おまけ・後編


「どーぞ」
「お邪魔します…」

途中のコンビニで昼食を買い、土方は坂田家に来た。
坂田は靴を脱いで上がると部屋の電気をつける。人気のない部屋に土方の緊張は高まっていく。

「せ、先輩…お家の方は…」
「そんなのいねェよ。ウチ共働きだから」
「え、あ、あの…」

玄関で立ち尽くしている土方の顔を坂田が覗きこむ。

「んー?土方くん、どうしたの?」
「べっ別に、なんでもありません」
「でも…顔、赤いよ?何考えてんのさ。土方くんのエッチ」
「違っ!…だいたい、そんなこと言うってことは、先輩がエロいこと考えてる証拠です」
「違いますぅ。俺は純粋に土方くんとデートがしたかっただけですぅ」
「お、俺だってそのつもりです」

土方は靴を脱いで坂田の家に上がった。
それから坂田の部屋に通されたところで、また顔を覗きこまれた。

「土方くんさァ…」
「な、なんですか?」
「本当に何もする気、ないの?」
「…なんのことですか?」
「…俺とエッチなこと、したくない?」
「なっ!」

土方はいつもみたいな言い合いが続くのだとばかり思っていた。しかし意外にも坂田はストレートに言った。

「そんなに驚くこと?俺達付き合ってんのにキスもまだなんだよ?」
「…(今日の先輩はなんだかやたらと余裕がある。何でだ?自分の家にいるから?それにしたって…
もしかして…)先輩、最初からDVDなんか見るつもりなかったんですね?」
「あっ、バレた?まあねー」

坂田の余裕が入念なシミュレーションに基づくものだと判り、土方は悔しさでいっぱいになる。
土方とて坂田とのあれこれを想像しなかったわけではない。ただ、急にその場面に遭遇して戸惑っているのだ。

「土方くんは俺とするの、嫌なの?」
「嫌ってわけじゃ…」
「じゃあ…しよ?」
「…はい」

土方は坂田に促され、ベッドへ向かった。



「じゃあ、いいよ」
「えっ…」

ベッドの縁に並んで座ると、坂田は土方の方を向いて目を閉じた。

「(これって…もしかしなくても俺の方からする感じ?えっ…マジで?先輩からしてくれるんじゃねェの?)あ、あの…」
「どうした?まずはキスから、だろ?いいよ…」
「いいよってあの…俺から、ですか?」
「…だって俺、したことねェもん。だから…土方くんに任せる」
「あの…俺もしたことないんですけど…」
「マジで!?」
「はい」

坂田は驚愕に目を見開く。その様子に土方は不満を露わにする。

「俺って…そんなに遊んでるように見えますか?」
「あ、ゴメン。そういう意味じゃなくて…土方くんモテそうだから、経験あるんだろうなって…」
「モテないですよ。それに俺、先輩以外とそういうことしたくないんで」
「ありがと。でも困ったな…」
「何がですか?」
「俺さ…ウチに連れて来たら、後は土方くんに任せておけばオッケーだと思ってて…」
「そういうことですか。まあ誘ったのは先輩なんで、後はよろしくお願いします」

先程坂田がしたように、土方は坂田の方を向いて目を閉じてみた。

「ちょっ…えっ?あー、うー…その…」

姿が見えなくても容易に想像できる坂田の狼狽えぶりに、土方はゆっくりと目を開く。

「フッ…冗談ですよ、先輩」
「…タチ悪ィぞ」
「すいません。じゃあ、あの…同時にしませんか?」
「同時に?」
「はい。お互いに半分ずつ近寄れば…」
「そうだね。そうしよう」

まず坂田が土方の肩に手を乗せ、土方も坂田の肩に手を乗せると二人の心臓は高鳴った。

(ヤバイ…こんなことなら「同時に」とか言わずに、本気で先輩に任せればよかった!)

今からでも「先輩から」に変更できないかと、土方は坂田の様子を伺う。
すると坂田も顔を真っ赤にして目を泳がせていた。坂田も同じように緊張しているのだと判り、土方は心を決める。

「せ、先輩…いきますよ」
「う、うん」
「じゃあ…」
「せーのっ」

ガンッ

二人は恥ずかしさを払拭するため勢いを付けて相手の方に向かい、その結果、顔と顔が音を立ててぶつかった。

「いっ…」
「たたっ…土方くん、痛い!もうちょい優しくして!」
「俺だって痛かったですよ!先輩こそ、もっと加減して下さい」
「よしっ…次はそっとだからね?」
「先輩も、お願いしますよ?」
「分かってるって」

二人はもう一度互いの肩に手を置き、先程よりもゆっくりと顔を近付けていく。
そして今度は上手く唇を合わせることができた。

「「………」」

(ちゃんと先輩とキスできたが…これからどうすれば?舌、とか?いや、最初からそれはちょっと…。
でも、一応「二回目」なワケだし…でも……あっ)

土方が次の行動を決めかねているうちに坂田の方から唇を離し、土方の肩口に顔を埋めた。

「あの…せっ先輩?」

急に抱き付かれた土方はどうしてよいか分からない。しかし坂田も恥ずかしさで動けないのだった。

(うおぉぉぉっ…何コレ?めちゃくちゃ恥ずかしっ!もう土方くんの顔まともに見られねェよ!絶対真っ赤になってる!)
(どーすればいいんだ、オイ!先輩が抱き付いて……俺も抱き付けばいいのか?でもそんなの恥ずかしくてできねェ!
だからといってこのままってワケには…よしっ!いくしかねェ!)

土方はキツく目を閉じ、坂田の肩に自身の額を付けた。

(ななななにっ!土方くんが俺に抱き付いて…ていうか、俺も土方くんに抱き付いちゃってるよ!
もしかしてこれって俺から誘ってる感じになってる?…違うからね!いや、別に土方くんとならエッチしたっていいけど
だからって誘うつもりは…。どっどーしよう…とりあえずもう一回キスとかすべき?
でも、もうキスは二回したし…あっ、でも何か唇がムズムズ…ちょっと、キスしたいかも……よしっ!)

勇気を振り絞って坂田は顔を上げ、土方の肩を掴んで目を合わせた。

「ひ、土方くん…」
「はっはい…」
「………えいっ」
「えっ…」
「「………」」

坂田は土方の首に腕を巻き付け、唇と唇を触れ合わせた。

(うわわっ…先輩からキっ…。こ、これは応えなきゃダメだよな?)

土方も同じように坂田の首に腕を回す。すると二人の唇はよりしっかりと密着した。

(うっわ…土方くんが腕を…ぶちゅっていっちゃったよ!ヤベェ!めっちゃドキドキする。
…ドキドキっつーか、ドクドクっつーか…とにかく体が熱い!ていうか、この熱さは…)
(どっどうしよう…自分で腕回しといてアレだが…ヤバイ!体が熱くなってきた!
このままキスを続けているとマズイ!…だが、先輩からしてくれたのをやめるわけにも…)

二人とも体に熱が篭るのを感じながらも離れられないでいた。



「ふっ…」
「はぁ…」

漸く唇を離した頃には、二人の下半身はすっかり固くなっていた。
二人とも何となく目を合わせられずにいるため、互いの変化には気付いていない。

(どうしよう…勃っちゃった。トイレでヌいてくるか?でも、時間かかったら土方くん、変に思うよな…)
(やべェ…勃っちまった。トイレ借りてヌくか?だが…あまり長いことかかったら先輩、変に思うよな…)

相手に現状を気付かれまいと様子を伺っていると、相手も同じようなことをしているのに気付く。

「土方くんさァ…なんでそんなに足をピッタリくっ付けてるわけ?」
「先輩こそ…なんで体育座りなんですか?」
「………」
「………」
「もしかして…勃ってる?」
「そういう先輩はどうなんですか?」
「…勃ってる」
「俺もです…」
「続き、する?」
「…はい」

二人は恐る恐る向かい合い、足を広げて布が内側から押し上げられているのを見せ合う。

「おー…マジで勃ってる」
「先輩だって…」
「まあね。えっと…これからどうするの?」
「どうって…先輩が『続き』するって言ったんじゃないですか」
「そりゃ言ったけど…俺、経験ないから分かんないし…」
「俺だってないですけど…とりあえず、触ればいいんじゃないですか?」
「あっ、そうだね。…どうぞ」

またしても自分に任せようとする坂田に、土方はキスの時の同じ提案をする。

「先輩…俺もよく分かんないんで、一緒にしませんか?」
「一緒に?うーん……分かった」
「じゃあ…」
「せーのっ」

二人はそろそろと手を伸ばし、服越しに相手の股間を撫でた。


「んんっ!」
「くっ!」


初めて経験する他者からの快楽に、二人は驚いて手を引っ込めた。


「えっと…(土方くん何した!?カラダが勝手にビクンってなった!)」
「あの…(坂田先輩一体何を…思わず声が漏れそうになっちまった!)」


一度は手を引いたものの、触れられた感触が忘れられず、どちらからともなく手を伸ばした。


「んーっ!」
「はぁっ!」


ビクビクと身体を震わせながら互いに相手のモノを布越しに撫でていく。
感じれば感じるほど相手を撫でる手も大胆になっていき、それが更に快楽へと繋がっていった。


「はぁ…土方くん…」
「せん、ぱい…俺、もう…」
「っれも…ヤバイ…」


坂田は土方の、土方は坂田のベルトを緩め、ファスナーを下ろして育ち切った一物を取り出す。
膝を立てて座った状態で相手の脚に自分の脚を絡め、腰を近付けて互いの一物を握った。


「あっ!」
「くぅっ!」


布越しでは味わえなかった快感が二人を包み、二人は夢中で相手の一物を擦った。


「あっ…はぁ、はぁ…」
「はぁ、はぁ…くっ!」


先走りが漏れてくると、それを全体に塗り広げるようにして扱いていく。
二人の手が動くたび、卑猥な水音が鳴った。


「はぁ、はぁ…んんっ!」
「くっ…はぁ、はぁ…」


夢中になって扱いているうちに、相手を気持よくしているのか自分が気持よくなっているのか分からなくなってくる。
とにかく二人は握っているモノを激しく扱いた。


「はぁ、はあ…もっ、イク!」
「っれも…です!」
「あっ、んっ…」
「くっ…」

「「ああぁっ!!」」


二人はほとんど同時に達し、そのままベッドへ倒れ込んだ。


「ハァ、ハァ…ヤバイ…すっげェ気持よかった…」
「はい。でも…すっげェ疲れた。ハァ…」
「俺も…。あっ…はい、ティッシュ」
「どうも…」

手で受け止めた相手のモノをティッシュで拭い、二人はそれから夕方までゴロゴロと過ごした。


今日の行為に「続き」があることを二人が知るのは、もう少し先の話。


(10.07.29)


書きたかったのは「八割方受身の坂田先輩と、それ以上に受け身でいたいけど先輩に遠慮して積極的になろうとする土方くん 」でした。つまりは受け×受けです^^;

まだピュアな二人は男同士のヤり方を知りません。この二人は17歳なのですが、15歳設定の二人(禁断その一:家族)よりも初々しい感じになってしまいました。

まあ、15歳コンビは幼馴染で付き合いが長く、この二人は付き合ったばかりですからね^^ それから、これも本編より長い気がしますが「おまけ」です(笑)

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

追記:パラレル倉庫「その他」にこの二人の初エッチ話を書きました。CPは土銀始まりのリバと銀土です。よろしければそちらもどうぞ。

 

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