※前作の続きではなく、少し時間を遡って「純情な二人の交際宣言(?)」と

純情な二人の初デート」の間の話になります。


純情な二人と周りの人々


「ほら家賃滞納分、しっかり掃除するんだよ」
「分かったアル」
「分かりました。…銀さんもちゃんとやって下さいよ」
「わーったよ。やればいいんだろ、クソババァ」
「ああ、さっさとやんな」

いつものように家賃を溜めに溜めた万事屋一行は本日、大家の店「スナックお登勢」の掃除を言い渡された。
お登勢はカウンターの内側に座り、朝のニュースを観ながら三人の仕事振りを見張っている。

「今日の天気は晴れでーす」
「あー…結野アナ、今日も可愛いなー」

大好きなお天気お姉さんの登場に、銀時は掃除の手を止めて画面に見入る。
するとお登勢の檄が飛んだ。

「銀時!しっかり働かないと家賃待ってやんないよ!」
「へーへー…。ったく、お天気コーナーくらい見てもいいじゃねーか…」
「もう天気予報は終わったよ。…何だい、またテロかィ?本当に物騒な世の中だねェ…」

天気予報が終わったテレビからは、今朝早くに発生したテロ事件についてのニュースが流れていた。
銀時は再び手を止めて画面に見入る。

「ちょいと銀時…って、アンタ何でそんな真っ赤な顔してんだィ?」
「べべべ別に何でも…」
「何でもないって顔じゃないだろ?」
「本当に何でもねェから!ババァは座ってテレビでも見てろよ!」

カウンターから出てこようとするお登勢を止めて、銀時は慌てて掃除に戻る。
仕方なくお登勢は座ったまま新八に聞いた。

「アイツ、何かあったのかィ?」
「ああ、気にすることないですよ。多分、ちらっとテレビに恋人が映っただけですから」
「ちょっ、新八てめェ…余計なこと言うんじゃねーよ!」

銀時が止めるのも聞かず、お登勢と新八は話を続ける。

「恋人?アイツに恋人なんていたのかィ?」
「そうなんです。つい最近お付き合いを始めたみたいで…」
「へぇー…随分と物好きがいたもんだねぇ。でも大丈夫なのかィ?テロのニュースに映ったってことは…」
「大丈夫ネ。銀ちゃんの恋人はいつもテロ現場にいるアル」

神楽も掃除をやめて話に加わる。

「おやおや、そんなに野次馬なのかィ?」
「違いますよ。それが仕事なんです。銀さんの恋人は真選組の土方さんなんです」
「真選組の土方って…鬼の副長かィ?驚いたね、こりゃ」
「この前私がココに泊まったのも、銀ちゃんがソイツと二人きりで過ごすためアル」
「神楽!もうそれ以上言うんじゃねェ!」
「なるほどね…。それにしても一瞬テレビに映った姿を見ただけで赤くなるなんて、初々しいじゃないか」
「初々しいというかキモイだけアル」
「真選組の一団が映ったのはほんの少しだったのに、その中からよく土方さんを見つけれらましたね」
「愛の力ってやつかィ?」

お登勢はニヤニヤしながら銀時の方を見る。銀時の頬は未だに赤いままであった。

「ううううるせェよババァ!新八と神楽もサボってねェで掃除しやがれ!」
「まあまあ…今日はアンタに恋人ができた記念だ。家賃は負けてやるからこっちに来て恋人の話でも聞かせてお くれよ」
「ははは話って何だよ!ババァに話すことなんざねェからなっ!」
「冷たいねェ。せっかくアンタらを祝福してやろうと思ったのに…」
「しゅっ祝福なんかいらねェよ!」
「二人がいればそれで充分ってことかィ?お熱いことだねェ」
「ちちち違ェよ!とにかく、掃除しなくていいなら俺ァ帰るからな!」

銀時は持っていたモップを投げ捨て、スナックお登勢を後にした。
そしてそのまま階段を上がって家に帰ると、一直線に電話へ向かった。


*  *  *  *  *


「…っ!?」

テロの後始末を終えた土方が屯所で遅めの朝食をとっていると、上着のポケットに入れてある携帯電話が震えた 。
取り出してディスプレイを見ると、そこには「万事屋」の文字。
瞬時に顔を真っ赤にした土方に気付き、向かいに座っていた近藤が土方の手元を覗き込む。

「トシ、電話か?ん?万事屋?」
「ななな何でもねェ。近藤さん、ちょっと電話してくる!」
「あっ、トシ…」

土方は逃げるように食堂から出て自室に戻り、震える手で通話ボタンを押した。

「もっもしもし…」
『あっ、ひひひ土方?いいい今、大丈夫?』
「ああ…」
『あの俺っ…ニュースがテロで、お前が、えっと…だから…』

緊張のあまり銀時は上手く話すことができない。だが、土方には何となく言いたいことが伝わったようで…

「今朝のテロのこと、ニュースでやってたのか?」
『うっうん!あああの…大丈夫?』
「あ、ああ…」
『ケガ、とかは?』
「してねェ」
『そっか。良かった…』
「あああの…わざわざ、あっあり、ありっがと…な」
『どどっどういたしまして。そそそれじゃ、お仕事、がんばって…』
「お、おう」

電話を切った銀時と土方は、酷く疲れたようでいて、それでも幸せそうな貌をしていた。


一方、土方が走り去った後の食堂では…

「なあ総悟、トシと万事屋ってもしかして…」
「あそこまでハッキリ顔に出たら、近藤さんだって気付きますよねィ」
「じゃあやっぱり、付き合っているのか?」
「…みたいでさァ」
「そうか…じゃあ今夜は宴だな!」
「いいと思いますぜィ」

純粋に土方を祝福したい近藤と、晒し者にしたい沖田によって宴の開催が決められていた。


こうして二人は、本人の意向と関係なく公認の仲になったのであった。


(10.02.24)


久々に初々しい頃の二人を書いてみたくて時間を巻き戻してみました。まあ、この二人は今でも充分初々しいんですけどね^^。どこかの後書きで書きましたが、この二人は相手のことを思うだけで

挙動がおかしくなるので、秘密のお付き合いなんかできません。この二人、最初から隠れて付き合うつもりはないのですが、周りに冷やかされると恥ずかしいので敢えて言わなかったんだと思います。

でも勝手に広まっていってしまいました(笑)   ここまでお読み下さり、ありがとうございました。

追記:続きを書きました。(純情な二人は何もしませんが18禁です)

 

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