中編
暫くして土方がゆっくり立ち上がると、隣にいる銀時がビクッと震えた。
だが土方は銀時の様子に気付かず部屋の奥へ向かっていった。
「…何か飲むか?」←3位
「なっ何かって…?」←1位
「とりあえず、茶ァでも飲まねェか?」←3位
「ああ…そっ、そーだな。…お前は、何飲むの?」←1位
「…コーヒー」←3位
「じゃあ、俺もコーヒー」←1位
「分かった」←3位
土方は部屋の隅の棚からカップ二つとインスタントコーヒーを取り出し、備え付けのポットでカップに湯を注いだ。
「ほらよ」←3位
「あ、ありがと…」←1位
銀時にカップを手渡すと土方はソファに座った。その隣に銀時も座ろうとしたが、
二人で座るとピッタリくっつかなくてはならない大きさのソファだったため、向かいのベッドの縁に座った。
温かいコーヒーを無言で啜っているうちに、二人とも少し落ち着きを取り戻せた。
銀時が天井を仰ぎながら話し出す。
「それにしても、沖田くんと神楽には参ったねコレ」←1位
「だな…あの手際のよさからして、前々から計画してたんだろうな」←3位
「何だかんだ言って仲良いよね、あの二人」←1位
「ああ…総悟はずっと年上に囲まれて育ったから、年下とつるむのが新鮮なんだろ」←3位
「それだけ?恋愛感情的なものはねェの?」←1位
「さあな。嫌ってはいねェと思うが…チャイナこそどうなんだ?」←3位
「さあ?今は色気より食い気ってところじゃね?」←1位
「ははっ…二人ともまだまだガキってことだな」←3位
「そうだよなー」←1位
そんな子どもに「早く大人の関係になってほしい」と願われているとも知らず、保護者気分の二人の会話は弾んだ。
「でもよー、どうせならもっといい部屋にしてくれりゃいいのに…。ここ、一番狭い部屋だぜ?
分かっててやってんのかね?」←1位
「総悟なら敢えて一番狭い部屋を選びそうだな。…それにしても、詳しいんだな」←3位
「言っただろ?知り合いが経営してんだって。ウチに帰れねェ時とか、よく空き部屋に泊めてもらったんだよ」←1位
「帰れないって…お前ん家、すぐそこだろ?」←3位
「そーなんだけどね?ウチ、何度か壊れてんだよ。宇宙船が突っ込んできたり、巨大なチョコが降ってきたり…
で、修理の間神楽は志村家か下のババァんトコ預けんだけど、どっちも一応女の家だからな。
俺はここなんかで世話になってんのよ」←1位
「そうか…色々大変なんだな」←3位
土方は、定春が屋根を突き破るほど巨大化した時のことを思い出していた。
「でもな、一人でデカいベッド使えるし、意外と快適だぜ?ここは狭いけどな」←1位
「そうか…」←3位
二人で取り留めのない会話をしていると、扉をノックする音がした。
扉を開けると銀時の知り合いであるホテルの経営者が立っていた。
「親父…どうしたんだ?」←1位
「七時になったらこれを届けるように言われてたんでね」←圏外
そう言って彼は盆にそばを二人前乗せて持って来た。
「そば?言われたって…誰に?」←1位
「この部屋の手続きをした栗色の髪の少年だよ」←圏外
沖田からの差し入れと聞いて銀時と土方は顔を見合わせる。
「ちなみに…このそばもその少年が持って来たもの?」←1位
「いえ…夕飯に出前をという指定だったので、こっちで近所のそば屋に頼んだんだよ」←圏外
「じゃあ、食っても大丈夫そうだな」←1位
食事の安全性を確かめられたため銀時は盆を受け取る。
「それと、これも一緒に渡すように言われてたんで…」←圏外
「えっ…」←1位
「じゃあ、ごゆっくり」←圏外
銀時の持った盆の上に手のひらサイズの紙袋を乗せ、彼は去っていった。
「沖田くんからって…何だろ?」←1位
「…いい物じゃねェことだけは確かだな。…っ!」←3位
恐る恐る紙袋を開いた土方は、中身を見て固まった。
「何が入ってたんだ?…っ!」←1位
土方の脇から覗き込むようにして中身を確認した銀時も固まってしまう。
袋の中には栄養ドリンク二本とコンドーム一箱。
ご丁寧に「頑張って励んでくだせェ」というメッセージカードまで添えられていた。
「あんの野郎…」←3位
「あのコ、本当に十八歳?」←1位
「たっ多分…」←3位
「………」←1位
「………」←3位
「とっとりあえず、そば食おうぜ!親父が注文したモンだからこれは安全だよ」←1位
「そ、そうだネ。せっかく頼んでくれたんだから食わなきゃ勿体ないよネ」←3位
「………」←1位
「………」←3位
二人は無言でそばを啜った。
(総悟ォォォ!アイツ、何てモン差し入れすんだよ!せっかくイイ感じに和んでた空気が台無しじゃねェか!!
差し入れさえなけりゃ、このままいつもみてェに隣同士で寝るだけになれる和やかムードだったってのによォォォ!!)←3位
(沖田くんがあんなモンくれたっつーことは、やっぱり土方がヤりたがってるからか?
それなのに俺がなかなか覚悟決めねェから、最終手段に出たってワケか?どどどどうしよー!!)←1位
互いに心の中で葛藤を繰り返しながら一心不乱にそばを食べ続けていたのであっという間に食べ終わってしまう。
今日ばかりは土方もマヨネーズがないことに文句を言わなかった。
そばを食べ終え、器を盆に戻したところで意を決したように土方が銀時に聞いた。
「あああのよー、おおお前は、その…やっヤりたい、と思う…か?(ついに聞いちまった!もう後戻りはできねェ!)」←3位
「(つつついにキタ!)…やややりたいって、何を?」←1位
「ななな何って……ナニだろ?」←3位
「あー、えーっと、その…ややっヤりたくねェ、ワケじゃ…ねェけど…その、えーっと…
そっそういう、土方はどーなんだ?」←1位
「おおお俺っ!?(つーか、コイツは結局どっちなんだ?分からねェ!!)俺は…えーっと、その、なんだ。
やっヤりたくねェ、ワケじゃ…ねェけど…その、えーっと…いっ今はお前に聞いてんだ!」←3位
「おおお俺はだから…その(つーか、結局土方はヤりたいの?ヤりたくねェの?分かんねェよ!!)
…いい嫌なワケじゃ、ねェけど…」←1位
「けっけど?」←3位
「けど…その…もっもう少し、先でも、いいかなーなんて、思ったり思わなかったり…」←1位
「…どっちだよ」←3位
「ひひひ土方こそ、どーなんだよっ」←1位
「おおお俺は、その…いい嫌なワケじゃ、ねェけど…」←3位
「けど…なに?」←1位
「けど、その…おっお前が、いいなら…もう少し、このままでもいいかなーなんて、思う…感じ、みたいな?」←3位
「………」←1位
「………」←3位
(あ、あれっ?もしかして土方、そんなにヤりたいワケじゃねェのか?)←1位
(もっもしかしてコイツも、まだ早ェとか思ってんのか?)←3位
何となく互いの気持ちが分かってきたところで、銀時が最終確認に動いた。
「あっあのさー、もしかして土方…ヤりたいワケじゃ、ねェ?」←1位
「…っ!おっお前は、どーなんだ?」←3位
「…っ!おっ俺は…土方がいいなら、まだ…ヤんなくても…。
あっ!べっ別に、お前とヤんのが嫌ってワケじゃ…でも、その…」←1位
「じっ実は、俺も…お前がいいなら、まだヤんなくてもいいなって思ってる…」←3位
「…マジで?」←1位
「あ、ああ…。べっ別に、ヤんのが嫌ってワケじゃねェ、けど…」←3位
「まだ…早い?」←1位
「あ、ああ…」←3位
「…俺も、そう思う」←1位
「そうか…」←3位
「ああ…」←1位
「「……ぷっ」」←1位&3位
「はははは…なぁんだ。お前も同じだったのかよ…一人で焦って、バカみてェ」←1位
「ははっ…俺だってなァ…オメーに我慢させてんだったら悪ィなと…」←3位
「あー、こんなんだったらもっと早く聞いときゃよかったなァ」←1位
「そりゃあ今思えばそうなんだけどよー…ヤりてェ?ヤりたくねェ?なんて聞けるか?」←3位
「…聞いたじゃん」←1位
「そっそれは…こんなトコに泊まるんだし…」←3位
「まあな…ラブホ泊まってヤらないなんて普通考えねェよな」←1位
「でっでも、俺たちはそのつもりでココに来たんじゃねェし…」←3位
「でもそれがなけりゃ誤解したままだったんだから…沖田くんと神楽に感謝、かな?」←1位
「チャイナはともかく…総悟の目的は絶対ェ違ってると思うけどな」←3位
「まあ、その辺はいいじゃん。相互理解が深まったんだし…」←1位
「そうだな」←3位
「じゃあ…」←1位
「ああ…」←3位
「「これからもよろしく」」←1位&3位
漸く肩の荷が下りた銀時と土方は、沖田や神楽の思惑とは外れ、清い関係を続けていくことを約束した。
(09.12.08)
無駄に長くてすみません。続きはこちら→★