寒風吹き荒ぶ夜の公園。土方は外灯の支柱に凭れかかった体勢で、咥えていた煙草を地面に投げ捨て
草履でその火を踏み消す。彼の足元にはそうして踏み付けられた短い煙草が何本も転がっている。
マフラーを引き上げ、両手にハァと息を吐きかけて気休めの暖をとり、また新しい煙草を咥えた。
「いや〜、今夜は一段と冷えますなぁ……」
その寒い夜に一時間近く待たせた張本人がヘラヘラ笑いながらやって来て、土方は漸く現れた
待ち人―坂田銀時―をギロリと睨み上げた。
「遅ェ」
「悪ィ悪ィ。ウ○コのキレが悪くてよー……」
「…………」
土方は無言で眉を顰め、公園の出口へ向かう。
「待て待て、冗談だって!」
黙って歩き続ける土方を追い掛けて肩を掴み、銀時はニコニコと笑い掛ける。
「小粋なジョークで和ませようとだな……」
「全然笑えねーよ」
「そう?でも安心しろ。銀さんのケツの穴は今日も絶好調だから。どんなプレイも思いのまま!」
「そこじゃねーよ!」
「ん?合体できねーと思ってガッカリしたんじゃねーの?」
「違ェよ!いきなり下ネタ繰り出したテメーに呆れてんだよ!」
「はいはい分かった分かった。遅れた詫びに今夜はサービスしてやっから怒るなよ」
「そういうのはいらねェよ」
「まあ、そう遠慮せずに……」
笑顔の銀時と仏頂面の土方。二人の恋人達は行き付けの宿へと入っていった。
彼の足枷になる前に……
「またお前はこんな……」
部屋に入った土方は溜息と共に頭を抱えた。
「え、なに?銀さんのサービス精神に感服した?」
「ンなわけねーだろ……」
銀時が部屋を選ぶと言った時から嫌な予感はしていた。……してはいたが、フロントでごちゃごちゃと
揉めることも躊躇われて、結局、銀時の好きにさせてしまったのだ。
今、二人がいるのはSMルームと呼ばれている部屋。黒を基調とした内装の部屋のそこかしこに
拘束具やプレイ用の器具が並べられていた。元々、こういったことに対する関心が薄く、自分が
ノーマルだと思っている土方にとって、ドSを称する銀時との性生活は理解できないところも
多かった。それを分かっていないのか、分かっていて素知らぬふりをしているのか定かではないが、
土方がどんなに冷ややかな反応を見せても、銀時は事あるごとにSMプレイを推奨していた。
「なあなあ、どれにする?」
「…………」
いざという時に煌めくらしい瞳を輝かせて部屋の備品を物色していく銀時に、お前の「いざ」は
ここなのかと心の中でツッコミを入れつつ、土方は灰皿に煙草を押し付けてベッドに腰を下ろした。
「おっ、ベッドから始めんの希望?」
「ああそーだな……」
ベッド以外どこでヤるんだと思ったが、どこでもヤれると返ってくるのが明らかなので口には
出さなかった。銀時もいそいそとベッドに乗り上げ、その反動で先に座っていた土方の体が揺れた。
「このベッド、磔ができるんだぜ」
「ああそーだな……」
ベッドの四隅には鎖に繋がれた革製の枷。それを両手両足に嵌めれば確かに磔のような状態になる。
尤も、それの何が楽しいのか土方には理解できなかったが。
「よしっ、じゃあこれでヤろうぜ。今日はお前が縛っていいぞ」
「は?」
「今日はサービスデイだからな。ドSの銀さんを縛れるなんて滅多にねェぞ」
銀時は足枷の一つを土方へ手渡し、ベッドの中央で足を投げ出した。
「ほらほら〜。遠慮すんなって」
足をばたつかせて、そこへ枷を嵌めろと訴える銀時。土方は手中の枷に視線を落とし、これを使った
プレイとやらを想像してみた。
―両手両足を開いた形でベッドに括られた銀時。ヤるからには裸だろうか……。枷を嵌めた後で
完全に脱がせることはできないから、少なくとも下は脱がせておかないとヤりにくい。とりあえず
全部脱がせて磔にしたとして、そこから何をすればいい?銀時が動けないのだから自分が入れる
側なのだろう。色々触ったり舐めたりして銀時を昂ぶらせて挿入……それならば枷がなくても
同じではないか?態々銀時に不自由な思いをさせる必要はないだろう―
「なあ銀時……これ、使わなくてもいいか?」
「別にいいけど……じゃあ、どれ使う?」
「いや、普通にヤろうかと……」
「ハァ〜……」
銀時は大きく息を吐き、やれやれと頭を横に振った。
「お前ね、SMルームに来といて普通にヤるって……ある意味すげェよ。何だ?期待に応えない
ことでS性発揮してんのか?高度だなァ、おい」
「ワケ分かんねーよ。……つーか、そんなに使いたいならテメーが使え」
土方は持たされていた足枷を銀時の前にずいと差し出した。
「え?俺が使っていいの?マジで?マジでいいの!?」
「ああ」
足枷を受け取った銀時は体の周りに「わくわく」という文字が見えるほど喜んでいる。
恋人が喜んでくれるのは嬉しい。拘束プレイに胸躍らせているという点がやや引っかかるところでは
あるものの、無理して自分がやって相手をガッカリさせるくらいなら、やりたがっている方が
やればいい……土方はそう思っていた。
「じゃあ、寝て寝て〜」
「……服は?」
「あー……俺が脱がすからいいよ」
「そうか……」
土方は言われるがままベッドの中央で横になった。
* * * * *
「やっべ……マジで興奮してきた」
「…………」
宿の浴衣に袖を通した状態でベッドに磔にされた土方。帯と下着は付けていない。
一度、着流しのまま横になったというのに起こされて、浴衣に着替えるよう言われて着替えた。
そこで再び横になると漸く手枷が嵌められ、帯と下着が取り去られて足枷も嵌められた。
何で着流しじゃいけなかったんだと聞いたら汚れるからだと答えられ、だったら全部脱がせば
いいじゃないかと言ったら着衣エロとやらの魅力について語られて、そこで土方は考えるのを
やめた。よく分からないが銀時にとっては大事なことらしい……それが分かれば充分であった。
「さーてと、どーしよっかな〜……」
何処から攻めようかと銀時は土方の身体を上から下まで舐めまわすように見る。それから枕元へ
視線を移し、ニッと口角を上げた。
「これ、入れていい?」
「……嫌だ、つってもやめる気ないんだろ?」
「まあねー……」
銀時は手にしたバイブに笑顔でコンドームを被せ、潤滑剤を塗っていく。
「力、抜いててねー」
「いきなりかよ……」
「銀さんのバズーカより細めだから大丈夫だって。今日は遅刻のお詫びなんだから痛くしねェよ」
「それはどーも……」
土方の尻たぶを片手で押し開き、銀時は入口にバイブの先端を押し宛てた。
「ふ……」
ボールを繋げたような形状のバイブが土方のナカへ埋め込まれていく。生身の一物ならばカリの
張り出し部分さえ納まれば後はスムーズに進むのに、この形は一々挿入感がある。銀時の言うように
痛みを感じるような太さではないが、ゆっくり入れられると入口が広がったり狭まったりするのが
感じられてあまりいい気分とは言えない。
もちろん銀時は、それに耐えている土方を見るのが楽しくて態とゆっくり押し込んでいた。
「土方のオシリ、締まったり緩んだりしてる」
「テメーがやってるからだろ……」
「これ、結構楽しいな」
「っ……」
今度はゆっくりゆっくり引き抜かれていく。銀時に後孔を見られていることと、バイブが出ていく
刺激が重なって土方の背筋を這う。
「おっ、勃ってきた」
「るせっ……」
感じていることを指摘され、土方は頬を染めて顔を背けた。
「うぁっ!」
ほとんど抜けていたバイブを一気に奥まで挿入されて、土方はキッと銀時を睨み付ける。
「いきなり入れんな!」
「いや〜、まだまだ余裕みたいだからもっと激しくしてみよーかなと……」
「てめ、っ!!」
一言断ってからやれと文句を言おうとしたところでバイブのスイッチがカチリと鳴った。
ウィンウィンと体内でモーター音が響き、拘束された土方の足がひくひくと震え始める。
「っ……くっ……」
「気持ちいい?……って、どうせ答えねェよな」
身体の中心を見れば感じているのは一目瞭然なのだが、土方がそれを素直に認めることなど
滅多にない。それが分かっている銀時は返事を待たずに、バイブをまたゆっくりと抜いていった。
「あ……んんっ……」
うねりながら抜けていくバイブは土方の内壁を満遍なく撫でていく。
「んっ!」
「……この辺?」
土方が歯を食い縛った地点で銀時は抜くのを止めた。その位置はおそらく、バイブの先端が
前立腺に当たる場所。
「そこ、ばっか、やんなっ……」
「ここが一番イイんだろ?もうフル勃起だぜ」
「っ〜〜!」
銀時はバイブをそこに当てたまま、反り返った土方のモノを下から上につっと舐めてみた。
土方の腰が震え、先端からたらりと滴が垂れる。
「拘束されてバイブ突っ込まれてこんなに感じちゃって……土方くんってば、やーらしぃ」
「んんっ!」
辱めるようにからかわれても土方は既に言い返す余裕がなくなっていた。口を開けばあられもない
声が出てしまう……土方は力いっぱい唇を閉じ、与えられる快感に耐えていた。
そんな土方の表情に銀時の口が弧を描く。銀時は大きく口を開けて土方のモノを咥え込んだ。
「んんっ!あっ……くっ!」
じゅるじゅると先走りを引き出すように吸われ、体内では最も敏感な所をバイブで刺激され、
土方は無意識にシーツに縋る要領で手元の鎖を握っていた。
「くっ、ん……ぁ、あ……」
「っと……イクのはもうちょい後な」
土方の限界が近いと悟った銀時は一物を口から解放し、バイブのスイッチを一旦切って奥へと
押し込めて手を離した。
「てめっ……」
「そう睨むなって。焦らしプレイはしないからよ……」
「あ?」
イキそうなところで止められた今の状況がまさに焦らしプレイじゃないのかと土方は銀時を睨む。
言いたいことを察したのか銀時は「違う違う」と言って笑った。
「合体するまで待っててねってこと」
「じゃあ早くヤれ」
「はーい」
下の衣だけさっと脱いで、銀時は着流しの裾をたくし上げながら土方の下半身を跨いだ。
「そっちなのか?」
てっきり銀時のモノを挿入されるのだと思っていた土方は思わず尋ねた。
「土方くんのナカには先客がいるからね」
「そうかよ……」
自分でヤっておいて何が先客だと思ったが、磔の状態ではどうせ銀時の好きにさせるしかないのだと
土方はそれ以上話すことはしなかった。
今にも達しそうな土方のモノを天井に向けて持ち、銀時はその先端を自身の入口に当てて腰を下ろした。
「っ、んんっ……ああっ!!」
銀時の内壁に刺激され、土方のモノはあっけなく白濁液を吐き出した。
「あーらら、イッちゃった……」
「あのなァ……」
土方からすれば、散々攻められて達する直前だったのだ。咎められる筋合いはない。
「まっ、こうしたらすぐに回復するよな」
「あ?待……んんっ!」
萎えた状態の一物をナカに納めたまま、銀時は後ろ手でバイブのスイッチを入れた。
「くぅっ……」
銀時の内で土方の質量が増してくる。
「ハァッ……イイ感じになってきた」
「あ、あ、あ……」
「これはどう?」
「ひあっ!!」
バイブの抜き差しが始まり、土方の背がビクンと仰け反る。土方のモノは銀時のナカいっぱいに
膨れ上がっていた。
「ハァ〜……気持ちいい……」
「あぁっ!も、やめ……」
「折角だからこのままヤろうよ」
後ろ手でバイブを操作しながら銀時は腰を浮かせ、また下ろしていく。
「あぁ……土方のチ○コ、気持ちいいっ!」
「ひぁっ!くっ……ん、あぁっ!」
ナカをバイブで掻き回され一物を銀時に絞られて、土方の性感は瞬く間に高まった。
拘束された土方を満足そうに見下ろし、銀時は自分も土方のモノで快感を追っていく。
「あ、あん!あんっ!土方っ、気持ちいいよ!」
「んんんっ!」
腰の動きが激しくなるにつれ、手の方は疎かになってしまう。それを補おうと銀時はスイッチを
「強」にした。
「ひぅぅ……っ!」
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
土方の身体がガクガクと震え、四肢に繋がる鎖がジャラジャラと鳴った。
「あっ、いいっ!土方っ、一緒にイこう」
「は、やくっ……!」
「うん」
一緒に達したい気持ちは土方にもあるが、このままだとまた先にイッてしまう。銀時にもそれが
分かったので、空いている手で自分のモノを握って扱きだした。
「あんっ、イク!ひじかたっ、イクっ!!」
「っ、あ……ぎ、んっ!」
「土方ァ!イク!イッちゃう!あっ、あっ……ああぁっ!!」
「くっ……ああぁっ!!」
銀時の精液は土方の顔まで飛び散り、土方も銀時のナカへ二度目の精を吐き出した。
「ハァ〜、気持ち良かった」
土方の上に座ったまま銀時は満ち足りた顔で一息吐くけれど、
「あっ、あっ、あっ、あっ……」
土方は体内から生じ続ける快楽に身悶えていた。
「ぎんっ……止めろ!」
「あー、はいはい……」
カチッという音を最後にモーター音が止まり、土方は漸く息を吐いた。
「……もう回復しちゃった?」
「ちょっと、休ませろ」
銀時はナカを収縮させて体内のモノを推し量るが、肩で息する土方はそれどころではないようで、
その瞳に普段のような鋭さはなく、半ば閉じかかっていた。
「水、飲む?」
「その前に、これ外せ」
土方は片手を揺すって鎖を鳴らす。
「えー……次もこれでヤろうよ。お前も案外ノッてたじゃん」
「外せ。……片方だけでいいから」
「そんなら外さなくてもいいだろ」
「ったくテメーは……」
そんなに拘束が好きなのかと土方は解放を諦め、銀時を動かすことにした。
「……じゃあ、キスしろ」
「へ?」
呼吸が整い光が戻りつつある瞳で、激しい交わりのためだけでなく上気した頬で、ぶっきらぼうに
放たれた一言……銀時にとっては意外過ぎて、すぐには理解できなかった。
「えっと……キス、してぇの?」
「……テメーが嫌ならいい」
そう言いつつも土方はあからさまに憮然とした表情でぷいと横を向く。
「ああ、ごめんごめん。あんまり可愛いおねだりでビックリしただけ」
「なん……」
拗ねている土方の頬に手を添えて正面を向かせ、銀時は自分の唇と土方のそれを重ね合わせた。
抱き寄せることのできない土方の分まで確りと抱き付いて、深く深く口付ける。
寒風吹き荒ぶ中、一時間待たされた代償として銀時が申し出たサービス。その割に終始銀時の
ペースで行為が進んだものの土方に不満はなかった。今はもう、暖かい部屋の中にいて、自分が
望んだ口付けをしているところだ。硬度を取り戻しつつあるモノも、きっとまた、銀時のナカで
達せるはずだし、銀時もそれを望んでいるだろう。
互いに求めて求められる……それだけで充分であった。
(12.01.26)
久々の受け×受けです!土方さんバイブ突っ込まれてる時点でかなり銀土寄りな気もしますが、挿入方向は土→銀なんで「土銀土」です!
えっ、いいんですよね?未だに土銀土と銀土銀の使い分けができません^^; なので「とにかくリバなんだな」という感じで読んで下されば幸いです。
ウチのリバの二人は基本的に受ける方が好きです。そして銀さんの方が積極的なので、結果として銀さんが多く受けているんです。
けれど銀さんはSでもあるので、土方さんをぐちゃぐちゃに感じさせたいんです。自分も気持ち良くなりたいけど土方さんも啼かせたい……
行きつく先が今回のようなプレイです(笑)。あっ、お題との関連ですが、「彼=銀さん」です。銀さんを拘束するくらいなら拘束された方がマシ
という無自覚Mな土方さんの心情でした。 ここまでお読みくださりありがとうございました。
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