ホテル生活六日目

 

「おはよー」

「…一晩で急にやつれたんじゃねェか?具合でも悪いのか?」

 

昨夜、銀時は一睡もできず自慰行為に励んでいた。

最初は限界だけど我慢しなきゃと思っていたが、途中からは土方をどう抱くかだけを考えていた。

ちなみに土方の顔や身体に飛ばした精液は明け方、キレイに拭った。

 

「ああ、平気平気。銀さんは今日も元気ですよー」

「元気っつって、もっ!」

 

土方がバッと自分で自分を抱き締める。

 

「ほらほら、人の心配してる場合じゃないでしょー。はい横になってー」

「いや、お前、明らかにおかし…」

 

自分に覆い被さって見下ろしてくる銀時の、怒気を孕んだ目に土方は気圧される。

銀時は今までと打って変わって低い、地を這うような声色で話し出す。

 

「だったらどうすんだよ?お前、自分一人じゃ治まらねェんだろ?今更、他のヤツと交代しろとか

言うんじゃねェよな」

「そ、そういうワケじゃ…」

「なら黙ってろ!」

「ちょっ…んうっっ!」

 

噛み付くように口付けされ、無理矢理に舌を絡め取られる。変だ、おかしい、いつもの万事屋じゃない!

そう思うものの、薬による身体の火照りは止められず、土方はなすがままになる。

 

 

「あっ…はぁっ……ああっ!」

 

 

性急に一物を扱かれあっという間に先走りが漏れる。銀時はそれを指に絡めると、入口をひと撫でしてから

つぷりと挿入した。そのまま指は一直線に昨日覚えたばかりの前立腺へ向かう。

 

 

「ああっ!…ソコ、やあぁっ!…ダメっ、あぅぅっ!」

 

 

ズルッと指を引き抜くと、今度は二本まとめて挿入する。入れた瞬間は苦しげな声が上がったが、

前立腺を刺激するとすぐに喘ぎ声に変わった。

 

 

「はぅあっ!…やめっ…もっ、出るっ!ああっ、ああっ……あああっ!!」

 

 

土方が達する前に空いている手で一物を包み込み、精液を手で受け止める。ナカに埋めていた指を抜くと

自身の前を寛げ、受け止めた精液を自身の一物に塗りたくる。そして、強い刺激に呆然としている土方の

後孔に自身の先端を宛がった。

 

 

「よろず、や?」

「…っ!」

 

 

薬に侵され熱を帯びているにも関わらず、自分を気遣うような視線を送る土方と目が合い、

銀時はサァッと血の気が引いていった。そしてガバッと土方に抱きついて謝った。

 

「ゴメン。土方ゴメン。本当にゴメン…」

「万事屋?」

「ゴメン。もう二度としないから。ゴメン…」

「ちょっ…あぁん…」

「へっ?」

 

自分が心の限り謝罪してるというのに、土方からは赦しの言葉より先に嬌声が上がる。

そこで改めて現状を把握した銀時は、自分たちがとんでもない体勢でいることに気付いた。

銀時は土方の肩口に顔を埋めるようにして抱きついた。つまり、銀時の頭の真横に土方の頭がある。

身長が全く同じ二人である。頭の位置が同じということは、肩の位置も、腰の位置もだいたい同じで……

互いの昂りも裏と裏を合わせてピッタリと重なり合っていた。呼吸するだけで互いのモノが微妙に動き、

そこからもどかしい刺激を生んでいた。

 

「え、えーっと…とりあえず、い、一緒に、抜いて…イイデスカ?」

「……」

 

銀時の申し出に、土方は頬を赤らめて頷くと手を伸ばして二本のモノを一緒に握る。

その上に銀時も手を添えると、二人で同時に扱き始めた。

 

 

「あんっ、あんっ…あぁっ!」

「くっ…ふっ……はぁっ」

 

 

このままでも銀時は充分に気持ちいいが、土方がこれだけでイケないことは二日前に分かっている。

そこで銀時は身体を起こすと、土方を抱き締めていた手を離して後孔を探った。

 

 

「…ぁ、ぁぁ…」

 

 

ナカの快感を知ってしまった土方は、銀時の手が後ろに伸びると期待で腰を揺らした。

その様子に銀時は、ゴクリと生唾を飲み込むと二本の指を一気に挿入した。

 

 

「ひぁぁっ!…はぁん!…あぁっ!」

「…っ!…くぅっ…」

 

 

きゅうきゅうと指を締め付けるナカに、銀時の限界が近付く。銀時は更に指を増やして三本入れると、

一物を握った手を土方の手ごと固定して、自身の腰を揺すり始めた。

 

 

「ふぁっ!…あぁっ、ああっ…あぁんっ!」

「くぅっ…」

「あっ、あんっ!…よろず、やぁん!」

「ひじかた…なまえっ、呼んで…」

「ぎ、ぎんときっ…」

「うぁっ…ヤバっ!気持ち、よすぎっ…」

 

 

ナカに指を入れたまま、土方と自身の手に包まれている一物を腰の動きで抜き差しすると、

まるで挿入しているかのような錯覚に陥る。互いの手の中で一物の括れ同士が引っかかる感触が、

とてつもなく気持ちイイ。銀時は快楽に溺れそうになりながらも、必死で土方をイカせるために手と腰を動かした。

 

 

「ああっ!ああっ!ぎんときっ!イクっ!イクっ!ぎんときっ!……あああああっ!!!」

「うぅっ…」

 

 

土方の腹と胸に、二人分の白濁が飛び散った。銀時は指を乱暴に抜くと、さっとベッドから降りて蹲った。

 

 

ムリムリムリムリムリ!…さっき「二度としない」って言ったけど無理ィィィィ!今度こそ限界。

もう絶対我慢できない!土方に突っ込みてェェェェェ!!

 

頭を抱えて髪を掻き乱しながら銀時が悶えているところに、土方から声がかかった。

 

「…ろずや、万事屋。…おい、銀時!」

「は、はいっ!」

「ったく、呼んでんだから返事ぐらいしろっ」

「あっ、ごめ…」

「身体が…変なんだ…」

「あっ…うん、もう一回…」

「いや、そうじゃなくて…」

「……えっ?」

 

内心で葛藤したまま銀時がベッドに上がると、土方が違うんだ、と言った。

 

「違うって?」

「…ヤりたく、ならねェ」

「………はい?」

「だから、ヤりたくならねェんだよっ!」

「それって……薬が抜けたってコト?」

「分かんねェけど、多分」

「そっかぁ…良かったな…」

 

銀時はヘナヘナとへたり込んだ。それを見て、土方は慌てて駆け寄る。

 

「おっ、おい!大丈夫か!?」

「あー、だいじょぶだいじょぶ。ちょっと気が抜けただけ…お前、シャワー浴びてこいよ」

「あ、ああ…本当に大丈夫なんだな?」

「うん。平気」

 

 

 

銀時をベッドに残したまま土方は浴室に向かった。

シャワーの音を聞きながら「ホントに良かった…」と呟いて銀時は眠りについた。

 

 

*  *  *  *  *

 

ホテル生活七日目

 

「おい、起きろ万事屋!朝メシ出来てんぞ!」

「お、おう…」

 

土方は乱暴に銀時を蹴り飛ばして起こした。昨日、薬が抜けた土方はシャワーの後すぐに屯所へ戻るかと

思ったが、意外にも「本当に薬が抜けたか分かんねェから、念のため明日までここにいる」という台詞が飛び

出したのだ。「お前は帰ってもいいぞ」と言われたが、もし症状が出たらいけないからと銀時も一緒に残った。

症状が出たら…というのは建前で、銀時はただ土方と一緒に過ごしたいだけだたのだが。

 

症状が止まった土方は、すっかりいつもの横柄な態度に戻っていた。ちょっとでも視線を向けようものなら

「ナニ見てんだコラ」と凄んでくる。せっかくの機会なんだからと話をしたい銀時と違って、

土方は鬼の副長モード全開である。

屯所に電話をして山崎に仕事道具を運ばせ、ホテルは臨時の副長室となった。

 

「あのー、銀さんヒマなんですけど…」

 

銀時がめげずに話しかける。

 

「ああ?だから帰っていいっつっただろ」

 

書類に向かったまま土方が応える。

 

「民間人の前で、大事な書類広げちゃっていいんですかー」

「問題ねェ書類だけを持って来させた」

「あっそ…」

「ああ…」 

 

 

結局その日、二人はほとんど目を合わせることなくただ同じ空間にいるだけであった。

そして翌朝、土方は屯所に、銀時は万事屋にそれぞれ帰っていった。

 

(09.09.23)


 

あ、あれっ、帰っちゃった; 一週間も一緒に過ごしたのに何の進展もなしかよっ!と皆さんに言われる前に自分で突っ込んでおきます(笑)

というわけで、もう少し続きます。