんだから!
そうだよ!今から俺に突っ込むんだから土方は正真正銘の男!むしろ俺が女役!
よしっ、大丈夫だ。大丈夫、大丈夫、大丈……
「銀時……」
「ん?」
「やっぱり、シャワー浴びてくる」
「何言ってんだよ!俺はそのままのお前と……」
「身体は正直だぞ」
「あ……」
キスの最中に服の上から触られていたにもかかわらず、俺のムスコは無反応だった。
「でっでも、直接触られたら勃つと思うし……最悪、勃たなくても土方が上なら……」
「そこまでしてヤんなくてもいいだろ……」
「いや。今日は土方の誕生日だから」
「だからってオメーが嫌な思いしてどうする」
「嫌じゃない!」
「…………」
土方が、駄々っ子に手を焼くお母さんみたいな顔になってるけど、だからって俺も譲れない。
「あのな……」
土方は俺から下りて俺を起こして、ベッドの上で向かい合って座る。
「俺は別に、男の格好が嫌なわけでも、女になりたいわけでもねぇ」
「知ってるよ」
「だったら、女の格好でヤらなくてもいいだろ?」
「けど……」
「……一緒に風呂入らねぇか?スイートルームなら風呂場もきっと豪華だぜ」
「夜景が見えるらしい、けど……」
「へぇ……いい部屋とってくれてありがとな」
「…………」
「ほら、行こうぜ」
ベッドから下りて俺の手を取り、風呂場へ行こうと誘う土方。
でも俺はベッドに座ったまま動けないでいた。
「銀時、今日は俺が生まれた日だからよ……」
今日は土方の誕生日なのに土方に気を遣わせて俺は……
「だから……生まれたままの姿で愛し合おうぜ」
「――っ!」
耳に直接吹き込むようにして囁かれた言葉……コイツと同じ店でホストやってたら、
絶対ナンバーワンにはなれないと確信した。
だって、こんな風に言われたら頷くしかないじゃないか。
俺も銀髪に戻してて丁度よかったな、とか思っちゃうじゃないか……
「なあ、銀時……」
「分かったよ!行くよ!行くから耳元で喋るのやめろ!」
「はいはい……」
フッと笑った土方に手を引かれ、俺は浴室に向かった。
* * * * *
「眺めはどうだ〜?」
「まーまー」
脱衣所を背にしてバスタブに浸かり、窓から外を眺める。外の方が暗いから、夜景以上に
俺のマヌケ面がくっきり映っていて不快だ。
土方はメイクを落とし、ウイッグを外して風呂に入る準備をしている最中で、俺は一足先に
バスルームの中。
これから裸ですっぴんの土方が来るかと思うと股間がムズムズ……いい加減にしろよお前。
窓に映るくるくるパーマへ悪態を吐いていたら、急にソイツが消えて上から何かが降ってきた。
「はっ、え……花?」
降ってきたのは赤い花びらで、窓の俺が消えたのはバスルームの明かりが消えたから。
それをしたのは勿論、土方だ。扉は開けたままだったから入って来たのに気付けなかった。
「脱衣所にあった。バスタブに浮かべろってよ」
「ふーん……」
「それと、やっぱり電気消した方が眺めいいな」
「そーだね……」
シャワーでさっと身体を流して土方もバスタブへ。
トシ子ちゃんの面影もなくなり俺の股間は本格的に疼きだす。
今更自分の性癖をどうとも感じていなかったけれど、今日ばかりはせめてバイだったらと
思わずにはいられ……
「うひゃ!」
耳元へふっと息を吹き掛けられて思わず変な声が出ちまった。
「もーちょい色気のある声、出ねーのかよ……」
「いいいいきなりでビックリしたんだよ」
「そうかそうか。じゃあ、今度はいい声聞かせろよ」
「おい……んっ、ぁ……」
肩を抱き寄せて耳朶をぺろり……と同時にもう一方の手が股間をさわさわ。
「こらこら、待ちなさいって」
「待てねーよ」
「そうじゃなくて……今度こそ俺にサービスさせて」
「あ?」
土方をバスタブの縁に座らせて俺はその脚の間に入り、土方のモノを軽く握ってシコシコ……
「銀時……」
「ん?」
俺の髪を撫でながら土方が呼ぶ。
「俺ァよ……お前と居られればそれで充分なんだぞ」
「……俺もだよ」
土方のモノを喉の奥まで咥え込み、片手は自分の後ろへ回して入れる準備。
「ハァッ……」
「んっ、んっ……」
土方は常に女装したいわけじゃないし、女の格好でエッチしたいわけでもない。
俺に不満があれば遠慮なしに言ってくるし、嫌なら指一本触れさせない。
だから今、俺がしていることは単なる自己満足でしかないのかもしれないけれど、
それでも俺は、土方の誕生日に、俺にしかできないことをしてあげたいんだ。
「っ……」
支えのいらなくなったモノを根元から上へ舐め上げる。
「もういい?」
「ああ」
一旦、目を合わせてから背中を向けてバスタブに手を付くと目の前に窓ガラス。
「これさぁ……すっごく目のいいヤツだったら俺達のこと見えたりすんのかね?」
街の明かりが見えるということは向こうからだってこちらが見えているということで……
けれど本気で覗きの心配などしているわけでもなくて……
「見られて困ることもねえだろ」
「まあね……」
土方は特段表情を変えることなく俺のナカに入ってくる。
「あ、はぁっ……」
全部入れ終わると俺の身体に両腕を回して肩口にキスを……え?
強く吸い付けられた感触に思わず振り返ると叱られる寸前の子どもみたいな顔の土方。
「お前、痕……」
「服で隠れる所ならいいかと……悪ィ」
「フッ……別に悪くねぇよ。好きなだけ付けろ」
ちょっと苦しい体勢だが身体を捻って軽くキスをする。
「後で、俺にも……」
「お〜、いっぱい付けてやるから覚悟しとけ」
「ああ」
「んっ……」
さっきより首に近い辺りにまた吸い付いてナカのモノが抜けていく。
何だよ土方のヤツ……こういうの好きなら早く言えよな。
そういうことなら、祝った印と祝われた印でいっぱいにしてやろうじゃねーか。
「んっ、あ、あ、あ……」
土方の律動に喘ぎつつも、俺の痕跡を何処に残そうかと考える。
「あんんっ!あっ、あっ、あっ……」
胸元の、普段よりボタンを一つ余計に留めなきゃ隠れない位置に付けようか……
「あぁ……はっ、あっ、あぁっ!」
項の、ギリギリ髪で隠れる位置もいいなぁ……
「あっ、あっ、あぁっ……」
ああでも、首筋は外せないよなぁ……。
あ、そこ気持ちイイ……肩のラインを舌で辿られてぞくぞく……土方にも同じことしてやろう。
「ああぁっ……!」
土方の手が俺のモノを扱き始めたところで思考は一時中断。
「あ……ひじかたっ!イキそうっ!」
「ぎんとき……」
バスタブの湯と結合部と俺のモノと……何処も動くたびに湿った音を立てる。
でもそれより俺の喘ぎ声が反響して煩い。でも気持ちイイ……
「ああっ!も、イク!イク!ひじかたァ!」
「ぎんときっ!」
「んんんっ……ああぁっ!!」
「くぅっ!!」
俺がイッた直後に、土方も俺のナカでイッた。
(12.05.05)
女装エロを期待されていた方がいましたら……というか、本編の終わり方からして当然女装エロがくると思いますよね?すみません。実は予定通りです。
そして、この二人はホストを生業としている分、原作設定の二人よりは素直に好意を伝えられてます。続きはこちら→★