おまけ
翌朝。万事屋へ出勤してきた新八と神楽を二人で出迎えて、四人の食事会が仕切り直された。
ご飯に味噌汁、鯵のひらきとホウレン草の胡麻和えと生卵―いつもの万事屋の朝食より少しだけ
豪華なそれは、銀時と土方が二人で準備をした。
四人で声を揃えて「いただきます」と言って食事会が始まる。
「トッシー、具合はどうアルか?」
生卵を丼飯の上で割りながら神楽が尋ねた。
「お、おう。大丈夫だ。」
「確かに、昨日よりも随分と顔色がいいですね。」
鯵の身をほぐしながら新八も笑顔を見せる。
「お肌ツヤツヤアル。」
「そ、そうか?」
「まー、銀さんの看病のおかげだな。」
「そうだな……」
「本当ですか〜?」
「信じられないアル。」
「お前ら、何で俺にはそんな冷たいんだよ!」
「トッシーを早く連れて来なかった罰ネ。」
「そうですよ。僕らも早くご挨拶したかったのに……」
「あー、はいはい。悪かったよ。ほれ、好きなだけ挨拶しろ。」
「本当にもう……。土方さん。」
「お、おう。」
箸を置いて姿勢を正した新八に倣い、土方も箸を置いてみたものの、これから行われるであろう
「挨拶」が何なのか分からず、心拍数が上がっていく。
(「おはよう」はメガネが来た時に言ったから違うよな……。何の挨拶だ?もしかして、これに
失敗したら銀時と別れなきゃなんねェのか!?銀時が何も教えてくれないってことは、きっと、
知ってて当然のことなんだよな……。どうしよう……)
「トッシー。」
「おうっ!」
神楽も丼を置いて土方に向く。二人から呼ばれて土方の視線は、新八と神楽の間を右往左往する。
(チャイナも「挨拶」するのか!?ていうか俺は、どっちと先に「挨拶」すればいいんだ?
年の順でメガネから?レディーファーストでチャイナから?そもそも、何て「挨拶」するんだ?
さっぱり分からねェ!!これはもう、銀時に聞こう!!)
いつものように銀時に頼ろうとした土方であったが、その前に神楽が話し始めてしまう。
「銀ちゃんはどうしようもなくマダオで、貧乏で、足臭いけど……」
「おいっ……」
「グータラで、酒癖の悪いダメ人間ですが……よろしくお願いします。」
「銀ちゃんに愛想尽かしたらボロ雑巾のように捨てていいから、それまではよろしく頼むアル。」
「おいお前らいい加減ににしろよ?俺と十四郎は永遠にラブラブだから!なっ、十四郎。」
「そ、そうなのか?」
銀時まで話に加わり、土方はもう誰と何を話したらいいのかパニックになる。
「ほら!やっぱりトッシーは偶々フリーだったから付き合ってやってるだけアル。」
「そんなぁ〜……」
「土方さん程の人と、一時でもお付き合いできるんだからいいじゃないですか。」
「ヤダ!十四郎と俺は末長くお幸せになるんだ!!ねっ?十四郎、俺のこと好きだよね?」
「あ、ああ。」
「俺達、ずっと一緒だよね?」
「そんなの、分かんねぇよ……」
「何で!?」
「銀時が俺のこと嫌いになるかもしんねェし、他のヤツのこと好きになるかもしんねェし……」
「十四郎……。大丈夫!俺には十四郎だけだから!ず〜っと、十四郎のこと好きだから!!」
「……だったら、ずっと、一緒かもしんねぇ。」
「十四郎〜!!」
銀時はぎゅうぎゅうと土方を抱き締め、頬にキスをする。
「ちょっ……メガネとチャイナが見てるじゃねーか!」
「これは誓いのキスと言って、永遠の愛を誓う大事な儀式なんだよ。」
「そうなのか!?」
「土方さん、違いますよ。」
「何言ってるカ、新八。家族の前で永遠の愛を誓う、これ当然のことアル。」
「いや、だって……今、朝ごはんの最中だし……」
「おうネ。だから銀ちゃん、さっさと終わらせてご飯にするアル。」
「任せとけ!はいっ、十四郎、目を閉じて〜。」
「こ、こうか?」
土方は銀時の方を向いて目を閉じた。
「ちょっと土方さん!鵜呑みにし過ぎですよ!!」
「えっ、違うのか?」
「銀ちゃんとトッシーの愛を邪魔するな、新八。」
「そうだそうだ。さあ十四郎、誓いのキスを……」
「う、うん……」
「ちょっとォォォォ!」
「うるさいアル!!」
常識人・新八が叫ぶ中、銀時は土方に触れるだけのキスをした。
「おめでとうアル!これで二人の愛は永遠ネ!!」
「お、おう……」
「いや〜、良かった良かった。さあ十四郎、メシの続きにしようぜ。」
「ところで銀時……」
「なぁに?」
「挨拶って、どうすればいいんだ?」
「……何のこと?」
「さっきメガネが、俺に挨拶したいって言ってたじゃねーか。」
「あー、アレね……」
「トッシー……ボケてるアルか?あんま面白くないアル。」
「違う違う。十四郎はすっごく真面目なの!十四郎、『挨拶』って言うのはね……」
誓いのキスといい挨拶といい、銀時の言葉を素直に聞いている土方を見て新八と神楽は、
土方が「銀さん」と呼んでいたのは強ち間違いではなかったと思うのであった。
何はともあれ、こうして二人は万事屋公認のカップルになった。
(11.08.25)
真選組に引き続き、漸く万事屋でも公認カップルになれました。真選組の反銀土派の隊士達と違って、新八と神楽は土方さん大歓迎なんですけどね。
むしろ「こんなのと付き合ってくれてありがとう」くらいの勢いです(笑)。最初のうちは普通に祝福していた新八と神楽ですが、二人きりで過ごしていて
一向に連れて来てくれないために拗ねてこんな感じになってしましました。次回はまたラブホに行く話の予定です。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
追記:続きを書きました。→★
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