「ハァ、ハァ、土方っ……」
真昼間から布団に寝そべりケツに指を突っ込み乳首をつまみ、土方とヤった日のことを思い起こして悶える俺。声を抑え切れないから、ヤるのはいつも一人の時。新八は買い出しに、神楽は遊びに出掛けた隙にぐちゅぐちゅコリコリ。何やってんだとせせら笑う自分が頭の片隅にいる一方で、ムラムラするのを止められない。
「土方、すきぃ……」
あの一夜以来、俺の中で何かが吹っ切れた。
好きになっちまったもんは仕方ねぇ。好きなヤツとはヤりてぇ。だからこれも当然の反応。
次はいつ会えるかな。


「ただいまアル」
「戻りました」
「お帰ぇり。二人一緒だったのか」
新八と神楽が揃って帰宅。未だ寝巻の俺に、いつ依頼人が来てもいいように着替えておけと小言モードになる新八。今の今までシコってたとは言えねぇから、適当に返事をしておいた。
「銀ちゃん、いいこと教えてあげるネ」
「明日、土方が休みなのか?」
「えっ」
きょとんとした神楽に違うのかと問えば、何で分かったのだと逆に問われる。
「お前の『いいこと』なんて大概土方のことじゃねーか」
鼻をほじり、さして興味のないふりをしつつソファーに腰を下ろした。神楽も横に座る。
「今夜はくるま屋って所で飲むらしいヨ」
「へいへい、じゃあ行ってみるかね」
実はそろそろ土方情報が来る頃じゃないかと密かに期待していた。億劫そうに装ってみたものの、体の疼きを制御する方により神経を使う。ヤるのが楽しみだなんてガキにゃ理解不能に決まってる。
この前は一発で終わっちまったが、今回は朝までいられるだろうか……この日は、油断すると鼻歌が出そうになる浮ついた一日になった。

*  *  *  *  *

「よう奇遇だな!」
「あ、うん」
情報通りの飲み屋に土方はいた。二人用の狭いテーブルにゴリラと向かい合って。
先に近藤が俺に気付き呼ばれる。振り返った野郎が若干気不味げに見えたのは勘違いじゃないだろう。あーあ、今夜はおあずけか。
まあ、土方だって毎回一人で飲みに行くわけじゃねーよな。そりゃそうか。
「折角だから一緒に飲まないか?」
「あー……」
近藤の誘いにどう返したものか迷う。コイツはおそらく、俺と土方がちょっとした飲み友達みたいな関係なのを知らねぇだろう。前回、友達の一線を越えちまったことも当然。つまりゴリラの中じゃ、俺達は寄ると触るとケンカする仲のはず。
第一、この席は椅子が二つしかねぇから俺が加わるとなりゃ移動しなきゃなんねぇ。そこまでして飲む理由はねぇな。土方に欲情してんのもバレたら面倒だし。
「悪ぃんだけど……」
「あーやりかけの仕事を思い出したァ!」
断ろうとした瞬間、ゴリラが何やら喚いて立ち上がる。
「近藤さん?」
「すまんなトシ!万事屋、トシをよろしく頼む」
「はあ……」
ここは俺が持つと金まで置いて、近藤はそそくさと店を出ていった。
突然のことに土方は訳が分からない様子で閉口している。しかし俺は理解した。ヤツは俺の気持ちを知っている。新八達の持って来る「土方情報」の出所がそこだったんだ。コイツと俺がお近づきになれば自分とお妙も、なんて打算があるのかもしれねぇが、何にせよ土方の相手として俺は合格したみたいだな。
体だけの関係だと知れたら反対されるだろうけど。
「座れよ」
「ん」
空いた席に腰掛けると、店員が新しい箸と取り皿を運んできて、土方はつくねを注文した。それが今日のオススメか。
それからはいつも通り。近藤の態度に触れられなかったことに胸を撫で下ろしつつ、雑談をしながら酒を酌み交わしていった。


「ありがとうございましたー」
近藤の金は土方が財布にしまった。後で返すつもりのようだったから俺も普通に半額出した。冷たい夜風が火照った体に心地好い。
「二軒目、行こうぜ」
「…………」
店を出て袖を引けば、やや眉間が険しくなったものの拒絶はされず、ホテル街へ足を進めてくれる。もう既に股間はムズムズ。吐き出す息まで熱い気がした。

浮かれ調子で早足になるのをしばしば宥めながら、この前と同じホテルに入っていく。
この前と同じく交代で風呂を済ませ、この前と同じく俺が抱かれる側を買って出る。だがそこから先はこの前と同じというわけにはいかねぇ。一人の時間を作っては日毎自身を慰めていたんだ。焦らしプレイ紛いのクソ丁寧な前戯は不要。自分の手じゃできないことを今すぐヤりたい!
つーわけで、
「あむっ」
「お、おい」
土方のムスコさんを咥えさせてもらった。急展開に戸惑っているようだが気持ち良けりゃ大人しくしてくれんだろ。
「ふ、んう、ハァッ……」
口の中のモンが硬くなるのに呼応して俺のケツはじくじく唸る。早くデカくなれ。そんでもって奥深くまで貫いてくれ。

願いが聞き届けられたのか俺のテクニックの賜物か、土方のモノは間もなく勃ち上がった。
風呂上がりから浴衣一枚でパンツは履いてねぇし、ここに乗っかり腰を振りてぇところだが、そこまでがっついたら好きだとバレかねねぇ。そう考えて俺は控えめに誘いをかけることにした。
布団に仰向け帯を解き、膝を胸まで引き寄せて穴を晒す。
「風呂場で慣らしてきたから……入れろよ」
「…………」
一瞬、土方の表情が思い詰めたもののように見えた。けれども直にいつもの無愛想な顔へ戻り、疼きで半ば判断力の低下している俺は見間違いで済ませてしまう。
土方は枕元の小箱からゴムを取り出し装着。その気遣いにぶわっと全身が痒くなった。前はゴム使ったこと、終わってから知ったもんな。
「あっ!はうぅぅぅん……」
先端が宛がわれて穴が広がる感覚。次いで、肉を押し分け侵入してくる圧倒的な存在感。これこれ。これが欲しかったんだ!
「もっと、おく……」
土方との合体はこんなもんじゃねぇ。もっとずっぽりハマるってことを既に経験済み。二度あることは三度あるっつー諺もあるくらいだし、これは次もあること確定だろう。
「はぁん!いいっ!」
全部入った全部入った全部入った。気持ちいい気持ちいい気持ちいい。土方好き土方好き……
「土方すっ――」
「……ん?」
「あ、いや……」
ヤッベェェェェェ!!気持ち良すぎてとんでもねぇこと口走るところだった!
「すっごく気持ちいいから、もっとして?」
「チッ、何だよ」
「ふあっ、あっ、あんっ!」
何とかごまかせたみてぇだな。今度から自分でヤる時も好きとか言うのやめよう。本番で言えないからこそ一人の時くらい、とテメーを甘やかしたのが悪かった。寧ろこの関係を続けるための訓練と位置付けねぇとな。
でも、
「ああああああっ……」
土方のチ〇コが出入りするたび、最大級の快感に襲われて正気を保っていられない。
「いいっ!そこっ!ああっ!!」
自分の指じゃこうはならない。射精をせずに中でイキまくり。全身が震えて目が開けられなくて、土方が何を思って俺を抱いているのかなんて、欠けらも想像できなかった。


「ふい〜っ……」
二回戦を終え、俺は最高に心地好い余韻に浸りつつベッドに俯せていた。土方はその横に座り煙草を吹かしている。
バックもすげぇ良かった。枕で口塞げるから安心して喘げるし。だけど欲を言えば中に出してほしかった。後始末が大変なのは分かるけど、土方が俺で感じたって証がほしい。
あ、そうだ。
「次は騎乗位にしようか?」
「……まだヤんのか?」
備品のコンドームは使い切ったから、三回目以降はごく自然に生ハメへ持っていける。
「お前、疲れてねぇのか?」
「大丈夫」
「ゴムが……」
「あー……まあ、後で洗えばいいから」
ていうか土方は乗り気じゃない?疲れてんのかな?俺と違って本当に二回しかイッてねぇからまだいけると踏んだんだけど。
もしかして俺じゃ一晩に二回が限度とか?
「あのな」
「ん?」
煙草を消し、こちらを向いた土方は何かに耐えているような顔をしていた。いきなり空気が重くなる。居住まいを正さねばならぬ雰囲気に圧されて体を起こすも、土方と違い俺は全裸。丸出しはいかにも間抜けな絵面になるので下半身には布団を掛けた。
「すまない!」
「は?」
頭を下げられたが何のことだかさっぱり分からねぇ。すると土方は下を向いたまま語り始めた。
「俺は、卑怯者だ。体だけでも手に入るならとお前を抱いて、そのくせ、過去の男に嫉妬してる」
「へ?」
「もう、終わりにしたい」
「えっ!」
卑怯者とか過去の男とか、土方の言いたいことは半分も理解できなかったけれど、最後の言葉だけは受け入れられねぇ!俺は土方に縋り付いた。
「銀さんとヤるの気持ち良くなかった?あ、三回はヤり過ぎだよな?お前、仕事の疲れも溜まってそうだし、今夜はゆっくり風呂浸かって寝ようか?」
「そういう問題じゃねぇ。悪いのは俺だ」
「ど、どういうこと?」
「俺は……テメーに惚れてる」
「はい?」
えっ何これ?幻聴?だっておかしいもの。銀さんが土方くんのこと好きなんだよ?ヤりたくて堪んないくらい大好きなんだよ?なのに何で「もうヤりたくない」って言ってる土方くんから愛の告白が聞こえんの?
呆然とする俺へ土方はもう一度「すまない」と謝罪した。
「ずっと、好きだったんだ。だから時間作ってはかぶき町うろついて、テメーとたまに酒飲むだけで幸せだった。今日の近藤さんの態度、見ただろ?俺の気持ち知ってて、気を利かせてくれたんだ」
「あ……」
あれは土方のためにやったことだったのか……。でもだったら何で終わりにしたいんだよ。
「お前に誘われて、迷いはしたが、惚れた相手に触れたい欲が勝っちまった。だが実際にヤってみるとテメーは妙に手慣れてるというか……ローションは常備してるし感度もいいし……」
「それは」
「いや、それをとやかく言うつもりはねぇ。そんな権利もねぇのに俺が勝手に妬いてるだけだ」
そうだったのか。土方はそんな辛い思いをしてまで俺と……馬鹿なヤツ。でも初めに馬鹿なことやったのは俺だ。
「ごめん土方、謝るのは俺の方」
「え?」
「俺、お前のこと好きだよ。だからヤりたくて誘った」
「は?……あ?」
口をパクパクさせて、驚きのあまり言葉が出ないみたいだ。
ちょっと、いや、かなり恥ずかしかったけれど土方の両手を握ってみる。
「土方が楽にできるよう遊びを強調して、土方とできるのが嬉しくて気持ち良くて……だから、ごめん。それから、俺と付き合って下さい」
「っ……はい」
俺達は互いを抱き締め合って、そして、初めて口付けを交わした。

(15.06.29)


前中後編では終わらなかったので壱、弐、参…にしました。次は銀土のターンです!
続きの更新まで少々お待ちくださいませ。

追記:続きはこちら(18禁ですが直接飛びます) 


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