※「純情な二人と二度目のキス」の後、「みいみいみ」の前の出来事です。



二度目のキスから一ヶ月。証拠写真を無事「封印」した銀時と土方は、すっかり元の状態に戻っていた。
そしてまた、例の四人―山崎、沖田、新八、神楽―による作戦会議が行われる。

「副長達、完全に元通りですね」
「ああ」
「何だか、あの時のキスが二人の中でなかったことになってるような…」
「せっかく作ったポスター、銀ちゃんがどこかに隠しちゃったアル」
「土方さんの方はどうですか?」
「恐らく携帯のデータは消してねェと思うが…二度と見てねェだろうな」
「いっそのこと、待受画面にしたらどうですかね?
携帯開けばすぐ目に入るし、設定変えるにしても少しは画面を見なきゃいけないし…」
「ついでに発着信の画面とか、変えられるところは全部キス画像に変えておいたらどうでィ」
「それいいですね。じゃあ早速今夜、副長が寝た後にでもこっそり…」
「おう」

土方側の作戦が決まったところで新八が尋ねる。

「銀さんの方はどうしましょう?」
「とりあえず、前作ったポスター探し出して、目立つ所に貼りたいネ」
「旦那がどこにしまったか、心当たりはないの?」
「多分、押入れかタンスの中だと思うんですけど…」
「だったら片付けの最中に偶然見付けたことにして広げたらどう?」
「いいですね!いつも僕が掃除してるし…やってみます」
「一枚だけじゃすぐ剥がされちゃうから、もっといっぱい貼りたいアル」
「じゃあシールにでもする?元のデータは俺が持ってるから簡単に作れるよ」
「本当ですか?山崎さん、お願いします」
「それじゃあ作戦開始ネ!」
「「おー!」」(山&新)
「…何でチャイナが仕切ってるんでィ」
「まあ、いいじゃないですか、隊長」

こうして、今回の作戦会議は幕を閉じた。



純情な二人と記念写真



「!?」

朝起きて、アラームを解除しようと携帯電話を開いた土方は慌ててそれを閉じた。

(ななな何であの写真が!?)

土方は寝起きで見たキス画像に動揺しすぎて、いたずらされたという事にすら気付けない。
その時、土方の携帯電話が鳴った。

「!!」

電話に出ようとした土方は、また携帯電話を開いてすぐに閉じた。
着信を知らせる画面にも先程の画像が表示されていたのである。

(どどどどーすれば…)

待受画面より小さくなっているとはいえ、銀時とキスしている画像が表示された状態の携帯電話を
耳元に近付けるには勇気がいる。しかし、いつまでも電話に出ないわけにもいかない。

迷った挙句、土方は薄目を開けて携帯電話を開く。
そして通話ボタンを押すと、目を瞑って、耳元から拳一つ分くらい離した位置に電話を持っていった。
携帯電話を持つ手はぷるぷると震えていた。

「もっもしもし…」
『土方さんですかィ?かなり電話が遠いようですが…まだ部屋にいますよねィ?』
「…総悟か?…あっ!この写真、テメーの仕業か!?」
『何のことですかィ?俺はただ、いつもの時間に起きてこねェ上司に親切でモーニングコールしただけですぜィ』
「テメーが親切なんかするわけねーだろ。下らねェ電話してねェでさっさと元に戻せ!」
『戻す?何を?』
「俺の携帯だ!勝手に待受変えただろーが」
『待受?…犬のエサの写真から変えたんですかィ?ちょいと見せて下せェ』
「えっ…」

一方的に通話が切れたと思ったらスパンと襖が開いて沖田が入って来た。
沖田は呆然としている土方の手から携帯電話を奪い取る。

「あっ…」
「へェー…随分とラブラブなんですねィ」
「…これやったの、テメーだろ!」
「何のことだかさっぱり…。おっ、丁度いいトコに来た。山崎ィ、これ見てみろィ」
「えっ、何ですか?」

沖田は土方の携帯電話を持ったまま廊下に出て、偶然通りかかった(フリをしている)山崎にも見せる。

「わー、副長と旦那だー!ラブラブですねー(棒読み)」
「やめっ…」
「だろィ?きっと二人は会うといつもこうなんだぜ」
「違っ…」
「へェ〜、羨ましいなァ。俺も早く恋人がほしいなァ」
「いやいや本当に羨ましい。…でも、色ボケもたいがいにして下せェよ」
「だから違うって…」
「それじゃ、早く着替えて来て下せェ」

沖田は携帯電話を開いたまま土方に渡し、山崎と共に去っていった。

その後土方は何とか携帯電話を閉じ、着替えて食堂へ向かうのだった。

*  *  *  *  *

(説明書、説明書……あった!)

食事と朝のミーティングを終えた土方は副長室に戻り、携帯電話の取扱説明書を探し出す。
そして説明書の「待受画面変更」のページを開くと、携帯電話を開き、画面を手帳で覆った。

(メニューボタンの次は、1で、その次は0、4、6…)

例の画像を見たくない土方は、実際の画面を一切見ることなく、説明書の手順通りにボタンを押して
待受画面を変更しようとしているのだ。

(これで大丈夫な、はず…)

土方は下から少しずつ手帳をずらしていき、恐る恐る画面を確認する。
無事に別の画像に切り替わったことが分かると、大きく息を吐いた。

(とりあえず、最初の画面がアレじゃなくなったからいいか…)

先程、電話の着信画面も例の画像になっていたし、それ以外にも例の画像が使われている可能性はある。
だがまず、待受画面が「安全」になったので携帯電話を開けないということはなくなった。
そのことに安心し、土方は残りの作業を別の機会にすることにして、漸く本日の仕事に取り掛かるのだった。

しかし、実は発着信画面やメニュー画面の背景、電話帳に登録してある一人一人のアイコンなど
変えられる所全てがキス画像に変えられている。
大元のデータを消去すればいいのだが、「データを消すと爆発する」と沖田に脅されているためそれができない。
土方が本当に安心して携帯電話を使えるまでには、まだまだ時間がかかるのであった。


(10.06.11)


毎度のことですが…四人はいつも何処で作戦会議をしてるのでしょうね(笑)?後編は銀さん編です