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(今日こそ…今日こそは土方に抱かれるんだ!)
ある朝、普段より早く目覚めた銀時は強い決意を持って起き上がると、グッと拳を握った。
弱気なSと強気なM
恋人同士になって一年間、銀時の希望でずっと銀時が土方を抱いてきた。
それが、付き合って一年経った頃から土方のことをこれまで以上に「カッコイイ」と思うようになり
「土方に抱かれてみたい」と銀時は思うようになったのだ。
その思いは土方にも伝え、指を受け入れるまでは進んだのだが、慣れない刺激に銀時が参ってしまい
結局その日も銀時が土方を抱いた。
それから一ヶ月。何度か身体を重ねる機会はあったものの、土壇場で銀時が怖気付いてしまっていた。
(毎回土方に「どっちがいい?」って聞かれて「下」って答えてんのに、最終的には俺が上になってる。
俺がビビってんのが悪ィんだけど、土方だってもうちょい強引さがあってもいいよな…。
多少キツくてもひと思いにヤっちまうくらいの…まあ、そういうことをしないのが土方の良さだけどな。
…あれっ?俺は土方が「やめろ」とか「待て」とか言っても腰振りまくってイカせまくってるよな?
俺って…上としてもダメダメなんじゃねェか?…やべェ!上としてもダメだし、下もできねェなんて
そのうち土方に嫌われちまう!そんなの嫌だ!絶対に、何としてでも土方に抱かれなきゃ!)
半ば強迫観念のように、銀時は土方に抱かれたいと強く思った。
* * * * *
「土方…お願いがあるんだ」
「どうした?改まって…」
土方の非番前夜。いつものように居酒屋で軽く飲んだ二人は本日の宿泊場所―ラブホテルへやって来た。
交代でシャワーを済ませると、銀時が神妙な面持ちで話し出した。
「今まで、何度挑戦してもダメだったけど…今日こそ俺はお前に抱かれたい」
「銀時…」
「俺、抱かれるのは初めてだからいざとなったらビビっちまうかもしんねェけど…でも、一度ヤれば
平気になると思うから…だから今日は思い切ってヤっちゃってほしい」
「何度も言うようだが、俺ァ上でも下でも構わねェから無理して抱かれる必要ねェんだぞ?」
「無理じゃない!俺は…土方に抱かれたいんだ!」
必死に「抱かれたい」と言う銀時はとても辛そうに見える。
土方は何とかして銀時の不安を取り除いてやりたいと思った。
「オメーがそこまで言うなら…」
「抱いてくれるのか?」
「ああ…」
自分の望みが叶ったにも関わらず、銀時は膝の上で拳を握り締めて更に辛そうな貌をする。
土方はひとつ芝居を打ってみることにした。
「ただし…今日じゃなくてもいいか?」
「えっ?」
「今更言いにくいんだが、その…今夜は、抱かれたい気分なんだ」
「土方…」
恥じらっているように見えるよう、やや俯き加減に土方は言った。
「だが、お前がどうしても抱かれたいと言うんなら…俺は、いつも抱かれてるし、譲ってやらねェとな…」
「あっ…」
残念そうに土方は更に下を向く。
「悪ィ。余計なこと言っちまったな…。さあ銀時、ヤろうぜ」
「あっあのさ…土方が抱かれたいんなら、俺はまた今度でもいいよ」
「そうはいかねェ。俺はいつも抱いてもらってるのに…」
「だけどいつも土方は最初に『どっちがいい?』って聞いてくれるじゃん。
たまには土方がヤりたい方でいいよ」
「銀時、お前…優しいんだな」
「そんなことねェよ。いつも俺の方が優しくしてもらってるし。…じゃあ、ベッドに行こうか?」
「ああ…ありがとな」
「気にすんなって」
抱かれたいと言っていた時よりも穏やかになった銀時の表情を見て、土方はこれで正解だったのだと悟る。
そして今夜も銀時が土方を抱き、それから銀時は土方に抱き締められて眠りに就いた。
* * * * *
銀時との逢瀬を終えて屯所に戻った土方は、昨夜のことを改めて考えていた。
(何で銀時はあんなに切羽詰まって「抱かれたい」なんて言い出したんだ?
そもそもあの貌は「抱かれたい」というより「抱かれないと死んじまう」くらいに思ってそうだった。
俺が抱いて欲しいと言ったら安心したようだった。…やはり、下になるのが嫌なのに気を遣って
下になろうとしてんのか?だとしても何であんなに辛そうだったんだ?それに、昨日の銀時は
俺を抱く時も様子がおかしかった。何だかおっかなびっくりヤってるみたいで…何かあったのか?
…俺一人で考えていても埒が明かねェな。気は進まねェが、遠回しにアイツらに聞いてみるか。
銀時のことはアイツらが一番分かってそうだしな…)
それから数日後。土方は仕事の合間を縫って万事屋を訪れた。
「はい…あっ、土方さん。銀さん今出かけてて…」
「分かってる。だから来たんだ」
「えっ?…まあ、どうぞ」
銀時の行動パターンは把握している。仕事も土方との約束もないこの時間、銀時は大抵ふらりと外へ出るのだ。
土方はそれが分かっていて万事屋に来た。
不思議そうに土方を見て、それでも新八は事務所へ案内する。
イスに寝そべって酢こんぶを齧っていた神楽がムクリと起き上がり、新八は台所へお茶を淹れに行く。
「銀ちゃんの留守中に何の用ネ、ニコ中マヨラー」
「お前らにちょっと聞きたいことがあってな…」
「…私もお前に聞きたいことがあるネ」
「何だ?」
「お前から言っていいアル」
「そうか…じゃあ、銀時に何かあったのか?」
「…どういうことネ」
「いや、最近少し様子がおかしい気がしてな」
「どんな風におかしいアルか?」
「その…あることを、あまりやりたくなさそうなのに『やりたい』って言い張るとか…」
子ども相手に夜のあれこれを話すのは気が引けたため、土方は敢えて肝心な所はぼかして伝えた。
だが神楽には何のことか分かってしまったようで…
「お前もしかして、まだ銀ちゃんに突っ込んでないアルか?」
「ちょっ、ちょっと神楽ちゃん!」
「新八は黙ってるネ。突っ込まれたはずの日からずっと銀ちゃんが元気ないの、新八だって心配してたアル」
「…それは、オメーらが俺に電話してきた時のことか?」
「そうネ!」
銀時が「抱かれたい」と思い始めて最初の逢瀬の日、二人は土方に電話をかけ「銀時は抱かれたがっているが
初めてなので優しくしてほしい」と伝えたのだ。
だがその日は冒頭にも書いたように、指を入れるだけで終わってしまった。
「あの日、お前が帰った後に私達が戻ったら銀ちゃん元気なかったネ。初めてだから疲れてるのかもと
思ったけど、それからお前に会う度に元気なくなっていったアル。この前だって…」
「そうだったのか…」
土方はやや下方を見据え、あの日からの銀時の様子をできる限り思い出そうとする。
黙ってしまった土方を見て神楽はある可能性を口にした。
「お前もしかして、突っ込めない身体になってしまったアルか?」
「はっ?」
子ども達そっちのけで銀時のことを考えていた土方は、咄嗟に神楽から何を言われたのか理解できなかった。
土方の反応が鈍いのを図星だからだと勘違いした新八は慌ててフォローに入る。
「かっ神楽ちゃん、幾らなんでも失礼でしょ?土方さん、すみません。
神楽ちゃん、よく分からなくて言ってるだけなんで気にしないで下さい」
「何言ってるネ。私はちゃんと分かってるアル!銀ちゃんに一年以上突っ込まれてコイツは…」
「ああああ…そっ、それより!銀さんがどうしたら元気になるか考えようよ!」
「だからそれには突っ込めなくなったコイツをどうにかして…」
「それは置いといて、別の方法で何か…」
「おい」
焦る新八と「コイツのせいで銀ちゃんは…」と土方を指差す神楽に、土方の鋭い眼光が突き刺さる。
新八は「ひィ!」と短い悲鳴を上げて固まってしまったが、神楽は反対に睨み返した。
「何アルか、突っ込めないマヨラー」
「俺がいつ突っ込めないっつった?あ?ガキとはいえ終いにゃ怒るぞ?」
「えっ…」
「お前、突っ込めない身体になったから、銀ちゃんに突っ込んでないんじゃないアルか?」
「誰がそんなこと言ったよ…」
土方は呆れたように溜息を零し、背凭れに体を預ける。
「すみません。さっき、神楽ちゃんの言葉を否定しなかったからてっきり…」
「ちょっと考え事してただけだっつーの」
「じゃあ、突っ込めるのにどうして突っ込んであげないネ。お前、ドMに見えてドSだったアルか?
銀ちゃん困らせて喜んでるアルか?」
「SでもMでもねェよ。…つーか、銀時を困らせてるつもりもねェ。むしろアイツのことを考えてだな…」
子どもに夜の話をするのには抵抗があるものの、ここまで来たら話すしかないと土方は腹を括った。
「アイツは、本当に抱かれることを望んでんのか?」
「当たり前ネ」
「それは確かです。銀さん自身の口から聞きましたから」
「…何て?」
「今までずっと突っ込む側だったけど、逆もいいって思ってるって言ってたアル」
「そうか…」
「お前の前では嫌そうにしてるアルか?」
「嫌そうっつーか、無理に抱かれようとしているような…」
「気のせいじゃないアルか?銀ちゃん、キモイくらいにお前のことカッコイイと思ってるネ」
「そっ、そうなのか?」
思っていた以上に銀時から想われていたことを知らされ、土方は頬を染めた。
「照れてる場合じゃないネ!お前なんかの何処がカッコイイのか全くこれっぽっちも分からないアルが
銀ちゃんはカッコイイお前に捨てられないかビクビクしてるアル!」
「……まさかそれで、本当は嫌なのに『抱かれたい』って言い出したのか?」
「嫌かどうかは分かりませんけど『土方さんと自分じゃ釣り合わない』みたいなことは言ってました。
…そんなことないって言ったんですけどね」
「あのバカ…それで勝手に落ち込んでたのか」
「銀ちゃんを見捨てないでほしいアル」
「んなことするワケねーだろ。…そろそろアイツが帰ってくる頃か?じゃあ俺ァ仕事に戻るか…」
「あの…銀さんのこと、よろしくお願いします」
「任せとけ。…今日は悪かったな。変な話、聞かせちまってよ」
「いえ…」
「世話の焼ける大人達ネ」
憎まれ口を叩く神楽の表情も幾分和らいだ気がする。
土方は「またな」と言って万事屋を後にした。
子ども達には「任せとけ」と言ったものの、具体的な打開策を思い付いたわけではなかった。
それから数日、土方はどうすれば銀時が安心して自分と付き合えるのかを考えながら過ごした。
* * * * *
再び銀時と土方が一夜を過ごす日がやって来た。
相変わらず不安げな表情の銀時を見て、土方は何とかして勇気付けてやりたいと改めて思う。
「あ、あの…今日こそ、俺が下で…」
「その前に銀時…お前が何で急に抱かれたくなったのか聞いてもいいか?」
「えっ!」
思いがけない質問に、俯いていた銀時はパッと顔を上げた。
「何で、そんなこと…」
「前に下は嫌だと言ってたじゃねェか。それがどうして変わったのか不思議に思っただけだ」
銀時を安心させる特効薬が見付からないとなれば、じっくり話し合うしかないというのが土方の結論だった。
「その…特に理由はねェけど…今までと逆になるのも、いいかなァって…」
「その割に、ここ最近はかなり必死になって抱かれようとしているように見えるんだが…」
「必死ってわけじゃ…。でも俺、上としてはダメダメだから、下の方が向いてるんじゃねェかって…」
「…上がダメって誰が言ったんだ?」
「誰も言ってねェけど…でも、土方みたいに優しくできねェし…」
「そうか?」
「そうだろ?だって…土方は俺がちょっとでも嫌がったりビビったりすると止めてくれんじゃん。
でも俺は、むしろ土方に恥ずかしい思いさせて楽しんでるというか…」
「…ドSだからな」
「ごめん」
完全に項垂れてしまった銀時に、土方は慌ててフォローを入れる。
「別に悪いなんて言ってねェだろ?色んなやり方があってもいいじゃねーか」
「けど俺、土方が嫌がってもイカせまくっちゃうし…」
「…本気で嫌ならオメーと一年以上も付き合ってるワケねェだろーが」
「ほ、本当に?」
「ああ…」
銀時の貌が徐々に明るくなってくる。
「やめろって言われても恥ずかしいカッコさせたり、イカせてって言われてもイカせなかったり
それから、縛ったり玩具使ったり無理矢理一人エッチさせたりしたのも、本当に、本気で嫌なわけじゃない?」
「…っ!」
ストレートな物言いに土方は一瞬返事に詰まる。
だが、ここで黙ってしまえば今まで言ったことが嘘だと取られかねないと思い、何とか言葉を続ける。
「ま、まあ…それなりに、恥ずかしいから嫌だとは言うが…だからといって、お前が嫌なわけじゃねェよ」
「土方…」
「それに、お前が楽しそうにしてるのを見るのは好きだ。
だから上でも下でも構わねェが、お前らしくあってほしいと思ってる」
「俺らしくって?」
「やりたいようにやれってことだ」
「……ドSモードでもいいってこと?」
「それが、お前のやりたいことなら…」
「でもそれだと土方が…」
「俺は…お前の好きにされんのだって、悪くねェと思ってる」
「マジで?」
「ああ」
今や銀時の貌から一切の陰りが消えていた。
「土方って…俺が思ってた以上にドMなんだな」
「誰がドMだ、誰が」
「だって、好き勝手に弄ばれたいなんて完全にドMの発言だろ〜」
「誰も弄ばれたいなんて言ってねェよ」
「いやいや…そういうことだろ?煮るなり焼くなり好きにしてってことでしょ?」
「テメーはすぐ調子に乗りやがる…」
「だって嬉しいんだもん。土方がそんなに俺のこと愛してくれてるなんて」
「そうじゃなきゃ付き合うかってんだ」
「えへへー…」
銀時はギュッと土方に抱き付いた。土方も銀時の背中に腕を回す。
「あのさァ…やっぱ、今日は俺が上でいい?」
「好きにしていいって言っただろ?」
「うん…。思いっきりドロドロのぐちゃぐちゃにしてあげる」
「…上等だ、コラ」
その夜、いつものように土方を抱いた銀時は、今までにないくらい幸せそうであった。
(10.03.26)
書き始めた時は「銀さん遂に受けるの巻」のつもりだったのですが…おかしいな^^;でも、堂々とドM発言(?)をする土方さんを書くのは楽しかったです。
今回も結局銀土のままでしたが、今後も銀さんは受けようと頑張ると思います。銀さんがちゃんと受けられる日は来るのか、今のところ私にも分かりません(笑)
というかコレ、リバ小説って言っていいんでしょうか?銀さんが受け受けしいだけの銀土小説じゃ…そのうち、きっと、リバになります!…多分;
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
追記:続き書きました。いよいよです→★
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