※通常の原作設定&先天的女体化(女子高生)です。
※原作設定のCPは銀土で、女体化の二人はどちらともとれる感じです。
※おまけは18禁の予定ですが、原作設定の二人のみです。
※本編、おまけ共に男女の恋愛表現はありません。
※以上をお読みになり、大丈夫と思われましたらお進みください。


























アタシ、坂田銀子。銀魂女学園高等部の二年生。あだ名はパー子。…天然パーマだからパー子よ。
決して頭の中身がパーなわけではないわ。
今、駅から学校に向かって歩いてるとこ。…あっ、トシ子発見〜!

トシ子―土方十四子―とは中等部から一緒で今も同じクラスで親友で…実は密かに好きだったりする。
でも伝えるつもりはないわ。だって、女同士なんて変じゃない。好きだなんて言ったらトシ子が困るだけ。
それに、親友だったらこんなこともできるしねっ。

アタシはトシ子に向かってダッシュした。

「おっはよ〜、トシ子〜!」
「きゃあああ…」
「えっ?わわっ…」

いつものように後ろから抱き付いてみたら、トシ子がバランスを崩して…ってレベルじゃないわ。
平坦な道を歩いていたはずなのに、アタシ達はごろごろと何処かへ転げ落ちた。



「いったぁ…何すんのよ、パー子!」
「ゴメーン!なんか、いつもより勢い付いちゃったみたいで…」
「そんなレベルじゃなかったわよ!…って、ここ、何処?」
「えっ?」

アタシ達は見たことのない川原にいた。


時をかける少女達


「…私達、この土手を落ちたの?」
「そうみたいだけど…」

二人は土手の斜面と自分達の制服に付いた草を交互に見やる。

「私、学校に行く途中だったんだけど…」
「アタシだってそうよ。それで、トシ子を見付けたから走って…」
「でもこんな所、学校の近くにある?」
「うーん…。とりあえず、土手を上ってみる?」
「そうね。」

自分達の側に落ちていた鞄を手に、土手を上がった二人は絶句した。
辺りを行き交う人々の多くは着物を着ていて、平屋建ての建物が軒を連ねている。
地面も、先程まで歩いていたコンクリートなど一切ない、自然の土そのもの。

「なっ何なのよここ…」
「こんな所、学校の近くにあった?」
「アタシ知らないわよ…」
「私も。でも、テーマパークか何かみたい。あそこにビルが見えるし…」

十四子の指差す方を見ると、確かに高層ビルのようなものがあった。

「良かった…。実はアタシ、転んだ拍子にタイムスリップでもしたのかと思っちゃった。」
「やめてよパー子…漫画じゃないんだから。」
「そうよねー。」
「フフッ…。あっ、先生だわ。…着物着てるけど。」
「やっぱり学校の近くなのかしら?」

二人は着物姿の「女性」の元へ駆け寄った。


「「おはようございます、西郷先生。」」
「あら…」

声を掛けられたマドマーゼル西郷はセーラー服姿の二人を見て目を丸くする。

「アンタ達…何て格好してんのよ。」
「えっ?どこか変ですか?」
「汚れてるってことでしょ。…さっき転んだから。それより、先生こそどうしてそんな格好を?」

十四子の問いに西郷は呆れるばかりである。

「私はこれが普段着よ。…本当にどうしちゃったの?パー子はともかくアンタまでそんな格好…」
「アタシはともかくってどういうことですか!?そりゃ、トシ子の方がお淑やかだけど…」
「そういう問題じゃなくて…まあ、いいわ。そんな格好してるんだから二人で来てくれるんでしょ?」
「何処にですか?…ていうか、ここ何処なんですか?」
「は?」
「私達、気付いたら川原にいたんです。」
「…それで頭打っておかしくなったのかしら?とにかくいらっしゃい。」
「「はーい。」」

よく分からないながらも二人は西郷の後をついていった。


*  *  *  *  *


西郷に連れられて二人はかぶき町の繁華街を歩いていた。十四子が銀子に耳打ちする。

「ね、ねぇ…何か変な所に来てない?」
「そうね…」

二人は不安に駆られ、どちらからともなく手を繋ぐ。西郷は一軒の店の扉を開けた。

「ここって…」

かまっ娘倶楽部と書かれた看板を仰ぎ見て、二人は絶句した。

「なにボーっと突っ立ってんのよ。早く入ってその制服脱ぎな。」
「「ぬ、脱ぐ!?」」
「当たり前でしょ…今日はコスプレDayじゃないのよ。学校ごっこはお終い。」
「…アンタ、西郷先生じゃないわね!?」
「そうよ!先生が私達にそんなことするわけないもの!」
「手伝う気がないならアンタはいいわよ。…パー子、アンタはお登勢のバァさんに、家賃分働かせて
くれって頼まれてるから逃げるんじゃないわよ。」
「やめっ…」
「汚い手でパー子に触らないで!」

銀子の手首を掴んだ西郷の腕を十四子が叩(はた)く。

「ちょっと…いい加減にしないと怒るわよ。」
「怒ってるのはこっちよ!パー子をこんな所で働かせるなんて何考えてんの!?」
「こんな所とは何よ!私はこの仕事に誇りを持ってるわ!」
「ハッ…ほこりってゴミの方?確かにそうね。」
「アンタ…幕臣だからっていい気になってんじゃないわよ。この田舎侍が!」
「またワケの分からないことを…パー子、行きましょう!」
「ちょっとママ〜?なに揉めてんのよ〜。」

十四子が銀子の手を引きその場を後にしようとした時、騒ぎを聞き付けたアゴ美―ではなくアズミ―が
中から出てきた。第三者の登場で、一触即発だった空気が幾分和らぐ。

「ママ…この娘達、誰?」
「なに言ってんのよ。パー子とそのツレじゃない。」
「ママこそなに言ってんのよ。パー子なら今、中で着替えてるわよ。」
「は?」


*  *  *  *  *


「いや〜、お譲ちゃん達ごめんなさいね。」
「いえ…私もついカッとなって酷いことを…」
「言われてみればウチのパー子より随分小さいわね。」
「西郷さんは、私達の先生より強そうです。」
「今時の学校って凄いわね〜。こんな化け物似の教師がいるの?」
「パー子、言い過ぎよ。それで…その先生、男?女?」
「西郷先生は性同一性障害で、戸籍は男なんですけど心は女性なんです。」
「やだぁ〜、そこまでママそっくりなの〜?」
「だから私も、てっきり先生かと…。」
「それなのにこんな店に連れて来られたら、そりゃ、ビックリするわよね〜。」
「はい…」

開店前のかまっ娘倶楽部、そこには賄い料理を食べながら談笑する四人―西郷、アズミ、十四子、
そして女装した銀時―の姿があった。銀子もその場にいるものの、一人、頬を膨らませてムクれていた。

「ちょっとパー子、いつまで黙ってんのよ。誤解だって分かったんだからいいじゃない。」
「誤解〜?」

笑顔で肩を叩く十四子のことを銀子は睨み付ける。

「ふざけないでよ!オカマに似てるって言われて楽しくおしゃべりなんかできるわけないじゃない!」
「だってぇ〜…プッ…」
「トシ子!」

十四子は銀子と銀時を交互に見比べて吹き出してしまう。

「アハハ…ごめんごめん。でも、本当に似てるわよ。」
「ふんっ!」

銀子はますます頬を膨らませてそっぽを向いた。

「それで…ここって何処なんですか?」
「かぶき町よ。…アンタ達こそ何処から来たの?」

これ以上この話題を続けない方がいいと十四子は判断し、一番気になっていることを聞いてみる。
それは西郷も同じであった。

「えっと…私達は学校へ行く途中で、気付いたら川原にいて…」
「そういえばそんなこと言ってたわね。…で、何て学校?」
「銀魂女学園です。」
「…聞いたことないわね。」
「私も。…パー子(大)、アンタは?」
「知らね…。つーか(大)って何だ!」
「パー子が二人いるんだから(大)と(小)でいいでしょ。」
「いいわけねーだろ。」
「そうよ!だいたい、初対面の人に気安くパー子とか呼ばれたくないわ!アタシの名前は坂田銀子よ!」
「落ち着いて、パー子。」

イライラの募る銀子を宥め、十四子は話題を元に戻す。

「それで…皆さんは銀魂女学園をご存じないんですか?」
「ごめんなさいね。」
「そうですか…」
「大丈夫。詳しいヤツに聞いてやるから。」

銀時は十四子の頭にポンと手を置き、反対の手でグッと親指を立てた。

「詳しい方って…?」
「道に迷った時はお巡りさん、だろ?」
「はあ…」
「ちょっと待ってな。呼んでやるから。」
「呼ぶって…警察の人を、ですか?あの…そこまでしなくても、交番の場所さえ教えていただければ…」
「言ってなかったけど…トシ子ちゃん、キミ、とある警察幹部にそっくりなんだよ。」
「えっ?」
「慣れ慣れしくトシ子とか呼ぶんじゃないわよ、くるくるパー男。」

十四子を銀時から引き離すように、銀子が二人の会話に割って入った。

「おいっ!お前、ヒトのことくるくるとか言える分際だと思ってんのか!?」
「アンタほどくるくるしてないわよ!ねー、トシ子。」
「………そ、それで…私に似てる人っていうのは?」
「スルー!?!なに?トシ子もアタシの方がくるくるだと思ってんの?」
「同じくらいくるくるでいいじゃない。…それで、警察幹部というのは…」
「その前にトシ子ちゃん、俺はコイツ程くるくるじゃないでしょ?」
「だから慣れ慣れしいって言ってんのよ、くるんくるん!」
「おいぃぃっ!余計酷いことになってんじゃねーか!」
「あの…本当に私と似てる人がいるんですか?」

言い争いを始めた銀時と銀子を置いて、十四子は西郷に助けを求める。

「似てるわよ。だから、不用意に表へ出ない方が安全かもしれないわね。」
「そうですか…」
「ほらパー子(大)、早く呼んでやんな。」
「だから(大)はやめろっつってんだろ!」

西郷に悪態を吐きながら銀時はカウンター奥にある電話機に向かった。


*  *  *  *  *


銀時の電話から暫く後、土方がかまっ娘倶楽部に到着した。

「ったく、迷子ごときで俺を呼ぶんじゃねーよ。そんでテメーはまたそんな格好で働いてんのかよ…」
「まあまあ…この娘達見たらそんな悠長なこと言ってられないぜ?」
「あ?」

出迎えられた銀時の女装姿に顔を顰めつつ、土方は奥のテーブルに視線を送る。
そこでは、セーラー服姿の二人がきゃっきゃと騒いでいた。

「トシ子!見て見て!トシ子のお兄さんが来た!」
「私に兄さんなんていないわよ!」
「すっご〜い。そっくり〜。」
「…そうかしら?」

銀子は十四子を無視してはしゃぐ。

「じゃあ、銀さんはパー子のお兄さん?」
「やめてよ!あんなくっるんくるんがお兄ちゃんだったら、ウチは呪われた一家になっちゃうじゃない!」
「俺だって天パの呪いにかかった妹なんかいらねェよ。」
「あっ…」

二人が話しているうちに、銀時と土方が二人の元へ来ていた。
銀時は土方に二人を紹介する。

「こいつらが例の迷子。この、おまえにそっくりなV字前髪ポニーが土方十四子ちゃん。…で、こっちが
超くるくるパー子。」
「坂田銀子だって言ってんでしょ!」
「…な?お前を呼んで正解だっただろ?」
「………は?」

目の前の光景が理解できず、土方の周りにハテナマークが飛ぶ。

「まあ、気持ちは分かるけど…とりあえずこいつらマジで困ってるみたいだから話聞いてやってよ。」
「………」

土方は苦々しい顔付きで二人の向かいに座った。銀時もその隣に座る。

「…で、名前はさっきコイツが言ったので正しいんだな?」
「はい。」

十四子が答える。

「年は?」
「十六です。…二人とも。」
「…何か身分を証明するものは?」
「えっと……あっ、生徒証があります。」

十四子は鞄の中から生徒証を取り出し、土方に渡した。
そこには十四子の写真付きで名前と生年月日、それに学校名と住所、電話番号が記されている。

「五月五日生まれ?誕生日まで一緒じゃん。」

十四子の生徒証を伺い見た銀時は感心したように言った。

「…お前も持ってるか?」
「あ、はい…」

銀子も土方に生徒証を手渡す。

「こっちは十月十日生まれだとよ…」
「マジでか…。あっ、俺が十月十日生まれで、こいつが五月五日生まれね。」
「えっ!」
「そうなんですか?」

銀時の説明に十四子と銀子も驚きの声を上げた。
土方は質問を続ける。

「それと…この、ヒラナリ六年ってのは何だ?お前らの地方の元号か?」
「あの…平成は全国共通の元号ですけど…」
「ヘイセイ…お前ら十六だったよな?」
「はい。」
「その頃…少なくとも俺の知る限り、この国で平成なんつー元号は使われていなかった。」
「そんな…」

平成を知らないという有り得ない状況に十四子は動揺を隠せない。
銀子は励ますように十四子の手を握った。

「それとよ…お前らの学校の住所…東京都ってどこだ?京都の近くか?」
「えっ…」
「東京は日本の首都よ。そんなことも知らないの?お兄さん。」

言葉を失ってしまった十四子の代わりに銀子が答えた。

「首都?いや…この国の中心はここ、江戸なんだが…」
「江戸ぉ〜!?本当に江戸!?嘘じゃないわよね!?」
「ああ。」
「と、トシ子…」
「パー子…」

突き付けられた現実に、銀子と十四子は呆然と顔を見合わせる。

「ま、待って!ここが江戸時代なはずないわ!あの高層ビル…」
「そっそうだわ!それに、ここへ来る途中、ケータイで話してる人もいたわ!」

銀子の発言から、十四子も何とか気持ちを持ち直す。

「やっぱりここ、江戸時代がテーマの遊園地とかでしょ?驚かさないでよ、お兄さん。」
「…江戸時代っつーのが何だか知らねェが、とりあえずここは江戸であって遊園地じゃねェよ。」
「はいはい…そういう設定でしょ?もういいから、出口を教えてよ。」
「だから、出口なんかねェよ。」
「…じゃあ、あの高層ビルにはどうやって行くのよ。」
「高層……ターミナルのことか?ここからだと電車を使うのがいいんじゃねェか?」
「ほら!江戸時代に電車なんてあるわけないもの!」
「お前らの言う『江戸時代』っつーのは、いつの時代なんだ?」
「知らないの?江戸時代っていうのはねー………トシ子、いつ?千年前ぐらい?」
「…数百年前よ。」

銀子から引き継ぎ十四子が説明する。

「私達は家も、学校も、さっき言った『東京』にあります。その『東京』は数百年前に『江戸』という
名前だったんです。その時代を『江戸時代』と呼んでいます。」
「えっ?ってことは二人、未来から来たってこと?」

銀時が疑問を口にすると十四子は首を横に振った。

「確かに…皆が着物を着ているし、土方さんは刀を持っているし、ここは江戸時代に似ています。
けれど、私達が知ってる江戸時代には、電車やビル、電話なんかはありません。」
「…トシ子ちゃんにとっては大昔のことだから、よく分からねェんじゃねーの?」
「違います!携帯電話なんて、私の両親が子どもの頃でもなかったんですよ?大昔にあるわけが…」
「二十年前に天人が来てから、この国は一気に変わったんだよ。」
「あまんと?」

土方から謎の言葉が飛び出し、十四子は首を傾げる。

「あまんとって誰ですか?」
「この星の人間じゃないヤツらのことだ。」
「…は?」
「宇宙人!?」
「まあ、そういう言い方もできるな。」
「トシ子…江戸時代にはもう、宇宙人が地球に来てたの!?」
「そんなわけないでしょ…」
「でもでも…ここはアタシ達が知ってる江戸時代とはちょっと違うじゃない?きっと、パラレルワールド
ってやつよ!倒れた拍子に別の次元へ迷い込んだんだわ!」
「そんな漫画みたいなことがあるわけ…「あー、なるほどね!」

十四子が言い終わらぬうちに、銀時が何だか納得した様子で口を開いた。

「そうかそうか、そういうことね…はいはい了解。」
「な、なにが…?」
「大丈夫大丈夫。心配しなくてもそのうち元の世界に戻れるからね。」
「信じられないかもしれねェが、たまにこういうことが起きるんだ。…俺やコイツも別の世界に
飛ばされたことがあってな…」
「そ、そうなんですか?」
「そうそう。…でもまた、いつの間にか元の世界に戻ってるから安心して。」
「戻れるの?良かったねー、トシ子。」
「う、うん…」

十四子には俄かに信じがたい事実であったが、今はただ「戻れる」という言葉に縋るしかなかった。


(11.04.28)


七万打リク小説第三弾「【おめでとう銀さんありがとう銀さん】の様に別次元設定を絡めた話」です。女装してる時、銀さんは女言葉だと思うのですが、

そうすると誰がどの台詞言ってるか分かりにくくなるので、銀さんは女装してても男言葉のままでいてもらいました。

後編はこちら