<後編>


「……こんなもんか?」
「おじょーずですね、お兄さん」
腹に付く程パンパンに反り返ったモノへ満足げに口角を上げ、土方は自分の服を脱いでいく。ベストの前を開けたところで外野から待ったが掛かった。
「ンだよクソ天パ」
「ベストはそこでストップ! ワイシャツのボタンは上四つと袖口だけ開けて、下はすっぽんぽんでお願いしまーす。……あ、靴下は履いててオッケー」
「テメーの趣味なんざ聞いてねーよ!」
「あ、俺も全裸よりチラリズムの方が……」
「チッ」
内野も賛同するものだから、渋々土方は銀時の提案に従う格好となった。

半端にはだけたワイシャツとベスト、そして靴下だけを身に着けて、仰向ける男を跨ぐ土方。白夜叉にしてみれば、碌に反応していない下腹部は大いに不満であったけれど、愛も楽しさも求めぬ行為であるから仕方がないかと自分を納得させた。
「んっ、ハァ……」
息を吐きながらゆっくり一物を飲み込んでいく。横で寛ぐ恋人のことは一旦、意識の外に置くことにした。

ぺたんと座りきってそこで深呼吸。つられて収縮する内壁で感じるのは、すっかり慣れた片割れの形。
吐き出される息へ徐々に熱が籠ってくる。
「お兄さん、感じてる?」
「う、るせぇっ」
「恥ずかしがらなくてもいいよぅ」
引き締まった太腿に手を添え下から腰を揺らしてみると、上に乗った男は手の甲を唇に当てた。
「んっ、んっ、んっ……」
「お兄さん、ケツだけで勃つの?」
カッと朱に染まる頬が白夜叉の嗜虐心を煽る。
敢えて本人から見えぬよう、シャツの裾を捲って中を確認した。
「あらら……立派になっちゃって」
「見んなっ」
「俺のだって見たんだからお相子」
ついでに触るのもお相子と扱いてやれば、土方は姿勢を保つのが難しくなってきた。
白夜叉の肩の横へ手を付き、倒れぬように上体を支える。
「あっ……んんっ!」
「いいねぇ」
「…………」
漸くまぐわいらしくなってきた二人の姿を、銀時は胡坐をかき、頬杖を付いて眺めていた。
ある意味で自分と恋人の交接を客観的に見られるまたとないチャンス。何度か頼んでみたが断られた録画プレイの代用とも捉えられる。
しかし自分でない存在と体を重ねたと言えなくもない状況。ヤツが部屋を出た暁には、お仕置きプレイかお清めプレイだな。どちらにしても楽しみだ。
「……あれ?」
ここでふと、銀時は背筋を伸ばす。
次が自分の番であり、こちらは単なる脱出手段のみならず、折角だから濃厚に、心も体も一つになるような行為をしようとぼんやり思っていた。

だがここは、どうやって入ったのかも不明な部屋。

もしも条件をクリアできた者から自動的に排出される仕組みだとしたら、今、出る権利を有しているのは目の前の二人だけということで……
忙しなく立ち上がると銀時は、ローションボトル片手に布団へ近付いていった。

「あ? 何だよオッサン」
「んんっ」
「オッサンじゃねぇ、つってんだろガキ」
「俺もガキじゃねぇよ」
快楽に包まれつつある土方を挟み、同一人物が対峙する。若者の言葉遣いを軽く窘めて万事屋銀ちゃんは、接合部分が見える位置まで移動した。
「土方くん、もうちょっとおねんねしてねー」
「な、にを……」
ベストの背中を押して上体を倒そうとすれば、不穏な空気を察知した土方が抵抗を示す。
しかし、そんなことは長い付き合いであるから想定済み。
「ひっ!」
広がり敏感になった入口をくるりと撫でれば、黒い背中がふにゃりと沈んだ。
白夜叉の胸に黒髪が張り付く。銀時の眼前に晒された結合部へ潤滑剤がとろりと垂らされた。
「あっん……」
冷たい感触に身動ぐ土方。その反応ににんまり笑い銀時は、熟れた孔へ親指を捻じ込んだ。
「うっ……」
ぐにぐにと内側から尻を揉むようにして入ってくる親指。もう一方の親指も同様に挿入された。
「あー、これイケるね」
「て、め……まさか……」
顔面蒼白で振り向いた先は、ドSを自称する男の無駄に爽やかな笑顔。何をされるのか正確に悟ってしまった。
「むっ無理だ!」
「大丈夫大丈夫。優しくするから」
「やめろっ!」
「はいはい……白夜叉くん、お兄さんのこと押さえててねー」
「……無茶すんなよ?」
基本は同じ性癖なので一先ず協力はしてやる――白夜叉の腕が土方にがっちり回った。
「暴れると切れちゃうよー」
「暴れなくても切れるぅぅぅ!」
「お兄さん、才能ありそうだから大丈夫だよ」
「何のっ――」
そんな才能あって堪るかと言い返したかったものの能わず。入口に二本目が押し当てられた。
有り得ない大きさに窄まりが広がっていくことに怖さを覚え、土方は無意識に元凶の一端へ抱き着く。
「うっ……ふぐ……」
苦し気な声は上がるが痛みは感じていない模様。昨今ではすんなり挿入されていた己のモノを、必死で受け入れようとしている様に愛しさが募った。
尾てい骨から背中に向かい、シャツの中を銀時の手が滑る。
「ひっ……ああんっ!」
「もうちょっとだからね」
性感を引き出すいつもの手付きに土方から恐怖が削がれていった。
体を預けたままの体勢から頭を上げ、肘から下で上半身を起こしていく。持ち上がった表情はとろりと蕩けるようで、白夜叉はごくりと喉を鳴らした。
色々あって失念していたけれど、結構イイところで止められていたのだ。
「はっ、あう……」
「お兄さんエロい……」
「まだ動くなよ若造」
蠢きだした内部。先回りして過去の自身へ釘を刺し、奥へ奥へと進んでいった。

そして遂に、二人分が土方のナカへ納まった。
「土方くん、全部入ったよ」
「ハッ……ふ……」
ぎゅうぎゅうに締め付けられた男達は、今すぐにでも律動したいのを、互いに無言で牽制し合っている。土方の体を慮って。
銀時の手が土方を抱え上げる。
「頑張ってくれたごほーび」
「あっ!」
ベストを開き、シャツの上から胸の飾りを摘まむと、入口をきゅうと絞って土方が跳ねた。
そのままカリカリと引っ掻けば、開発された体は腰を振って悦び踊る。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
「あー……いいね……」
「うあっ!」
下では白夜叉が堪らず喘ぎを漏らした。
動きたいのを気合で我慢していた彼。土方からの振動だけで、充分な刺激が生み出されていく。
「土方くん、気持ちいい」
「ひあっ! あ……あうっ!」
「俺っ……もうダメっっっ!!」
先に入れていた側が限界を訴え、どくりと精を吐き出した。

「ハァ、ハァ、ハァ……」
ゆっくりと萎んでいく一物。嵩が減ったのを幸いと銀時は腰を揺らし始めた。
けれど二本は二本。孔の中にきっちり納まり抜けることはない。すっかり慣れたはずの出入りする感覚に、感じたことのない圧迫感が加わった。
「ああっ! 待っ――」
「安心して。ちゃんと乳首も可愛がってあげるから」
「あああっ!!」
そこじゃないと反論する間もなく土方のモノは白濁液を噴出させる。それでも止まぬ動きに新たな快感が呼び起こされた。
それはもう一人の繋がりにも伝播する。
「あぁ!?」
むくむくと内部で膨れていくのを感じ土方から血の気が引いた。
「ぎんっ、止ま――」
「お兄さん、もう一回お願いしまーす」
「その前に俺をイカせてね」
「ああああ……!!」

*  *  *  *  *

土方十四郎が目を覚ますとそこは、銀時と暮らしている部屋の和室であった。
時刻は午後四時を少し回った頃。白地に流線模様、恋人の着流しを纏っている。今日は揃って休みを取り、引っ越しの片付けをしていたのだった。
休憩をせがむ銀時と共に昼寝に入った記憶がある。とんでもない夢を見たものだ。警察組織の再編や町の復興、新しい生活の準備とやることが目白押しで疲れていたのだろう。
覆い被さる同棲相手をぞんざいにどかした土方は、下半身に全く力が入らないことに気付いて頭を抱えるのだった。

(17.01.19)


ツイッターでリクエストを募集したところ、フォロワーさんから「銀土の3Pが見たい」とのありがたいリプライをいただきまして、書きました。
いつもは背景に色柄を付けるのですが、今回は閉じ込められた(?)部屋に合わせて白いままにしました。
二輪挿しは書いたことがなかったような気がしたので(あったらすみません^^;)書けて良かったです! リクエストありがとうございました!!
「絶対に書く!」とは言い切れませんが、こんな話が読みたいな〜というリクエストはいつでも受け付けておりますので拍手からでもどうぞ。
ここまでお読みくださりありがとうございました。

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