銀さん、土方さん、白血球王の三人でホテルに行く話

※この銀&土はリバの二人です

 

 

 

真選組副長―土方十四郎は出先から屯所に戻る途中で信じられない人物を目撃する。いや、彼に出会うことはよくあることだ。

だが、その格好が…どう見ても某有名ゲームの登場人物なのだ。 

 

 

「よっ、万事屋!?何て格好してやがるっ!」

[ん?貴様は何者だ?]

「は?万事屋じゃ…ねーのか?そういやあ、目が死んでねェな」

[何者かと聞いているのに名乗らぬとは…無礼なヤツだ]

「あー、俺は土方だ。テメーこそ何モンだ?」

[我が名は白血球王]

「へー…で、その王様が何だってこんなとこをぶらついてんだ?王様だったら城へ帰れ」

[俺もこんな雑菌だらけの町を歩きたくはないのだが…たまには外の空気を吸ってこいと、追い出されてしまってな]

「あーそうかい。王様なのにそれより偉いヤツがいんだな」

[もちろんだ!俺はたま様を守るために存在しているのだ]

「で、その『たまさま』ってのはどこにいんだ?」

[スナックお登勢というところで働いていらっしゃる]

 

 

 

スナックお登勢…土方には聞き覚えがある店の名だった。

 

 

 

「やはりテメーは万事屋の関係者か?」

[よろずやなどというヤツは知らん!何だソイツは?]

「テメーにそっくりなヤツだ。着てる物はだいぶ違うがな」

[もしや、それは坂田銀時のことか?]

「やっぱり関係者じゃねーか」

[よろずやは知らんが、坂田銀時なら知っている]

「その坂田銀時が営んでるのが万事屋だ。テメーが言ってたスナックお登勢の上にあんだろ?万事屋銀ちゃんってのが」

[そうだったか…よいことを教えてもらった。礼を言うぞ]

「お、おう…」

 

 

 

銀時本人と異なり、素直に反応する白血球王に土方は戸惑いを感じていた。

 

 

 

「ところで…坂田銀時とはどういう関係なんだ?」

[兄弟だ]

「兄弟!?アイツに兄弟なんかいたのか!?」

[兄弟といっても同じ親から産まれたわけではない。俺はヤツを元にして作られたのだ]

「そ、そうなの、か?」

 

 

 

土方にはイマイチ目の前の人物が何者なのか分からないが、銀時を兄弟と慕うほどのヤツだということは理解できた。

 

 

 

「で、その兄弟はどうした?」

[さあな。外の空気を…と出されたので、当てもなく外を歩いていたところだ]

「それ…意味違うんじゃねーか?」

[それにしても貴様とは初めて会った気がしないな。銀時の知り合いか?]

「あ、ああ…まあな」

 

 

恋人である…とはさすがに言いにくかった。

 

 

[そうか…それなら一つ頼みがあるんだが…]

「ん?何だ?」

[何か、食べるものを持っていないか?]

「何だ。金がねーのか?…そういうとこまでアイツと同じかよ」

[すまぬ。何しろ今朝出てきたばかりで、この世界のことはよく分からんのだ]

「今朝って…もう夕方だぞ?それまでずっと歩いてたってのか?このくそ暑い中を?その暑そうな格好で?」

 

 

目の前の男はブーツにマント、手袋までしている。

土方も制服姿なので人のことは言えないが、朝からずっと外にいるというこの男の方が辛いだろう。

 

 

[身一つで出てきてしまったからな]

「仕方ねェな。メシくらい奢ってやる…何が食いたい?」

[…六甲の天然水]

「メシじゃねーのかよ…まあ、この暑さじゃメシより水か。じゃあ付いてきな」

 

土方は「今日はこれであがる」と屯所に連絡を入れ、白血球王を行き付けの定食屋へ連れて行った。

 

 

 

*  *  *  *  *

 

 

 

[いやー、美味かった。貴様はいいヤツだな。土方と言ったか?土方…何というんだ?]

「十四郎だ。土方十四郎」

[そうか…では、改めて礼を言うぞ。十四郎!]

「とっ、とうしっ…!」

[ん?どうしたのだ、十四郎?顔が赤いぞ?熱でもあるのか?]

「い、いやなんでもねー」

 

 

恋人と同じ顔で普段呼ばない下の名前を呼ばれ、土方は心臓が飛び出そうになった。

このままコイツといると心臓に悪い…早くコイツの主である「たまさま」とやらの元に帰さねば…土方はそう思っていた。

そこへ聞き覚えのあるやる気のない声が届く。

 

 

「あっれー、お二人さん、随分と仲が良いじゃねーの」

 

 

「ぎっ…」

[銀時!元気だったか!]

「おー元気よ。オメーも元気そうね。…ところで土方くん?」

 

 

土方の肩がビクッと震える。やる気がなさそうな声とは裏腹に、銀時の機嫌が悪いと感じていたからだ。

おそらく自分が原因なのだろうが、何で銀時が怒っているのか土方には分からなかった。

 

 

「そんなに怖がんないでよー。アイツには『十四郎』なんて呼ばれて喜んでたくせに…」

「ち、違っ…」

「違わねェよ。何?アイツの方がいいの?それとも、顔が同じなら何でもいいの?」

「銀時、違うんだ!そんなんじゃない!信じてくれ!」

「ぷっ…ごめんごめん!嘘だよ。ちょっとヤキモチ」

「ヤキモチ?」

「そっ。お前とアイツが楽しそうに話してるから、ちょっとイジワルしてみたくなっちゃった」

「テメー…」

「だからゴメンって。…なあ、今日はもう仕事終わり?」

「ああ」

「そうかー…じゃあ、宿、行かね?」

「あ、ああ」

[宿だと?俺も連れて行ってはくれぬか?]

「はあっ!?」 

 

 

白血球王のとんでもない申し出に土方はつい声を荒げてしまう。だが銀時は何か思いついたとばかりにニヤニヤしている。

…こういう時の銀時はロクでもないことを考えている…土方は経験上分かっていた。 

 

 

「何、オメーも一緒に宿、行きてェの?」

[ああ。朝からずっと外を歩いていたのでな。宿で休んで体力を回復させたいのだが…]

「おお、そうか!んじゃ、俺たちといっちょ御休憩すっか!」

[そうか!それは有難い]

「お、おい銀時…」

[十四郎も今まで働いて疲れているのだろう?それなのに食事に付き合わせてしまって悪かったな。さあ、宿へ行こう!]

「よーし、じゃあ今日はあそこの宿にしよーぜ」

[宿というより…どう見ても城だな]

「そーそー、ここの王様はいい人でよー、城の空いてる部屋を宿として提供してくれてんだ」

[そうなのか。この世界も捨てたもんじゃないな]

 

 

 

銀時は適当なことを言って、白血球王と土方と共に城を模したラブホテルへと入っていった。

 

 

(09.08.25) 

photo by 素材屋angelo


中途半端ですが長くなったのでここで一旦切ります。続きはただのエロになります。18歳以上の方だけどうぞ→中編