万事屋銀ちゃん玄関。土間に下りた新八と神楽を、板の間から土方が見下ろしている。

「本当に行くのか?」
「はい。銀さんのことよろしくお願いします」
「どーせ昼まで起きないネ」

今夜は銀時が友人の土方を自宅の晩餐に招待したのだが、本人は既に酔い潰れて布団の中で、
食事の後片付けを終えた新八と神楽は志村家へ向かおうとしていた。

「アイツの世話はいいけどよ……俺に気を遣う必要はねぇんだぞ」
「気なんか遣ってないネ」
「たまには僕らも銀さんから離れないとと思いまして」
「そうか?」
「じゃあ、おやすみヨ」
「おやすみなさい」
「おう。気を付けてな」

妙に仲のいい銀時と土方を前にして疲れた二人は、そそくさと万事屋を後にする。
二人を見送った土方は、寝ている銀時に代わって内側から戸締まりをして和室へ向かった。



今更友達にはもどれない



「ん〜……?」
「そっち、行けるか?」
「んー……」

和室に敷かれた一組の布団。その掛け布団を捲ると銀時が僅かに目を覚ます。土方は銀時に
端へ寄るよう促し、空いたスペースへ枕を置いて横になった。

「寝巻き、借りたぞ」
「うん……」

土方が着ているのは普段銀時が寝巻きとして使っている甚平で、帰る前に新八が用意してくれた。

「具合はどうだ?」
「へーき……」

未だ微睡みの中にいる銀時は目を閉じたまま土方の言葉に応えている。それを横目で確認し、
自分も寝るかと土方が目を閉じた直後、体を半回転させた銀時の左腕と左足が上に乗っかった。

「おい、重てぇよ……」
「いー匂いすんね、土方くん……」
「……シャワーも借りた。テメーは酒臭ぇな」
「まあねー……」

さして気にする様子もなく、銀時は更に密着してすんすんと土方の匂いを嗅ぐ。

「土方くん」
「何だ?」
「せっけんの匂いっていいな」
「そうだな」
「ところで土方くん」
「何だ?」
「ムラムラします」
「……知ってる」

少し前から土方の大腿には、銀時の硬くなったモノが服越しに当たっている。
年頃の子どもと生活していれば思うように自己処理もできないから溜まっているのだろうと、
この状況を敢えて指摘することはせずにいた。

「ムラムラします〜」
「……いつヌいた?」
「ん〜…………さあ?」
「溜まってんだろ?ヌいてこいよ」
「そーするー……」
「おいっ……」

銀時はその場で―土方に下半身を当てたままで―ぐりぐりと腰を動かし始めた。

「ここでヤるなよ……」

寝惚けているのか酔っているのか将又そのどちらもか……土方は呆れ返りながらも
銀時を引き剥がそうとするが、離れるどころか銀時は、土方の手を掴んで自分の股間に押し当てた。

「土方くん、やってぇ〜」
「テメーでやれ」
「銀さんはー、やってもらいたいお年頃なんですー」
「何が『お年頃』だ……動くのが面倒なだけだろ」
「そーともゆー……」
「ったくテメーは……」

布越しに感じる銀時の熱は放っておいても引きそうになく、自分が断ったところでこのまま己の
手を使われるだけ。ならば、さっとヌいてしまった方が早いと土方は体を起こして銀時のズボンの
ジッパーを下ろした。

「土方くんのエッチぃ〜」
「……ヌいてやらねーぞ?」
「うそうそ。土方くん、カッコイイ〜」
「はいはい……」

自分からは全く動こうとしないくせに口だけは達者な銀時に息を吐きつつ、土方は完勃ち状態の
モノをそっと握った。


「んっ、ハァ〜気持ちいい……」


漏れ出た先走りを竿全体に塗り広げ、ぐちゅぐちゅと水音を立てて扱いていく。


「あっ、あっ、あっ……いいっ……あっ!」


扱くスピードを上げると、銀時は膝を立てて腰を震わせた。


「あっ、あっ、んんっ……イ、ク……あっ!あっ、あぁっ!!」


ほどなくして、銀時は土方の手の中で達した。
土方は銀時に掛け布団を掛けてから、手を洗うため洗面台へ向かった。


*  *  *  *  *


「起きてたのか……」

土方が部屋に戻ると銀時は布団の上で胡坐をかいて待っていた。

「マジで気持ち良かった。ありがとね」
「……おう」

土方も銀時の向かいに腰を下ろす。

「最近仕事が忙しくてよー……」
「いいことじゃねーか」
「けどヌく暇がねぇ。まあ、仕事ないと新八も神楽もウチにいるから結局ヌけないんだけどな」
「大変だな」
「土方は?屯所にゃもっと人がいるだろ?やっぱアレか?プロのおねーさんか?」
「最近はあまり。こっちも忙しくてな……」
「じゃあヌいてやるよ」
「は?えっ?うわっ!」

了承を得る前に銀時は土方を布団に転がし、素早く下衣を剥ぎ取った。
下半身を下着一枚にされた土方は怒って上体を起こす。

「おいっ!」
「だからヌいてやるって」
「いや、いいから」
「俺のヤってくれたお礼」
「いらねーよ」
「まぁそう言わずに……」
「ちょっ……」

銀時は強引に下着の上から土方のモノに触れる。

「やめろって……」
「……俺に触られんの、いや?」
「は?」
「嫌なんだ……」

これまでの戯けた態度から一変、急に物悲しい表情を見せた銀時に土方の良心が痛む。

「土方くんは、俺みたいなヤツに触られたくないんだ……」
「そういうことじゃなくてだな……お前の手を煩わせる程溜まっているわけではないと……」
「俺はただ、お礼がしたかっただけなのに……」
「礼なんかいらねーよ。勃っちまったもんは出さなきゃなんねェからヤったまでだ」
「じゃあ、勃ったらいいんだな?」
「は?んむっ!」

銀時の瞳が光ったと思った次の瞬間、土方は再び布団に背を付けられていた。
しかも今度は起き上がる前に銀時が覆いかぶさり唇を唇で塞がれる。


「んうっ……んっ……」


銀時は膝で土方の股間を刺激していき、僅かに質量が増したところで体を離した。

「勃っちまったもんは出さなきゃなんねェよな?」
「……落ち込んでたのは演技か?」
「何のことだかサッパリ」
「ったく……」
「いいじゃねーか。今日は、日頃世話になってる土方くんを我が家にご招待、なんだからよ」
「へーへー、そりゃどーも」

万事屋の夕飯に招待、ではなかったかと思った土方であったが、先程自分もしてやったことだし
拒むこともないかと抵抗をやめた。



「お前、いいモン持ってんなー」

土方のモノをゆっくり扱きながら銀時が感心したように言う。

「そうか?」
「どんなに小さくても被ってても大事なダチに付いてるモンだから、馬鹿にしないでやろうって
決めてたんだけどな……」
「そう思ってる時点で馬鹿にしてるよーなもんじゃねェか」
「いや、お前がなかなか触らせねーからコンプレックス持ってんのかなぁと……」
「そういうわけじゃねーよ」

喋りながらも手は動いていて、土方のモノは完全に反り返った。

「マジでいいモン持ってんな〜」

一物をまじまじと見られ、居た堪れなくなった土方はぷいと顔を背ける。

「テメーのと大して変わらねーだろ」
「いやいや……比べてみるか?」
「は?」

銀時は土方のモノから手を離し、ズボンと下着を一緒に脱ぎ捨てて自分の一物を扱き始めた。

「お前、まさか……」
「ほらな?」

座った体勢で向かい合い、銀時は勃ち上げた自分のモノを土方のモノにぴたりと重ねた。

「土方の方がちょっとデカいだろ?」

確かに、自分の先端は重ねられた銀時のそれより若干上にある。
けれどそれは一センチにも満たない差で、

「これくらい、そん時の気分でどうとでもなるだろ」
「あっ……」

こんなことで自信をなくしては可哀相だと土方は銀時のモノに手を伸ばし、更に膨らませるべく
緩い刺激を与えた。

「あっ、んんっ……」
「まだデカくなるじゃねーか」
「ハッ……お前、うますぎっ……」
「同じモン、持ってるからな」
「じゃあ、同じよーにヤってやるよ」
「くっ……」


土方の動きを真似て、銀時も土方のモノを刺激していく。


「ハァ、ハァ……」
「んっ、んっ、んっ……」


二人共、既に「大きさ比べ」の余裕はなく、相手の動きに感じ入っていた。


「ハァ、ハァ、くっ……」
「……イキそう?」
「ああ」
「俺も」
「そうか」
「うん」
「くっ!」
「あっ!」


ほぼ同時にラストスパートをかけ、絶頂へ向かっていく。


「あっ、あっ、んっ……」
「っ、くっ、んっ……」

「「んんんっ!!」」


白濁液を飛び散らせた二人は、そのままパタリと布団へ倒れ込み眠りに就いた。



*  *  *  *  *



翌朝、先に目覚めたのは銀時だった。

「あーあ、やっちゃったなー……」
「…………」

銀時の目覚めた気配で土方も目覚める。
何となく互いに目を合わせられず、布団の上で半身を起こしたまま―相手が横にいる状態から―
動けずにいた。

「覚えてんのか?」
「まあね。つーか、例え覚えてなくてもこれは……」
「そうだな……」

昨晩、達してすぐ眠りに就いてしまった二人の手には乾いた精液がこびりついているし、
下半身は剥き出しのまま。
銀時の言うように、例え記憶がなくとも何があったかは分かる状況であった。
二人は大きく息を吐き、それからしばしの沈黙の後に土方が口を開いた。

「まっまあ、なんだ……お互い酔ってたしな……」
「そう、だよな……。俺、結構溜まってたし、そういうことも、あるよなっ」
「あ、あるんじゃねーか?俺も、溜まってたしな……」
「だよな〜。……じゃあ、昨日のアレはナシの方向で……」
「おう。俺達の間にゃ何もなかった」
「うんうん。今後も俺達は気の合うダチ同士……」
「まったくもってそのとーり」
「…………」
「…………」

「「無理に決まってんじゃねーか!」」

二人のツッコミが同時に入る。

「いやいや無理だろ!人のチ〇コ扱くヤツなんかダチじゃねーよ!」
「そりゃこっちの台詞だ!ヌいてやる、つって押し倒してキスするような野郎と
ダチなんかでいられるか!」
「よしっ。じゃあ俺達、別れようぜ」
「おう……ん?ダチ同士で『別れる』って変じゃねーか?」
「それもそうだな。これじゃあまるで恋人同士だ……」
「そうだ、な……」
「…………」
「…………」

何かに気付いた二人はそこで言葉を止める。
そして、僅かな静寂の後に銀時が探るように聞いた。

「付かぬ事を伺いますが……土方くんは……銀さんのこと、嫌いですか?」
「……だったらとっくに帰ってる」
「ですよね〜……」
「……オメーの方こそ、どうなんだよ」
「嫌いなヤツなら、フルチンでも構わず追い出してる」
「だよな……」
「ああ……」
「…………」
「…………」

また僅かに間があって、それでも足りずに銀時が「あー」だの「うー」だの彷徨って、
やっとのことで口にしたのは「それじゃあ、そういうことでよろしく」という何とも
曖昧模糊とした言葉。
けれども土方にはちゃんと通じていて、「こちらこそよろしく」と意外に丁寧な返事が返ってきた。

「沖田くんって、結構鋭いよな……」
「……チャイナもだろ」

銀時が土方の手の甲に自分の手を重ねると、土方はその手を返して銀時の手を確りと握り締めた。


今更友達にはもどれない。

(12.07.23)


というわけで、友情を育んでいた二人も遂に友達ではなくなりました^^ 二人が「友達」だと思っていただけで、実際にはもっと以前から恋愛感情が

生まれていたんだと思います。ヤっちゃってから互いの思いに気付く鈍い二人というのも好きです。この話でお題「切ない15の恋物語」は終了です!

ここまでお読みくださり、ありがとうございました!

 

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