銀さんと銀さんと土方さんを致さないと出られない部屋に入れてみた
土方十四郎が目を覚ますとそこは何もない真っ白な部屋であった。 広いのか狭いのか、昼なのか夜なのか、ここへ来る以前に何処で何をしていたのかも不明。明らかなのは、かつて江戸の特別武装警察であったころの隊服を着ていることと、近くで寝息を立てている男のこと。 土方は男の脇腹へ蹴りを見舞った。傍にいたのがコイツだったから、落ち着いていられたなどという感謝は微塵も見せず。 「おい起きろ万事屋」 「んー……」 眠い目を擦り、ふわあと欠伸をして目を開けた坂田銀時は、いつも通りの普段着姿。 「ここは何処だ?」 「…………は?」 眠気眼でのっそり辺りを見回して、異様な光景にやっと覚醒。立ち上がり、自分の体を確認するも、木刀がない以外に異常はなかった。 「え……何ここ?」 「テメーも分からねェか……」 やれやれと頭を掻く土方も丸腰。敵対する者に拉致されたのかと気を引き締めた。
すると、ぴょこ〜んと間の抜けた音がして、二人の視線よりやや高い位置にいきなりテレビモニターのようなものが出現した。 [おはようございます。銀時様、土方様] 「たまァ!?」 「なっ!?」 映し出された馴染みの機械(からくり)家政婦にビックリ仰天。しかし、更なる驚愕の事実が二人を襲う。 [皆様がいるのは、セックスしないと出られない部屋です] 「「はああああああ!?」」 [源外様が開発した……などという説明は無粋ですね。それでは頑張って下さいませ] 「いやいやいやいやいや!」 「全っ然、無粋じゃない! すっごく重要!」 [必要な物は揃えておきましたから] 「「おいいいいっ!!」」 無慈悲にも画面はプツリと切れ、また元の何もない真っ白な空間が広がった。 俄かに信じ難いことではあるものの特殊な空間にいることは確からしい。かといって、はいそうですかと部屋を出るための行動を起こす気にはなれない。 そこに再び、ぴょこ〜んと音が鳴った。 [一つ言い忘れていました] こちらは二つも三つも言いたいことがあると、たまを睨み付ける銀時と土方。 [三時間を超えると延長料金が発生します] 「「ラブホかァァァァァ!!」」 どうでもいい情報だけを与えて、たまは消えた。 「おいおいおいおい!」 「待てぇぇぇぇぇぇ!」
そこから先、叫んでも喚いても「ぴょこ〜ん」は鳴らず。向かい合う疲れ果てた顔に諦めの色が滲んだ。 腹の底から息を吐き、銀時が言う。 「どうする? ヤる?」 「それしか方法がねえっつーなら、まあ……」 恋人同士の彼らにとって、それは特段困難な行為ではない。
ただ一つ、先程から考えないようにしていた背後の気配を除いては。
「なあ」 「「!!」」 無視を決め込んでいた気配から遂に声が掛かってしまい、びくりと背筋を伸ばした二人は恐る恐る振り返った。 そこにはもう一人、坂田銀時が。 飄々としている風を装いながらも明らかにこちらを警戒する眼光は鋭く、銀髪天然パーマは万事屋と呼ばれる男のそれより幾分長い。服装も、野袴に防具・鉢巻まで巻いて、今にも戦へ出て行かんばかりの、否、まさに戦の最中といった出で立ちである。 「どういうこと?」 「たまが……さっきの女が言ったことしか分からねーよ」 万事屋の方の銀時は、答えてやりながら思案する。 たまは「皆様」で協力して部屋を出ろと言った。しかしこれは…… 「ああ、そうか!」 ぽんと手を打ち両手で口の端に壁を作る。 「何処かにポニ方くんもいるんだよ。おーい、ポニ方くーん、怖くないから出ておいでー」 一縷の望みをかけて恋人の過去の姿を呼んでみた。 ここで待望の「ぴょこ〜ん」が来る。 [あと二時間三十分で延長となります] 「…………」 「それだけかいィィィィィ!」 銀時のツッコミは虚しく空中に霧散した。
先に腹を決めたのは土方であった。性行しないと出られないなどという意味不明な部屋に、銀時以外の者と閉じ込められなかったのだから良しとした。 「おい若ェの」 「……何? つーか誰?」 「そのうち分かる。とりあえずヤるぞ。脱げ」 「はっ?」 言いながら土方がジャケットを脱ぎ捨てれば、どういう絡繰りか、布団が出現する。 これは好都合と、まだ幼さの残る青年をそこへ転がして防具を外していった。 「えっ……ちょっと、お兄さんマジ?」 「ここから出てぇだろ? だったら大人しくしてろ」 「俺まだ心の準備が……」 「情けねェ口聞くな。白夜叉ともあろう者が」 「何でそれを……」 己の二つ名を知るこの男、敵ではないようだが味方の覚えもない。 手掛かりは自分によく似たもう一人の男にありそうだ。 「もしかしてオッサン……痛っ!」 白夜叉の頭を銀時は横から小突いた。 「何でこのコがお兄さんなのに俺はオッサンなんだクソガキ」 「ってぇな……うぉい、お兄さんんんん!」 銀髪同士が小競り合いをしている間、土方は組み敷く相手の下半身を丸出しにする。おあつらえ向きに足元へ転がっていた潤滑剤。だらんと垂れ下がる陰茎へ、それを垂らしていた。 暴力的なオッサンの対処は後回しにしようと白夜叉は土方の腕を掴む。 「少し落ち着こうかお兄さん」 「あ? 落ち着いてたらヤれねぇよ」 「ええー……あっ、ちょ……そこは……」 腕は容易く振り払われて股間に戻り、ぬちぬちと水音を立てて上下した。 的確にツボを心得た動き。若い性は忽ち翻弄されてしまう。
考えるのを後回しにしてごろりと仰向くと、ただただ白い世界が広がっていた。
(17.01.19)
お久しぶりの新作は銀&白×土です。続きはこちら→★ |