土方と付き合い始めて四ヶ月。自分で言うのもなんだが、結構うまくいってると思う。
付き合う前はケンカばかりしてたのが嘘みてェに穏やかに過ごしている。
向こうが変に突っ掛かってこなくなったからかも。俺も、それが心地好いとか思ってる。

悪くはないんだけど、ちょっと足りないとも思ってる。
穏やかで優しくて甘やかされて甘やかして……そんな関係は確かに悪くはない。
けれど偶にはもっと、こってり濃厚ドロドログチャグチャな夜を過ごしたい。
そう。問題は「夜」なんだ。


土方とヤることはヤっているが温い。気持ちはいいんだよ?いいけど、普通っつーか……
最初の頃はそれでも妙な緊張感があったから新鮮な感じだった。
だが、暫く経ってそれもなくなれば同じことの繰り返し……正直言ってつまらねェ。

そうは言っても生理現象。ヤらなきゃ溜まるし、触られたら反応はする。
でもセックスって出せばいいってモンじゃねーだろ?ちょっとは遊び心もねェと。

初心者の土方には厳しいかなァ……。何も本格的なSMプレイを望んでるわけじゃなくて、
ちょっと縛るとか玩具とかくらいで……俺から言い出したら引かれるかな?俺にとっては軽い
ジャブ程度の変化でも、経験少ない土方はノックアウト寸前まで追い込まれてしまうかもしれねェ。
結果、「お前には付いていけない」なんて言われるのが怖くて、俺はマンネリセックスを続けていた。



十回目ともなれば



銀時と付き合い始めて四ヶ月。自分で言うのもなんだが、結構うまくいっていると思う。
付き合う前はケンカばかりしてたのが嘘みてェに穏やかに過ごしている。
向こうが変に挑発してこなくなったからかもな。俺も、それが心地好いとか思っている。

悪くはないんだが、少しだけ足りないとも思っている。
穏やかで優しくて甘やかして甘やかされて……そんな関係は確かに悪くはない。
けれど、偶にはもっと濃厚で激しく貪り合うような夜を過ごしたい。
そう。問題は「夜」なんだ。


銀時とヤることはヤっているが温い。気持ちはいいんだ。いいのだが、普通というか……
最初の頃は銀時がかなり緊張していたし、あまり激しくするのも可哀想に思えた。
だが、そろそろもう一段階進んでもいい時期になったのではないだろうか。

初心者だったアイツもこの四ヶ月で大分慣れたようだし……
便宜上、タイトルは「十回目」となっているが、実際にはもっと多くの回数を熟している。
もっと激しくしたいと言ったら銀時は嫌がるだろうか?今のに慣れるのが精一杯だとしたら……
「お前には付いていけない」などと言われるのが怖くて、俺は温い交わりを続けていた。


*  *  *  *  *


土方と付き合い始めて四ヶ月半。いい加減、マンネリセックスを卒業する時期なんじゃないかと
思い始めていた。
このまま同じことの繰り返しでは土方が成長できない。経験の少ない土方はセックスに無限の
可能性があるってことを知らないのだろう。
だったらそれを教えてやるのが恋人であり経験者でもある銀さんの務めってもんだ。

そして何より、俺の身体が限界だ。
今のセックスじゃ足りなくて、デートの度―セックスする度―に欲求不満が募っていく。
一応イッてるけれど満足には程遠く、帰ってから自分でヌく毎日。
土方にぐちょぐちょになるまでイカされて、土方も俺のナカでぐちょぐちょにイクのを想像して……

付き合ってんのに、デートしてんのに何でこんなことを……
そんなわけで、俺は次のデートでマンネリ解消作戦を実行することに決めた。
名付けて、割引券でマンネリ解消大作戦だ!


*  *  *  *  *


「なぁ土方……今日はあっちのホテルにしねぇ?割引券もらったんだ」
「ああ、いいぜ」

今日は例の作戦実行の日。いつものように居酒屋で一杯ひっかけてから、俺はいつもと違う
ホテルに土方を誘った。そのホテルは、特殊なプレイ用の部屋がたくさんあるホテル。
つまり、色んな道具なんかが取り揃えてある部屋に泊まり、「折角だから使ってみようか?」
みたいな流れに持っていく作戦だ。

ここで重要なのが「割引券」。
俺はあくまでも、偶然割引券を手に入れてホテルに誘った体を装う。本当はクーポン雑誌に
載ってるのを探したわけだが、もらったことにするのがミソだ。
こうすることで俺が濃厚プレイを望んでいるとは気付かれずに、ある意味「仕方なく」
濃厚プレイに持ち込めるってわけだ。



ホテルに着き、割引券が使える部屋は限られてるからと理由を付けて俺が部屋を選ぶ。
その部屋は……

「すげー!マジで病院だな!」
「そう、だな……」

お医者さんごっこ用の部屋。

誰だ、どぎついSMルームだと思ったヤツ。
いきなりそんなトばしたら土方が付いてこられねェだろーが。

「こんなホテルもあんのか〜。面白ぇな!」
「ああ……」

初めての光景に固まった土方の緊張を解すため、まずは部屋の中を探検だ。
何があるかを見せてそれとなく解説し、今夜のプレイに活かしてもらわねーと。

俺は手始めに、壁に掛かっていた白衣を手に取った。


*  *  *  *  *


割引券があるとかで訪れた宿はやや特殊な所だった。
銀時が「病院」と形容したように、部屋の中央には(こういった宿にしては)小さめのベッド。
シーツも枕カバーも真っ白。そしてベッドの両側面から伸びているのは、本来なら分娩台に
ある、足を開いて固定させるためのもの。
一瞬、そこに銀時を括りつけてみたいと思った邪念は即座に振り払った。
銀時は何も知らずに来てしまったのだから……

珍しい場所に来たとはしゃぐ銀時に続いて室内へと足を踏み入れる。

「土方、白衣があるぜ。ちょっと着てみろよ」
「おう」

着流しの上から白衣を着ても微妙だと思うのだが、銀時は「似合う」と言ってくれたので
よしとするか。
次に銀時はヘッドボードをごそごそと漁った。どうやら見慣れぬ所へ来た緊張より好奇心が
勝っているようだな。

「おっ、聴診器があった。土方、着けてみろよ」
「ああ」

渡された聴診器を首に掛けてやれば銀時は「医者らしくなった」と楽しそうだ。
こういうごっこ遊びもアリなのか……それは良かった。

つまりあれだ……診察と称して銀時を触りまくっていいんだろ?
いつもよりは激しくできそうな予感に俺は心の中で拳を握った。


*  *  *  *  *


白衣を着せて聴診器を掛けて……医者になった土方は満更でもなさそうだ。

「ここって、イメクラとかコスプレとかそーゆー感じのをヤる部屋?」
「そのようだな……」

良かった……そういうプレイがあるってのは知ってるみたいだ。なら話が早い。

「じゃあ折角だからヤろうぜ。土方がエロ医者で、俺が患者な」
「……おう」

若干間があったのはよく分からないからか?もうちょい詳しく説明してやるか……

「ここはお前の病院って設定でー、俺はそこに来た患者役。医者のお前は診察を理由に
エロいことしちゃうわけだ」
「おぉ」
「そこに足、括ってもいいぞ」
「え……いいのか?」
「ああ」

分娩台ベッドを指してやったものの反応が鈍い。土方には高度すぎたか?
ドSな銀さんを拘束するってのが逆に萌えると思ったんだけどなァ……
未だ戸惑いが拭えていないらしい土方に折角だから使おうと言って下だけ脱いで横になり、
足を開いた。
プラスチックの受け皿みたいなのの上にふくらはぎを乗せ、足首をヒラヒラさせて土方を呼ぶ。

「じゃあ、固定するぞ」
「おー……」

土方は遠慮がちに、器具から延びる両面テープを俺の足に巻き付けた。
……これ、思った以上に全てを曝け出す感じだな。丸見えもいいとこだ。
ヤベぇ……若干恥ずかしくなってきた。こうなりゃ、とっとと終わらせちまおう!

「土方……早く触って」
「お、う……」
「俺、動けねェから……いつもよりいっぱいシていいぞ」
「……分かった」

土方はベッドから下りて枕元に向かい、キスをしてから俺の足の間に戻った。
こんな時でもキスから始めんのか……マニュアル通りなんだけど、こういう律儀なところは
嫌いじゃないんだ。

(12.04.12)


回数シリーズ第五話は色々すっ飛ばして「十回目」です。作中で土方さんが言ってるように、実際は十回以上ヤってる設定です。

十以上の数はまとめて「いっぱい」と数えます(笑)。これまでは二人の心の声をカッコ書きしてたのですが、今回は一人称を交互に書いてみました。

勘違いしてるけど似た者同士の二人。後編はほぼ土方さん視点です。