「副長、夕飯できてますよ」

「ああ山崎か…」

 

夕メシの時間になっても食堂に現れない俺を山崎が迎えにきた。

 

「どうしたんですか…何か考え事でも?」

「ああ、ちょっとな…そうだ、山崎。今日の三時から四時くらいにかけて暑くなかったか?」

「えっ、何ですか?」

「いいから答えろ。その時間、急に暑くなってまた急に戻らなかったか?」

「今日は昼間でも涼しくて…今は肌寒いくらいですね。急に暑くなるってこともなく、

いつも通り朝から日中にかけて徐々に気温が上がって、それから徐々に気温が下がってますよ」

「やはり俺だけが…」

「何かあったんですか?」

「いや、俺はその時間やたらと暑く感じたんだ。室内にいても外に出ても、な」

「それって…熱でもあるんじゃないですか?」

「近藤さんにも言われたが…暑くなったのはその時間だけなんだ」

「そうですか。…その時間って、副長がかぶき町にいた頃ですよね?」

「ああ」

「だったらココと気候は変わらないですよね。ココとかぶき町で差があるような物凄く局地的な天気なんて…」

「そのはずなんだがな…」

「うーん…あっ、じゃあ凄くいいことがあったとか?ほら、テンション上がると体も温かくなりますし!」

「いや違ェな。その時間は万事屋と一緒だった…むしろテンションは下がっていたはずだ」

「…何だ、そういうことですか」

「ん?原因が分かったのか?」

「ええ、まあ。…副長ってこういうコトに関しては鈍いんですよね」

 

やれやれと言いたげな仕草をして、山崎が大袈裟に溜息を吐く。

「次に暑くなった時は、近くにいる人をよーく見てみて下さい」なんて訳の分からないことを言って、山崎は食堂へ向かった。

総悟といいコイツといい俺のことを鈍い鈍い言いやがって。何だってんだよ!鈍いと思うなら原因を教えていけってんだ!

 

 

 

俺はスッキリしないまま夕メシを食い、残った書類を片付けてから風呂に入り、一日を終えた。

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

「んっ…ふっ……んぁっ!」

 

「…こんなトコも感じんのか」

 

「…んふっ……ふぁっ!…あっ、んんっ!」

 

「おい…コッチも触ってほしいか?」

 

「あ…は、やく…」

 

 

 

 

うわあぁぁぁぁ!!ななななんだ今のは!……ゆ、夢?なんだ、夢か…脅かしやがって。

それにしても何つー夢だ……俺と万事屋が裸で抱き合って口付k…じ、自分の夢ながらおぞましい。

ん?何だよ、まだこんな時間じゃねーか。もうひと眠り…して夢の続きなんて見たら最悪だな。早朝稽古でもするか?

そうだそれがいい!最近屯所に籠って書類仕事ばっかりやってるせいで体が鈍ってるからな。

きっと、体が鈍って精神も弛んだせいであんな夢を見たんだ!そうに違いない!

 

 

俺は寝間着から稽古着に着替えた。

…下着の中がパンパンだったのは朝のせいだよな?絶対にそうだ。それ以外に考えられん!

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

「トシー、今日は朝から随分と張り切ってるみたいじゃないか」

「張り切ってるっつーか、まあ、たまたま少し早く目覚めたんでな」

「おかげで稽古開始前に道場掃除するはずの隊士が怖がってましたぜィ」

「そ、そうだったのか?」

「たまにはいいじゃないか。副長が頑張っていれば他の隊士達の士気も上がるというもんだ」

「そうですかねィ」

 

食堂で近藤さんや総悟と話しながら朝メシを食べる。完全にいつも通りの朝だ。

夢見が多少悪かったが、そのムラムr…いやモヤモヤも稽古で解消されたし、今日も頑張って仕事をしよう!

 

 

 

それから数日は急に暑さを感じることもなく、万事屋に会わないおかげで総悟に過剰反応することもなく、実に平穏に過ごせた。

 

(09.09.21)


土方さん、まだ気付きません(笑)。続きはこちら