「先生……すげぇエロい。マジで興奮する。」
「そうかよ……」
全裸で仰向けに寝た俺を見て生唾飲み込むコイツのせいで俺は、後ろ指差されかねない人生を
送る羽目になった。……いや、コイツのせいじゃねェ。悪いのは俺だ。
「先生、何か他のこと考えてる?」
「うっせェ……ヤるならさっさとヤれ。」
「そんなさァ、ヤケクソで結ばれても仕方ないじゃん。二人の記念すべき初エッチなんだよ?」
記念とか初めてとか、そういうのは勘弁してほしい。罪悪感が増すじゃねェか。……まあ、実際
悪いことしてるんだけどよ……。
コイツは前日に卒業式を終えたばかりの高校生で、俺はその高校の教師なんだ。
土方先生と坂田くん
コイツ―坂田銀時と初めて会ったのは三年前の春、入学式の翌日のことだった。
その日俺は当番で登校時間中、校門に立っていた。不審者対策と身だしなみチェックを兼ね、
毎朝教師が交代で校門に立つことになっている。
ぞろぞろと校門をくぐっていく生徒達の中に若干髪の茶色いヤツを見付けた。
正直言ってこういう仕事は面倒だ。別に髪が何色だろうと、制服を着崩していようとどうでもいい。
大して変わんねェんだから余計な仕事を増やすなよ。
教師生活も丸五年が過ぎ、ある程度はこなせるようになったものの、定時で上がれる日なんて
数えるほどだ。だから、可能な限り仕事は減らしたいのだが、見付けちまったもんは声を
掛けなきゃなんねェ。それが仕事だからな。
「おい、クラスと名前は?」
「えっ?ナンパ?」
「ンなわけあるかっ!お前の髪が茶色いから声掛けたんだよ。」
「あー、先生?カッコイイね。女子に人気あんでしょ?」
「……ちょっと来い。」
校門の見張りをもう一人の先生に任せ(朝当番は二人一組だ)、一筋縄ではいかなそうなソイツを
人のいない校舎のわきまで連れていく。
「で、クラスと名前は?」
「その前に先生の名前は?人に名前を聞く時はまず「土方だ。」
生意気な生徒の言葉を遮って名乗ってやったが、コイツは堪える様子がない。
「土方先生ね。俺は一年Z組の坂田銀時。よろしくお願いしまーす。」
「よろしくじゃねーよ。お前、何で呼び止められたか分かってんのか?」
「ああ、髪のことでしょ?これ、許可取ってるから。」
「は?」
「知らない?俺、地毛が銀髪だからさァ、染めること許されてんの。」
「ああ、それがお前か。」
校長からそう言う生徒がいるってのは聞いていた。しかし……
「染めるなら黒く染めろ。この学校じゃ教職員も茶髪は禁止で、白髪染めも黒のみだ。」
「俺のは銀髪で、白髪じゃないんだけど……」
「似たよーなもんだろ。とにかく、染めるなら黒だ。」
「俺、黒ってあんま似合わないんだよね〜。」
「じゃあ染めなきゃいいだろ。お前の場合、選択の余地があんだからそれ以上ごちゃごちゃ言うな。
」
「でもさァ……」
「そんなに染めてェなら校則を変えろ。」
「へっ?」
「不満は正当な方法で訴えりゃいいんだよ。詳しくは生徒手帳を読め。」
「いや、そこまででは……」
「なら黒くして来い。……今日はもういいぞ。」
「はーい。」
坂田の第一印象は「どこにでもいる普通の生徒」だった。大した理由もないくせに、思春期特有の
反抗心でもってルールを破る。
しかも、大々的にではなくひっそりと。本格的に掟破りをする者達に目を付けられない程度に。
何だよダークブラウンって……。茶色くしたいなら分かりやすくしやがれ!その方がこっちも
見付けやすくて楽だ。目を凝らしてねェと黒か茶か分かんねーような色にして「校則を破ってやった
」と
いきがってんじゃねーよ。
坂田もそんな生徒の一人なんだと、そんな風に思っていたんだが……
* * * * *
「土方先生。」
「お前……」
翌日、坂田は髪を黒く染め直し、しかもそれを見せに朝一で職員室へやって来た。
「黒も似合うじゃねーか。」
「えへへ……そうかな?」
「ああ。」
なんだ……素直ないいヤツじゃねーか。他のいきがってる連中も、こんくらい素直なら
やりやすいんだがな……。けれど、坂田は坂田で別の、とっても厄介な問題があった。
「先生に、折り入って話したいことがあるんだけど……」
「何だ?」
「ここじゃちょっと……できれば二人きりで。」
昨日少し話しただけの教師に何の用だと思ったが、俺の忠告を素直に聞いたところを見ると
何かコイツの中で思うことがあったんだろうと、俺は坂田を相談室へ連れて行った。
ここは、週に二回非常勤のスクールカウンセラーがカウンセリングを行うほか、生徒の相談に
乗る場として利用されている。
「それで?」
「あのさァ……先生、俺が昔いじめに遭ってたって知ってる?」
「……ああ。それで髪を染めてんだろ?」
「うん。まあ、本当はそんな大したことなくて、俺もやり返してたからアレなんだけど……でもさ、
そういう暗い過去を背負って髪染めてるって言うとさ、大目に見てもらえてたから……」
「お前の過去はどうあれ、校則は校則だ。」
「そんな風に言う人、先生が初めてだよ。」
「そうかよ。」
「しかもさ……染めたいなら校則変えろって。いいの?先生がそんなこと言って。」
「髪を染めるのは犯罪じゃねーだろ。」
「そうなんだけどさ……」
「長年変わらないルールにだって欠点はある。ルールがおかしいと思ったら変えたっていい。
ただし、変わるまではルールを守れ。勝手にルールを破ったヤツの話は聞いてもらえねーからな。」
「そうだね。」
恐らくコイツは人と違うゆえに苦労して生きてきて、そのために周りの大人からは「優しく」されて
きたんだろうな……。だから、面と向かって注意した俺が新鮮だったんだろう。
「ところで先生って独身?」
「まあな。」
「年下の男ってどう思う?」
「……は?」
「俺さ、先生のこと好きになっちゃった。」
「は?」
「あっ、返事は急がなくていいから。卒業まで三年……時間はたっぷりあるし。じゃあまたね〜。」
「お、おい……」
それから坂田は、授業の質問だ何だと言っては俺の元を訪れ、そのうち俺の家にも上がり込む
ようになり、気付けば俺は一回りも年下の坂田に惚れてしまっていた。
だからといって生徒と付き合うことはできねェ。そんなことをしたら校則違反どころの騒ぎじゃない
。
教師の規範、いや、社会の規範として子どもと付き合うなんてことは許されないんだ。
だが、俺の気持ちに気付いたのかしつこく交際を迫る坂田につい「卒業したら」なんてことを
口走ってしまった。
卒業すればある意味ルール違反ではない。だが教師として、人生の先輩として間違っている。
そう思いながらも突っぱねられなかったのは俺の弱さだ。
そして、卒業式翌日の今日、意気揚々と家にやって来た坂田の告白を受け入れ、キスをした。
キスだけで我慢が出来なくなったらしい坂田にベッドへと押し倒されて、本当は四月になるまで
教え子なんだが、拒みきれずに冒頭の状態になる。
* * * * *
「いいから来い。」
「……なんか違う。」
「あ?」
「初めてなんだよ!?三年越しの想いが漸く実った末の初めて!!」
「まあ、そうだな……」
だからそうやって重しをつけんなよ。俺にとっちゃあ犯罪行為なんだ……。
やっぱり止めようと思う一方で、ズボンを押し上げている坂田の股間を見るとどうしようもなく
身体が疼く。だからもう、勢いに任せてヤってしまいたいんだ。美しい思い出として残さなくても
いいから、俺は今すぐお前が欲しいんだよ。
そんな俺の考えなんて知る由もない坂田は「初めて」を強調する。
「俺さァ、ちょっとドSなんだ。でも、先生を痛めつけたいわけじゃねェし、今日は初めてだし、
特別優しくしてあげるから……だから、怖がらなくていいよ。」
「そうかよ……」
誰も怖がっちゃいねーよ。ていうか「ちょっとドS」ってどっちだよ。「ちょっと」なの?
「ドS」なの?バカなの?
「あっ、先生だけ裸で恥ずかしい?大丈夫だよ。俺もちゃんと脱ぐから。」
そう言って坂田は服を脱いでいったが、上半身裸になったところで手が止まった。
……恥ずかしいのはそっちじゃねェのか?もしかしてマジで「初めて」か?
「えっと……でっ電気、消した方がいいですよね?」
「いや……」
「遠慮しなくていいですよ。……あっ!」
天井の照明を仰ぎ見た坂田は漸く気付いたようだ。部屋の明かりは元々点いていなかったことに。
まだ昼間だからな……
「え、えっと……カーテン!カーテン閉めますね!」
「ちょっ……」
遂に坂田はベッドから降りちまった。この部屋の窓はすりガラスだからカーテン引かなくても
別にいいのによ……。ていうか何で敬語になってんだ?随分と焦ってやがる。こりゃ、マジで
「初めて」くせぇな……。あー……更に罪が重くなった気分だ。
坂田がカーテンを引き部屋の中が薄暗くなる。カーテン自体とその周りだけが外の光を受けて
明るくて……ますます後ろめたさが募る。俺はもう二度とお天道様の下を歩けないかもしれねェ。
「そっそれじゃあ、失礼します。」
「おう。」
戻って来た坂田は先程までより緊張感を露わにしている。部屋を暗くしたせいで余計に雰囲気が
出たからそれに呑まれてんのか……。こういう所を見ると愛しく思えてしまう。
俺の腰を膝で跨ぎ、顔の横に手を付いて、ゆっくり近付いてくる坂田と一瞬だけ目を合わせてから
目を閉じた。
坂田と俺の唇が触れ合う。
少しして、身体に何の重みも感じないことを訝しみ、俺はそっと目を開けてみた。
「…………」
坂田は膝を曲げた腕立て伏せのような体勢で俺の上にいた。顔の横の腕がぷるぷる震えている。
ああ、ダメだ……コイツ、可愛すぎる。
「んぅっ!?」
坂田の背中に腕を回し、力を込めて引き寄せて体勢をひっくり返しやった。
「口、開けろ。」
「ああああの、先せ!?」
坂田は何か言いかけていたが構わずキスをして舌を捻じ込んでいく。
「んっ、んっ、んん〜っ!」
俺の股間を坂田のそれに当てて腰を揺らせば、俺の下で坂田のナニがどんどん硬く膨らんでくる。
「んー……ハァッ!せ、先生……何を……」
「そのまま寝とけ。」
「ででででも……あっ!」
ずっと着たままだった坂田のズボンと下着を剥ぎ取り、今更股間を隠そうとする坂田の手を
払い除け、俺は坂田のナニを咥えた。
「せせせ先生!?待って!ダメ!」
カウパーだだ漏れのくせに何がダメなんだか……。無視してちゅうちゅう吸っていると、
面白いくらいに溢れてくる。坂田は上体を起こし、俺の頭を両手で掴む。
「あぁっ!先生っ!もう、イッちゃうからっ……!」
だから何だ。こっちはイカせようとしてヤってんだよ……
「あっ!ダメっ……先生っ、離っ……あっ、んんっ……あっ、ああっ!!」
坂田の精液で口ン中がいっぱいになり、俺は坂田のナニから口を離した。
「せ、せん、せ……?」
呆然としている坂田の脚の間で膝立ちになり、目の前で口の中のモンを掌に吐き出し、その手を
後ろへ持っていく。
「んくっ!」
坂田の肩に片手を置いて身体を支え、俺は指を一本、自分の内部へ挿入した。
「なななな何をして……」
「こーして……濡らして慣らさねーと、入れらんねェ、だろ……」
「そそそそーだけど……」
「もう、ちょい……待ってろよ。んんっ!」
二本に増やすと結構キツイな……。
「んっ、んんっ!ハァッ……」
「先生……」
坂田のナニはもう上を向いていた。若ぇな……。これが俺の中に入るのか……。
勃ち上がった坂田のナニを見て、俺の喉が鳴った。もういいや……ヤっちまおう。
「いくぞ。」
「えっ!ままままま……う、わ……」
対面座位の体勢のまま、後ろ手で坂田のナニの根元を握って支え、腰を下ろしていく。
「ハァ、ハァ……」
「先生……大丈あっ!」
入れ始めは若干の抵抗があったが、先端が埋まれば後は比較的容易に奥へ。
「ハァ〜……」
完全に座りきれたところで息を吐く。ヤバイ……かなり、イイ……
「せ、先生……」
「ん?」
「あ、あの……」
「俺のナカに全部入ってんの、分かるか?」
「はっはい!」
「すげぇ気持ちいい……」
「ほ、本当に!?」
「ああ。」
坂田の首に腕を回し、深く深く口付ける。
ごめんな坂田……。俺はお前から、普通の幸せを手に入れるチャンスを奪っちまった。
その責任はちゃんと取るから許してくれ。永遠に、愛してる……
「先生、痛い?」
「えっ……」
いつの間にか、俺は涙を流していたようだ。
「ごめんね、先生。俺、上手くできなくて……」
「違う。これは……」
「それと、四月まで待てなくて。」
「坂田……」
「本当はまだダメなんだよね?でもちゃんと責任とるから安心して。」
コイツ、俺と同じことを……
「フッ……」
「あっ、ガキに責任とか無理だと思ってる?」
「そうじゃねェよ。」
俺が笑ってんのをバカにされたと思い、坂田は唇を尖らせる。……やっぱりガキだな。
「俺、マジだからな!マジで先生のこと永遠に愛し続けて幸せにするから!」
「ハハハッ……」
「本当にマジだからな!」
「分かった分かった。」
「本当に、本当にマジだから!」
「分かってるって。……とりあえず、続きしようぜ。」
「あっ!」
入口を締めてやると、坂田がしがみ付くように抱き締めてくる。
俺達の付き合いはきっと、そう簡単に「めでたしめでたし」ってことにはならねェだろう。
だが、坂田と一緒なら乗り越えていけそうな気がした。
(11.08.29)
七万打記念アンケートでご意見いただいて「逆3Z小説書きます!」と言ったのが3月・・・なかなか話がまとまらず、結局こんな季節外れの時期にアップです^^;
いけないとは思いつつ坂田くんの一途さに絆されてしまう土方先生と、一丁前に「先生のことは俺が護る」とか思ってる坂田くん、そんなよくある生徒×先生です。
そして、日記で「Z3が書けない〜」とぼやいていたところ「未経験のくせに背伸びして土方先生を口説こうとする銀時くん」という素敵なネタ提供をしてくださったH様、
すみません。「未経験」ってところしか活かせませんでした。そしてですね、私の書く土方先生はお題部屋にあるZ3小説の土方先生が基本になっていますので、
行動が淫乱教師っぽくてアレです・・・^^; ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
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