二人の関係を公表したい銀さん
早朝の万事屋。その和室には布団に包まった坂田銀時と、
布団から出て、着流し姿で煙草を吸っている土方十四郎がいた。
二人はいわゆる恋人同士という関係である。だが周囲には秘密の関係であるため、
土方が来る時は、色々理由を付けて神楽を志村家へ泊まらせている。
土方が煙草を灰皿に押し付け立ち上がると、そこに銀時が声を掛けた。
「あれっ、もう帰んの?仕事?」
「いや、今日は非番だが…もうすぐガキどもが来る時間だろ?」
「あー、もうそんな時間か…」
「ああ…じゃあまたな」
「…なァ土方、非番なら朝メシ食ってかねェ?」
「!!…こ、ここで、か?」
「いやか?」
「いやじゃねェが…ガキどもは来ねェのか?」
「いや、来るけど?」
「だったら、俺がいちゃマズいだろ」
「うーん、それなんだけどさァ…そろそろいいんじゃね?」
「何が」
「だからさァ、そろそろ俺たちのこと話してもいいんじゃねェかと思ってよ」
「ガキどもに、か?」
「うん」
「……」
「やっぱ…俺みたいなのと関係があるって思われるのはイヤか?」
「そ、そういうわけじゃねェ!そんな寂しそうな顔をすんじゃねェよ」
「べ、別に寂しくなんか…」
「お前がイヤとか、そんなんじゃねェ。ただ…俺たちは男同士だし、アイツらはまだガキだ」
「だから?」
「だから…このことを知ったらショックを受けるかもしれねェ。そしたら、お前ら三人の関係だって、
今まで通りってわけにはいかねェだろ」
「確かに、驚くかもしれないけど…でも、アイツらには知っておいてもらいてェんだ」
「そうか」
「…アイツらは俺にとって家族みたいなモンで、すっげー大事なんだ。そんなヤツらに
隠し事はしたくねェ。それに…」
「それに?」
「アイツらには血の繋がった本当の家族がいる」
「……」
「俺にはいねェけど…でも、お前がいる」
「ぎ、銀時…」
「本当の家族ではないけど、アイツらと同じくらい、もしかしたらそれ以上に大事なヤツが
いるってことを、アイツらに話しておきてェんだ。将来、アイツらがここを巣立っていったとしても、
俺にはお前がいるってことを伝えておきてェんだ」
「銀時、そこまで俺のことを…」
「なァ、ダメか?」
「ダメなわけねェだろ。…分かった、お前の家族に紹介してくれ」
「ありがとう。…じゃあ俺、二人が来る前に風呂入っとくから、ココ片付けといてくれるか?」
「ああ。布団干して、シーツを洗っておけばいいか?」
「うん」
* * * * *
「おはようございます」
「おはよーアル」
「おー」
「…よ、よう」
「ひ、土方さん!?」
「トッシー、何してるアルか」
「…トッシーじゃねェ」
「あー、ゴホン。今日はお前らに大切な話がありまーす」
「大切な話?何ですか?」
「えー、実は俺と土方くんは…真剣にお付き合いをしてます」
「えっ…ぎ、銀さん、お付き合いって…その…」
「恋人どーしってことアルか?」
「そーでーす」
「えーっ!!!!ほほほほホントなんですか、土方さん?」
「ああ」
「えーっ!!!!いいいい一体いつかr「おい、そこのマヨ、銀ちゃん泣かしたら承知しないアル」
「ああ」
新八の動揺は無視して、神楽は土方と話し続ける。
「本当アルな?もし泣かせたら酢昆布一年分ネ。それと、銀ちゃんとの仲を
邪魔されたくなかったら酢昆布一年分買うヨロシ」
「結局買うんじゃねェか…」
「いやアルか?いやなら買わなくてもいいアル。そしたら今度から、お前が来ても
アネゴのとこに行かないネ。それでもいいのカ?」
「…買えばいいんだろ、買えば」
「最初から素直にそう言ってればいいネ」
「あー、ハイハイ」
「そうと決まればまずは朝ごはんネ!銀ちゃん、今日の当番は銀ちゃんヨ!」
「おー、そうか。じゃあ、土方の分も作るからちょっと待っててな」
「早くするヨロシ。で、新八、お前はいつまでブツブツ言ってるネ」
「神楽ちゃん…何でそんなに順応早いんだよ」
「銀ちゃんがマヨを好きなことなんて最初から分かってたネ。銀ちゃん、外でマヨに会うと、
すっごい嬉しそうな顔でケンカ売りに行ってたヨ」
「ちょっ…神楽、余計なこと言うんじゃねーよ!で、土方、てめーはそのキモイにやけ面をやめろ」
「るせー」
「あの…土方さん」
「何だ?」
「…二人がそういう関係だって聞いたときは、正直、驚きましたけど…でも、改めて二人を見てみると…
何か…いい感じだと思います。…土方さん、銀さんをよろしくお願いします」
「お、おう」
「…さーってと、朝メシ作るか………あっ!」
「どうした?」
「…土方ゴメン。今、ウチには米と砂糖しかねェ」
「「「……」」」
(09.07.29)
後編→★
photo by 素材屋angelo