おかしい……。こんなはずじゃなかった……。一体どこで間違えたんだ。
『あっ……あんっ、あんっ!』
十四郎との逢瀬から帰宅した俺は、煎餅布団に突っ伏してこれまでの情交を想起していた。
確かに、エッチも俺のことも大好きな十四郎に育ったよ?そこは予定通りというか、嬉しい限り
なんだけど……
『ぎんとき……もっと……』
俺に覆い被さり、唇を合わせながら身体を揺らし、間に挟まれた二本の一物を刺激していく十四郎。
俺だってエッチも十四郎も大好きだからさァ……会えばすぐラブホだし、シャワーも後回しで
ベッドに押し倒して、抜かず三発とかヤっちゃって……それがマズイんだよなァ。
「三発」つっても三回イクのは俺だけで、十四郎は二回とか……下手したら一回だけってことも
あるもんなァ……
十四郎のナカ、反則なくらい気持ちいいんだもん。大抵、入れてすぐにイッちゃって、そのまま
二回戦に突入で、三回終わった頃には落ち着くんだけどその時には十四郎の「スイッチ」が
入っちゃって「もっと……」ってなっちゃうんだよね……
ていうか十四郎、何であんなに元気なの?十四郎が落ち着く頃には俺、ヘトヘトなんだけど。
昨日なんか……
『あっ……んっ!くっ、ああっ!!』
『ハァ、ハァ、ハァッ……』
騎乗位で合体し、恍惚の表情で腰を振る十四郎とその下で喘ぎっぱなしの俺。十四郎の締め付けに
耐えられずイッちゃって、そのまま意識を失った。気付いた時にゃ、宿の浴衣を着て寝てた。
十四郎が俺の身体をきれいにして着せてくれたんだ。
……そう。十四郎をあんあん言わせてたはずなのに、最近じゃ俺が言わされてる。声だけ聞いたら
どっちが突っ込まれてるか分からねェ程に。十四郎は前から、自分だけが喘がされる状況をよしと
していなかったし、「喘ぐのは受け」って固定観念もないから、俺がイキまくるのをむしろ
喜んではいるんだけど……俺は「攻めのプライド」を捨てきれないせいで、毎度毎度自己嫌悪に
陥っている。
何とかして主導権を取り戻したい!
多少早くても回数でカバーできればって考えたのに、カバー不可能な程に十四郎の体力は底なしで
……どうしたらいいかも分からず、次に会う約束ができなかった。
銀さん教えてレッスン15
「隊長、あれ……」
「ん?」
ある日、巡回中の山崎はファミリーレストランの中にいる銀時を発見し、一緒に巡回していた
沖田に知らせた。
「あれがどうかしたか?」
「副長は今日、非番なのに仕事してたじゃないですか。それで俺、今日はデートじゃないのかって
聞いたんです。」
「お前、まだそんなことしてたのか……」
土方への思いを諦めた訳ではないが、今のところ自分に勝ち目がないことを悟った沖田は、
自然とこの手の話題を避けるようになっていた。けれど打たれ強い山崎は、表立って銀時との
仲を邪魔しないまでも、虎視眈々と機会を伺っていた。
「副長は、旦那に『仕事だから会えない』って言われたらしいんですよ。」
「じゃあ、今は休憩中なんだろ……」
「だったら新八くん達も一緒じゃないとおかしいですよ。もしかして旦那、副長に嘘吐いてるんじゃ
ないですかね?」
「可能性はあるな……行くか?」
「はい!」
二人は鼻息荒くレストランへ向かって行った。
「いらっしゃいませー……あの、お客様!?」
「あー、大丈夫です。連れがいますんで。」
案内の前に店内を進む二人を慌てて追いかけてきた店員に、山崎が笑顔で対応してから二人は
銀時の席を目指した。
「奇遇ですねィ。」
「失礼します。」
銀時の隣に沖田が、向かいに山崎が座り簡単には逃げ出せない体制を作る。
「えっ、なに急に……。銀さんの貴重なスイーツタイムを邪魔しないでくれる?」
「可愛い恋人を放ったらかして、一人でスイーツタイムですか……」
「いいご身分ですねィ。」
「なに言ってんの?恋人がいたって、四六時中一緒にいるわけないでしょ?俺達、大人だから。」
「そうですか……」
「じゃあ、今日ここで会ったこと、土方さんに伝えても構わないですよねィ?」
「えっ……」
表情を引き攣らせた銀時を見て、沖田と山崎は視線を送り合う。
「すいませーん!スーパーデラックスいちごパフェ一つ!」
「俺は季節のスペシャルパフェ一つ!」
沖田の注文に山崎も続いた。
「旦那、ごちになります。」
「ありがとうございまーす。」
「なに勝手に決めてんの!?」
「折角だから副長も呼びましょうか?非番なのに『何故か』仕事してましたから。」
「そうだな。恋人がいるのに『何故か』暇な休日を過ごしてる土方さんも呼んでやろう。」
「ちょっ……分かったよ!奢る!奢りますよ!奢ればいいんだろ!!」
恋人に連絡されることだけは避けなくては……銀時は仕方なしに奢ることを決めた。
「で?嘘吐いてまでスイーツタイムとやらを満喫したかったんですかィ?」
「そういうわけじゃねーよ。ちょっと……色々あってさ。」
「いらなくなったら引き取りに行くって、言いましたよねィ?」
「だからそんなんじゃねェって!俺は十四郎のこと、深〜く愛してるから。」
「じゃあ何で今日はデートしないんですか?」
山崎も沖田と一緒に銀時を「尋問」した。自分の恥を晒すわけにはいかない銀時は、それらしい
理由を捻り出す。
「たまには、十四郎をゆっくり休ませてやろうと思ってね。」
「あの人は時間があれば仕事してるんで、気遣いは不要でさァ。」
「いやでも、非番なんだから少しは休むでしょ?」
「休みませんよ。制服着ないくらいで、普段と同じように仕事してます。」
「そ、そうなんだ……。前からそんな感じ?」
「ええ。」
「そっか……元気だね。」
やはり付き合いが長い分、土方に関しては彼らの方が詳しい。今更、自分との交際を邪魔する
気もないようだし、この機会を利用して今後の付き合いの参考になる話が聞ければ……
「ところでさ……真選組って、どんなトレーニングしてんの?」
「いきなり何ですかィ?」
「深い意味はないんだけど、十四郎っていつも元気だからさァ……」
「元気でいいじゃないですか。」
「もちろんいいんだよ?元気があっていいよ。うん!」
「……もしかして旦那、副長のこと持て余してます?」
監察を生業とする山崎の目がきらりと光った。
「も、持て余すってなに?意味分かんないんだけど〜?」
「なるほどねィ……」
銀時にあきらかな同様の色が見て取れ、沖田も気付いた。
「覚えがよすぎて手に負えなくなってるってことか……」
「自分でしておいて、勝手ですね。」
「いや、俺は何も……」
「特別武装警察で『鬼』と呼ばれる人が、民間人なんかに力負けするわけないでしょう?」
「そうですよ。ちょっと知らないことがあったからって、副長のこと舐めてますね。」
「だからそんなんじゃないって……」
否定の言葉も弱々しく、銀時の言葉には全く説得力がなかった。
「そういうことなら旦那、いい手がありますぜィ?」
「えっ、なに?別に困ってないけど、一応聞いてみようかな……」
「旦那が突っ込まれればいいんでさァ。」
「え゛……」
「ああ、それは名案ですね。」
「だろ?……つーことで旦那、さっさとヤられちまいなァ。」
「冗談じゃねー!俺は攻めだ!それだけは絶っっっ対に譲れねェ!!」
「それなら頑張って満足させてやりなせェ。無理なら俺が代わりますんで。」
「俺も手伝いますよ隊長!旦那と違って、俺達には若さがありますから!」
「ふざけんな!十四郎は渡さねェ!!」
「店内で大声出すと迷惑ですよ。」
「チッ……」
懐から皺くちゃの五千円札を取り出してテーブルに叩き付け、銀時は沖田をどかして店を出た。
* * * * *
「ごめんね……今日は会う予定じゃなかったのに。」
沖田・山崎と別れた銀時は、近くの公衆電話から土方に連絡をし、会う約束を取り付けた。
いつものように宿の裏口で待ち合わせ、そのまま部屋へ。謝る銀時に土方は笑顔を見せる。
「俺は会えて良かったぞ。銀時から電話が来た時、すげぇ嬉しかった。」
「ありがと。」
土方を沖田達に奪われまいと意気込んでいた銀時であったが、素直に喜ぶ土方を見ていると
そんな風に思っていた自分が恥ずかしくなってくる。
(十四郎は俺とだからエッチしてくれるのに……他のヤツなんて相手にするわけないのに……
俺ってバカだな。)
自嘲気味にフッと笑って銀時は土方を抱き締めた。土方の腕が銀時の背に回り、二人は唇を合わせた。
* * * * *
「あっ……んっ!くっ、ああっ!!」
「ハァ、ハァ、ハァッ……」
正常位での二連戦(注:実際に二回達したのは銀時のみ)を終えた二人は今、騎乗位で繋がっていた。
熱い息を吐いて銀時の上で跳ねる土方と、その下で喘ぐ銀時。
「ハァ……銀時、気持ちいい……?」
土方の問いに銀時は答える余裕など既になく、
「あっ、とおしろっ……もう、ムリっ!」
限界を訴えることしかできなかった。
「銀時、イキそう?」
「もっ……イ、ク……っ!!」
「ハァー……」
自分の内部で銀時の一物が、震えながら精を吐き出して萎んでいくのを感じ、土方は幸せそうに
また熱い息を吐いた。そして……
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「と、十四郎……っ!」
銀時の息が整わぬうちに再び腰を揺すり始めた。
強引に快感が引き摺り出され、銀時の顔が苦痛に歪む。
「十四郎……も、んむ!」
もう少しゆっくり、という言葉は口付けに飲み込まれて、
「んんっ!んっ!んっ!」
「ふっ……ハァッ。大っきくなったぁ……」
入口の締め付けと口付けの刺激により、銀時のモノは回復させられてしまった。
土方は唇を離して上体を起こすと、より激しく腰を動かしていく。
「うぁっ!」
「ハァ……ぎん、ときぃ……」
亀頭の段差が前立腺に当たるよう角度を変えて動きつつ、自分のモノを擦り快感に浸る土方。
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
「はぁっ!(あと少しの辛抱だ……)」
今にも弾けそうな土方のモノを確認し、銀時は最後の気力を振り絞って堪える。
「あっ、ハッ、銀時……イクっ!」
「ああっ!!」
「んんっ!!」
土方が達する直前に精を吐き出し、銀時は意識を手放した。
(11.10.22)
久々に登場の反銀土派の代表達でした。銀さんが苦労していると分かって少し気が晴れたと思います。今のところ、彼らの登場はこれが最後の
予定です。これ以降は基本的に二人の世界で話を進める予定でいます。……あくまで予定ですけどね。結構キリのいいところで終わりましたが、
このままだと銀さん的に何の解決にもなっていないので後編もあります。続きはなるべく早く書きますので、それまでお待ちくださいませ。
まずは、ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
追記:前中後編になりました。中編はこちら→★