突如として江戸の町へ飛ばされた二人が万事屋から姿を消した翌朝。

「銀時!おい、早く起きろよ!」
「ん〜……つーかここどこ?」
「家だよ!俺達の家!」
「いえ〜?…………家っ!?」

眠たい頭では、トシーニョの言葉を理解するまでに大分時間がかかった。だが、理解すれば
すぐに覚醒するというもの。

「戻った、のか……?」
「ああ」

ここは、幾度も二人で寝起きした場所。数日ぶりの我が家のベッドであった。

「いつ戻った?」
「分からねぇ。俺もついさっき起きたから」
「着物じゃねぇな……」
「ああ」

二人は過去へ行く前の服装のまま。金時は金髪に戻っている。
日付を確認しても過去へ行った日の翌日で、これで二人が化粧をしていなければ「夢落ち」と
思って終わったかもしれない。

「顔だけトシ子ちゃんになってる……」
「お前も、銀子になってるぞ」
「そっか……」
「ああ……」


どちらからともなく相手を引き寄せ、二人は唇を合わせた。
僅かな隙間も埋めるように抱き合って、我が家に帰った喜びを共有する。

抱き合い、口付けているうちに衣類の存在も邪魔に思えてくる。そう感じてしまえばもう、
一刻も早く取り去りたくて、そのために仕方なく口付けを解いた。
引き千切らんばかりに服を脱ぎ捨て、同じく裸になった相手と温もりを分かち合う。
暖房の入っていない室内は少し寒いはずなのに、火照った身体にはそれが心地好かった。


「ね、おねがい……」
「ああ」


仰向けに寝て、自ら膝を抱えた金時の上にトシーニョが覆い被さる。猛った先端を金時の
入口に宛てがうと、労りつつも普段より性急に挿入していった。


「んあっ!」
「悪ィ、大丈夫か?」
「んっ……気持ちイイ……」


恍惚とした表情の金時に安心して抽送を始める。


「あっ、あっ、あっ……」


向こうの世界でも同じように肌を重ねた。不安に駆られ、常より激しく。そして今は安堵感から
常より激しく交わっている。


「あ、んんっ……ひ、じかた……」
「ん……」


名前を呼んで首に縋り、口付けを強請る。抱えた足に唇を当てて了解の意を表すと、
トシーニョは紅く色付いた唇に自分のそれを重ねた。


「…………」


口付けをしたまま微かに瞼を開いた金時。その瞳に映るのはメイクに彩られたトシーニョの目。
遂に「トシ子」に抱かれたのだと満ち足りた思いで瞳を閉じた刹那、身体の内側から快感が一気に
迸り溢れ出た。


「んうぅっっっ!!」


金時の事態に気付いたトシーニョは唇を離す。


「ぎん……」
「へへっ……トシ子ちゃんとできたのが嬉しくてイッちゃった」
「っ……!!」


その言葉が嬉しくてトシーニョも達した。そして金時のモノを緩く摩りながら言う。


「なあ、化粧落としてくるから……」
「……俺もいつもの俺でヤりてェし、一緒にお風呂入んない?」
「ああ」


裸のまま二人は浴室へ向かった。


*  *  *  *  *


「そこに手ェついて」
「お前、ホント好きだな……」

浴室の壁に備え付けてある鏡。その前にトシーニョを立たせ、腰を突き出させた。
鏡の横に手をつけば、正面に自分の顔が見える体勢だ。

金時は後ろから攻めるのを好み、同時にこうしてトシーニョの羞恥を煽る方法を好んだ。
それは「万事屋銀ちゃん」も同様で、あちらの土方もこの件では苦労させられるのだと、
少し前まで会っていた遠い昔の人に思いを馳せる。
けれどその苦労を、

「土方だって嫌いじゃないくせに」
「まあな」

買ってでもしたいと思ったのはいつからだったか……。真選組の副長であった時には認められ
なかったように思う。まあ、いつでもいい。大事なのは、今の自分が金時と交わることを「快」と
感じられるかどうか。

後ろから攻められるのは嫌いじゃないが、金時の顔が見られないのが難点だ。鏡がそれを補って
くれるというのも、このプレイを好む理由の一つだった。

「いくよー」
「おう」

振り返れば鏡を見ててと言われるだけだから、金時を見るなら鏡越ししかない。


「んっ……」
「入れる時の顔、エロいよねー」


挿入の快感に歪むトシーニョを鏡に映して満足そうな金時。その表情をトシーニョも満足そうに
見詰め、二人の視線は鏡を通して交叉した。


「……なに見てんの?」
「お前」
「ふーん……」
「んんっ!」


まぁ知ってたけどねと呟きながら金時の手はトシーニョの胸へ。その控えめに存在感を表す
先端をきゅっと摘めば、トシーニョの背中が逃げるように丸まる。


「んっ、んっ……」
「ちゃんと前見ててよ〜」
「んあっ!」


金時が乳首を弄りながらも奥を突くと、トシーニョはビクンと仰け反った。
快感に喘ぐ顔、尖った乳首、先走りを漏らす陰茎……その全てを鏡が映し出している。


「そうそう……びんびんの乳首もチンコもちゃーんと見ててね」
「あっ、くっ……」


トシーニョへ見せ付けるように、濡れた裏筋を下から上につっと辿った。


「あ、今ぎゅって絞まった。気持ち良かった?」
「るせっ……見りゃ分かるだろ」
「うん」


すっげぇ気持ち良さそう――金時は指先だけでトシーニョのモノを愛撫する。そのもどかしい
感触に焦れたトシーニョは、自身の体内に挿入されたモノをきゅうきゅうと締め付けた。


「っ……そんなんされたら俺、我慢できないんだけど」
「そのためにヤってんだよ」
「はいはい……では、お誘いに乗りましょう」
「んっ……」


両手をトシーニョの腰に沿え、金時は律動を開始する。


「あっ、んんっ……あっ!」


快感で力が抜け、手が滑り落ちそうになるのを必死で耐えるトシーニョ。鏡に映るその表情に
金時は腰の動きを加速させた。


「んんんっ!……あっ、あぁっ!」


快楽に溺れただけの顔よりも、こうして苦労の混じった顔の方が好きだ。もっと楽に気持ち良く
なる方法はいくらでもあるのに、自分と交わることを選んでくれる。それがとても誇らしかった。


「ぎ、ん……もっ……イクっ!」
「うん。俺もイキそう……」
「んんっ、あっ……ああっ!!」
「んっ!!」


達した二人は仕事の時間まで休もうと、シャワーを浴びて寝室へ戻るのだった。



*  *  *  *  *



「先生、見せたいものってこの人達ですか?」
「いや……つーか、誰?」
「こっちの人、先生に似てません?」
「こっちのコは多串くんに似てるよね」
「俺、多串じゃありません」

金時とトシーニョが再び目を覚ました時、そこはとある高校の国語科準備室だったとか。

二人の旅はまだまだ続く……?

(12.12.19)


いや、続きませんよ(多分)。今回のエロは生まれ変わり設定を盛り込んでみました。そして銀誕で成し得なかったトシ子攻めも少し……^^
第一話アップから一ヶ月以上かかった当シリーズもこれにておしまいです。ここまでお付き合いいただきありがとうございました!



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