ヘタレな恋人 第七話:引き止める勇気くらい持て
シングルベッドに仰向けに寝た土方の帯を解き着物の合わせを開くと、銀時はその身体に魅入った。
その一方で土方は、下着姿に近い状態のまま銀時に見つめられる恥ずかしさに耐え切れなくなっていた。
「…あんま見んな」
「あっ…ごごごごめん!もう絶対見ないから許して!」
「…そこまで怒ってねェよ。だいたい…見ないでどうやってヤるんだよ」
「そっそうだよね。…ゴメン」
項垂れてしまった銀時をもう一度「大丈夫だから」と慰めて、土方は続きを促す。
銀時は土方の二の腕の横辺りで正座をし、恐る恐る唇を土方の唇に近付ける。
「………」
土方は目を閉じて口付けを待っている。
なかなか唇が合わさらないことに焦れてはいたものの、自分からは一切動かないと決めていた。
初めて銀時と口付けを交わした日、土方から行動を起こしたら、銀時は物凄い速さで後ずさったのだ。
その時の苦い経験から、こっち方面は銀時に任せようと土方は決心したのだ。
こうして土方が今までの付き合いを振り返っているうちに、漸く唇に何かが触れる感じがした。
何か、とはもちろん銀時の唇である。
漸く重なった唇に安堵したのも束の間、触れあったまま動かない銀時に土方は焦れた。
(……相変わらず当ててるだけだな。こんなんで最後までヤれんのか?全然そんな気分にならねェ…
そりゃあ最悪、コイツが勃てば何とかなるけどよ…それはもう、本当に最後の手段にしてほしい…おっ)
土方が痺れを切らす手前で銀時は一瞬、ほんの一瞬だけ土方の唇を舐めた。
しかし、土方が僅かに唇を開くと銀時の動きが止まった。
(土方の口、開いてるけど…舌、入れていいのかな?そんな意味じゃなくて、何となく開いちゃっただけだったら…
でも、誘ってくれてるんだとしたら…。いや、土方は誘うなんてしねェだろ。土方は何かこう…タンパクな?
エロいことなんか考えなそうな?むしろそういうのを毛嫌いしそうな?…そんな感じだからな)
最初のキスを土方から受け、付き合うことはエッチも込みだと言われたにも関わらず、銀時の中の土方像は
性欲とかけ離れたところにいるようだ。
銀時はゆっくり頭を上げた。
「あ、あの…身体、触ってもいい?」
「ああ…(キスはもう終わりか?まあ、この格好のままってのも恥ずかしいから、さっさと触ってもらった方がいいか)」
銀時は土方の胸の上に両手を置いた。
土方の横に正座した状態からやや腰を上げ、両の掌を土方の左右の胸の上にそっと乗せる。
(…何だこれ?心臓マッサージ?…いや、マッサージもしてねェよ。置いてるだけだよ。ちょっ…もう無理だ)
「銀時…」
「なっなあに?」
「下…触ってくんねェか?」
「えっ…」
このままゆっくり触られていては恥ずかしさが募るだけと考えた土方は
手っ取り早く感じられる場所を触ってもらうことにした。動きを止めたままの銀時に、土方はもう一度言う。
「そこはいいから…早く、下を…」
「えっと…下って、ここら辺?」
銀時はやや手を下にずらす。
「そうじゃなくて…もっと下…」
「もっとって…この辺?」
銀時はさらに手を下にずらし、腹部の辺りに手を置く。
「…そうじゃねェよ。下っつーのは…ここだ」
「えっ!」
いつまで経っても目当ての場所に辿り着かないと思った土方は、銀時の手首を掴み、羞恥心をかなぐり捨てて
自身の股間まで誘導する。これで一安心かと思いきや、思わぬ行動に出られた銀時は固まってしまった。
(どどどどどーしよー!ここってアレだよな。…えっ、マジで触っていいの?何で急に…。
まさか「もう我慢できない」とかそんな感じ?…いや、でもその割には反応してないし…)
土方の真意が分からない銀時は、土方の股間に手を当てたままどうするべきか考え込んでいる。
「銀時…」
「………」
「…銀時!」
「ああああ、はい!何でしょうかっ!」
「何でしょうじゃなくてよ…ヤらねェのか?」
「あ、あの…いいの?」
「いいから触れって言ってんだろ?」
「そっそうだね。えっと…触るのはこのまま?それとも脱がせる?」
「どっちでもいいから…」
「どっちでもというと…」
「あー、分かった。脱がせ…いや、自分で脱ぐ」
「えっ…」
銀時に任せていたら、下着を脱がせるのにかなりの時間を要するのは明白だ。
着物を開く時はそれでも我慢できたが、下着を同じようにゆっくりと脱がされたのでは堪らない。
土方は一旦起き上がって下着を脱いだ。
* * * * *
その後も土方にとっては羞恥心との戦いの連続だった。
下着を脱いだのはいいが、銀時が再び見つめたまま動かなくなってしまい
もう一度銀時の腕を掴んで、今度は直に握らせた。
それでも動いているか否か分からないような速さでしか動かない銀時の手に焦れて
銀時の手の上から自身を握り、半ば自慰行為に近いことをする羽目になった。
恥ずかしさからくる興奮も手伝い、何とか銀時の手(と自分の手)で達することができた。
実際はほとんど土方自身でやったのだが、初めて土方をイカせることができて銀時は感激していた。
(すげェ!土方が俺の手でイッてくれた!よしっ…次は、土方の精液と持ってきたローションで土方の後ろを解すぞ)
銀時が懐から潤滑剤を取り出したのを確認し、土方は横になって足を開いた。
「あの…痛かったら言ってね」
「ああ」
滴り落ちるほどの潤滑剤を指に塗し、銀時は恐る恐る指先で後孔を撫でる。
「んっ…」
「い、痛い!?」
「触ったくらいじゃ痛くねェよ…大丈夫だから」
「そう?じゃあ…ちょっとだけ、入れるよ」
「ああ」
銀時は本当に少しだけ―指先を五ミリほど―入れてみた。
「あの…大丈夫?」
「ああ」
「じゃあ、もうちょっと…」
銀時は更に五ミリほどナカに入れてみる。
「あの…痛くない?」
「ああ」
「じゃあ、もうちょっと…」
「銀時…」
「あっ、痛かった!?」
「そうじゃねェ。…痛かったら言うから、いちいち聞かないで入れていい」
「えっ、でも…」
「ちょっとずつ聞かれる方が、その…恥ずかしい」
「あ、ごめん。じゃあ入れるけど…痛かったらすぐに言ってね」
「ああ」
これで漸くコトが進むと、土方は心の中だけで安堵の溜息を吐いた。
「あ、あの…全部、入っちゃったけど…本当に痛くない?」
「ああ、平気だ」
指を一本だけではあるが、痛みなしに挿入できて銀時はホッとする。
(大丈夫そうで良かったァ。それにしても土方のナカって熱くて狭い…
ここに俺のを突っ込んだらすげェ気持ちいいんだろうなァ…。あっ、でもちゃんとゴムは着けねェと。
それは基本だもんな。男の嗜み的なアレだよ、うん)
そんなことを考えながら指を抜き差しする銀時は、徐々に余裕が出てきたようにも見える。
しかし、その余裕は長くは続かなかった。
「…あーーっ!!」
「ぎ、ぎんとき?」
いきなり叫んだ銀時に土方は思わず起き上がろうとしたが、後孔に指が埋まったままだったため
視線を銀時の方へ向けるに留めた。
「おい、どうしたんだ?」
「あ、ごめん…ちょっと…いや、何でもない」
明らかに何でもなくない様子であるが、いつもの取り越し苦労だろうと土方は深く追求しなかった。
(どうしようどうしようどうしよう…ゴム忘れたァァァ!ああああ…ちゃんと昨日のうちに買っておいたのに!
新八達に見られないようにってタンスの奥に隠して、持ってくんの忘れたよ!どうしよう!
ちょっ…落ち着け俺ェェェ!考えろ!落ち着いて考えれば何とかなるはずだ!えーと、えーっと…
そうだ!ゴムなんかコンビニとかで売ってんじゃねェか!…あっ、でも俺、三百円しか持ってねェんだった。
ホテル代も土方から借りてるんだよなァ…さすがにゴム代を借りるのは情けなさすぎる…
そうだ!ホテルなんだからゴムくらい…って、ここはラブホじゃねェんだからンなもんねェよ!
こうなりゃ最後の手段だ…その辺のヤツに金を借りよう!ここはかぶき町だ。知り合いなら大勢いる…よしっ!)
銀時は土方から指を抜き、軽く手を拭うと土方の着物の袷を閉じる。土方は慌てて起き上がった。
「おい…」
「ちょっと待ってて。すぐ戻るから」
「…どこ行くんだよ」
「すぐ、すぐだから」
「だから、どこに行くんだって聞いてんだよ」
「………」
やや責められるように言われ、銀時は観念した。
「あのね…ゴム、忘れたから、その…買いに、行ってきます」
「はぁ?」
「ごごっごめんなさい!近くのコンビニですぐ買ってきますから!」
「……おい」
「はっはい!」
「今からオメーがコンビニ行くなら…俺ァ、帰るぜ」
「……ですよね。今まで…グスッ…ありがと…」
「おい…ナニ勝手に別れ話にしてんだよ」
「だって…帰るんでしょ?」
「ハァ…少しは引き止めろや。しかも帰るっつっただけで誰も別れるなんて言ってねェよ」
「えっと、じゃあ…屯所まで送ります」
「だから…俺ァコンビニ行くなら帰るっつったんだ。つまり、オメーがどこにも行かねェなら帰らねェ」
「え、でも…」
「…今回だけ、だからな」
土方は若干頬を染めて続けた。
「次からはゴム、忘れんじゃねェぞ」
「うそ…」
「それから…テメーはちょっとそこで待っとけ」
「えっ…土方、どっか行くの?」
「行かねェよ…」
土方は枕元に転がっていた潤滑剤のボトルを手に取り、自分の右手に垂らす。
そして左手を後ろに付き、右手を前から回して自分のナカに二本の指を挿入した。
「ひ、ひじか…」
「ちょっと黙ってろ。…んっ、くっ!」
銀時の目の前で後孔に指を二本挿入し、ナカを解していく。土方の指が動くたび、グチュグチュと潤滑剤が鳴った。
後ろを刺激したからか、銀時に見られて興奮したからか、土方のモノは徐々に硬くなってくる。
(土方、どうしちゃったんだろ…。あんなに動かして痛くないのかな?土方のチ○コ勃ってきたし…感じてる?
もしかして…後ろでヤんの、慣れてる?そういえば最初から「下」希望だったな…。
そりゃあ、互いにいい歳なんだから、過去に拘ってたら何も出来ないし…でもなァ…)
気分が高揚してきた土方とは対照的に、銀時は土方の男性経験が気になって仕方がなくなってきた。
土方の肌を見て昂ぶっていた気分が次第に萎えていく。
「銀時…準備、できたから…」
「えっ、あ、うん…」
自身から指を抜き取り、土方は銀時を引き寄せてベッドの中央に座らせる。
そこで初めて銀時の下半身が何も反応していないことに気付いた。股間を見つめられた銀時は慌てて弁解しようとする。
「こっこれはね、えっと、その…ちょっ、ちょっと待って…えっ?」
土方は無言で銀時の前に蹲り、一物を取り出して根本から舌を這わせた。
(ええぇぇぇっ!ひひひ土方がおおおお俺のを舐っ…えええぇぇっ!何で?どうして!?
ていうか、やっぱ土方って男とヤんの慣れてんの?そうじゃなきゃ、フェラなんて…)
銀時は土方の過去が気になって行為に集中できないでいた。
当然のように、土方がどんなに頑張っても銀時のモノは何の反応も示さない。土方は申し訳なさそうに口を離した。
「悪ィ…俺が下手くそだからだよな…」
「えっ!ぁ…ちちち違うって!土方は悪くないよ!」
「こういうの、慣れてねェから…イマイチ勝手が分からなくて、その…すまん」
「慣れて、ない?じゃあ、何でこんなこと…」
「いくら『下』でも、黙って寝てるだけじゃダメだと思って…。だが、上手くできなかった」
本音を言うとゆっくりコトが進んでいくのに恥ずかしさの限界が来て、自分でした方が早いと踏んだのだが
その辺のことは敢えて伝えないでおいた。
土方の話を聞き、銀時の沈みかけていた気分が浮上する。
* * * * *
「土方…痛くない?」
「ああ」
銀時の気分が上向き、二人はやっとのことで繋がることができた。
正常位で繋がり、銀時は土方をそっと抱き締めながら喜びに満ち溢れていた。
(すげェすげェすげェ!俺、土方と繋がってる!…本当に入るんだなァ。しかも生だよナマ!
あ〜…土方のナカ、めちゃくちゃ気持ちいい…。やべっ…気ィ抜いたらイッちまいそう…)
ナカが馴染むのを待って、銀時はゆっくりと腰を動かし始める。
「んっ、ハァ…」
「土方…大丈夫?」
「ああ」
土方の様子を伺いながら、銀時は慎重に腰を動かしていく。
その時、銀時の先端がある箇所を通過した。
「ひあぁっ!」
「えっ?ナニ?」
ビクンと土方の身体が跳ね、銀時は驚いて動きを止める。
「ごめん。痛かった?」
「違っ…痛くは、ねェ」
「でも…」
「本当に、大丈夫だから…」
「じゃあ続けるけど…痛かったら言ってね。すぐ止めるから…」
「ああ」
銀時は再びゆっくりと律動を始める。先ほど土方が跳ねた場所はより慎重に通るよう心がけた。
すると、土方のナカでじわじわと熱が生まれてくる。
「ぎ、ときっ…」
「あっ、痛い?」
「違…もっと、速く…」
「えっ…そんなことして大丈夫なの?」
「いい、から…」
「う、うん」
土方の身体が心配ではあったが、銀時は言われた通りに速く動いてみた。
「ああっ!ああっ!ああっ!」
「っ!(なにコレ!?今、土方のナカがぎゅって締め付けた!…締め付けるっつーか、絡みつく感じ!)」
銀時のモノが出し入れされるたび、土方は声を上げる。銀時もナカの気持ちよさに夢中になっていった。
「ああっ!ああっ!…あんっ!」
(土方が俺に突っ込まれてアンアン言ってる!…もう無理っ!我慢できねェ!)
「ひあぁぁっ!」
すっかり土方(の身体)の虜になった銀時は、その後、土方がやめろと言っても止まれなかった。
(10.05.31)
お待たせしました!ヘタレ銀さん、漸くできました!相変わらずヘタレでなかなか本番突入しなくてどうなることかとヒヤヒヤしましたが、何とか最後まで辿り着けてよかったです。
銀さんは土方さんのことを性欲の欠片もない人だと思いこんでいますね。そして、ここまで迷いながら進んできたヘタレ銀さんですが、時間をかけ過ぎたせいで我慢の限界がきてしまいました。
最終的には欲望の赴くままに…です(笑) それから、土方さんがイクところとか、挿入過程とか、かなり重要なところを端折ってすみません^^; ここまでお読み下さりありがとうございました。
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