おまけ
コン、コン……
「入るぞ」
返事のない扉に向かって声を掛け、多串は銀八の部屋へ入る。
電気の点いていないその部屋は、扉を閉めると窓から差し込む街灯の明かるさしかない。
多串は薄暗い部屋の中、真っ直ぐベッドへ向かって歩を進めた。
「悪かった」
「…………」
布団の膨らみにそっと手を置き謝罪の言葉を述べる。布団の中が僅かに動いたものの
それ以上にはならなかった。
「悪かったよ……。家族に紹介してもらえて、嬉しくてついはしゃいじまった」
「……紹介なんて、そんな大袈裟なもんじゃねーし」
布団越しに漸く聞こえた声に多串はふっと笑みを零すと、布団に置いた手を撫でるように
滑らせながら語りかける。
「だが家に呼んでもらえた。……ありがとな」
「別に……弟が呼べっつーから呼んだだけだし」
「それでも嬉しかったんだよ。……なあ、出て来てくれないか?」
「…………」
無言でもそりと布団が動き、中から銀八が顔を出す。そのタイミングで多串が礼を言うと、
銀八はバツが悪そうに布団を剥いだ。メガネはかけたまま、いつにも増して髪の毛はフワフワ……
そんな銀八の隣に多串も座り、肩を抱いた。
「ごめんな」
「……もういいって」
「それと、ありがとう」
「それもいい」
「ぎん……」
「……んっ」
呼ばれて銀八は多串の首に腕を回し、その唇に己のそれを押し当てた。
「ん……」
「ん……」
唇同士のキスを数回繰り返し、どちらからともなく舌を伸ばす。
扉の向こうから時折聞こえる家族の足音が二人に背徳感を与え、それが口付けの刺激と
混じり合い身体を高ぶらせる。
「トシ……」
「これ以上はマズイだろ……」
離れていく唇を追う銀八にストップをかけ、現実に引き戻す。
銀八はちらりと扉の方を見て、僅かな逡巡の後に再び多串に口付けた。
「んっ……お、おい……」
「平気。もう皆、自分の部屋にいるみたいだから」
扉の隙間からは微かな光すら漏れておらず、廊下の照明が落とされているのだと判る。
それでも家族のいる家には変わりなく、多串は迷っていた。
「本当にいいのか?」
「いいって。つーか、コレどうするんだよ」
「うっ……」
銀八が股間を撫でると、そこは服越しでもはっきり分かるほど硬く膨らんでいた。
「俺のももうヤバイし……ヌこうぜ?」
「お前がいいなら……」
「よしっ。声抑えろよ」
「そっちこそ」
二人はベルトを外して一物を取り出した。
「あ、シックスナインにしねぇ?口も塞げて後始末も楽だ」
「そうだな」
「じゃあこっち……」
「おう」
銀八の思い付きで二人は頭を逆にして横になり、目の前のモノを啣えた。
「んんっ!」
「あっ!」
想像以上の快楽を感じ、二人は一物から口を離した。やや身体を起こし、声を潜めつつ多串が言う。
「お前、声出すなよ!」
「出ちまったもんは仕方ねーだろ!」
「次から気を付けろよ?」
「分かってるよ。……ていうか、もっと優しくやれ」
「……お前もな」
元の体勢に戻り、今度はより慎重に相手のモノを口内へ招き入れた。
「んんっ……」
「むっ……」
いつもより気持ちいい……二人は口を塞ぐため一物を根元まで啣え込んだ。
「んんっ!」
「んーっ!」
当然、より強い刺激を与え、そして与えられる結果となる。
こうなったらさっさとイッた方がいい……相手にこうしろとでも訴えるように強く啜った。
「「んんんっ!!」」
ほぼ同時に口内へ射精され、嚥下する。それから気怠い身体を起こし、ベッドの中央で
抱き合ってキスを交わす。未だ自身の苦みが残る口内にも煽られて、二人分の唾液と精液を
混ぜて飲み込みながら舌を絡め合わせた。
「トシ……足りねェよ……」
「ハァッ……俺もだ……」
足りないと言いつつも一度達してやや冷静さを取り戻した頭は、これ以上はマズイと警鐘を
鳴らしていて、二人とも、勃ち上がり始めたモノへは手を伸ばせないでいた。
けれど、こうしていても熱は引かない。銀八は覚悟を決めた。
「出よう」
「……いいのか?」
「ちょっと行って帰ってくれば……」
「それしかねェか」
二人は乱れた着衣を整えてそっと坂田家を後にした。
金時と銀時に気付かれているとも知らずに。
* * * * *
「なあトシ、今日は俺からだよな」
ホテルに着き、服を脱ぎながら銀八が問うたのはベッドの上での役割。
その時の気分によって変わることもあったが、基本的には一回ずつ交代で交わっていた。
「違ぇよ。この前、最後にもう一回ってオメーが乗っかったじゃねーか」
「あーはいはい、そーでした。流石トシさん、よく覚えてますね〜」
「……今更後輩ぶっても可愛くないぞ」
「メシん時と言ってることが違うじゃねーか」
「ハハハ……」
サイドボードにメガネを置き、全裸になった多串がベッドに横になると、銀八がその一物を
緩く扱きながら後ろの窄まりへローションを塗り込めていく。
「俺さァ……もうコッチにないと物足りないんだけど」
「……順番は守れ」
「それはちゃんとヤるって」
「あっ!」
銀八は前立腺を押し上げた。
「ただ、コッチがこんなにイイとは思わなかったって話」
「んっ……そうかよ……」
「こんなことなら大学ン時、断わるんじゃなかったなぁ……」
「ハッ……カラダ目当てかよ……」
「いやね……」
「んっ……」
挿入する指を二本に増やす。
「別にOKしても良かったんだけど、エッチの時に痛いのは嫌だなと。だからって俺がずっと
抱く側でいいか、なんて聞くのもさァ……」
「そんな理由でフラれたのか、俺は……」
軽くショックを受けたがそれは過去のことと割り切ることにした。銀八がそういう考えなら、
酔った勢いに任せて一夜を共にし、それから交際開始で今に至るという手順は間違いでは
なかったということだ。
更にポジティブに捉えれば、学生時代から銀八も少なからず思ってくれていたということ……
そのように多串が持ち直してきた頃、
「それにさっ!」
「あぁっ!」
銀八のモノが奥深くまで挿入された。
「ウチにっ、連れて、来たのだって……」
「あっ、あっ、あっ……」
腰を振りながら紡がれていく言葉を、多串は喘ぎながらも確りと聞いていた。
「トシが、初めて、だからっ……」
「あ、あっ……あぁっ!」
メガネを外してしまったために銀八の表情はぼんやりとしか見えないが、声の調子から
今の自分との関係は、彼なりに真剣に考えた結果なのだということは伝わってきた。
「ちゃんと、好き、だから……」
「分、てるっ……」
身体を揺さぶられながらも伸ばされた両腕が、銀八の肩に首に掛り、引き寄せられる。
「んっ」
「んんっ!」
そのまま唇を合わせ、上も下も繋がった状態で昇り詰めていく。
「んっ、んっ、んっ、んっ……」
「んんっ……んっ、んっ……」
「「んんんっ!!」」
達して間もなく唇を離し、銀八は多串の一物にローションを垂らした。
「っ……もう、かよ……」
「気持ちいいくせに。……すげェ締まってるぜ?」
「チッ……」
未だ挿入されたままの銀八自身。多串が感じる度、それをきゅうきゅうと締め付けていた。
「……ヒトのチ○コ触んのがこんなに楽しいってのもトシに教わったな」
「なら、俺にも触らせろ」
「はーい」
「んっ……」
銀八は一物を抜き、ローション塗れにしたモノの上にゆっくり腰を沈めていった。
「あっ、あぁ……」
腹部に手を付き、慎重に腰を下ろしていく銀八の、無防備な一物を多串が握った。
「待っ……」
「こっちのことは気にすんな」
「いやっ、ムリっ……あぁっ!」
一物を扱かれたために銀八は膝から崩れ落ち、一気に最奥まで杭が突き刺さってしまう。
「……いきなり入れると痛くねェか?」
「そ、思うなら……触んなよ」
「触っていい、つったのはオメーだろ?」
「今じゃな……あっ!やめっ、んっ……ああっ!!」
銀八のモノから白濁液が噴出した。
「あ〜、くそっ……」
悔しそうに銀八は一物を握る手をパシッと払い除けた。
「痛ェな」
「勝手にイカせたからだ。暫く後ろで感じてたかったのに!」
「悪かったよ。……もう一回ヤるか?」
「トーゼン!」
銀八はナカのモノを勃たせるため、入口を締めて腰を揺らし始めた。その時、
プルルルル……
部屋に備え付けの電話が鳴った。
「えっ、もう三時間?」
「みたいだな」
「チッ……」
銀八は一旦多串から下りて受話器を取り「泊まります」とだけ言って通話を終えた。
「……いいのか?」
「まだ足りねェし……皆が起きる前に戻れば大丈夫だろ」
「そうだな」
その後、思う存分抱き合った二人は、チェックアウトの時間だとフロントから電話がかかるまで
ぐっすり眠ってしまうのだった。
(12.06.13)
本編以上に書くのが楽しかった(笑)。エロだからではなく、恋人同士中心の話だからです。家族関係や友達関係中心の本文も結構楽しんで書いていたのですが
この「おまけ」を数行書いた時点で自分でもビックリするほどテンション上がりました。そして、トシ刑事の名字を「多串」にしたことを激しく後悔しています^^;
銀八先生がふざけて多串呼びする分には萌えますが、地の文まで多串だと別人みたいで……‐‐; 土方が良かった……。 でも久々にリバエロ書けたんで、
やっぱり楽しかったです。二人ともどちらかといえば受け希望……これは当サイトのリバの基本形です(笑)。何となく、トシ刑事は男に慣れてる感じですが、
その辺のところはご想像にお任せいたします^^ ていうか銀八先生、男はトシ刑事しか知らなくて二人は最近付き合い始めた設定なのに慣れ過ぎですね^^;
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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