落葉樹が色を変え、寒い冬の到来に向けて彩りを添えてくれる季節。小春日和にうつらうつらとなりながら銀時は、甘味処の店先に腰掛け、つぶあんたっぷりの串団子を頬張っていた。 「相変わらず暇そうですねィ」 断りもなしに隣へ腰を下ろしたのは制服姿の沖田。貴重な糖分を取られまいと銀時は無言で団子の皿を自分の傍へ引き寄せた。 「暇じゃねェよ。仕事の合間のおやつタイム」 「そうでしたか」 「沖田くんは仕事中じゃねェの?」 「仕事の合間のおやつタイムでさァ」 勝手に作った休憩時間ではあるけれど、銀時の言葉を引用して大義名分を得た気分。しかし自ら注文しようとはしない。 「土方さんとは上手くいってるんで?」 「まあね」 「本当に?」 銀時にとって土方が「初めての人」だと知っている沖田は揺さ振りを掛ける。あわよくば団子の一つでも奢ってもらいつつ土方の弱みも握れないかと期待して。 「相手が色々知ってると、旦那から意見を言うのは難しくありませんか?」 「そんなことねェよ」 「旦那が土方さんとシたいこと、全部できてます?」 「全部かっつーとなァ……」 その言葉に沖田の瞳の奥が光った。俺で良ければ相談に乗りますぜ――数秒間の沈黙の後、銀時は沖田のためにみたらし団子を一皿注文した。 「トシには内緒だぞ」 「分かってまさァ」 「我慢しなきゃなんねェのは分かってるんだけどよー……」 「ふんふん」 穏やかな気候に相応しくない淫靡な方向へ会話は進んでいく。相談相手を誤ったことに銀時が気付くのは、沖田の助言を実行した後のこと。
ぎんとトシとお薬と
逢瀬の日。昼過ぎに待ち合わせた二人はすぐにラブホテルへとやって来た。「作戦」は上手くいくだろうかとソワソワ落ち着かない様子の銀時。溜め込んでいるせいだと解釈した土方は、出掛けに栄養ドリンクを飲んでおいて良かったと胸を撫で下ろす。本人も押さえ込もうと努力してくれてはいるものの彼の性欲は底無しと思える程で、心身共に準備が必要だった。 それに、毎回気遣われるのも申し訳なく思っている。性交の楽しさを教えたのは自分なのだ。できることなら心行くまで楽しんでもらいたいというのが本心である。だから、 「今日は、ベッドでしよう!」 「ぎん……?」 共に入浴中、意図を持って肩に触れたのに距離を取られた際には違和感を覚えた。銀時の下半身は既に準備万端であるにもかかわらず。 「ぎん、どうしたんだ?」 「何でもないよ。今日はベッドの気分なんだ」 いそいそと先に上がる様からして何か企んでいるのは明らか。そういえば以前、ホテルでAVが見られると知って見たがっていたな。自分の預かり知らぬところで変な知識を得てくるよりはマシか――銀時から遅れること数分、気合い充分で浴室を後にした。
「はい」 「どうも」 グラスに並々と注がれた水を受け取り一気に飲み干す。普段なら自分で冷蔵庫を開けて水を出すところ。ご機嫌取りのつもりだろうか。己と肌を重ねるために一所懸命な愛しい人。胸を熱くせずにはいられない。土方はベッドへと銀時の手を引いていった。 「ハァッ……」 「トシ?」 目的地までは僅かに十歩。しかし土方は道半ばにして膝から崩れ落ちてしまった。全身が燃えるように熱い。その熱が体の中心を基点にじくじくと苛んでくる。心配そうに肩を抱く男の手は、安らぐどころか逆効果。 「何か、盛られたらしい……」 「え!」 自身の状況を端的に伝えて這うようにベッドへ。戸惑う恋人を引き寄せて口付けた。 「すまないぎん、抱いてくれ」 「あっあの病院とか……」 事態は飲み込めないものの体が辛そうなことは一目瞭然。セックスなどしている場合ではないと通院を勧めるも、土方は帯を解き、下着を脱いで高ぶる体を見せ付けた。 「早く……ここに……」 「ト、シ……」 自ら孔に指を入れて開けば理性も砕け散る。目の前の男の名を呼びながら快楽点を捏ね始めた。 「あっ!ぎん……あっ、あっ……」 初めて見る淫らな光景が逆に銀時の頭を冷やしていく。今の土方は何かを盛られてこんなことをしているらしい。そんなつもりはなかったけれど、先程の水に「薬」を密かに混入したのは自分だ。つまり自分のせいで土方は苦しんでいるのだ―― 「ちょっと待ってて!」 慌ててベッドから飛び降りて銀時は、持って来た風呂敷包みの中から褐色の小瓶を摘み恋人の元へ。 「ごめん!これ飲ませちゃった!」 「あ?何処で、手に入れ……」 「沖田くんに……でも俺、こんなふうになるなんて思ってなくて……」 「ぎん……」 正座して項垂れる銀時の浴衣の膝から手を潜り込ませ、下着の上から股間を撫でる。自分で埋めた三本の指はもう、一瞬たりとも抜けない状態にまで追い詰められていた。 「トトトトシ!?」 「とりあえず抱いてくれ。そしたら治まるからっ」 「は、はい!」 さっぱり理解できないけれど言う通りにすれば間違いないはず。銀時は急いで下着を脱ぎ捨ててコンドームを装着すると、軟らかくなった穴の奥まで進むのだった。
* * * * *
「はい、水」 「…………」 「今度は本当にただの水だから!」 「フッ……分かってる」 結局、一度の交わりでは土方の体が満たされず、二度吐き出して漸く落ち着いた。といっても一物は上を指したまま、三度目までの猶予は余りない。その中で手短に銀時へ説明を促した。 「沖田くんに、トシとしたいことはないかって聞かれて……もっと沢山セックスできたらなァって……あ、トシが疲れちゃうのは仕方ないし、我慢できない俺が悪いんだけど……つーか、他の奴とセックスの話しちゃダメなんだよね。ごめん」 「……で?」 選りに選って沖田に話したことも咎めたかったが、時間のない土方は先へ進めた。 「そしたら沖田くんがいい薬持ってるって……セックスに効く栄養ドリンクみたいなもんで、飲んだら疲れないでセックスできるって……」 「あれは催淫剤だ」 「さいいん?」 「簡単に言うと、ヤりたい気分になる薬だ。しかもこれはヤらなきゃ治まらねぇタイプだな」 件の小瓶には見覚えがあった。嫌がらせの一端でマヨネーズに異物を混入しようとしていたところ、運よく発見した時に持っていたものだ。取り上げて土方の自室に保管していたがいつの間にか取り返していたらしい。 「セックスしたくなる薬……?」 「ああ。しかもこっちの体力はお構いなしにヤりたくなっちまう」 「つまり、すっごく疲れててもセックスしたくなっちゃうってこと?」 「まあ、セックスしなくてもイケればどうにか……」 この世にそんな薬物があったなんて――己の愚かさに銀時は血の気の引く思いがした。何も知らなかった自分をここまで導いてくれた愛する人を、結果として苦しめてしまうなんて。 「ごめんなさいィィィィィ!」 掛け布団に額を擦り付けて土下座をする銀時。けれど土方は怒りを感じてはいなかった。知らなかったのだから仕方がないし、これは銀時の優しさに甘えて悩みに気付けなかった己の失態でもある。そして何より、 「ぎん、もういいから……」 「あ……」 そろそろ限界。軽く合わせただけであった浴衣を開き、甘美な空気を放つ。堪らず銀時は土方を押し倒した。 「本当にごめんなさい。あの、いっぱい気持ち良くなれば早く治るよね?」 「た、多分……」 「それなら任せて!」 意気揚々と股間に顔を近付ける銀時に背筋が凍る。だが刺激を求めて疼く体も止められない。結果として恋人の望みが叶うなら良かったと自分に言い聞かせ、土方はその身を委ねるのだった。 「はうぅっ!」 一物が咥えられ、中には指が三本。内も外も遠慮なしにぐりぐりと性感を抉られる。体がびくんと大きく跳ねて、 「あああっ!!」 銀時の口内に土方の体液が充満した。ちゅぱっと音を立てて口を離し、羞恥により顔を背ける可愛い人に笑みを浮かべて嚥下する。その間も出したばかりのモノは硬く反り返っていた。 「本当にずっとエッチな気分なんだ……」 「ぎ、んっ!」 切なげに呼ばれた名で欲しいものを悟る。薬など使わずとも、土方がそこにいれば、銀時はいつでもその気になれた。 「トシはちんちん入れられるのが一番好きなんだよねー」 「なに……うあっ!」 言い返そうにも挿入されれば体が独りでに喜んでしまう。薬の効能も手伝って、常よりも更に。 「ああっ!」 奥まで穿たれれば白濁液が飛び散った。それに気を良くして銀時はガツンガツンと腰を打ち付けていく。 「もっと気持ち良くしてあげる」 「や……あうっ!!」 止める間もなく銀時の手が土方の股間に伸び、扱き始めた。先に噴出した粘液のぬめりを借りて素早く上下に擦られると、また新たな精が滲み出る。感じ過ぎて辛いのに、体は刺激を求め続けていた。 「ひうぅっ……!!」 「トシ、すげぇ可愛い」 その台詞を否定するためか過ぎる快感から逃れるためか、土方は首を何度も横に振る。けれど心とは裏腹に内壁は銀時のモノを歓迎して絡み付き、一物は歓喜の雫を漏らしていた。 意識が朦朧とするようでいて、強烈な悦楽に覚醒を余儀なくされる不可思議な感覚。胸の突起にちりりと引き攣るような痛みを覚えた土方が、自らそこを弄るのに明確な意志は存在しなかった。 「あ、んんっ!!」 「おっぱいも触ってほしかった?気付かなくてごめんね」 下半身から手を離して右手で土方の左手をシーツへ縫い付けると、ぽっちり尖ったそこをぺろり。空いている指で反対側を摘んだ。 「あぐっ!!」 腰を反らせ、濡れそぼつ先端を銀時の腹に掠める。それだけで得も言われぬ心地好さを感じて土方は達してしまう。体内は収縮と弛緩をきゅうきゅうと繰り返していた。
(15.11.09)
四年振りのぎんトシシリーズです。今回は久しぶりに土方さんが大変な目に遭います^^; 後編は少々お待ち下さいませ。
追記:続きはこちら(18禁ですが直接飛びます)→★ |