先っぽ三万


卒業したってアイツが俺の教え子だった事実は消えないわけで、手を出すよりは出された方が
いいかと思ったわけで、けれど俺もアイツと同じ男なわけで、五年も経てばいいかとも思う
わけで……まあ簡単に言うと、土方くんを抱いてみたいってこと。
抱かれるのが嫌なわけじゃない。若さに任せてガツガツこられるのも覚悟していたのだが、
アイツのセックスは非常に丁寧だった。つまりはとても気持ちが良い。気付いたら一晩で三回も
イカされて次の日屍状態なんてこともあるくらい気持ちが良い。しかもそういう濃いのは休みの
前夜しかヤらない気遣いぶりだ。

非の打ち所がないじゃねぇかコノヤロー。

……いやいや違うって。惚気とかそういうんじゃなくてね、とにかく土方がどうでも俺は俺で
ヤってみたいと、そういうこと。
あるモノは使いわなきゃ勿体ないだろ?

というわけで――


「今日は俺に突っ込ませなさい」
「……は?」

夜。さあヤりましょうって時に言ったら盛大に怪訝な顔をされた。
因みに俺達ベッドの上で二人ともパンツ一丁。

「いきなり何だよ」
「お前にはいきなりに聞こえるかもしれないけどな、ここで改めて説明すると読んでる方々には
諄くなっちまうんだ。だから何も言わず先生に身を委ねなさいよ」
「無理に決まってんだろ。つーかいつまでも生徒扱いすんな」

はいはい……クソ真面目で融通がきかないところも可愛いと言えなくもないが、偶には流されても
いいんじゃねーの。

「抱かれんのは嫌か?」
「嫌じゃねーけど……」
「はい、じゃあ横になってー」
「おいっ!」

両肩を押して寝かせようとすれば待てと抵抗される。

「嫌じゃねぇんだろ?」
「だからって、意味もなくヤられねーよ」
「意味ねぇ……土方くんのこと愛してるから、じゃダメ?」
「そっ……そんな可愛いこと言っても騙されねーからな!」

何コイツ……俺のこと可愛く見えてんの?好きなコを抱きたくなるのは普通だと言いたかった
だけなんだけど……最後が「ダメ?」だったから?小首を傾げてみたから?
いやいや、そのくらいでオッサンが可愛く見えるわけねーだろ。

「フッ……お前、可愛いな」
「はあ!?何処がだよ!眼鏡の度、合ってねぇんじゃねーのか?」
「はいはい……まあそうかもしんないけど、可愛く見えちゃったんだから抱かせて」
「ヤダ」
「はい?」

今コイツ、ヤダ、つった?ヤダ、つったよな?俺がここ一番の決め顔で大人の色香漂わせて
言ったのにヤダって……どういうことだコラ!
っと……いかんいかん。ここは大人の余裕でもって可愛い土方くんをリードする感じでいかねば。

「大丈夫。優しくするから……な?」
「……なに企んでやがる?」
「企んでなんかないよー」
「…………」

俺をじとっと睨んで腹を探ろうとする土方。何でこううたぐり深いんだか………

「俺が信用できない?」
「できねーな」
「おいいいいいっ!」

即答されて流石にキレた。大人の余裕なんて知るかっ!

「嫌じゃねぇって言ったんだからヤらせろ!」
「急にヤりたくなった訳を言えって言ってんだよ!」
「理由なんてねーよ!ただヤりたくなったんだ!」
「なっ……」

土方が言葉に詰まったことで俺も少し冷静になる。
とにかく、俺の気持ちは分かってもらえたと思うから、ここらでまた下手に出てやればきっと……

「先っぽ!先っぽだけでいいから!」
「だから別に俺は……」

よし、あと一歩!

我ながら何でこんなに必死なんだと思わなくもないが、突っ込みたい気分になってしまったの
だから仕方ない。俺もまだまだ若いってことかね。

「お願いっ!三百円あげるから!」
「……三万でどうだ?」
「どこのボッタクリ風俗!?お前ね、一発三万といやぁ超高級な……」
「知らねーよ。つーか恋人を風俗と比べんな」
「まあまあ……で、ヤらせてくれる?」
「分かったよ!」

全然分からないと不貞腐れつつも土方は横になってくれた。


*  *  *  *  *


「どうだった?」

コトが済み、汗ばむ身体で抱き合いながら聞いてみた。土方は……えっ、何?肝心な所が
省略されてる?それは俺のせいじゃないって。俺はヤってる最中もちゃーんと実況してたのに、
編集したのは管理人だから。
けど、エロティックールな土方くんとそれをカッコよく抱く銀八先生が見られなかったのは
可哀相だからちょっとだけ回想してあげよう。

横になった土方は自ら脚を開くと「初めてなの、優しくして」と……

「おいコラ捏造してんじゃねーぞ。ンなこと言うか……だいたい、エロティックールって何だよ」
「ナレーションにツッコむな……ってこのネタ何回使ってると思ってんだ!」
「知らねーよ。アンタが『どうだった』って聞いといて何時までも俺の答える番が回って
こないからツッコむ羽目になったんじゃねーか」
「はいはい……じゃあどうでしたかー」

改めて問えば土方は伏し目がちに頬を染めてとても気持ち良かったと言っ――

「てねーよ。すっげぇ痛かった。もう二度とヤらねー」
「おいいいいいっ!照れ隠しにしても酷ェよ!」
「本気で嫌がってんだよ」
「何で?何処がダメだった?」
「人のケツ血まみれにしといて『何処がダメ』だぁ?」
「そんな大袈裟な……ちょこっとシーツに血がついちゃっただけでしょ」
「俺が今までテメーに一滴でも出血させたことあったか?」

あぁん?と俺を睨みつけてくる土方。どうせなら、あぁん!と見詰めてほしいね。

「次は上手くやるから怒らないでよ〜……痛っ!」

ケツを撫でた手を力いっぱい抓られた。ったく……ちょっと血が出たくらい大目に見てくれよな。
好きなコを抱けるってのに気分が盛り上がっちまったってことで。

「ケツが治るまでは、俺が上だからな」
「……うん」

どうやら次もあるらしい。ナレーションが聞こえたのかは分からないが、悪気はなかったと
伝わったのだろう。

「どうやったら気持ち良くできるのか、教えて土方くん」
「おう」

俺に教えを請われると、コイツはとてもとても嬉しそうにする。「先生」に教えるのがそんなに
楽しいのかね。
血が出たのはやり過ぎだったけど……俺の世話を焼くその顔が見たくて、わざと失敗したのだと
知ったらお前はどうする?

きっと、下らねーことするなと呆れながらもまた世話を焼いてくれるだろう。そんな土方くんを
早く俺の手練手管でとろっとろにしてやりてェ気もするけど、暫くは土方くんの手練手管で
とろっとろにされてようかな。

(13.05.18)


ツイッターで「エッチしようを○○風に言うと」という診断メーカーがありまして、そこに銀八先生と土方くんの名前を入れて遊んでたんです。
そしたら「先っぽ!先っぽだけだから!!」と「3万でどう?」という結果が出たので、それを盛り込んで話を作ってみたくなったんです^^
カットした、土方くんが初めて受けたシーンは皆様のご想像にお任せします。 ここまでお読み下さりありがとうございました。
はくしゅ


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