※一応、銀土ですが「土銀の銀さん」×「銀土の土方さん」という受け×受けの話です
※受銀さんはいつか攻めたいと思っていて、受方さんは現状に満足しているという設定です
※大丈夫と思われた方のみお進み下さい




10,000HIT記念作品:初めての銀土体験



「邪魔するぜ」

いつものように仕事終わりの土方が万事屋の扉を開ける。
だが、いつものように出迎える人はなく、それでも目的の人物がいる気配はするので部屋へ入っていく。
目的の人物―銀時は事務所のソファに寝転び、ジャンプを読んでいた。

「おい銀時、いるならいるで返事くらい…」
「んー」
「…は?」

視線はジャンプに落としたまま、銀時は掌を上にして片手を伸ばし、指を数回曲げて何かを催促するような仕草を見せる。
しかし身に覚えのない土方は首を傾げたまま立ち尽くしている。
動かなくなった土方に、漸く銀時はジャンプから顔を上げた。

「どうした?早くよこせよ」
「…何のことだ?」
「いちご牛乳」
「……はぁ?」
「だから、いちご牛乳!買ってくるって言ってたじゃん」
「俺が?いつそんなこと…」
「えー、もう忘れちまったのかよ…。昨日会った時にお前の方から聞いてきたじゃん。
今夜ウチに来るから何か欲しいモンあるかって。そんでいちご牛乳頼んだのによー…」
「昨日は巡回中に会ったが…そん時はお前がウチに来いってうるさくて、そんで今日来ることになったんじゃねーか」
「はぁ?俺がいつそんなこと…」
「…今日のお前、何か変だぞ?機嫌悪いのか?」
「オメーがいちご牛乳買ってこねェし、変なこと言うからだろ?ったく、楽しみにしてたのによー。
もう今日はヤらせてやんねェからな!どーしてもヤりてェんなら、今すぐコンビニでいちご牛乳買ってこい」

ビシッと土方を指差して言い放った銀時を、土方は常から開き気味の瞳孔を更に開いて凝視した。

「お前…今、何つった?」
「あん?だからコンビニでいちご牛乳…」
「その前!や、ヤるとか、何とか…」
「…んだよ。ヤりに来たんだろ?でも俺はいちご牛乳飲むまではヤらねェよ!指一本触らせてやんねー」
「お前ソレ、本気で言ってんのか?」
「もっちろん。…ほらほら〜、銀さんに突っ込みてェんなら早くお使いに行っておいで、土方くん」
「……お前、隣の銀時か?」
「………はい?」

ここへ来て銀時も土方の様子がおかしいことに気付いた。

「隣って何だよ…銀さんは銀さんだろ?」
「だから…しっ下の、銀時なんだろ?」
「隣とか下とかワケ分かんねェこと言ってんじゃねーよ。何だ?俺が下の銀時ってことは、お前は上の土方か?
…あっ、確かにそうだな。オメーが上で、俺が下だな…。でも、それがどうしたんだよ」
「おっ俺も……下だ」
「へっ?オメーも下ってこたァ…上とか下って攻めと受けのコトじゃねーの?」
「それで、合ってる」
「合ってるって…そんでオメーも下って………えっ?ま、まさか…」

漸く事の真相が分かったらしい銀時を見て、土方はコクリと頷いた。

「オメー、受土かァァァァ!?」
「ううううけひじって何だよ!俺ァ、土方十四郎だ!」
「んなこたァ見れば分かる!そうじゃなくて、オメーは受けの土方なんだな?」
「お、おう…」
「何でココにいるんだよ」
「知らねェよ。普通に屯所から歩いて来たらお前がいたんだ」
「いや、それはおかしいだろ?俺はずっと家にいて、そこにお前が来たんだからよ…」
「んなこと言ったって…俺はいつも通り万事屋に来ただけだ」
「どうなってんだ?」
「分からねェ。けど…とりあえず屯所に戻ってみる」

帰ろうとして踵を返した土方の腕を、銀時が掴んで止めた。

「ちょ、ちょっと待てよ。…せっかく来たんだし、飲んでかねェ?」
「はぁ?何でそうなるんだよ…」
「だってさー、こんな機会そうそうあるもんじゃねェよ。だったら少しは楽しもうぜ?
別に何か害があるってワケじゃなさそうだしさ。…ねっ?」
「…そういうトコは銀時っぽいな」
「俺、銀時なんだけど…」
「あっ、そうだったな…」
「じゃっ決まり〜。そこ座ってな…すぐ準備するから」
「あ、ああ…」

テーブルにジャンプを置くと、銀時は台所へ向かう。
すると間もなく一升瓶と何品かの手作りのつまみが並べられた。

「すげェな…いつの間に作ったんだ?」
「お前が来る前に作ってたんだよ。ほら、土方が…っつってもお前じゃない方の土方な?
アイツが今日は来る予定だったから準備しといたんだよ。…マヨネーズもあるぞ」

マヨネーズのボトルを手渡された土方は、ポカンとした表情で銀時を見つめた。

「な、なんだよ…」
「いや…そっちの俺も意外と愛されてんだと思ってな」
「あいっ!?ななな何言ってんだテメー!」
「わざわざ料理作って待ってたんだろ?マヨネーズまで用意して…。
出迎えにも来ねェし、いちご牛乳買って来いとか言うからちょっと心配になってたんだ」
「ちっ違ェよ!アイツはパシリみたいなもんだから!誤解すんじゃねーぞ!」
「…もしかしてお前、ツンデレってやつか?初めて見た…」
「ツンデレじゃねーよ!俺はアイツがどうしてもって言うから付き合ってやってるだけだからなっ!」
「分かった、分かった…。まあ、座れよ」
「ここ、俺ん家」

ブツブツと文句を言いながらも銀時は土方の隣にどかりと腰を下ろした。
こうして、外見上はいつも通りの、だがいつもとは一風変わった二人組の飲み会が始まった。



*  *  *  *  *



開始から暫く経ち、いい具合に酒の入った二人は自然と互いの恋人たちの話を始める。

「そんで、どうよ?お前の方はそっちの俺と上手くいってんの?」
「まあ、それなりに…。とりあえずお前みたいに『いちご牛乳買って来い』とかは言わねーよ」
「はははっ…いーじゃねーか。ウチの土方くんは買ってくれるんだからよー」
「別に買えないワケじゃないんだろ?…マヨネーズ買ってんだし」
「いーの!つーか、俺が言わなくたってウチの土方は色々買ってきてくれるぜ?団子とかプリンとか…」
「…パシリじゃなくて、お前が餌付けされてんのか?」
「違ェよっ!アイツなりの優しさだって。…いや、いつも無体を強いてる俺への詫びかな?」
「無体って…お前、何か酷いことされてんのか?」
「ああ酷いね…。お前だって同じじゃねーの?翌朝、腰とかケツとかキツくねェ?」
「なっ!!」

銀時の発言に土方はカッと頬を染め、口をパクパクさせて上手く言葉が紡げない。

「おいおい、こんなことぐれェで赤くなんなよ…」
「て、めーがイキナリ、とんでもねーこと言い出すからだろ!」
「そうか?…むしろこんなコト言えんのお前だけじゃね?あの辛さは経験者にしか分かんねェだろ?」
「そっそりゃあ、まあ…。でも俺は別に酷いことされてる気はしねェけどな」
「マジでか?…あー、そうか。攻めだって銀さんだもんな。優しいよな、俺は…」
「…俺は優しくねェのかよ」
「優しくないね。俺が無理だっつーのに何度も何度もよー…」
「それは、ウチの銀時も同じだ…」
「あっ、そうなの?やっぱどこの世界も攻めはロクでもねーヤツなんだな…」
「そんなことねェよ。…多少やり過ぎることはあるが、ちゃんと…き、気持ち、よく、してくれるし…」

俯き加減で恥じらいながらも必死に恋人の肩を持つ土方を見て、銀時は何となく悔しくなった。
自分の恋人だってコイツの恋人に負けちゃいないはず―銀時はそう思っていた。

「俺の土方だって下手なワケじゃないからね?気持ちイイのは確かだけど、ちょっと不公平だなって感じてるだけだから」
「不公平?」
「そっ。ヤられんのが嫌ってワケじゃねーけど、たまには俺がヤったっていいと思わねェ?
土銀置き場ってよー、銀土とリバに挟まれてんじゃん?なのに俺だけ突っ込めねェって不公平だろ?」
「…そんなこと言ったら俺だって同じじゃねーか」
「だから、たまには突っ込んでみたくねェ?俺のムスコがドライバーになったり、ドット化したり
猫になって玉狩りに遭ったりすんのって、使ってねェからだと思うんだよな…」
「それ、ウチの銀時もなってたぞ?俺はなったことねェし…関係ないだろ?」
「えー、そうかなァ…。つーか、俺が好きなヤツ抱きたいって思っちゃいけねーのかよ!」
「…お前は、突っ込んでみたいのか?」
「当然だろ?お前だってそうだろ?」

フルフルと土方は首を振る。

「えっ、マジ?何で?そっちの俺をあんあん言わせてェとか思わねェのか?」
「考えたこともねェよ」
「うわー、さすが受土だな」
「何だよソレ…。それならオメーだって受銀じゃねーか」
「違うから。心は攻銀だから、俺」
「ワケ分かんねェよ…。つーか、そんなに突っ込みてェならそっちの俺に頼めばいいじゃねーか」
「頼んでもいつの間にか却下されてんだよ。だけど無理矢理ヤったらショックで腹切りそうだしなァ…」
「…そんなに嫌がられてんなら諦めろよ」
「やだ!絶対に諦めない。あー、どうやったら土方に突っ込めるかなァ…」
「知るかっ」

言い捨てて土方はグイと酒を呷った。
そこでふと何かを思いついた銀時は、土方の横顔を凝視する。

「な、なんだよ…」
「うん、そうだよ。その手があったよ…。つーかコイツ、そのために来たんじゃね?」
「ナニ言って…」
「土方、ヤろうぜ?」

銀時は土方の肩にポンと手を置き、満面の笑みで親指を立てて和室を指差した。

「………はぁ?」
「だから、ヤろうぜ?」
「……念のために聞くが、何をやるんだ?」
「セックスに決まってんだろ?」
「…誰と誰が?」
「俺とお前」
「断わる」
「えー。お前、突っ込む気ねェんだろ?だったら俺にヤらせて…」
「断わる」
「…あっ、もしかしてオメーも実は突っ込みたかったんか?仕方ねーな。それなら順番に…」
「そういう問題じゃねーよ!どっちが突っ込む側でも、俺はオメーとヤる気はねェ!」
「何でだよ?」
「何でって…決まってんじゃねーか。お前も俺も、付き合ってるヤツがいるだろ?」
「でもさァ、お前が付き合ってんのって銀さんだろ?俺、銀さんだから」
「オメーとウチの銀時とは違う」
「違わねェよ。銀さんは銀さんだ。そしてオメーは土方だ。何も問題はねェよ」
「………」

土方は銀時のように楽観的には考えられなかった。
そんな土方の葛藤を余所に、銀時は土方ににじり寄ってきている。

「ちょっ、近いって!」
「近付かなきゃヤれねーだろ?」
「俺はヤるなんて言ってな…」
「往生際が悪ィぞ?オメー白血球王ともヤったことあんじゃねーか」
「うっ、何でそれを…」
「へっへ〜、隣のことだから知ってんだよ。つーワケで、白血球王が大丈夫なら俺も大丈夫だって」
「ま、待て!俺は大丈夫でもお前の方は大丈夫じゃないだろ?お前はそっちの俺以外とは…」
「どっちにしろ突っ込む方は初めてだから大丈夫だ!」
「……本当に本気か?」
「本当に本気だ」
「………」

了承しない代わりに拒否もしない土方に、銀時はあと一押しだと感じた。

「なあ、土方…俺じゃダメか?」
「だっ…ダメ、じゃ、ねェ…」

恋人と同じ顔で殊勝にお願いされて突っぱねられる程、土方は鬼ではなかった。
銀時の貌がパァっと明るくなる。

「ありがとー土方!じゃあ和室に行こうぜ?あっ、その前に風呂だよな」
「お、おう…」

銀時は風呂の準備をしに行った。


(10.01.23)


全く需要がなさそうだけど、自分だけが楽しい受け×受け話書いちゃいました^^;二人が言ってる「隣」というのは倉庫の表の並びのことです。この後、受銀さん初めて攻めます。18禁です