後編
口内に出された精液を飲み干して、銀時は十四郎の上から下りる。
「入れていい?」
尋ねながらも銀時は自身にローションを塗り込めていて、頷くしかないではないかと思いつつ
十四郎は頷いた。
もちろん、銀時と繋がるのが嫌なわけでもないが。
十四郎の両膝を上体の方へ倒せば、ついさっきまで銀時の指を咥え込んでいたローション塗れの
後孔が眼前に晒される。そこへ先端を当てて一旦深呼吸。いくよ――言った銀時も、言われた
十四郎もくっと息を詰めた。
「だっ大丈夫だよ十四郎……痛くしないから」
そう言った銀時の声が上擦っていて、コイツも同じなのだと十四郎は少し安心。
やたらと積極的だったから、「経験」があるのだろうと思っていた。今日恋人になったばかりの
自分に銀時の過去をどうこう言う資格はないけれど、物心つく前から一緒にいた友人として何も
知らされていなかったのが不満だった。
けれど先の態度を見るに、銀時も慣れているとは考えにくい。思えばカーテンを閉めることにも
十四郎が指摘して初めて気付いていたではないか。
ほら今も、上手く入れられなくて、一物が割れ目を行ったり来たりしている。
十四郎の脚を押さえるのに両手を使っているからと、腰の動きだけで入れようとしているのが
そもそもの間違いのような……十四郎は左手を自分の膝の裏へ。
「こっち、持ってるから……」
「あ……そうだね……」
空いた右手で自身の根元を握り今度こそ……と思ったが、もたもたしていたせいでローションが
乾いてきたように思えて、もう一度塗ってから後孔へ押し当てた。
「っ……」
「痛い!?」
尖端が押し当てられて入口がやや広がっただけ。まだ挿入とも言えない段階であるけれど、
十四郎が強張ったのを見て銀時は即座に腰を引いた。
「ごめんね。大丈夫?」
「……ちょっと、ビックリしただけ。痛くないから……」
「そう?……あ、十四郎が入れる方にしようか?」
「……次な」
折角ここまで来たのだから銀時に入れて欲しい。自身のモノは銀時の口でイカされてまだ回復して
おらず、このまま入れてもらった方が早いというのもある。
初めての不安や恐怖よりも今は、銀時と関係を持つことへの期待の方が大きくなっていた。
「銀時……早く……」
「う、うん……けど俺、その……実は初めてで……下手だったら、ごめん……」
ふっと微笑んで十四郎は、俺もだと言う。
「俺も初めてだから……上手いか下手かなんて分からねーよ」
「十四郎……」
十四郎も初めて。二人一緒に経験を積んでいく――銀時は思い切って腰を進めてみた。
「うぐっ……」
有り得ない程に入口が広げられた感覚。十四郎が思わず呻くと、銀時は動きを止めた。
そこはちょうど、一番太い張り出し部分。引き裂かれるような痛みに長くは耐えられそうもない。
「は、早く入れろ!」
「でででも、痛いでしょ?もっとゆっくり……」
「ゆっくりの方が痛い!」
「えええええ……」
「いいから早く!」
「……ごめんねっ!」
「がっ……!」
迷いながらも銀時は一気に自身を根元まで押し込んだ。
「だ、大丈夫……?」
「お、おう」
全然大丈夫ではない。痛いしきついし苦しいし……反射的に銀時を殴り飛ばさなかった自分を
褒め讃えたいほど。クーラーの風が直接当たり裸では寒いくらいだというのに変な汗まで出てきて
流石に銀時も気付いた。
「ごめん」
「いや……」
素直に謝られると弱い。早くやれと言ったのは自分なのだ。銀時は言われた通りにしただけ。
「ほんのちょっと、痛かっただけだから……」
「……もう抜いた方がいい?」
「折角入ったんだから最後までやれよ」
「いいの?」
「ああ。……あっ、今すぐに動くなよ?」
「うん」
十四郎の身体が落ち着くまで……じっとしていると、繋がった箇所から互いの脈を感じた。
自分達は、本当に繋がったのだ。
セックスを「一つになる」などと表現するけれど、所詮、身体の一部と一部が繋がるだけでは
ないかと思っていた。
ああけれど……実際こうして繋がってみると、大袈裟でも何でもないのだと感じる。
自分は今、愛する人と確かに一つになっている。
「とっ十四郎?痛い?」
「いや……」
十四郎の濡れた頬に銀時はそっと触れた。
「十四郎、泣いてる……」
「……お前だって」
銀時の頬に触れる十四郎。そこには自分と同じく一筋の水跡。
「銀時は、痛ェのか?」
「俺は……嬉しいんだよ。十四郎と、結ばれて」
「俺もだ」
「十四郎!」
「銀時っ!」
感極まって十四郎に抱き着いた銀時。繋がったまま、十四郎には辛い体勢であったが、
むしろ歓迎するかのように銀時の背を引き寄せるのだった。
* * * * *
銀時が果ててもなお、二人は抱き合っていた。
繋がりが外れてしまった替わりに足を絡ませ、頬を寄せて。
時折髪を揺らすクーラーの風では心許なく思えるほど、体中どこもかしこも熱を持っている。
その中で、二人の間に挟まれた十四郎のモノが一際熱く脈打っていた。
「今度は十四郎が入れる?」
自らの腹筋を十四郎のモノへ押し付けながら銀時が問えば、小さな呻きとともに
「疲れてないか?」
と銀時を気遣う言葉が返ってくる。
「俺は平気だよ」
身体を起こして銀時は十四郎の腰の上に跨がった。
「今度は騎乗位にチャレンジ!」
「……体勢的に、さっきと大して違わねェじゃねーか」
「まあまあ……」
十四郎のモノにローションをたっぷり塗って根元を持ち、銀時は自身の後孔に先端を合わせる。
「う……」
思ったよりきつい――僅かに腰を落として銀時は動きを止めた。
先の経験で挿入の困難さを文字通り痛感している十四郎は、その様子を見て今回も自分が受ける
側でもいいと言う。だが十四郎にできて自分にできないはずがないと銀時は譲らない。
「今すぐずっぽりいってやるから見とけ!」
「分かった分かった」
昔から仲の良かった二人だけれど、何かにつけて競い合うライバル同士でもあった。
入口に先端を減り込ませたまま銀時は深呼吸を繰り返す。十四郎が早く入れろと言ったのが
今なら理解できる。徐々に押し広げられていく感覚に、じわじわと増していく痛みに耐えられ
そうもないのだ。ならば一思いに入れてしまった方が楽だ。
絆創膏を一気に剥がすのと似ているなどと若干現実逃避しつつ精神統一。
「せーのっ……」
掛け声と共に臀部へ体重を乗せ、銀時は十四郎の上に座り込んだ。
「ハァ、ハァ、ハァッ……」
「大丈夫……じゃねーよな?」
「べっべーつにー……全然問題ないけどォ?」
強がっているのは口調からも脂汗をかいていることからも明らか。
銀時は十四郎よりも正直な質で、嫌なことからは簡単に逃げていた。子どもの頃、予防接種と
聞けば一目散に十四郎の家へ逃げ込んだように。
十四郎とてできる限り苦痛は避けたいものだが、弱虫だと思われるのも嫌で立ち向かっていた。
その銀時が痛みに耐えて自分と繋がってくれた……十四郎は鼻の奥がつんとするのを感じた。
「痛いだろ?」
「平気だって言ってんだろ。……なに?十四郎はこんなんが痛かったわけ?」
「あ?俺は全く痛くなかったけど?」
挑むように言われれば、虚勢だと分かっていても言い返さずにはいられない性分。
「なに言ってんだよ。痛くて泣いてたじゃねーか……俺のは単なるもらい泣きだけど」
「ハッ……テメーの下手くそ加減に泣けてきたんだよ。つーかお前、マジで痛いんだろ?
こっち、萎えたままだぞ?」
口調に反してそっと、十四郎は銀時のモノを握った。
「っ……萎えてんのは十四郎が下手だからじゃね?」
「テメーが痛がると思って何もヤってねェんだよ」
「俺が痛いと思ってるってことは、さっきお前は痛かったんだろ?」
「痛くなかったって何度言ったら分かるんだ。……けどお前は痛いはずだ。俺の方がデカいから」
「はあ!?俺のは今、二回目だから謙虚になってんだよ!」
「俺も二回目なんだがな」
「お前は大好きな銀時くんとヤれて超興奮してんだろ」
「……お前も大好きな十四郎くんとヤれて超興奮しやがれ」
「あっ!」
握ったモノを扱かれて、ここで言い合いは終了。ここから二度目の愛し合いのはじまりはじまり。
(13.03.01)
……はじまりはじまりだけど終わります^^ 幼馴染って言葉自体に萌えが詰まってますよね!若い二人もいいよね!ってことで書いてきました。
そして、結局キスしてないことに今気付いた^^; きっと、省略した所でちゅっちゅしてたんですよ!ていうか幼馴染だし、小さい頃にチュウくらいしたことあるんじゃないかな?
……私は幼馴染をなんだと思ってるんだ。タイトルには「ひと夏」とありますが、この二人はふた夏目も、み夏目もあって永遠にラブラブです!
寒い季節に書き始めた真夏の恋人達の話、最後までお付き合い下さりありがとうございました!