※「土方さんを拘束してあれこれする話」の続きとなります。そちらをお読みになってからどうぞ↓

 

拘束プレイ翌日の土方さん

 

「総悟テメー、仕事道具を民間人に貸し出すたァどういう了見だ?始末書くらいじゃすまされねーぞ?あぁ!?」

 

銀時とホテルに一泊した翌朝、屯所に戻った土方は真っ先に沖田のいる部屋に行き、彼に手錠を投げ付けると

地を這うようなドスの効いた声で沖田を問い詰めた。

投げ付けた手錠は昨夜銀時が持っていたもので、事もあろうに恋人である土方との睦み合いに使用したのだった。

大事な仕事道具の一つである手錠を民間人に貸し出した、しかも土方に使用すると分かっていて貸し出したのだから

土方の怒りは尤もなことである。

だが沖田は土方の怒りなどどこ吹く風か、涼しげな表情を崩さない。

 

「どうして土方さんがコレを?俺ァ旦那にお貸ししたんですがね…」

「テメー分かってて言ってんだろ?」

「分かりやせん。俺ァただ、ベルトで縛っても簡単に縄抜けしちまう空気の読めない恋人を持った可哀相な旦那に

一晩だけって約束で絶対に抜けられない拘束具をお貸ししたんでさァ」

「誰が空気読めないって!?つーかやっぱり俺に使われるって知ってて貸したんじゃねェか!」

「いやぁ〜、まさか旦那の恋人が土方さんだったとは…」

「テメーは大分前から知ってんだろーがっ!」

「ああ、そういえば知ってましたねィ」

「今、思い出したみたいに言うんじゃねェよ!あー…そのことはこの際どうでもいい。

仕事道具を民間人に貸し出すんじゃねェって言ってんだよ!」

「それはすいやせんでした。上司に始末書書いてもらうんでそれで許してくだせェ」

「上司って誰だァ!俺に書かせる気じゃねェだろーな!?」

「この件を近藤さんに知られたくなけりゃ土方さんが書くしかねェと思いやすぜ?」

「何で俺の責任みたいになってんだよっ!テメーがやったことだろーが!」

「仕方ねェ…じゃあ『ドMなくせにベルトで縛っても簡単に縄抜けしちまう、空気の読めない恋人を持った可哀相な民間人に

一晩だけって約束で絶対に抜けられない拘束具をお貸しして申し訳ありませんでした』って書きまさァ」

「テメー全く反省してねェだろ…。つーか、ドMなくせにって何だ!」

「これだから自分が見えないヤツは困るんでさァ…。

縛られて感じるくせに自分から解こうとするなんざ…本当に何考えてるんでしょうねィ」

「だから誰のことを……ってもう、いい」

 

最初から言っても無駄だとは思っていたのだが、ここまで話して漸く土方も諦めがついた。

 

「おやっ?ドMなことを認めるんで?」

「違ェよっ!テメーが反省してねェのは分かったから始末書も出さなくていい。その代わり冬のボーナスをなしにする」

「えっ、土方さんのですかィ?」

「テメーのに決まってんだろ!」

「そんな横暴でさァ。組合に提訴しますぜ?」

「ウチに組合はねェよ」

「じゃあ近藤さんに…」

「くだらねェ理由で民間人に手錠を渡したテメーが悪い!」

「…近藤さんに言ってもいいんで?」

「構わねェよ。…どの道テメーのボーナスカットにゃ近藤さんの承認が必要だからな」

「チッ…。分かりやした…ちゃんと始末書書くんで許してくだせェ」

「ちゃんと反省したって分かるモンが書けたら許してやるよ」

 

フンと勝ち誇った笑みを浮かべて土方は自室へと戻っていった。

チクショー…開き直った土方は強かった。この件を近藤に話したところで(土方は多少恥ずかしい思いをするだろうが)

土方に使うと分かっていて手錠を貸したとなれば咎められるのは自分だ…珍しく言い負かされた沖田は

悔しいと思いながらも許しを請うしかなかった。

 

 

*  *  *  *  *

 

 

「んっ?トシ、右手どうしたんだ?」

「右手?…あっ、いや、これは…」

 

土方が局長室に出向いて仕事の打ち合わせ中、近藤が土方の右手首に巻かれている包帯に気付いた。

まさか手錠拘束プレイの痕を隠しているとは言えず、土方は言い澱んでしまう。

 

「いつの間に怪我したんだ?気付かなくて悪かったな。痛むのか?」

「いいいや、全然全く痛くねェから!」

「そうか?トシはいつも無理するからな…今日は内勤だけでいいぞ」

「そこまでしなくていい!本当に完全に支障ねェから!」

「トシ…こういう仕事だからこそ無理は禁物だぞ?」

「いや、だから無理なんかしてねェって!」

「それに…上の立場にいる俺たちが率先して休みを取らないと、部下たちまで無理をするようになるぞ」

「それはそうなんだが…でも、コレは本当に何でもないんだ」

「でも包帯は取れないんだろ?」

「そ、それは…まあ…」

「だったら今日は内勤だけだ。実際は軽傷なのかもしれんが、包帯を巻いている時点で重傷に見える。

そんなお前を外回りには行かせられん!」

「わ、分かった…今日は一日屯所で書類仕事をしてる。すまねェ、近藤さん」

「トシが謝ることはないぞ?トシにはいつもフォローされてばかりだからな。

今日くらい俺がトシのフォローをしてやるんだ」

 

ハハハと豪快に笑う近藤に、土方は本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

望んで拘束されたわけではないが、結局は流されて拘束を受け入れてしまったのは事実だ。

その結果、恥ずかしい痕が残ってしまい、それを隠すために包帯を巻いているだけだというのに

近藤に心配を掛けた上、仕事にまで支障をきたしてしまった。

 

 

 

沖田に非を認めさせたものの、自分にも非がないわけではない。

これからはどんなことがあっても流されまいと堅く決意する土方だった。

 

(09.11.16)


手錠拘束編で「手首に包帯巻いてるのを、近藤さんに見られたらどんな言い訳するんでしょう」というコメントをいただき、それに萌えて書いたその後の土方さんでした。

言い訳もなにもできてませんね(笑)。沖田には上手く対処できた土方さんでしたが、近藤さんには無理でした。せっかくの真選組話(?)なので山崎も出したいと思いおまけを付けました。

おまけは土方さんと山崎しか出てきません。よろしければどうぞ