後編


「今日は、俺がする…」

ホテルに着き、シャワーを浴び終えたところで土方が銀時に言った。

「無理することないって。いつも通りでいいよ。」
「ダメだ。本当はお前とこんなところに来る資格はなかったんだ。だが、お前のおかげで…」
「はいはい…じゃあ、お願いしまーす。」

銀時はベッドの上に大の字になり、土方はその上に乗って唇を重ねた。


*  *  *  *  *


「んっ、んっ、んっ…」
「あー…気持ちイイ…」

土方は銀時の脚の間に蹲り、一物を咥えている。

「ねえ土方…お尻、こっち向けてくんない?」
「だっダメだ…。今日は、俺がするんだから…」
「俺がって…じゃあ今日は本番ナシ?そんなのヤダ!」
「そういうわけじゃねェけど…」
「じゃあ土方が自分で解すの?俺のを咥えながら?」
「………」
「ねっ?無理で「そうする。」
「はい?」

一体何を「そうする」なのか銀時が理解できないうちに、土方は下着を脱いで再び銀時のモノを咥えた。

「んっ、んぐっ…んむ…」
「え……マジで?」

銀時が思わず上体を起こして状況を確認すると、土方は腕を身体の下から回して自ら後孔を解している
ように見えた。土方は浴衣を着たままのため、実際に何をしているのか銀時からは見えないが
土方の下半身を覆う浴衣の動きや表情から、自分の指を後孔に埋めているのは容易に想像できた。

「(うわぁ…普段なら頼んだって絶対やってくれないことを…。折角だから、もっとよく見たいなぁ。)
土方くん…浴衣脱いでくれると嬉しいんだけど…」
「んっ…」

短く返事をすると土方は一旦銀時から離れて浴衣を脱ぎ、銀時の元に戻ってきた。
そして先程と同様、銀時のモノを咥えながら自身の入口を解していく。

「んぐっ…んんっ…」
「………」

銀時の喉がゴクリと鳴った。

(マジで絶景…。したかどうかも分からない浮気でこんなに…充分お釣りがくるくらいなんだけど…。)

「んんっ!…んっ、んむぅ…」
「くっ…」

自身に埋める指を二本、三本と増やしていきながら、巧みに舌を使って銀時の性感を引き出していく。
銀時のモノはあっという間に先走りを漏らし始めた。

「土方…そろそろ挿れさせて…」
「このまま…口の中に…」
「っ!(ヤベぇ!出そうになった!)そ、それもいいんだけど…土方のナカでイキたいなァ…」
「…分かった。」
「えっ?」

土方は身体を起こして、座っている銀時に跨った。

「もしかして、土方が動いてくれんの?」
「今日は俺がするって言っただろ。」
「そうだったね。」
「んくっ…」

銀時の先端を自身の入口に宛て、土方はゆっくりと腰を沈めていく。

「ハッ…あ…んんっ!」

息を吐き、上部の張り出しを何とか自分の中に納めると土方は一旦動きを止め、深呼吸を繰り返す。

「ハァー…んっ!…んあっ!」

土方は一気に腰を下ろし、銀時のモノを奥まで招き入れた。

「ちょっ…大丈夫!?」
「ああ…。すぐ、動くからな…」
「無理しなくていいよ。…痛いでしょ?」
「へ、き…だ。んっ…んんっ!」

痛みに顔をゆがませながら土方は腰を動かし始める。それを銀時は抱き締めて止めた。

「もっとゆっくりでいいから…ねっ?」
「大丈夫、だから…」
「そんなこと言っても…土方、全然感じてないじゃん。」

挿入前に勃ち上がりかけていた土方のモノは、完全に萎えてしまっていた。

「今日は、お前が感じてくれればそれで…」
「そういうわけにはいかないでしょ。それに、土方が感じた方が俺も気持ちいいんだよ。」
「…そうなのか?」
「自覚ない?土方が気持ちよくなると、ナカがきゅって締まったりピクピク痙攣したりして
すっごくイイんだよ。」
「………」
「それとね…」
「うわっ!」

銀時は土方の背中を支えながらベッドに倒して正常位の体勢になった。

「俺、自分で動く方が好きだからこっちがいいな。…あー、やっぱり切れそうになってる。」
「あ、あの…」

銀時は土方の脚を大きく開いて結合部をじっと見詰めた。土方の頬が朱に染まる。
いつもなら文句の一つでも言っているところだが、今日は浮気をしたという罪悪感からそれもできず
ただ黙って羞恥に耐えていた。

「ローション使わなかったから痛かったでしょ?唾と先走りだけじゃなかなか難しいよね…」
「そんなことは…」
「だから無理しない。ほら、ローション塗ってあげるから。」

銀時は枕元に準備していたローションを指に絡めて膝を立て、土方の腰を持ち上げて結合部に
ローションを塗り込めていく。

「んっ…」
「本当はさァ…一回抜いて塗ればいいんだろうけど、土方がせっかく頑張ってくれたのに抜いちゃうのは
勿体ねぇよな。だから、ちょっと体勢辛いけど我慢してね。」

ヌルつく指で入口をなぞられていると、徐々に土方の息が上がってくる。

「あ…ハァ…」
「良かった。やっと気持ちよくなってくれたみたいだね。」

銀時はゆっくりと自身を引き抜き、外に出た部分にローションを塗ってからゆっくりと奥へ戻る。
土方のモノが次第に頭を擡げてきた。

「んんっ…んっ、んんっ!」
「もうちょい早く動いてもいい?」
「お前の、好きに…」
「だから土方が感じた方がいいんだって。どう?早く動いて気持ちよくなれそう?」
「た、多分…」
「じゃあ動くね。」

銀時は土方の腰の下に枕を置いて土方を楽な姿勢にしてから、本格的に律動を始めた。


「あっ、あっ、あっ…」
「前立腺、自分で解す時は触らなかった?」
「さわ、て…な、い…」
「なら俺がいーっぱいやってあげる。」
「ああっ!!」


前立腺に強く当たるよう、角度を変えて突き上げると土方は背を仰け反らせて喘ぐ。


「あー…今、土方の中、きゅーって締まった。」
「きもち、いい?」
「うん。すごくいいよ。…もっと感じて。」
「ああっ!ああっ!…はぁっ!!」


土方の瞳は快感で潤み、一物は腹につきそうなほど反り返っていた。


「ぎん、とき…俺が、もっと、よくなったら…お前も、いい?」
「そうだね。だからもっと激しく動いていい?」
「いい。俺も、するから…」
「するって?うわぁ…」


土方は自分のモノを握り、扱き始めた。


「ああっ!ひっ…ああっ!!」


強すぎる快感に止まりそうな手を叱咤して、土方は自身を上下に激しく扱く。


「ぎんとき…気持ち、いい?」
「うん…。中がぐにぐに動いてて、めちゃくちゃ気持ちイイよ…」
「じゃ、あ…これは?…あぅぅっ!!」


土方はもう一方の手で、一物の括れ部分や尿道孔を刺激した。


「う、あ…すげぇ…」
「ひあぁっ!…ぎ、ん…いい?」
「いいよ…。ハァッ…」


銀時が自分の中で感じている―それが嬉しくて土方は辛いほどの快楽を自分自身に与え続ける。


「ひぅぅっ!はっ…ああぅっ!!」
「土方っ!俺、もう我慢できねェ!」
「銀時ぃ!」


一物を触っていた手を外し、銀時は土方に覆い被さって激しく腰を揺らした。
土方の腕が銀時の背中に確りと回される。


「ひじかた…イクよ。」
「んっ…俺の、中に…」
「ああ。土方も一緒に…」
「んんっ!!イクっ!い、しょに……ああぁっ!!」
「くぅっ!!」


土方のモノが二人の腹筋の間で弾け、銀時のモノは土方の中で弾けた。


「ぎんとき…ぎんときぃ…」
「土方…大好きだよ。ずっと…」
「っれも…ぎん、とき…」
「土方…」

土方の瞳から大粒の涙がボロボロと零れ落ちる。強い快楽を受けた故の生理的な涙なのか、
それとも銀時に対する懺悔の涙なのか、はたまた銀時と共にいられることへの喜びの涙なのか、
それは土方本人にも分からなかった。
けれど二人は長い時間、繋がったままきつく抱き合っていた。



*  *  *  *  *



翌日、銀時はこっそり屯所を見張り、山崎が一人で出てきたところを掴まえて団子屋へ「連行」した。

「何なんですか?俺、仕事中なんですけど…」
「あっ、お姉さん…団子、これで買えるだけ持ってきて。食べきれなかった分は持ち帰るからさ…」
「ちょっと、それ、俺の財布!いつの間に…。すいませーん!今の注文、キャンセルします!」

山崎は銀時が店員に渡した財布を奪い返す。

「おいおい…俺の可愛い土方くんを苦しめといてそれはないだろ?とりあえず有り金全て団子に変えたら
今回のことは大目に見てやるって言ってんのによー…」
「別に俺、旦那に許してもらおうとは思ってませんから。」
「へぇー…俺にボコボコにされんのも覚悟の上ってこと?」
「覚悟って…俺、旦那に怒られるようなことは何もしてない…かもしれませんよ?」

山崎は不敵な笑みを浮かべた。

「かもしれないじゃなくて…土方が覚えてるだけでも充分、殴るに値すると思うけど?」
「副長、何か思い出したんですか?」
「いーや…何も。」
「だったら…」
「ていうか思い出すわけないよな?何もなかったんだから。…何かあったなら思い出すことはできるけど
もともと何もないんだから絶対に思い出せない…考えたね、ジミー。」
「まあ、旦那がどう思おうと勝手ですけど…」
「とにかく、酔った土方くんの服を脱がせた挙句キスマークまで付けた代償として団子奢れ。」
「はいはい…。すいませーん、団子二皿お願いしまーす。」
「おい、俺は有り金全てっつっただろーが…。さっき見た時、万札あったぞ。」
「だから、俺がしたっていう証拠でもあるんですか?副長が誘ったかもしれないじゃないですか。」
「土方がンなことするわけねーだろ。」
「かなり酔ってたんで、俺のことを誰かさんと間違えたのかもしれませんね。」

決して引くことのない山崎に、銀時のポーカーフェイスが崩れ、徐々に怒りが顕わになってくる。

「ほ〜ぉ…それじゃあ、土方がテメーを俺と間違えたとでも言いてェのか?」
「さあ?俺はそういう可能性もあるんじゃないかと言ってるだけです。」
「可能性も何も…テメーは覚えてるんだろ?」
「俺が本当のことを言っても、旦那は信じられないかもしれませんよ?」
「そうやって不安を煽るのも計算か?」
「何のことですか?」
「とぼけんじゃねーよ。…テメー、こんなことして土方が手に入るとでも思ってんのか?」
「思ってませんよ。俺なんかが何をしても、副長と付き合えるわけないじゃないですか。」
「分かってんじゃん。」
「でも…旦那から離すことなら、俺の力でできると思いますけど。」
「テメー…」
「副長と旦那を別れさせるために既成事実を作った…かもしれませんね。」

これ以上話していても無駄―銀時はそう判断して追究を止めることにした。
銀時の表情が緩んだことで、山崎は逆に何を言われるのかと身構える。

「まあ、どうせキスマーク以上のことはしてねェんだし…動機とか細けェことはいいや。」
「そう思いたいならどうぞ。」
「…甘いな。」
「えっ?」
「団子のことじゃねェよ?…団子も甘いけど…オメーに言ってんの。」
「どういうことですか?」
「オメー、自分が言わなきゃ、俺が何も分かんねェと思ってるだろ?…それが甘ェんだよ。」
「………」

挑発ともとれる銀時の物言いに、山崎は余計なことを言うまいと敢えて口を噤んだ。
今度は銀時が不敵な笑みを浮かべる。

「俺と土方が何年付き合ってると思ってんの?そんで、何回エッチしたと思ってんの?土方が覚えて
なくてもさァ…見りゃ分かるんだよ。ヤったかどうかくらい…。」
「………」
「信じられねェってんならそれでいいけどね…あの後、俺達ホテルに行ってるから、ただ見るだけよりも
確実にヤってないって分かったんだよ。ナカの具合とか精液の濃さとか色々でね…」
「………」

わざとらしい営業スマイルを向けられ、山崎は作戦ではなく、本当に言い返すことができなかった。
財布から札を全て抜いてテーブルに叩き付け、キッと銀時を睨み付ける。

「…仕事に、戻ります!」

絞り出すように声を出し、山崎は団子屋を後にした。


(後は、どうやって土方に本当はヤってないってことを分かってもらうかだな…。昨日はもっと詳しく
ヤる前と後の違いを説明したのに、俺が気休めで言ってると思い込んでたし…一人エッチもあまりしない
から「昨日ヌいたでしょ?」とか当てて分からせる機会も滅多にないもんなァ…。まあ、これからも
ずっと一緒なんだから、焦る必要ねェか…)

銀時は山崎の金を店員に渡し、大量の団子を持って帰路に着いた。


(10.11.27)


お待たせしてすみません。銀VS山の後編です。タイトルは銀VS山ですが、本当に二人が直接対決したのは最後の最後だけですけどね^^;

この後の銀土はケンカもせず、仲良くお付き合いを続けていくと思います。銀さんは土方さんとケンカができなくなってちょっと寂しく思うかもしれませんが(笑)。

山崎もめげずに仕事と称して副長副長言ってると思いますので、土方さんと山崎の関係もあまり変わらず…そして、最後に銀さんが思っているように

滅多にしない一人エッチの日を当てられて、土方さんも山崎と何もなかったのだと分かって、めでたしめでたしです。…そこまで書けばよかったですね。

でも書くとなると長くなってしまうので…^^; それから、結局山崎が何をしたのか書けなかったので「おまけ」にしました。おまけはこちら