おまけ:事の真相
「山崎さん、お疲れ様っす。」
「あ、お疲れー。もう交代の時間?」
「はい。」
「それじゃあ後はよろしく。」
二十四時間対応が必要な真選組の通信室には、深夜といえども常に隊士が待機している。
山崎は後輩隊士に引き継ぎをし、この日の待機当番を終えた。
非常灯のみが灯る薄暗い廊下を歩き、山崎は副長室へ向かう。特に報告すべき案件がなくても、山崎は
一日の最後に副長室へ寄るのを日課としていた。たった一言「上がります。」と会話するためだけに。
(今日は万事屋に行ってるから部屋にはいないんだけどね…)
例え土方が部屋にいたとしても今日の場合は寝ている時間のため、寝顔を一目見るだけである。
それでも山崎は副長室へ通い続けていた。密かに思いを寄せる土方の近くに少しでもいたくて。
(あれっ?灯りがついてる…そうか、旦那とケンカして帰って来たんだ。全く…ケンカなんかするなら
会いに行かなきゃいいのに…)
そう思いながらも山崎は、土方の顔を見られる喜びに心躍らせて襖に向かい声を掛ける。
「副長…山崎です。」
部屋からは何の応答もない。山崎はそっと襖を開けた。
「あっ…」
土方は布団も敷かず、畳の上に突っ伏して寝ていた。その周りにはビールの空き缶やカップ酒のカップが
転がっており、一目で酔い潰れているのだと判る。
山崎は部屋に入り、土方の背中を軽く叩く。
「副長、こんな所で寝てたら風邪ひきますよ。」
何度か背中を叩いて声を掛けてみたが、土方から返事はなかった。山崎は起こすのを諦めて空き缶等を
片付け、押し入れから布団を出す。
「副長、布団敷きましたよ。…よっ!」
山崎は土方を仰向けに返すと上半身を持ち上げ、土方の右腕を肩に担いで布団まで引きずっていった。
(あっ、ほっぺに畳の痕が付いてる…。)
そっと土方の頬に触れると少しだけ目が開き、山崎は慌てて手を引っ込める。
「ふくちょ…」
「んー…ぎんー?」
「………」
山崎の表情が一気に曇った。
「(何だよ…副長のお世話をしてるのは俺なのに!)副長、俺です。山崎です。畳の上で寝てたんで
布団、敷いときました。」
「…ぎんはー?」
「いませんよっ!」
普段の山崎なら酔っ払いの戯言で済ませられるレベルだが、ついキツイ口調になってしまった。
深夜に及ぶ勤務の疲労と相まって、常より心のゆとりがなかった。けれど泥酔状態の土方はそんな事には
気付かず、更に山崎をイラつかせてしまう。
「ぎんー…みずー…」
「だからいないって言ってるでしょ!」
「なんだ…」
そう言うと土方は再び寝入ってしまった。
(なんだって何だよ!旦那以外には用がないってこと!?俺はこんなに…旦那と出会う前からずっと
副長のことが好きなのに!)
所詮酔っ払いの言うこと―頭では理解できていても感情が付いてこなかった。
やるせない想いはやがて恨みへと変わっていく。
(今更、俺が副長の恋人になるのは無理だ。それより、旦那との仲に亀裂を作る方が簡単そうだ。
例えば……浮気とか?…いいかもしれないな。副長が浮気をしたとなれば旦那だって平静じゃいられない
はずだし、何より副長は絶対に自分自身を許せない。浮気疑惑だけでも充分二人の仲を乱せるはずだ!)
山崎はどうすれば浮気に見えるかを考え、土方の服を脱がしてキスマークを付けることにした。
(ごめんなさい、副長…でも、大好きなんです。)
何も知らない裸の土方を抱き締め、山崎は眠りに就いた。
(10.11.27)
というわけで、銀さんの見立て通り土方さんと山崎の間に身体の関係はありませんでした。土方さんが酔った挙句、山崎の地雷を踏んでしまったために
このような事態を招いたんですね(笑)。ですが、山崎は別に告白とかせずに、勝手に嫉妬してこんなことして悪いヤツです(笑)!あっ、前編で銀さんが
見付けた山崎に付いてたキスマークは、山崎が自分で付けました。思い切り抓ったか、特殊メイクでそれっぽくしたか…そんな感じです。
今回はできる限りシリアスにしたかったのですが、機会があればもっと明るい感じの山→土も書いてみたいです^^
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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