銀時とのデートを翌日に控えたその日、土方は眠れぬ夜を過ごしていた。
布団に入ったものの一向に眠気が訪れず、今はもう眠ることを諦めて仰向けの姿勢でぼんやりと天井を
眺めながら明日のデートのことを考えていた。

(いよいよ明日、銀さんとセックスするんだ!ちゃんと、できるかな……ていうか、どのタイミングで
するんだ?明日は昼過ぎに待ち合わせていてそのまま泊まるけど……こういう時いつもなら、まず宿に
行ってキスしたり触ったりして、夜になったらメシ食ってまた宿に行って……セックスは一回目の宿か、
それとも二回目か、もしくは両方?銀さんは「時間をかけてゆっくり」って言ってたから一回目の宿かな?
そもそもいつ銀さんのアレを入れるんだ?今まで教わったことがセックスに繋がってるって言ってた
よな?ってことは、ああいうことを全部した後に銀さんのを入れるのか?それとも途中で……?)

土方は頭の中でこれまで銀時から教わったことを反芻していく。

(いつもはキスして、そしたら俺も銀さんも勃起するから、触ったりフェラチオしたりして射精して……
あっ、銀さんが射精したら入れられなくなっちゃう。じゃあ、キスした後にセックス?でも大抵一日に
二、三回は射精するから、一回はいいのかな?……そうだ!指入れた後だ!一本から徐々に増やして
いくからきっとあの後に銀さんのを……)

左手の人差し指から薬指までを三本揃え、土方はそれを右手で握った。

(銀さんのは、これより大きいな……。やっぱ、そう簡単にはいかねェか……。本当に入るんだろうか?
多少狭くても強引に捻じ込めば何とかなるんだろーが、そんなことしたらきっと銀さんが痛ェよな。
アレを思い切り握られてるようなもんだろ?けど、どうやったら緩くできるのか分かんねェ……。力を
抜いときゃいいのか?でも前立腺触られるとダメなんだよなァ。一瞬、力が入っちまう。……あっ、銀さんの
アレは指みたいに曲がらないから、前立腺には当たらないか。だったら大丈夫!……多分。)


*  *  *  *  *


その頃、万事屋では銀時も眠れぬ夜を過ごしていた。

(いよいよ明日、十四郎とセックスか……。長かった、けど…やっぱ勿体ねェ気がすんなァ。無垢な
十四郎が汚れるような……まあ、オトナになったとも言えるが、でもなァ……十四郎はある意味聖域っつーか、
誰も侵しちゃねんねェ存在っつーか、ヤっちゃったら十四郎が十四郎じゃなくなるっつーか…)

天井から下がる明かりの消えた電灯を見詰めながら銀時は大きく息を吐いた。

(結局俺が怖ェだけなんだよな……。十四郎の成長についていけないだけ。情けねェ……何も知らない
十四郎を付き合ってすぐホテルに連れ込んで、恋人同士はセックスするもんだって植え付けちまったのは
俺なのに……それをここまで来て「勿体ない」はナイよな。それに、可愛い十四郎もいいけど、クールに
見えて短気でカッとなりやすい「土方」と、そろそろケンカもしてェしな……)

銀時は頭の中で土方の姿を思い浮かべる。
それは付き合う前の土方―銀時と目が合えば眉間に皺を寄せ、一言二言からかう言葉を投げかければ
「うるせェ黙れクソ天パ」と憤る―そんな姿を思い出し、銀時はふっと口元を緩ませた。



銀さん教えてレッスン12



翌日。

「銀さん、今日はよろしく頼む。」
「こ、こちらこそ、よろしく。」

ベッドの上で正座して深々と頭を下げた土方に倣い、銀時も姿勢を正し頭を下げる。

「まずは、何をすればいい?」
「え、えっとね……あー……」
「銀さん?」
「ちょ、ちょっと待ってね…(やべェ!セックスってどうヤんだっけ?ケツにチ○コ突っ込むんだけど
その前に何すんだ?……指入れる?いやいやいや、そのもっと前に何か……)」

土方から視線を外し「あー」だの「うー」だの意味のない言葉を発しながら考え込んでいる銀時を前に、
一抹の不安が土方の脳裏を過る。

「もしかして……今日はできねェのか?」
「へっ?ちちち違うよ。ひっ一口にセックスといっても色んなヤり方があるからね……どれにしようか
考えてただけ。」
「そっか……良かった。」

安堵の笑みを見せた土方を銀時は抱き寄せる。まるでガラス細工を扱うかのように優しく慎重に。

「……どのやり方にするか決まった?」
「ま、まずは、いつもどおりね。」
「キスしたり、ナニを触ったり?」
「そ、そのとーり!ちゃんと分かってて偉い偉い。」
「へへっ。」
(そうだよ……まずはキスからじゃねーか!)

褒められてはにかむ土方の頭を撫でながら、銀時はどちらが教える側か分からないなと感じていた。

「銀さん。」
「十四郎……」

二人は見詰め合い、ゆっくりと顔を近付けながら目を閉じる。二人の目が完全に閉じられた時、唇同士が
重なった。

「んっ……」

銀時は土方の後頭部に、土方は銀時の肩に手を添え、何度も何度も口付けを交わす。
そのうち土方はほんの少しだけ唇を開いてみた。「いつもどおり」なら、唇同士のキスの後に
ディープキスをしているから。

「ふっ……」

いつもどおりに舌が絡め取られたことに胸を撫で下ろし、土方も舌を動かしていく。
するとキスをしたままで銀時の手が土方の帯に掛けられた。

「銀さんの服も、脱がしていい?」
「勿論だよ。いつもどおり、ね。」
「うん。」

土方も銀時のベルトと帯を外していく。着ている物の少ない土方の方が先に下着一枚になり、上半身裸の
銀時にベッドへ押し倒された。

「銀、さん……」
「こっからは俺に任せて。今日は十四郎、横になってればいいからね。」
「で、でも……」
「俺にさせて?今まで、いっぱいいっぱい頑張ってくれたお礼。」
「頑張って教えてくれたのは銀さんだろ。」
「今日はいっぱい触りたい気分なの。…俺に触られんのはイヤ?」
「そんなわけねーだろ。」
「じゃあ……」
「んっ。」


もう一度唇同士を軽く合わせ、銀時が上になり二人は抱き合った。銀時が土方の耳に息を吹き込むと、
土方は擽ったそうに身を捩る。土方の左頬に手を添え、銀時は反対側の耳を舌で辿った。
ゆっくりと何度も何度も舌が耳の形を描き、最後にまたフッと息を吹き込む。


「ひゃっ……」


そして唇を掠めてから今度は左の耳へ。
ぴちゃぴちゃと音を立てながら舐めると土方は官能的な溜息を吐いた。


「ハァ……銀さん……」
「もうちょっとだけ待っててね。」


直接的な刺激を求めているのは分かっていたが、銀時はそれを宥めるように額へ口付ける。
今日は土方にとって、いや、銀時にとっても記念となる大事な日。だからこそ銀時は即物的なセックスを
したくはなかった。可能な限り優しく、丁寧に、且つ、土方をあまり焦らさないように……

銀時は土方の胸に触れた。


「んんっ!」


胸の上で淡く色付く突起を摘まむ。


「ハァ……あっ、あっ……」


両側の突起を同時に触られ続けると、いよいよ土方は我慢できなくなってくる。下着の中で大きく膨れた
モノからは先走りが溢れ、下着に染みを作っていた。


「あっ!くっ……ハァッ!」


銀時は次に土方が限界を訴えたら一度イカせてあげようと思いつつ胸を刺激していたのだが、いつまで
経っても土方から上がるのは喘ぎのみ。それが徐々に苦しげになっていくのに気付き、銀時は手を止めた。

「十四郎…そろそろシタ触ろうか?」

土方は目に涙を浮かべ、下唇を噛みしめながら首を横に振った。

「で、でも、辛いでしょ?」

またしても首は横に振られる。そして土方は震える身体に耐えながら言葉を絞り出した。

「セックス、まで…ガマン、するっ……」
「十四郎……」
「あっ、だめっ!!」

土方が止める間もなく、銀時の手が土方の股間を下着ごと握る。


「ああっ!!」


ビクンと土方の身体が痙攣し、下着の中に精液が放出された。


(11.07.20)


いよいよ最後のレッスンです(でも今回が最終回ではありません)。そして、アップした日に合わせて二周年記念小説ということにします。続きも18禁です。