何で土方なんだ。俺のタイプは結野アナみたいな女性だったはずだ。「だった」というか現在もそうだ。できることなら結野アナと結婚したい。いや、結野アナだってそれを望んでいる。最近のテレビからの熱視線を見れば分かる!なのに……
何であんな野郎に惚れちまったんだァァァァァ!!
百歩譲って男であることは良しとしよう。それでも結野アナのように笑顔が爽やかとか、結野アナのように清楚な中から滲み出る色気があるとか、そんな魅力があるなら分かる。だがアイツときたら目つきは悪くてヤニ臭ェ、口癖「切腹」の物騒なチンピラ警官だ。しかも、切腹切腹って言い過ぎて部下には軽く受け流されちまう可愛……間違えた、馬鹿なヤツでマヨラーで、もう何重苦なんだか分からねェ。
そんなわけで俺、坂田銀時は、大して鬼でもないくせに鬼の副長なんて呼ばれてる、土方十四郎くんを好きになっちまったんだ。 でもこれは何かの間違い。そのうち消えてなくなる感情なんだ。
甘味拒否反応(あまみアレルギー)
「銀ちゃん、いいこと教えてあげるネ」 「いいよ別に」 昼メシの素麺を啜りながら神楽が言う。この雰囲気は土方関連だと察して断るも、恋に恋するお年頃は止まらない。 「トッシー、明日は休みなんだって」 「ああそう」 すぐに消滅するかと思われた恋愛感情は、残念なことに寧ろ着実に成長を続けながら俺の中に居座っていた。すると周囲にも気取られやすくなるようで、初めは神楽、次いで新八にも知られる始末。要らないと言っているにもかかわらず、休みの予定だの巡回ルートだのとV字情報を持ってきやがる。 認めたくはないが土方のことは好きだ。でもあんなヤツと仲良くしたいとは思わない。アイツを見ると微かに股間センサーが反応しちまうけれど、付き合いたいとは思わない。 何度も説明したのに照れ隠しだと誤解されて今に至るわけだ。 「土方さんが最近よく行く居酒屋を教えてもらったんで、行ってみたらどうです?」 「行かねーよ」 「お金ないアルか?」 「飲みに行くなら夕飯いりませんよね?だったら生活費から少し出してもいいですよ」 「そーですか……」 土方と飲まなきゃ夕飯抜き――こうして半ば強制的に距離を縮められていた。これでアイツが俺に惚れたらどうすんだよ。 野郎は真選組なんつーむさい集団にいるくらいだから男もイケる口かもしれねェ。寧ろもう経験あんのかな。だとしたら俺とも一発……じゃなくて、えーと、えーっと……とにかく好かれても迷惑だ。告白なんてされた日にゃ、受けなきゃなんねェじゃん。断ったとしても、新八と神楽にバレたら受けろって言われるに決まってるじゃん。 つーわけで、V字ヘアーなんてもんは可能な限り見ないで済ませたかった。
* * * * *
「よっよう、奇遇だな」 その夜、目的の居酒屋まで連行されてしまった俺には、カウンターで一人、マヨネーズを肴に飲むクソ野郎の隣に座る道しか残されていなかった。また会ったな、なんて緩んだ表情に心臓が締め付けられる。二人の画策を知らないコイツは頻繁に出くわす俺のことをきっと、思考も嗜好も似たヤツだと感じているに違いない。その証拠に、初めのうちこそ真似するな何だと突っ掛かってきたものの、今じゃすっかり打ち解けていた。 俺が席に着くなり「今日の鰹は特別美味い」と言って鰹のたたきを注文する土方。程なくして出てきた皿をそのままこちらへ寄越した。見れば土方の前にも同じ皿。マヨネーズに埋もれてはいるが僅かに鰹らしきものが見える。 「……どうも」 一品目は先に来ていた方の奢り――そんな暗黙の掟ができるくらいに俺達は二人の時間を重ねてしまっていた。 元からそれなりに思考も嗜好も似ていたんだ。だからアイツらにつつかれなくても飲み屋で鉢合わせることはある。偶然が続くうちに運命を感じ……ではなく、毎回喧嘩すんのもバカらしくなって、普通に飲むようになっていった。
でもちょっとこの店はマズイ。
狭い敷地にできるだけ客を詰め込めるよう設計されたせいで、隣との距離が異様に近い。剥き出しの右腕に土方の着物が擦れて鳥肌が立つ。 「寒いなら袖通しゃいいだろ」 「べっ別に寒くねぇし!」 垂れ下がる右袖をつままれただけで成長しかけるムスコ。テメーの好きにはさせないと一気に酒を呷ってやった。 小さな店は今夜も満員御礼なのに、目は土方の姿のみを捉え、耳に入るのは土方の声。土方の煙草を嗅ぎとって、土方の勧める料理に舌鼓を打ちつつも、掠めた手の温かさに熱が上がる。俺の五感全てが隣の男に向かっていた。
「おい、大丈夫か?」 「へーきですー」 真っ直ぐ立てなくなった俺は土方に右側を支えられながら店を出た。手と手が触れる感触に、普段は謙虚で理性的な銀さんの下半身も暴走寸前。 「二軒目行ってみよー!」 「もうやめとけ」 酔っ払いを適当にあしらって万事屋へ歩みを進める土方。だがもう俺の腹は決まっていた。 「はいっ、二軒目に到着ぅ」 「え?」 手近なラブホテルの前で足を止めれば、当然のことながら土方は戸惑い狼狽える。 「早く入ろうぜ土方くん」 「ここ飲み屋じゃねーから!」 そんなこと分かってる。手順が足りないのだって百も承知。でも思春期のガキみてぇに疼く身体に酒の力も加わって、止める手立ては他にないんだ。 「銀さんもう飲めなーい」 「だったら家に……」 「ダメか?」 「…………」 背を丸め、上目遣いになるようにして伺いを立ててみる。前髪に隠れた眉間に皺を寄せ、真意を探らんと俺を睨みつけてきた。つまり男が無理なわけではないらしい。 諦めか呆れかそれとも……暫くしてハァと息を吐いた土方は、俺を支える左腕に力を込める。それだけで思わず発射しそうになるのを堪えつつ、土方と一緒にホテルへ入るのだった。
すぐさま合体といきたいところではあったけれど、がっついてると思われたくはないし、少しでも土方の抵抗感を削いでおきたくて、交代で風呂に入った。ついでに風呂場で一回ヌいておいたが、もう勃ってきやがる。単なる宿の備品だってのに、揃いの浴衣だとテンションが上がっちまう。 仕方ねェか。ちゃんと惚れた相手とヤるなんざ初めてだからな。 「俺が下でいいよ」 「そうか」 誘った方が譲る形をとりながら、これも本当は配慮したつもり。一刻も早く繋がりたいし今後もヤれたら嬉しい。それには土方が楽な側を選択するのが正しいに違いないと。 帯も浴衣もベッドの外へ放り投げ、全裸で布団に潜り込む。パンツは風呂場で脱いだまま。可愛いのじゃなかったから。 「早くー」 「ああ」 浴衣を脱ぎ捨てベッドへ上がる土方。黒のボクサーブリーフなんて格好良いもん履いちゃって、イケメンは違うね。 ばさりと掛け布団をめくり俺の上へ。正面から見上げると心臓の辺りがむずむずして、耐え切れなくなった俺は顔を背けた。 「うひゃっ?」 耳にかかる髪を撫でられただけで変な声が出て唇を引き結ぶ。これは酔っ払いの性欲処理。さらっとさくっとスッキリさせて次に繋げねぇと。 「んんっ!」 啄むように耳へ口付けが落とされ、右手は後頭部の髪をさわさわ、左手は枕の横の俺の手に指を絡ませてきた。 え、何これ?何でこんな丁寧にヤってんの?さっさと突っ込めばいいじゃねーか。 「はぅん!」 耳の中にふっと息を吹き込まれてまた妙な声が出る。下半身は焦らしプレイよろしく疼きを増し、胸の周りがこそばゆい。 つーか痒い!心臓が痒い!今すぐその、なでなでちゅっちゅをやめろォォォォォ!銀さん即ハメ上等の爛れた大人だから!セ〇クスは微糖派だから!優しくされると勘違いしちまうからァァァァァ!
そんな心の叫びなど届くはずもなく、土方の唇は首筋を通って下りていく。乳首が期待に尖りチリチリと鈍い痛みを発していた。 「あぁっ!」 そこに触れられた瞬間、電気ショックを受けたかのように俺の身体はびくんと跳ねてベッドを揺らす。そして「変な声」どころではない。完全なる喘ぎ声を上げてしまった。 この程度で乱れちゃなんねェ。土方を求める気持ちを知られたら引かれちまう。都合の良い相手じゃなけりゃ、身体の関係は成立しねェ。 「う、はっ!んぐ!」 左の乳首を吸われ、右は指の腹で円を描くように。 喘がぬよう耐えに耐える俺の意思に反してムスコは歓喜の涎を垂らし、腹まで濡らしていた。
(15.06.08)
甘い物は好きだけど甘い関係は求めていない銀さんのエロエロ馴初め話です。前中後編くらいになる予定です。続きは少々お待ちください。
追記:続きはこちら(18禁ですが直接飛びます)→★
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