おかしい…アイツ絶対俺のこと好きだって。いや、自意識過剰とかじゃなく、ね。だって、すっげー分かりやすいもん。
態度に出まくってるって。なのに、何でいつまで経っても告白してこねェんだ?
まさか、態度でそれとなく伝えて、それで分かれとか思ってんのか?
いやいや…俺は、そんな何となくいつの間にか、みたいな関係許さねーよ?その辺、ちゃんとしてるからね俺。
俺と付き合いてェっつーなら、菓子折りの一つでも持って挨拶に来いってんだ。
…あれっ、これじゃあ結婚を前提に…っぽくね?いや、結婚してェとかじゃねーから!そもそも男同士だから!
…ん?もしかして、男同士ってこと気にしてんのか?アイツ、変なところで考え古いからなー。
でもそんなん、好きになっちまったもんは仕方ねーだろ?
もしくは、クソ真面目だから「俺には誰かと付き合う資格なんて…」とか考えてんのかもな。
「俺よりももっと相応しい相手が…」とかかもな。
確かに、銀さんは天パじゃなかったらモテすぎて大変だろうってくらいイイ男だけど…アイツもいい線いってると思うよ。うん。
…マヨラーだけどな。
でも、アイツ髪なんかサラッサラだし、顔もいいし、真選組の頭脳っつーくらいだから仕事もできんだろ?
ゴリラがストーカーしてたり、サド王子がサボってたりしても回ってんだから、アイツが頑張ってんだろうな。
それに比べて俺は天パだし、万年金欠だし…ってあれっ?何で、俺が落ち込む感じになってんの?おかしいって!
アイツが俺のこと好きなんだって!
俺は別に…嫌いじゃねーけど…まあ、どうしてもっつーなら付き合ってやってもいいって思ってるけど…。
そういえばアイツ、自分から告白とかしたことないのかな。そうかもなー。ムカつくくらいモテそうだもんなー。
女の方から言い寄ってきそうだもんなー。…ってことは俺が言い出すのを待ってんのか?
…いや、俺は女じゃねーけど。そんな優しいことはしてやんねーよ。
だいたい、俺はそこまでしてアイツと付き合いたいっつーわけじゃねーんだ。
…でも、アイツが自分から動くの慣れてねーみたいだから、屯所までは行ってやるよ。ったく、世話の焼けるヤツだな。
土方さんから告白させたい銀さん
「よー」
「…何の用だ」
「あれっ?それはないんじゃね?銀さんがせっかく来てやったっつーのに」
ここは真選組屯所副長室。土方が書類作りをしているところに銀時はやってきた。
「だから何の用だと聞いている」
「いやー、用ってほどのことじゃねーけど…そういやァ何でおめー、制服じゃねェの?」
「…今日は非番なんだよ」
「うわー、休みの日まで仕事してんの?」
「まあ、な」
「失礼します」
そこへ山崎がお茶を二つ持って入ってくる。
「コイツに茶ァなんぞ出す必要はねェ」
「そんな…せっかく旦那が遊びに来てくれたんですから」
「屯所は遊び場じゃねェよ」
「じゃあ、出かけたらいいじゃないですか。副長は今日、非番なんですから」
「いや、仕事が残ってて…」
「…それ、本来なら局長がやる仕事ですよね?俺、探して渡しておきますから、副長は休んでて下さい」
「あ、いや…だが…」
「というわけで旦那、副長は今日休みなんで、話し相手にでもなってくれます?」
「お、おう…」
そう言って、山崎は土方の机から書類を奪い、部屋を出て行ってしまった。
残ったのは仕事がなくなり暇になった土方と銀時の二人だけ。
「なるほどね。ゴリラの分まで仕事してちゃ、そりゃあ休みもなくなるわな」
「近藤さんはゴリラじゃねー」
「はいはい。でも、ジミーもやるね」
「チッ…山崎のくせに」
「まあまあ。…じゃあ、ジミーにも言われたことだし、話し相手になってやるよ」
「何でテメーと話さなきゃなんねーんだよ」
「いやいや、これはチャンスじゃね?ほら、銀さんに何か言うなら今だよ?」
「は?俺がテメーに何を言うってんだ?」
「またまたー、とぼけんじゃねェよ。お前の気持ちは分かってるんだって。
ほら、前々から銀さんに言いたいと思ってたことがあんだろ?」
「…何のことかサッパリだが、分かってんなら言わなくていいだろ」
「いや、ダメだって!確かに分かってるよ?でもこういうことは、一回きちんと言っとかなくちゃ!」
「だから、何を言うってんだよ」
「まだとぼける気かよ…。こうなったら仕方ねェ…オメーが俺のこと、どう思ってるか言え」
銀時がこう言うと、土方は答えに詰まった。その姿は黙って考えているようにも見える。
あー、俺がここまで言ってやったのに迷ってんのか?やっぱ色々気にして、前に進めないのか?
敵前逃亡は士道不覚悟じゃなかったっけ?…って俺、敵じゃねーけどさ。
銀時がこんなことを考えていると、漸く土方が口を開いた。
「テメーは確かに、何考えてるか分からねーヤツだが…」
「ん?」
「少なくとも、今は敵じゃねーと思ってる」
「お、おう(あれっ?さっき敵前逃亡とか思ってたのバレた?)」
「だからいきなり逮捕するようなことはねーから安心しろ」
「へっ?」
「だから、真選組はお前を逮捕しようなんて思ってねーから大丈夫だ」
「あ、いや…はっ?」
「桂とのことで、疑われたままだと思ってんだろ?
まあ、テメーと桂の繋がりがないとは言い切れねェが…だからといって桂の活動に加担してるわけでもなさそうだしな」
「えっ、なに…俺ってまだ容疑者だったの?」
「だから、大丈夫だって言ってんだろーが」
「あ…ああ、そうか。大丈夫なのか……じゃ、ねーよ!」
「ああ?何だよ。疑われたっつーのが不満か?仕方ねーだろ、そういう仕事なんだ」
「そこじゃねェェェ!!そーじゃねェよ!何だ?わざとか?それともまだ迷ってんのか?」
「ああ!?俺が何を迷うってんだ!」
「だから、俺のことどう思ってるか言えっつーの!」
「言ったじゃねーか!真選組はお前を…」
「真選組じゃなくて、お前個人の話だ!」
「ああ?俺の?」
「そうだよ。…お前の個人的な気持ちを言えってんだ」
「個人的っつってもな…」
再び土方は答えに詰まる。
あーあ。仕事場に来たのがマズかったか…屯所に来ちまったから仕事の話と勘違いしてんだな。
でも、まあ、これで漸く分かっただろ?さあ、とっとと決心して言いやがれ!
「別に…何とも思ってねー」
「………はっ?」
ついに告白されるかと期待していた銀時の胸に、土方の声が突き刺さる。
「だから、何とも思ってねーよ」
「……えっ、それって、どーゆーこと?…あそこまで、あからさまな態度とっておいて、何ともって…」
「あからさまって…そりゃ確かにテメーとはよくケンカをするが、それはそういうコトじゃねーよ」
「えっ…だって、そんな…」
「だからさっきも言ったように、テメーを敵と思ってるわけじゃねーって」
「………ああ!?」
「ったく、耳までパーになったのかよ。だから、俺はテメーを敵だと…」
銀時の中で何かが切れた。
「違ェェェェェ!!違ェよ!真選組の話じゃねーっつってんだろォォォ!!」
「何、いきなりキレてやがる!」
「テメー個人の気持ちを言えっつーのに、相変わらず仕事の話をするからだろーが!!」
「だから、俺個人もテメーを敵だと思ってねーよ!!何だ?不満か?やっぱりテメーは敵か!?」
「そうじゃねェェェ!!敵とか味方とか仕事関連じゃねーよ!個人的な気持ちだ!感情!!」
「感情!?ワケ分かんねェこと言ってんじゃねーよ!一体、何がしてーんだよ!!」
「言いたがってんのはテメーだろ!?さっさと言えや!!」
「だから何のことだって…」
「さっさと、俺のこと好きだって言え!!!」
「……はっ?」
「……あっ!」
勢いに任せて叫んだ後で、これでは自分から告白したようなものだと銀時は気付いた。
今のやりとりを無かったことにしたいと思ったが、一度言ったことを取り消せるはずもなく…土方に背を向けてうずくまった。
「万事屋…」
「…るせー、こっち見んな」
「そうか…俺のこと、好きだったのか…」
「ち、違ェよ!てめーが…」
「分かった。お前と付き合ってやる!」
「…な、何で上から目線なんだよ」
「あー、違ェって。拗ねんなよ…」
「拗ねてねェ…っつーか、こっち来んじゃねーよ!」
「何でだよ…恋人同士なんだからくっついたっていいじゃねーか」
「こ、恋人って!お、俺は、別に無理して付き合ってもらわなくてもいーんだからな!」
「無理なんかしてねェよ」
「…同情するならカネをくれ」
「…懐かしいな、オイ。…同情なんかじゃねーよ。
まあ、気付いたのはテメーが告白した後だが…俺もお前のことが好きだぞ」
銀時はバっと勢いよく土方に向き直った。
「俺が…言った後に、気付いたっ、て?」
「ああ。テメーが好きだって言えっつって、考えてみたら、好きなんだな…と」
「はあ!?何だよソレ…今まで気付いてなかったって、こと?」
「そうだな…あっ、でも安心しろ。今好きになったわけじゃねーぞ?多分もっと前から…」
「多分じゃねーよ。何だよ…無自覚でアレって……酷ェよ」
「今までお前の気持ちに気付かなくて悪かったな。…この後、時間あるか?メシでも食いに行くか?」
「…糖分がいい」
「ははっ…じゃあ団子屋でも行くか」
「奢れよ…」
「分かった、分かった」
さっさと、俺のこと好きだって言え!!!…銀時の叫びは屯所中に響き渡り、二人の関係は真選組全体が知ることとなる。
こうして、銀時の予定はだいぶ狂ったが、二人の付き合いは始まった。
(09.08.05)
土銀馴れ初め話です。今後も銀さんは、主導権を握ろうと奮闘すると思います。そして、その上をいく土方さんの天然っぷりに振り回されることでしょう。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
追記:この続きを書きました。初エッチ話です→★
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