銀さんへの想いを自覚した土方さんがお付き合いを始めるまで(後編)
真選組屯所内副長室。すでに業務を終えて着流し姿となった土方は、ソワソワしながら煙草を吸っていた。
もちろん入浴も済ませてある。
(ち、違うぞ!俺はただいつも通り風呂に入っただけだ。万事屋に言われたからじゃねェ。
だいたい、本当に万事屋が来るかどうかも分からねー。そうだ、どうせいつもの冗談だろ?
そうに決まってる。アイツは来ねー。よ、よし、寝るか!)
「あらー、布団なんか敷いちゃって、土方くんたら積極的ィ」
「うわっ!ててててめー、どどどどこから入ってきやがった!!」
「んー、企業秘密?…おっ、ちゃんと風呂入ってくれたんだ」
言いながら銀時は土方の肩を抱き寄せると、土方から石鹸の香りが漂った。
「ち、違う!つーか放せっ!何しに来た!」
「何しにって…昼間会う約束したじゃん」
「そんなん、てめーが勝手に言ってただけだろーが!」
「えー、そうだっけ?まあいいや。…団子のお礼に酒でも持って来ようと思ったんだけどよー
あの後も結局依頼がなくて…で、カラダでお返ししようかと」
「かかかからだって…いいいい一体何考えてやがる!」
「何ってナニでしょー」
「ふふふふふざけんな!なななな何で、てめーと!つーか、近い近い近い!こ、腰に手を回すなァァ!!」
「土方くんさァ、ぶっちゃけ銀さんのこと好きでしょ?」
「なっ…!!ち、違…」
「うそうそ。そんな真っ赤な顔してー」
「違う!そんなんじゃねー」
「たまには素直になってみ?ほらほらー」
銀時はますます強く土方を抱きしめ、髪をなでたり耳たぶを軽く噛んだりしている。
すると、土方から悲鳴のような声があがる。
「ひっ!や、やめ…」
「おー!ずいぶんと敏感だねー」
土方の反応に気を良くした銀時は、耳を舌で舐めながら、両手で身体の線を確かめるようになでていく。
うなじから背中を通り腰へ、そしてその下へ…とその時、土方が膝から崩れ落ちてしまった。
「おいおい、そんなにヨかった…って、えっ?」
土方の顔を覗き込んだ銀時は青褪めた。銀時の見た土方は羞恥でも戸惑いでも怒りでもなく…ただ静かに涙をこぼしていた。
「ちょ…泣くなって!」
「…な、泣いてねー」
「いや、だって、お前…」
「るせー、も、もう…か、帰れ」
土方は涙をこぼしながら必死に言葉を紡ぐ。銀時はそっと土方の頭をなでる。
「もう、触…な!」
「悪かったって。おめーの反応が可愛いかったからつい…」
「か、かわい…ってなんだ…。お、おれは…おれは…」
「あーはいはい、ゴメンね」
「お、おれは、お、前のことっ…!」
「!ひ、ひじか…」
「だ…からって、こ、こんな…こんな風に、されたかった…わけじゃ、ねェ」
「あ、あの…」
「こんな…ふざけて、する、くらい…なら、もう…」
「ちょっと待って!違う!違うんだって!」
「もう、いい…帰ってくれ」
「違うから!待てって!俺もお前のこと…」
「…同情ならいらねェ!」
「同情なんかで男にコクるか!本気なんだって!そりゃ…いつも冗談っぽくしてたのは悪かったケドよ」
「えっ…じゃあ…」
「うん。好きだよ、土方」
「よ、ろず…」
ドゴォォォォン!!!
「土方さん、おめでとーございやす」
「そ、総悟!…つーか、何でお前らまで…」
爆音と共にバズーカを抱えた沖田が副長室に入ってくる。その後ろにはたくさんの隊士たちがいた。
「お、俺ら、副長室から争う声が聞こえたんで、何かあったのかと…」
「そしたら見たくもねーホモの乳繰り合い見せられたんでィ。慰謝料よこせコノヤロー」
「い、慰謝料ってなんだ!バズーカぶっ放された俺が、何で慰謝料なんだ!!」
「泣きはらした顔で言われても、迫力に欠けますぜ」
「な、泣いてねー」
「ちょっと沖田くーん、何なのコレ?」
「あ、旦那ー、いたんですかィ?」
「知ってて入ってきたんでしょ?いいとこだったのに…。あの後土方くんが『俺も好きだ』っつって
チューして、そのまま雪崩れ込むってパターンでしょ?」
「ああ、どうぞご自由に…」
「あのねェ、さすがに最初から衆人環視ってのは…」
「大丈夫でさァ。ドMな土方さんならきっと喜んでくれますぜ」
「誰がドMだァァァ!それから万事屋も、ふざけたことぬかしてんじゃねェ!」
「えー、お前だってソノ気だったくせにィ」
「そうですぜ。さっさと処女喪失しやがれ土方コノヤロー」
「良かったー、やっぱり初モノなんだー」
「こんな野郎に突っ込みたいと思うのは旦那くらいですぜィ」
「いやいや、そうでもないんじゃない?なあ?」
唐突に部屋の外にいた隊士たちに話を振る。話を振られた隊士たちは「あ、いや、その…」とか
「違うんです、副長…」とか意味のない言葉を発するばかり。
「お前ら…」
「ん?」
「何ですかィ?」
「全員、出てけー!!!」
土方の怒声と同時に隊士たちは散り散りになり、銀時と沖田は部屋の外に締め出された。
「あーあ、仕方ねェ、今夜はこれで帰るか」
「また来るんで?」
「そりゃあ、ね。アイツが俺んちに来るとは思えねーし」
「よく分かってらっしゃるようで」
「今度は邪魔しないでよー」
「どうでしょうねィ」
こうして銀時は屯所を後にし、沖田は自室へ戻った。
(09.07.29)
photo by 素材屋angelo
自分で焚きつけておいて、成功すると邪魔する…そんな沖田が好きです。この二人はこれからも邪魔されながらイチャイチャしていくと思います。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
追記:続き書きました。よろしければどうぞ→★
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