なくなって初めて気付くありがたさ
とあるラブホテルの一室。今夜も土方十四郎は恋人の坂田銀時と睦み合っていた。
「んんっ!…あっ、あっ、あっ……ああっ!!」
「くっ…!」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「はぁ…あー、気持ちヨかった」
「…そう、かよ」
「土方だってヨかったでしょ?つーか、めちゃめちゃヨさそうだったよね?」
「っるせェ…終わったんならさっさと抜け!」
「はいはい…」
「んっ…」
体内から銀時が出ていくと、ドロリとしたものが流れ出てくるのを感じて土方は顔を顰める。
対照的に銀時は、自身の出したもので溢れかえる後孔を満ち足りた表情で見つめている。
そして白濁に塗れた入口にそっと指を差し入れた。
「てっめ…なに、して…」
「ああ、大丈夫。さすがにもうヤらないから」
「ったりめーだ…三回もヤっといて」
「うん、満足」
「だったらその手をどけやがれ」
「いや、ね…大量だなぁと思ってさ…。ぐちゅぐちゅいってる…」
「何が大量だ。テメーが出したんじゃねェか…」
「うん、そうなんだけどね?」
「いいからどけよ…シャワー浴びてくる」
「…後始末、手伝おうか?」
「いい…テメーは来んじゃねェ」
銀時に後始末をさせると、大抵それだけでは済まない。下手すると「もう一回」なんてことになりかねない。
それが分かっているから土方は一人で浴室へ向かった。
* * * * *
一週間後。今夜万事屋へ泊まりに行く土方は、銀時にあることを伝えようと決意していた。
「…つーワケで、後始末が大変だから今後はゴムを着けてヤってくれ」
万事屋へ来て開口一番、土方は言い放った。
「ゴムって…コンドーム?」
「…それ以外に何があるんだよ」
「えーっと…輪ゴム、とか?」
「よし分かった…出せ。テメーのモン、輪ゴムで縛ってやるから…」
「うう嘘嘘嘘…冗談です!銀さん、どちらかといえばお前を縛りた…ああああ、待って!刀はしまって!」
ゆらりと立ち上がり刀を手にした土方を銀時は慌てて宥める。
「ちょっとした冗談だって!コンドームだろ?分かってるよ」
「じゃあ着けてくれんだな?」
「あー、ちょっと待って。それって…毎回?」
「毎回」
「…ホテルでする時だけ、とかは?」
「じゃあホテルでしかヤらねェ」
「ちょっ…それじゃあ月一回あるかどうかじゃん」
「…行く回数を増やせばいいだろ」
「そ、それは、その…」
「着けるのが嫌なのかよ」
「あっ、そういうワケじゃなくてね…」
はっきりしない銀時に、元々気の長い方でない土方は苛立ちを覚える。
「…んだよ。言いたいことがあんならハッキリ言いやがれ!」
「じ、じゃあ、言います。あの…お金が、ありません」
「………はぁ?」
銀時が貧乏なのは言われなくても知っている。
だが今なぜ金がないと言われたのか、土方には分からなかった。
その様子を見て、銀時はバツが悪そうに説明しはじめる。
「だから、ね…毎回ゴムを用意するだけの金が、ないんだよ…。ラブホだったらさァ…備え付けてあんじゃん。
でもよー…ゴム買う金もねェのに、会う度ラブホへ行けるわけが…」
「そんなことか」
「そんなことって…。そりゃあ、土方は高給取りだからいいけどよー…俺はさー…」
「じゃあ俺が買ってきたら着けんだな?」
「えっ、土方が買うの?それもちょっとなぁ…」
「何だよ」
「だってよー『これからヤるんだな』って店のヤツに思われんじゃん。…あっ、俺は別に思われてもいいよ?
でも土方だとさー『彼氏が用意しないんだ。ろくでなしと付き合ってんだ』って思われちゃうじゃん!
それどころか『そんなヤツやめて俺と付き合わねェ?』って口説かれるかもしれないじゃん!そんなのヤダ!」
「………」
銀時の妄想についていけず、土方はハァと溜息を吐いた。
「あっ、今『そんなことあるわけねェじゃねーか』とか思っただろ?」
「おお!よく分かったな」
「そんなことあるわけなくないの!…男は皆オオカミなんだぜ?用心に超したことは…」
「俺も男なんだが…」
「いや、でも土方はオオカミっつーよりネコだよな。…色んな意味で」
「るせェよ!だいたい…何で店のヤツに俺がネコだって分かんだよ!
俺が買ったらフツー、俺が使うんだって思うだろうが!」
「あっ、そうか…そういう考え方もあるな」
「ていうか、そういう考え方しかねェよ。とにかく…あれば着けるんだな?」
「あ、うん…」
「じゃあ、コレ使え」
そう言って土方が取り出したのはコンドームの箱。
「えっ、コレ…どうしたの?」
「買った」
「いつ?」
「今日」
「どこで?」
「コンビニ」
「…店員に口説かれたりとかは?」
「あるワケねーだろ」
「そっか…」
安心したといった貌の銀時を、土方は心底呆れた目で見ていた。
「じゃあ暫くの間はコレ使って、なくなったらその時考えような?
そん時には俺にも金が入ってるかもしれないし、そしたら俺が自分で買うから」
「ああ…」
話が一段落したことに土方は安堵する。
銀時は土方にもらった箱を手に取ってしげしげと眺めていた。
「これだと四日分くらいか?よしっ、それまでに頑張って依頼を…」
「おい、それ十二個入りだぞ?」
「うん。だから四日分。あっ、頑張ったら三日で…」
「何で更に短くなってんだよ!一日三回か四回計算!?十二個あんだから十二日分だろ?」
「一日一回なんて無理に決まってんでしょ?…毎日会えるワケじゃねーし」
「チッ…。まあ、とにかく、当分の間はそれで…」
「うん。…というわけで、シよっか?」
「ああ…」
* * * * *
「あっ…んんっ……あぁっ!」
和室に一組だけ敷かれた布団の上、土方は四つん這いになって後ろから銀時を受け入れている。
銀時のモノにはもちろん、土方の買ってきたゴムが装着されていた。
「はぁっ!……くっ…あっ!」
イイ所を通過する度に土方から艶やかな声が上がる。
土方を更に感じさせたくて、銀時は前に手を伸ばした。
「あっ、待っ…ひぁっ!…やあっ、そこ…触、んなぁっ!」
「んなこと言ったって…ナカ、すげェ締まるよ。…気持ちいいんでしょ?」
「違っ…やっ!あぁっ!…やめっ!…はぁん!」
首を振って否定するが、どう見ても感じているようにしか見えない。
人差し指の先で先端の窪みを抉り残りの指で括れを刺激すると、土方は全身を震わせて喘ぎ、ナカは複雑に蠢いた。
「やあっ!…ああっ!ああっ!」
「くっ…やべェな。もう、もたねェ…」
「ひあっ!ああっ!…ああっ!!」
自身も限界を感じ、銀時は律動を速くした。
「はあっ!ああっ、ああっ、ああっ…ひあぁっ!!」
「くっ…ひじかたっ!!」
土方は銀時の手の中に白濁を放ち、銀時もほぼ同時に吐精した。
(10.01.02)