後編
米と砂糖しかない…そこまで聞いて黙って帰ることもできず、土方は万事屋の三人と
スーパーへ来ていた。
「ついでに約束の酢昆布買うヨロシ」
「あー、分かったよ」
「なーなー、いちご牛乳も買っていい?」
「あー、好きにしろ」
「ありがとう、愛してるよ」
「なっ///」
銀時と神楽は、入店早々に自分の好物があるコーナーへ走り、後には土方と新八が残された。
「何だか、すいません。買い物に付き合わせるだけでも失礼なのに、お金まで払ってもらって…」
「育ち盛りのガキがいるのに、米だけで過ごさせるわけにはいかねェだろ。
てめーは何か買いたいモンはねェのか?」
「い、いや、僕はいいですよ。朝食の材料だけで充分です」
「おいおい新八ィ、せっかく買ってくれるっつーんだから遠慮すんじゃねェよ」
「で、でも銀さん…って、いちご牛乳そんなに買うんですか!?」
「あ?こんなん銀さんが本気出せば3日ともたねーよ?」
「何言ってるんですか!今日の朝ご飯の分だけでいいんです!」
「あー、いいって。そんくらい買ってやるよ」
「ほら、土方はいいって言ってるじゃねーか」
「…土方さん、本当にすいません」
「あっそうだ、新八、トイレットペーパーがなくなりそうだから、お前、ソレ買ってもらえ」
「銀さん…いい加減にして下さいよ。今日は朝食の食材を買いに来たんですよ?」
「えー、土方…ダメか?」
「別に構わねェよ」
「ほらほらー、さすが土方!」
結局、食材とトイレットペーパや洗剤などの日用品を大量に買い込み(土方払い)、
四人は大きな袋を下げてヨロヨロと歩きながら万事屋へ戻った。
銀時が朝食作りに取り掛かっている最中、土方の携帯が鳴った。
土方は廊下に出ると、通話ボタンを押した。
しばらくして通話を終えた土方は、台所で料理をしている銀時のもとに向かった。
「銀時、悪ィ」
「…仕事?」
「ああ」
「だったら仕方ねェよ。メシはまだ出来てねーけど…コレ持ってけ」
そういって、土方に先ほど買った(土方払い)マヨネーズを手渡す。
「すまない、この埋め合わせは必ず」
「別にいいって。ほら、行けよ。真選組のヤツら、お前を待ってんだろ?」
「本当にすまない…お前らも、またな」
「またなー」
「お仕事頑張って下さい」
* * * * *
万事屋は結局いつも通り、三人の朝食(食材土方払い)となった。
ふと、新八がずっと疑問に思っていたことを尋ねる。
「そういえば銀さん、どうして今日、お二人のことを僕らに話そうと思ったんですか?」
「ん?あー…昨日、いちご牛乳が半額タイムセールだったんだよ」
「は?いちご牛乳のセールと土方さんとどういう関係が?」
「タイムセールは2時から3時の1時間だけだったわけよ。で、昨日は依頼もなかったから、
それまで昼寝してよーと思って…起きたら5時だったんだよ」
「えっ?だから、それと土方さんとはどういう関係があるんですか?」
「焦るなって。…半額のいちご牛乳を買い逃した俺は途方にくれた。昼メシも食ってねーから、
腹も空いた。そんなところに土方が酒とつまみと大福を持って来たんだよ。そんで腹は膨れたし、
大福で糖分補給もできて、俺はいちご牛乳ショックから立ち直ったんだ」
「はいはい、そうですか」
「だが、しかし!朝起きたら無性にいちご牛乳が飲みたくなったのだよ!
あるだろ?そういうこと!」
「まあ、そうですね」
「だが、昨日なら半額で買えた物を、今日倍の金を払って買う気にはなれない!
悔しい、悔しすぎる!!そんなことを考えながらふと横を見ると土方が…」
「銀さん、アンタまさか…」
「俺はどうにかして土方にいちご牛乳を買わせたいと考えた!ただ本当のことを
言ったら嫌味の一つでも言われて終わりだ。そこで朝メシに誘い、食材と一緒にいちご牛乳を
買わせる作戦を思いついた!幸い、ウチには常にまともな食糧が無い。『お前のために美味い
メシを作りたい』とか何とか言えば、アイツは食材を買うに違いないと踏んだんだ。
しかし、朝メシに誘った時の土方の反応は、俺の予想と違って戸惑っていた」
「はあ…」
「俺の誘いに対する土方の答えは『俺たちの関係を気付かれてはマズいだろ』というものだった。
だから俺は、如何にアイツを大事に思っているか、如何にこの関係を公表したいかを、ちょっとした
演出も交えて話してやったわけよ。そしたらアイツ『そこまで俺のことを…』って感激してよー、
お前らが来る前に布団干して洗濯までしてくれたんだぜ?」
「えっ、アレ、銀さんがやったんじゃないんですか?」
「違ェよ。土方が自らやってくれたんだよ。俺はちょっと片付けといてっつっただけなのによー。
いやー、すげーよアイツ。」
「銀さん…土方さんが可哀想すぎます」
「いや、俺も、メシ食う前に帰るっつーのはさすがに可哀想だと思って、マヨネーズを渡して
やったんじゃねェか。…まあ、あんなでかいマヨがあっても邪魔なだけだしな」
「そのマヨネーズだって土方さんが買ったものじゃないですか!」
「何だよー、お前だって色々買ってもらっただろー。コレは全て銀さんのおかげだよ?」
「土方さんのおかげだろォォォ!!!まったく…土方さんに愛想つかされても知りませんよ」
「だいじょーぶ。アイツは俺にベタ惚れだから」
そう言って銀時はいちご牛乳(土方払い)を飲み干す。
「そうヨ。それにアホだから利用されても気付かないアル」
酢昆布(土方払い)を齧りながら神楽も言う。
「可哀想な土方さん…」
真選組の頭脳と言われるキレ者で、剣の腕も立ち、二枚目でモテる…そんな土方を憐れむ日が
来るとは、思いもしなかった…そんなことを思いながら新八は朝食(食材土方払い)を続けるのであった。
(09.07.29)
photo by 素材屋angelo
えーっと、なんか色々すいません。銀さんはちゃんと土方さんのこと好きですよ?そして、私ももちろん土方さんのこと好きですよ(笑)
ここまでお読み下さりありがとうございました。
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